そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

31 / 84

 ヴォルタのキャノンヘッド、Cランクにあってはならないガチタンっぷりでだいすき。
 2周目では辛酸を舐めさせられたものです。今ではワンコンボ即死だけど。





新参はガチガチの重装タンクだ

 

 

 

 ベイラム上層部から押し付けられた、とても不可能とすら思えるような「壁」の攻略作戦。

 ヴォルタは健闘虚しく撃破される……。

 

 はず、だったが。

 

 突如として戦場に介入した不明なACが展開したパルスプロテクションによって、撃破はほんの少しだけ後伸ばしとなり……。

 それが晴れた時、パルスプロテクション内にいた解放戦線のMT部隊は機体が機能不全を起こしており、介入してきたACの姿は見えず。

 そして何より、G4ヴォルタの乗機「キャノンヘッド」は、完全に破壊されていた。

 

 撮影された映像に映っていた、戦場に介入してきたACは、独立傭兵リンクス・ウィズ・カラーの愛機「フォーアンサー」。

 後ほど解放戦線が掴んだ情報によれば、リンクスは高度に秘匿された何者かからの依頼を受け、キャノンヘッド撃破のミッションを任されたらしい。

 その際に依頼にケチを付けられないよう自らの手で確実に撃破するため、パルスプロテクションを展開し、追い詰められたキャノンヘッドに襲い掛かった、と推察された。

 

 G4ヴォルタはルビコン3でもトップクラスの実力者。

 それを撃破することは、たとえ漁夫の利だったとしても、十分以上の腕の証明となる。

 怪しい点はいくつかあるが、しかしリンクスの立場に立って考えれば、これを狙うことはある程度以上の理が通った話であり、何より傭兵支援システムを通した正規の依頼は誤魔化しようもない……はずだった。

 

 そもそも解放戦線からすれば、敵対企業のACの撃破は助けになりこそすれ害されることはなく。

 ベイラム……レッドガンからしても、どちらにしてもG4の戦死という結果は変えようがなかった。

 故にこの一件についての違和感は、多くの人間の頭から、すぐさま消えていくこととなった。

 

 

 

 ……強いて言えば。

 

「……あの独立傭兵。どこからベイラムの作戦情報を得た?

 そもそもどの陣営が、何の目的で介入してきた? アーキバスの手ではないはず……」

 

 届いた映像を確認した、ヴェスパーの第四隊長だけは、基地の自室で顔をしかめ。

 

「ヴォルタ……クソ、クソッ!! 許さねぇぞ、クソ傭兵が……!!」

 

 彼の悪友は、拳を机に叩き付けていたが。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 グリッド139。

 「壁」からACで数時間かけた先にある、ベリウス南東部、空中に建築されたメガストラクチャー。

 その片隅には、いくつかのACの修復ドックと傭兵用セーフルームが用意されている。

 

 ルビコンで働く、傭兵支援システム、オールマインド。

 一言に支援と言っても、このシステムの持つ役割は多岐にわたる。

 それこそメインの業務になる依頼の斡旋、依頼人と傭兵の仲介から始まり、機体修繕のためのドック枠の確保と補充する弾薬弾丸の補給、あるいは僚機の紹介と引き合わせ、そして実力を鍛えるための仮想戦闘シミュレーションシステム、アリーナという実力の指標の提示。

 傭兵という業務を行う上で、オールマインドはおおよそありとあらゆる支援を行っており、ルビコンにいるAC乗りは例外なくこのシステムに依存していると言っていい。

 

 そしてその支援の中には、適切な価格帯での住居や食事の提供といったことも含まれている。

 

 独立傭兵リンクス・ウィズ・カラー……もとい、強化人間C4-617と、その「おにいさま」であるナイン。

 この2人もまた、このシステムを存分に使い倒していた。

 現に、このグリッド139に用意した彼らのセーフハウスもオールマインドによって手配させたものであり。

 

 今、そこに、彼ら以外の男性が初めて足を踏み入れていた。

 

 

 

「……どうなってやがる?」

 

 不機嫌そうに、あるいは不可解そうに頬杖を突く男の名は、G4ヴォルタ。

 正確には、それが本名というわけではないが……彼のいたベイラム専属AC部隊レッドガンでは、そのコールサインで呼称されていた男だ。

 

 彼からすれば、現状はあまりにも意味不明だった。

 

 無理難題な壁の攻略作戦を強制され、決死行に出向いたら当然のように跳ね除けられ、死を悟り。

 かと思いきや不明なACによって救出され、なんとかコックピットから這い出て相手のACの手の中に収まり。

 どうやら救援らしい、なんとか命を繋いだかと思っていたら、そのACは持っていたパルスブレードで綺麗に乗機「キャノンヘッド」を綺麗に真っ二つにし出した。

 

 愛機の無惨な始末にACの手の平の上で絶句していると、その手がきゅっと握られ……握り潰されるかと思ったら拘束されるように固定されるだけに終わり。

 そのまま、ヴォルタの命を救ったACは、急速にその場を離脱し始めた。

 

 そこからは、そこそこの距離を時速何百キロという速度で移動する地獄。

 部位を固定されていたから振り落とされたり振り回されたりして死にこそしなかったものの、危うく体液という体液を全て吐き出すところだった。

 ACの適性テストの百倍は酷かったと、ヴォルタはつい先程のことを思い出して苦い顔をする。

 

 

 

 ……とはいえ。

 なんとか、ヴォルタは命を繋いだ形になる。

 

 あの状況からすれば大戦果、戦略的には勝利と言っていいだろう。

 そもそも到底不可能な作戦を押し付けられ、真っ当に考えれば死ぬ他になかったのだ。

 乗機「キャノンヘッド」が喪われたことは心苦しく思うが、それでも命が続いたことは僥倖だ。

 上層部のカス共のせいで陥った死地から救われたのだから、救出に来てくれたACには感謝する他ない。

 

 が。

 

 まさか、自らを救った相手が、ここまでの変わり種だとは思っていなかった。

 

「ガキで、女で、二重人格だぁ? なんなんだテメェは!?」

『なんなんだ、と言われてもね。……パッチも似たような反応だったなぁ。こっちの世界でもやっぱり珍しいのかね、この属性は』

 

 そう言い、ヴォルタの対面に座る赤い瞳の少女は、やれやれと肩をすくめた。

 

 

 

 ある意味では当然の話ではあるが、AC乗りの性別は、男性の側に重く傾くことが多い。

 これは差別的な意味合いがあるわけではなく、単に性差による平均的な身体能力の差によるところが大きい。

 勿論、ACという義体を用いる現代機動戦において、その比率の隔絶は数世紀前よりも小さくなり、女性のAC乗りも増えてはいるのだが……。

 それでもやはり、戦場は男の場所というイメージが、そして比率に偏りが残っているのは事実だった。

 

 だからこそヴォルタは、あのシャルトルーズを除いて、レッドガンを撃破するような手練れの女性傭兵がいるとは思ってはいなかったのだ。

 それがまさか……ハークラーを撃破するような傭兵が、自分を救い出した傭兵が、このような年若すぎる少女だとは。

 

 素質や適性も関わる以上、ACに乗った際の戦闘力は年齢や年季に比例しない。

 だが、慣れや習熟がある以上確かに相関関係は存在するはずで……。

 けれど、ヴォルタから見て目の前の少女は、おおよそ10代前半といった様子。

 病弱そうな見た目も相まって、とてもではないが現実感がない。

 

 

 

 ヴォルタは改めて、ちょこんと座っている、あの時戦場に介入してきた傭兵を観察する。

 

 美しい銀の髪に、右に青、左に赤の髪飾りを付けた、恐らくは10代前半と思われる幼い少女。

 アリーナランク26/E、独立傭兵リンクス・ウィズカラー。

 旧世代の強化手術のせいで喉と下半身を焼かれたという彼女は、しかしそんな重荷を感じさせることもなく、テーブルに肘を突いてニヤニヤとヴォルタを笑っている。

 

 その様は、可愛らしい外見に反して、男性らしい人格を感じさせる。

 強いミスマッチの感覚に、ヴォルタの脳は混乱しながらも、推論を叩き出した。

 

「……持ってかれたモンの割に、見た目が悪かねぇな。内面だけ削られて……いや、変なモンを付けられたタイプの、旧型のコーラル強化人間か?」

『お? なんだヴォルタ、そっちに詳しいのか?』

「詳しいわけじゃねぇ。ただレッドガンにもなりゃあ、周りは強化人間しかいねぇからな。自然と情報が入って来るっつうだけだ」

 

 強化人間は、いくつかの世代と種類に分けられる。

 まず大きく分けて、第一から第六世代のコーラル技術によるもの、第七から第十世代のコーラル代替技術によるもの。

 ヴォルタや目の前のリンクスは、旧世代型強化人間……つまりはコーラル技術による強化人間にあたる。

 

 強化手術は、世代は進めば進むほどに安全性を確保され、その強化の程も大きくなっていったが……。

 未だ安定感のなかった旧世代、つまりは六世代以前の世代では、人間の「何か」を犠牲としてその効果を高めるという趣旨の手術も行われていた。

 リンクスはそれによって人格を付け加えられたのではないか、と推理しているわけだ。

 

 そして実際、ヴォルタのその想像は半分程当たっていた。

 617は特徴的な手術を受けた。そこに関しては間違いはなく……。

 けれど実際には、彼女が受けたのはその知性や記憶等を犠牲とするものであり、彼女の場合には追加して発声能力の大半と下半身の知覚能力を失ったというだけ。

 

 その人格の真実については……とても彼の想定の届かないところにあるのだが。

 

 

 

 ヴォルタは話が逸れてしまっていることを自覚し、一度ぶんと首を振る。

 

 今最優先で尋ねるべきは、そこではなかった。

 目の前の傭兵が何者かより、まずは状況の整理だ。

 

「つうか、まぁ、てめぇのことはいい。

 ……どこから俺たちの作戦を知った? なんで俺を助けた?

 てめぇはハークラーを殺った。解放戦線か、そうでなきゃアーキバスに寄ってると思ってたんだがな」

 

 ヴォルタからすれば、独立傭兵リンクスは少々怪しいところはあれど、所詮はこのルビコンで活動する独立傭兵たちの一人に過ぎなかった。

 高い実力を持っているらしいからこそ受ける依頼の傾向も頭に入っていたが、そのスタンスはどちらかと言えば解放戦線寄りであったはずだ。

 

「誰から依頼を受けた? 俺を助けろって……ミシガンの野郎から仕事でももらったか?」

 

 あくまで知識としてではあるが、独立傭兵の中には節操のない蝙蝠がいることを、ヴォルタは知っている。

 だからこそ、ここで「ヴォルタを救助する依頼を受けたから」と答えられれば、苦い顔こそしても納得はしただろう。

 

 

 

 ……が、しかし。

 

『いや、むしろお前を殺せという依頼を受けた、ってことになってる』

 

 その返答は、ヴォルタにとって、あまりにも予想外のものだった。

 

 

 

「……は?」

 

 ヴォルタの認識の上では、独立傭兵は、依頼と報酬を受けて動くものだ。

 金が動かなければ、傭兵も動かない。逆に金さえ積めば、何でもする。

 その辺りは彼の後輩であり、レッドガンの傭兵との窓口を担当しているG6レッドも苦慮しており、傭兵に対する報酬がどの程度が適切か頭を悩ませていた。

 

 だからこそ、独立傭兵リンクスもまた、何かしらの依頼を受けてヴォルタを助けたものだと思ったのだ。

 そしてその依頼を出した者は、レッドガンが進めていた仕事について先んじて情報を掴んでおり、けれどヴォルタを救出するということは、敵対するアーキバスでも解放戦線でもないはず。

 それがどの陣営でどのような意図を持っているのか、ヴォルタはそれを考えて混乱しており……。

 

 今、更なる混乱の中に突き落とされた。

 

『俺としては、お前を殺したいと思う程憎んでいるわけでもないし、というかむしろこのまま生きててくれた方が色々と都合が良いんだよね。だから生かした』

 

 鼻歌でも歌い出しそうな程楽しげなリンクスの言葉に、ヴォルタは眉をひそめる。

 依頼に反する行動、利益に繋がらない救助。

 リンクスの言葉と併せて考えれば、その目的は……。

 

「……何かしら、てめぇも絵図を描いてるってわけか」

『ま、そういうことだ。

 俺にはこのルビコンで求める答えがある。G4ヴォルタの死は、その阻害要因になる……いや、お前の生存がその道の助けになる可能性がある、と言うべきかね』

 

 薄っすらと笑みを浮かべ、その血のように赤い瞳を輝かせて、独立傭兵リンクスはそう語った。

 

 

 

 とても好感を覚える質の男でなかったとはいえ、レッドガンの正規隊員であったハークラーを撃破した相手。

 そのランクには似つかわしくない実力と、何かしら含むところのある言葉。

 

 それらに、ヴォルタの戦士としての勘が囁く。

 

 これはマズいかもしれねぇ、と。

 

「……危ねぇところを、依頼に反してまで救ってくれたことには、感謝する。謝礼が必要ってんなら俺からも払ってもいい。

 だが、てめぇの都合にまでは付き合ってられねぇ。わりぃが俺はここらで帰らせてもらうぞ」

 

 そう言い、立ち上がる。

 

 元よりヴォルタは、レッドガンに入隊するまでは路地裏の住人だった。

 イグアスと共に博徒として活動していた彼は、自分たちのいる薄暗闇の向こう側に、本当の暗黒が広がっていることを知っている。

 腕っぷしにも威圧感にも自信のあるヴォルタではあったが、本当の闇を前にすれば、それだけではどうしようもない。ただ吞まれ、骨までしゃぶられて捨てられるだけだ。

 

 その恐ろしさと深さを知っている彼だからこそ、リンクスから背を向けて逃げ出そうとし……。

 

 

 

 

 

 

『帰る? どこに帰るっていうんだ、お前に帰る場所なんてないぞ』

 

 ……全てが、手遅れであることを、直感的に理解した。

 

 

 

 

 

 

『お前は誤解しているようだが、俺たちは依頼に失敗などしていない。きちんと成功したさ、成功したということにした。

 G4ヴォルタは「壁」の攻略に失敗、数多の軍勢に取り囲まれた後、独立傭兵リンクスによって撃破された。乗機キャノンヘッドは両断され、中からはヴォルタのもの()()()黒焦げの肉塊が発見されている。

 そして……お前の生体反応はロストしている。それを観測したベイラムは既に戦死の判定を下した。

 なんなら、ああ、あれを盗み見ていた者がいるのなら、G4ヴォルタが死ぬその瞬間が映像として残っているかもしれないな?』

 

 自然、ヴォルタの足は止まった。

 後ろから届く言葉に、けれど彼は振り返ることができない。

 

 リンクス・ウィズ・カラーの純白の外見の中、ただ一点禍々しく輝く、深紅の瞳。

 その視線が、彼の腕を、脚を、体を、絡め取っているようにすら思えた。

 

『レッドガンに、ベイラムに、もはやお前の居場所はない。

 生体反応のロストを確認された以上、お前がそこに行っても、「ヴォルタを騙るよく似た現地住民」扱いされるのが関の山だろう。

 なにせ、お前がお前自身を証明するものは何一つない。……強いて言えばそのパイロットスーツか? まぁそれも、簡単に「なくす」ことはできるんだが』

 

 

 

 くつくつと、まるで嘲るような笑い声が届く。

 

 ヴォルタは、内心から込み上がる恐れを懸命に噛み潰す。

 それは己の足を鈍らせると知っており、そして闇は何よりもそれを好むと知っていた。

 

 故に、これまでと同じように、低く呻るような声を上げる。

 

「てめぇ……俺を、どうするつもりだ」

 

 ここに来て、ヴォルタの中でようやく、リンクスの言葉の意味が繋がる。

 

 本来の依頼に反してヴォルタを生かし、その死亡を偽装する。

 それが「自身の目的に繋がる」ということは……。

 つまるところ、自身を手駒とし、良いように利用するつもりなのだろう、と。

 

 ここで無意味に死ぬよりは、不明な相手の手中に飛び込んだ方がマシ。

 壁で死にかけた時はそんなことを考えていたが……どうやら、飛び込んだ先は仄暗い闇の中だったらしい。

 

 

 

 殺すか、と考える。

 

 幸いと言うべきか、相手はガキだ。膂力でヴォルタに勝てるとは思い難い。

 振り返って殴り掛かれば、喧嘩慣れしているヴォルタが負ける道理はないだろう。

 

 だが、相手もそれは理解しているはずだ。

 それなのに何故、わざわざACから降りて、自分の前に姿を現した?

 それは弱点を露出する行為だ。自ら取るにはあまりに不自然な行動だった。

 

 罠? その可能性はある。

 思考停止して仕掛ければ、むしろ状況が悪くなるか?

 何か武器を持っている? あるいはどこかに援軍でもいるのか? それとも武術でもたしなんでいる?

 

 様々な考えが、ヴォルタの思考を駆け抜けていく、その時……。

 

 

 

 

 

 

『よく聞いてくれた! 今日はお前に特別なオファーがあるんだ!』

 

 急激にテンションの上がった独立傭兵リンクスは、告げた。

 

『ランカー独立傭兵リンクスも推薦、君も今日から独立傭兵ルート!!

 泥船ベイラムなんかとっとと辞めて今日から独立傭兵になろう! 今ならなんとACパーツ一式と独立傭兵のライセンスコード付き! 今日から君も自由気ままな渡り鳥だ!!』

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

 

 呆然と呟き、思わず後ろを振り向いたヴォルタに、リンクスはニコニコと微笑みかけてくる。

 

『お前は元より、イグアスやミシガンたちレッドガン隊員との繋がりを除けば、ベイラムには愛想を尽かしていただろう? そうでなければ五花海から商売など習うまい。

 であれば、せっかく死亡が確認されたんだ、戻る必要はないだろう。その腕で独立傭兵として金を稼ぎ、悠々セカンドライフという道が最適だ。

 ああ、イグアスやミシガンのことが気にかかるなら安心してくれ。彼らの生命は俺が保障する予定だ』

 

 あまりにも突飛で、理解しがたい言葉。

 再びヴォルタの脳を襲う混乱は、先程までとすら比べようがない程のものだった。

 

 

 

「……な、いや……ま、待て、いや、さっき何つった? パーツ一式と、ライセンスだと……!?」

 

 中でもヴォルタに強烈な違和感を残したのは、それだ。

 

『その通り! 乗機キャノンヘッドが破壊された今、お前が傭兵をしようとするなら新たなACが必要なはずだ。オールマインド公認のライセンスと共にこれをプレゼントしよう。

 俺としては、お前が独立傭兵として生計を立ててくれさえすればそれ以上は望まない。後はルビコン3で好きに生き、理不尽に死……いや死ななくていいけど、とにかく傭兵として生きていけばいいさ』

 

 ……それは。

 ハッキリ言えば、あまりにも破格な提案だった。

 

 ACは、一式揃えようとすれば、決して安くはない。

 四つの武装パーツ、四つの外装パーツ、三つの内装パーツ。

 その全てを揃えようとすれば、どれだけ安く見積もろうと1,000,000COAM近くなる。

 依頼に成功すれば報酬が丸々懐に入る独立傭兵であろうと、それは20回近く依頼をこなすか、余程困難な依頼を果たさなければ手に入らないだろう金額だ。

 

 それに対して、ヴォルタは商売道具である愛機を失い、なおかつ貯金に紐づけられている身元もどうやら喪ったらしい状態。

 これから先生きのこるための手段、その最初の資金すら持ち合わせず、裸一貫で投げ出されたに等しい。

 勿論、そんな人間が独立傭兵としての名義を取れるわけもない。信頼や偽装のためにも、結局は資金が必要だった。

 

 そんな彼にとって、独立傭兵としての名義と機体を与えられることは、ある意味で生きる糧と道を与えられるに等しい。

 それにかかる資金も労力も莫大で、ヴォルタにとっては喉から手が出る程に欲しいものだ。

 

 

 

 だが……だからこそ、恐ろしくもある。

 

 それをこんなにも気軽に渡せる、目の前の少女は、何者なのか。

 

「てめぇ……何もんだ。

 ただの低ランカーの独立傭兵が、ンな金額用意したりライセンスの偽造したりできるわけがねぇ」

 

 せめてもの、相手の機嫌を害することのない程度の誰何。

 それに対し、目の前の赤い目の少女は、どこか愉快そうな表情で答えた。

 

『なに、ただの独立傭兵だ。

 ……くくっ、精々恩に着てくれよ? こちらからも時々僚機の依頼を出したりするかもしれないからな』

 

 

 

 * * *

 

 

 

 結局、ヴォルタはその誘惑を拒み切れず、新たな名義を手に入れた。

 

 ランク圏外、新規新鋭の独立傭兵。

 その名は……。

 

『それじゃあこれからよろしくな、独立傭兵ヤクザ・オブ・ザ・ガチタンゴッド!』

「おいてめぇこの名前もっとどうにかなんねぇのか!?」

 

 

 







 本日の傭兵事情

・識別名
 Rb31 独立傭兵「リンクス・ウィズ・カラー」
 ランク26/E(1↑)



・アセン

 『フォーアンサー』

 右腕:MG-014 LUDLOW(実弾軽マシンガン)
 左腕:MG-014 LUDLOW(同上)
 右肩:Vvc-703PM(三連プラズマミサイル)
 左肩:HI-32:BU-TT/A(ウェポンハンガー、初期パルスブレード)

 ヘッド:HC-2000/SOS HOUND EYE(オリジナル)
 コア:VP-40S
 アーム:NACHTREIHER/46E
 レッグ:NACHTREIHER/42E

 ブースター:ALULA/21E(高性能高燃費)
 FSC:FC-006 ABBOT(近距離特化)
 ジェネレーター:DF-GN-06 MING-TANG(中容量高補充)
 コア拡張:パルスプロテクション(4回)
 リペアキット:使用可能(3回)



・収支
 +139,982c

[G4ヴォルタ殺害(救出)]
 +220,000c(基本報酬)

[経費]
 -482c(武装修理費)
 -1,066c(外装修理費)
 -902c(内装修理費)
 -0c(弾薬費)
 -202,000c(パーツ購入:Vvc-703PM)
 -0c(AMよりパーツ供与:ALULA/21E)
 -5c(必需品購入)
 -622,000c(レイヴンに借金、AC代折半)
 ──────────────────────
 -466,473c(606,455の赤字)



《ナイン追記》
 借 金 地 獄 再 び
 諸々考えたらヴォルタを生かすしかないし、生かす以上しばらくの責任は取らにゃならん。ただレッドガンに送り返してまた無理ゲー押し付けられて死なれると、流石に寝ざめが悪いしなぁ。
 なのでこれは必要経費……なんだけど、額がすごすぎるわ! こういう時は感情と表情が直結しない憑依転生系コーラル? で良かったーって思うね。
 621は「返さなくていい、ナインにあげる」と言ってくれはしたし、まぁ3周目が終わった傭兵にとって100万cは端金みたいなもんなんだろうけど、それでもやっぱり借りた物は返さねばなるまい。協力者にも礼儀アリだ。
 資産を一本化してる617には負担をかけてしまうが……ひとまず、アセンとしては最低限のものは揃えられたか。アルラは序盤のお供、今回も活躍してもらおう。
 最適化は全くできてないけど、最低限のアセンは揃った。戦い方次第では殆どのミッションはこなせるはずだ。武装採掘艦護衛だけはかなりハードだろうが。

《617追記》
 本当に撃ち合わない仕事だった。びっくり。
 あと、ヴォルタって人、ちょっとこわかった。
 でもおにいさま、全然驚いてなかった。すごい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。