そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 今更にはなりますが、今作は独自解釈や独自設定多めです。
 何故ならフロム君が細かい設定とDLCと続編をくれないからです。





ノーカウントだ、ノーカウント!

 

 

 

 その後、617と幻聴の主改めナインは、これからの目的と目標を確認した。

 

 617の当面の目的は、やはりというか、ハンドラー・ウォルターとの合流。

 一度は死を覚悟したものの、それを免れた以上、この命に意味をくれる飼い主の元に戻りたい……というのが、その主張であった。

 

 彼女がそう言いだすことは予測済みだったので、ナインはすぐに頷き、それをサポートする旨を告げる。

 その上で、ウォルターと再会するために、当面の目標を提案した。

 

 それは即ち、ルビコン3への密航である。

 

 ナインは惑星封鎖機構の基地で彼女の記憶を軽く覗いた際に、617がウォルターの拠点の位置を把握していないことを知った。

 戦場への行き来は常にウォルターの輸送ヘリによる空輸で、勿論住所など覚えていようはずもない。

 記憶を頼りに戻るには、余りにも頼りなさ過ぎた。

 

 なので、ウォルターが企図していると思われるルビコン3への密航をこちらでも行い、多少は土地勘のある現地で集合しようとしたわけだが……。

 

『疑問を提起します。ルビコン3とは何ですか?』

【そっ、そこからかぁ……!】

 

 ……どうやら、ウォルターの元に帰すまでの間、ナインは彼女の教育係も兼ねなければならないらしい。

 

 

 

 仕方がないので、ルビコン3とは何かを解説していく。

 

 ルビコン3。惑星の1つ。

 現在コーラルという資源が見つかったから、皆に注目されている星だ、と。

 

 可能な限り簡単な言葉と理屈を心掛けたからか、617はある程度説明を理解してくれたようだった。

 ……とはいえ、彼女はそこまで興味がある様子ではなかったし、大半はすぐに忘れてしまうかもしれないが。

 

【とにかく、君の飼い主、ハンドラー・ウォルターの目的地はそこだと思う。理由は……言えないけど。

 しかし、君はウォルターにその辺りの事情を聞かなかったのか?】

『肯定します。617及びハウンズに、ウォルターの目指すところは理解し切ることはできません。なので、その分戦闘や訓練に集中するよう努めています』

【極端なのはどうかと思わないでもないが……ウォルターの真意が気になったりはしないの?】

『肯定します。ウォルターが何を考えていても、何を目指していても、変わりません。

 私たちハウンズはただ、与えられた役割を全うするだけです』

 

 無感情な合成音声。

 けれど、言葉少なに語られたその答えからは、無意識下にある彼女のハウンズとしての誇りと……それは他者には伝わらないだろうという、諦めが感じられた。

 

 ……が、しかし。

 ナインがハウンズたちにとって完全な他人で、その感情を理解できないかと言えば、実のところそうではない。

 

【いざ外から見れば意外なようにも感じるけど、わかるなぁその気持ち……やっぱりごすずんから言われたことはそのまま受け入れちゃうよね。真意を隠してるとか言われても「だから何だ、俺はウォルターに付いて行くんだ!」ってなるだけなんだよなぁ……】

 

 617の言葉に、ナインは心から同意していた。

 かつてゲームという媒体を通してC4-621として活動していた頃、その最初期。

 彼もまた、ハンドラーの善良な心に触れて、彼のために走った猟犬だった。

 

 だからこそ、内心だけでそう呟いたつもりだったのだが……。

 

『…………今の言葉について、詳細な説明を求めます』

【うぇ、今の聞こえてたの!? 待って今のナシ、ああくそ、この体っていうかこの状態、独り言と思考と表現の切り分けがわからんすぎる!】

 

 慌てて誤魔化すナインだが……。

 617は、確かに聞いた。

 

 ごすずん……ご主人。

 ウォルターに付いて行く。

 そして、気持ちがわかる、と。

 

 ……その言葉は、確かに、自分たちハウンズのものと同じものだった。

 

 その言葉の真偽は?

 本当だとすれば……ナインの正体は、ハウンズ?

 

 いいや、ありえない。

 その声に、喋り方に覚えもない。

 617より過去のナンバーは、いない。……いなくなった。

 

 では、何故、ナインはその言葉を?

 偽りで述べたのであれば、何故ハウンズの在り方を理解している?

 

 いいや、そもそも、先程は「考えるべきものではない」と流してしまったが……。

 ナインは何故、自分に協力してくれるのか?

 味方だから……ハウンズだから?

 それとも、それ以外の理由?

 

 やけにウォルターに詳しいのは何故なのか?

 これもハウンズだからというのなら、納得できる話だ。

 けれど……それなら何故、それを明かさないのか?

 そもそもこの体の中にいるということだが、どうやって体に入ったのか?

 

 ……ナインは一体、何者なのか?

 

 

 

 固まっていた思考が、回る。

 彼女自身の意志で、興味で、回し始める。

 

 猟犬は、余計なことに興味を持たない。

 彼女たちが興味を持つのは、ただ飼い主と仲間たちのことだけ。

 だからこそ、どこまでも残酷にもなれるし、どこまでも大切なものを愛せる、素晴らしき猟犬足り得るのだ。

 

 ……けれど、「仲間の可能性のある他人」という、特殊な条件が満たされた今。

 その視線が、己の内にいるという他人に、向けられる。

 

 ……あるいは、C4-617という少女は。

 その問答を以て、ナインに……いいや、ハンドラー・ウォルターとハウンズ以外の何かに、初めて興味を抱いたのかもしれなかった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

『…………』

【あ、あのー、617? 聞こえてる? おーい】

 

 思考を鈍く、けれど止めずに巡らせる617と、やべぇ失言したこれで信頼失ったらどうしよと内心焦りまくっているナイン。

 

 そんな2人に対し、コックピットの外から声がかかる。

 

 

 

「おおーい、起きてるかぁ?」

 

 617の知らない、ガラの悪そうな男の声。

 彼女はピクリと震え、愛機の操縦桿を握りかけ……。

 

【大丈夫、今のところ味方だよ】

 

 ナインの言葉に、その力を緩める。

 仲間……かはわからないとしても、協力者であるナインが味方だというのなら、即座に敵にはならないだろう、という判断だ。

 

 続いて、ナインは少し申し訳なさそうに声を響かせる。

 

【……ごめん、617。彼と話したいんだ、一旦体を委ねてくれる?】

『疑問を提起します。どうすればいいのですか?』

【ええと……俺に体を動かしていいよーって思ってもらえれば、多分できそう】

 

 それを聞いた617が力を抜き、背もたれに体を預けてると……。

 

 彼女の意思を介在せず、体が緩慢に動き出す。

 

【うん、いけそう。……617に抵抗されたら一瞬で負けそうだけど】

 

 ナインは無意識下で、617の脳深部コーラル管理デバイスに干渉し、その動きを制御していた。

 元より管理デバイスの中にあった人格を宿さないコーラルと合流し、それらの蓄えていた知識を得たが故に、今の彼はまるで手足を動かすようにその制御を行うことができた。

 

 ……とはいえ、この管理デバイスは本来、身体機能をコーラル「が」管理するものではなく、コーラル「によって」管理するためのデバイスだ。

 つまるところ、命令系統としてはナインによるコーラルの意思以上に、617自身の意思が強い。

 彼女が自身の意思によって管理を放棄して初めて、ナインがこれを利用することが許されるのだが。

 

 その体内にある赤い潮流を指し示すように……617の青く綺麗だった瞳が、じわりと、赤く染まっていき。

 なんら表情を浮かべていなかった怜悧な美貌には、安堵の色が浮かんでいった。

 

【……よし、オーケー。617が起きていると体が動かせないってことはなさそうだ。

 ごめん、617。もうしばらく待っててね】

 

 617の体を借り受けたナインは、軽く手を握ったり開いたりして感触を確かめた後、ゆっくりと首に手を伸ばし、首輪デバイスの電源を入れる。

 

 更に、コーラルは管理デバイスから617の体外に流れ出、AC「scav617MG」の全体にその食指を動かし、機体制御権を奪取。

 ほぼ完全に破損されたヘッドパーツ『HC-2000 FINDER EYE』に搭載された、再起動しないはずのCOMを無理やりに起動し、外に繋がるスピーカーのスイッチを入れさせた。

 

 

 

『……あー、聞こえるかな。こちらは問題ない、どうした?』

 

 617が紡ぐ事務的で無感動なものとは違う、感情的な響きが込められた、親しみ易い言葉。

 首輪デバイスが617本人のものとは違う、ナインの感情の乗った思考を読み取った結果だった。

 

 自分のものとは思えない言葉に思わず体の主導権を取り返し、そのまぶたをぱちくりさせる617に対し……。

 外にいる男性は、どこか卑屈そうな、けれど親しみのある声をかけてくる。

 

「どうしたのもこうしたもねぇよ。お前ちょっと寝るっつってたろ、もう10時間だぜ? そろそろ体は休まったかよ、寝坊助?」

『……ああ、うん、ありがとう、ゆっくり休めたみたいだ』

「みたいだってなんだよみたいなって。つか、もっと感謝しろよ~? あんなド荒野で彷徨ってるてめぇを拾ってやったこの俺によ!」

『拾ったってお前、いきなり襲い掛かってきて返り討ちにあったの間違いだろ。今からでもお前のAC鉄屑にしてやろうか?』

「じっ、冗談だろうがよ~。……はぁ。カモがネギ背負って歩いて来たと思ったのに、こんなボロ機体に逆に追い詰められるとは……ったく、俺もダセェなぁ。

 つか、その件はここ紹介してやったので手打ちだろ? ノーカウントだ! そうだよな? な?」

『全く、都合の良い……』

 

 

 

 男2人が物騒なことを、けれどどこか親し気に話している最中、617はそれをぼんやりと聞いていた。

 飼い犬であった彼女は、こういった部分であまり頭を使わない。交渉や渉外は飼い主たるウォルターの仕事で、彼女たちの役割は戦うことだけだったからだ。

 

 しかし、そんな彼女のことを気にしたのか、ナインが外の男に声をかける。

 

『ところで、悪い、ちょっと名前がうろ覚えなんだ。もう一回自己紹介頼めないか?』

「ああん? ……まぁあの時は戦闘中だったし仕方ねぇか。今度こそしっかり覚えろよ?」

 

 そう言って、ガラの悪い男は、すごく……本当にすごく自慢げに、己の名を名乗った。

 

 

 

「俺はパッチ! 人呼んでパッチ、ザ・グッドガイだ!

 てめぇの命の恩人の名前なんだ、よく覚えとけ! なんならACにデカールで刻んどいてやろうかぁ?」

 

 

 







 本日の傭兵事情

・アセン
 『scav617MG』
 右腕:HG-003 COQUILLETT(軽ハンドガン。戦場から回収したもの。小破、修復中)
 左腕:HG-003 COQUILLETT(同上。中破、修復中)
 右肩:DF-GA-08 HU-BEN(ガトリング。無理やり付けただけで、ハンガー不可。大破)
 左肩:BML-G1/P07VTC-12(12連垂直ミサイル。中破、修復中)

 ヘッド:HC-2000 FINDER EYE(大破、修復中)
 コア:CC-2000 ORBITER(大破、修復不可)
 アーム:AC-2000 TOOL ARM(大破、修復不可)
 レッグ:2C-2000 CRAWLER(大破、修復中)

 ブースター:BST-G1/P10(軽量機用初期ブースター。大破、修復中)
 FSC:FCS-G1/P01(低性能初期FCS。中破、修復中)
 ジェネレーター:AG-J-098 JOSO(低性能初期FCS。中破、機能不全)
 コア拡張:アサルトアーマー(機能破損、使用不可)
 リペアキット:破損、使用不可

・収支
 0c

[生還]
 +49,000c(特務機体カタフラクト戦闘ログ、及び同機体設計構造図の電子データ売却)
 +21,000c(LC機体戦闘ログ、及び同機体設計構造の電子データ売却)
 +20,000c(封鎖機構基地マップデータ、配置図電子データ売却)
 +10,000c(パッチより『誠意』の提示)
 +3,000c(パルスブレード残骸売却)
 +2,000c(パルスシールド残骸売却)

[経費]
 -10,000c(ドック使用費)
 -13,264c(武装修理費、弾薬費)
 -22,872c(外装修理費)
 -4,168c(内装修理費)
 -20c(C4-617簡易治療用器具、食料など必需品購入)
 ───────────────────────
 +54,676c



《ナイン追記》
 見事にボロボロだ。特に外装パーツはもう使えないところが多いらしい。
 その上、修理費が思ったより高い。信頼もないし飛び込みだから仕方ないんだけどね。
 ただ、命あっての物種、逃げるが勝ち。今回の戦いは実質俺たちの勝ちと言っていいだろう。
 封鎖基地の残骸からぶっこ抜いたデータをベイラムに売り飛ばしてひとまず儲けは出たし、これからどうするかを考えないとな。

《617追記》
 ウォルターのごはんが食べたい。
 早く帰らないと。


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