そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 たかだか強制監査でLC5機以上、特務機体3機以上派遣するってマジ?
 システムちゃん何考えてんの???(なおレイヴンにボコられる模様)





クソが、特務機体だらけか、ここは!

 

 

 

【さて、本当はもう少し休もうと思っていたんだが……仕事の時間だ、617。

 ……先に言っておくが、今回の依頼、アーキバスからの仕事よりもずっと胡乱だ。注意を怠るなよ?

 それでは改めて、今回の依頼人からのメッセージを再生する】

 

 

 

『初めまして、独立傭兵リンクス。

 私の名は、ケイト・マークソン。貴女に折り入って頼みたいことがあります』

 

『今回の依頼の内容は、BAWS第二工廠に対する惑星封鎖機構の強制監査部隊排除』

 

『BAWSは、現在ルビコン3において投入されている汎用戦力の大半を生産する現地企業。ベイラムやアーキバス等の星外企業たちが使用するMTも、ほぼ全てがこの企業の製品です。

 そうして星外企業に戦力を売るBAWSは、捉え方によっては星外企業に与しているとも取れるのでしょう。封鎖機構はBAWSに対する圧力を強めているのが現状です』

 

『そして、今回の強制監査。

 封鎖機構はついにサブジェクトガードのみならずLC部隊も投入し、この工廠に対して強制的に捜査を入れることを決定しました。

 そして、対するBAWSはこれを、あくまで独立傭兵の突発的な襲撃として妨害したい考えです』

 

『相手はLC機体を含む封鎖機構の大戦力。これに抗するため、私は最強の独立傭兵に依頼を出しました。

 アリーナのランク1、レイヴン。彼女がこの作戦における本隊となります』

 

『レイヴンは工廠内部に潜み、突入する監査部隊に奇襲を仕掛け、これを撃破して進みます。

 あなたに依頼したいのは、その際の攪乱。私と共に外部の後方部隊を襲撃、これによって封鎖機構に混乱を与え、しかる後に彼女と合流して残敵を排除します』

 

『危険な任務です、報酬は全額前払いしましょう。武装の購入等に役立て、十全の準備を整えてください』

 

『依頼内容は以上です。よろしくお願いします』

 

 

 

【さて、どうだ、617】

『……独立傭兵レイヴンは、とても強い傭兵でした。共に戦えるのならば、学びになると思います』

【ああいやうん、そうじゃなくて。依頼についてね】

『久方ぶりの惑星封鎖機構との戦いなので、注意を払うべきであると考えます』

【そっちでもないが……まぁ、特にひっかかるところはなかった、ということか。

 実際、これまでより遥かに難易度の高い依頼ではあるが、ブリーフィング上はそこまで不審な点は読み取り辛い。……強いて言えば、BAWSは何故レイヴン本人ではなくケイトを通して依頼したか、という程度か】

 

【……だが、この情報があればどうだ?

 独立傭兵、ケイト・マークソン。彼女はアリーナに登録されていない。オールマインドのデータサーバー上は「いないはずの」傭兵だ】

『いないはずの傭兵? しかし、先程のメッセージは……』

【つまりは、誰かが仮名を使っているか、身分を偽装した誰かからの依頼となるわけだ。

 もはやその時点でお察しだが、後ろ暗い仕事だな。間違いなく裏があると思っていい】

『……いつも通りでは?』

【…………言われてみると、君ってばいつも裏のある仕事ばっかり受けてんな。傭兵の常とはいえ……今回も報酬全額前払いだし】

 

【ともあれ、だ。

 今回の依頼は惑星封鎖機構のLC部隊……いや、先に言っておこうか。特務機体も複数編入された少数精鋭の部隊との戦いになる。

 勿論、君は僚機としての出撃だ。全てを平らげる必要はないが……最悪それら、あるいはそれを超える戦力との戦いになる可能性もないわけではない。

 不測の事態を予測し、何が起きても問題のないように備えていきなさい】

『了解しました』

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ルビコン3の土着企業、「BELIUS APPLIED WEAPON SYSTEMS」……略して、BAWS。

 これは主に汎用兵器やMT、ACの各種武装を生産、販売している死の商人である。

 

 企業たちは封鎖機構による惑星封鎖によって、ルビコン3に大きな、あるいは大量の兵器を持ち込むことができない。

 精々、専属AC部隊のACを密航させるのが限界であり、それだって封鎖機構の衛星砲による狙撃を掻い潜らなければならない。

 

 故に、ルビコン3において、汎用兵器やMTの需要は常に高く……。

 BAWSが目を付けたのはこの需要。彼らは企業に対して、自社のMTや汎用兵器を片端から売りつけた。

 

 土着企業でありながら商売相手を選ばず、星外企業たちにも兵器を渡すその姿勢は、あるいは企業によるルビコン進駐を支援していると思われても仕方がないだろう。

 ……しかし、彼らとてルビコニアンの一員であることは間違いなく。企業にすり寄ることで稼いだ資金を使って様々な方法で解放戦線含むルビコニアンたちを支援している。

 強者に阿りながらもその力を使い、さかしまに強者を打倒すための周到な戦略を立てているわけだ。

 

 そのため、強く星外企業を憎むルビコニアンたちも、BAWSに対しては協調路線を取っている。

 むしろとある都合から、陰ながらBAWSを守るように動いているのだが……それはともかく。

 

 

 

 そんなBAWSの第二工廠に降り立ちながら、「フォーアンサー」のコックピット内、617はナインの声を聞いた。

 

【さて……ケイト・マークソンは封鎖機構の強制監査を「星外企業に与するBAWSへの圧力」と語っていたが、ぶっちゃけこれは間違いだ。いや、あっちは情報を掴んでいるんだから、情報の隠蔽と言うべきか。

 実のところBAWSは、枯れかけだがコーラルの井戸を隠している。封鎖機構の狙いはこちらだ。

 封鎖機構の本来の目的は企業たちの弾圧ではなく、コーラルという危険物質を徹底して管理し、星外に持ち出させないこと。それを乱し得るBAWSの井戸を調べに来た、というわけだ】

『なるほど』

 

 よくわからないけれどひとまず頷く617。

 彼女が理解したのは、ひとまずBAWSにも封鎖機構にも意図があり、なおかつケイトが言うべき情報を言わなかったということだった。

 

『……ケイト・マークソンは、何を考えているのでしょうか?』

【さて、そこに関しては俺もイマイチ掴めてない。……が、しかし、何かしら不穏なところを含んでいるのは間違いないだろう。注意が必要だな。

 ……っと、そんなことを言っている間に合流か】

 

 617が脳内のナインと話していると、遠方からACの熱源が接近する反応があった。

 

 「一度敵対したとしても、次も敵とは限らないから」と前回の戦いの遺恨をさらりと流した──それにしては、言葉の端にはどことなく棘があったが──独立傭兵レイヴンは、既に第二工廠の内部に潜伏している。

 このタイミングで近づいてくるとすれば、ケイト・マークソン以外にあり得なかった。

 

 ナインの予測は的中し、近づいてくるのは友軍識別タグの付けられた一機のAC、「TRANSCRIBER」。

 事前に伝えられた通りの、今回の依頼の主の乗機であった。

 

 

 

『こんにちは、独立傭兵リンクス。改めて、今回依頼を受けていただけたことに感謝します。

 実力派レッドガンを2人連続して撃破した傭兵と親睦を深めたいところですが……残念ながら、その余裕はなさそうです』

 

 「TRANSCRIBER」は「フォーアンサー」の横に並び立つや否や、通信を通して淡々と事実を告げた。

 

『今回の強制監査、封鎖機構の動きが明らかに過剰です。

 私が探った限り、SGの他にLC機体が9機、そして特務機体が4機投入されている。

 数こそ少数ではありますが、たかが一企業、それも現地企業の工廠の監査にしては明らかな過剰戦力。

 かの機構はAIによって完全制御される組織、無駄にリソースが振られるということは考えにくい』

『つまり?』

『私たちが……より正確に言えば、ランク1、レイヴンが監査妨害を行うという情報が漏れている可能性がある。

 独立傭兵レイヴンは、LOCステーション31を襲撃し、星外企業にコーラルの情報をリークした張本人。システムが警戒するのも妥当な判断であると言えるでしょう』

 

 617はこくりと首を傾げる。

 LOCステーション31。コーラルの情報リーク。彼女からすると、全くと言っていいほど意味がわからなかった。

 

 ただ一つ、理解できたことは……。

 617、619、620。三人のハウンズが束になってなお、甚大な被害を出してようやく一機落とした、特務機体。

 それが4機当てられるほどに……独立傭兵レイヴンは強いのだ、ということ。

 

 ナインはかつて、レイヴンを「本気の俺」と称した。

 勿論617のおにいさまたるナインが負けるわけがないので、ある程度は過剰に言っていると思われるが……。

 それでもやはり、レイヴンは遥か高みにいるのだ。

 

 

 

『幸い、3機の特務機体は急なアサインによって到着が遅れているようですが……さしものトップランカーといえど、これらを同時に相手することは出来ないでしょう。

 予定通り、私たちはこれから後方の後詰、補給部隊に奇襲をかけ、可能な限り敵を削りながら敵を混乱させます。

 独立傭兵リンクス、あなたは工廠東方から攻撃を。西方は私が担当します。

 内部を突破してきたレイヴンと正面で合流し、最後に特務機体3機を迎え撃つ流れになります』

 

 ケイトの言葉と共に、「フォーアンサー」内部に簡易的なマップデータと作戦プランが送られてくる。

 617はチラリとそれを確認し、特に違和感を覚えないことを確認した後、『了解』と短く言葉を返した。

 

『それでは、また後ほど。ご武運を』

 

 言い、「TRANSCRIBER」はブースターを噴かして、自らの担当箇所へと向かった。

 

 

 

【…………617、改めて、ケイト・マークソンと話して何か気づくことはなかったか? 例えばどこかで聞いた声だなー、とかさ】

『……?』

 

 ナインに言われ、考えるが……617は、特に思い出せなかった。

 

【マジ? えぇ……いや、ウォルターも気付いてなかったし、これってそういうヤツなのか? 気付けるこっちがおかしいのか……?】

『オペレーター?』

【ああ、うん、そうだな。これは後にしよう。

 さて、俺たちは左方からの敵部隊襲撃を請け負ったわけだが……まぁ、仕事を受けた以上、実直にこなす他あるまい。

 一応こちらで熱源と接触のセンサーを立てておくから、君も光学スキャンをしっかり……】

 

 ナインはそこで一度言葉を止めて……深いため息と共に、言った。

 

【めちゃくちゃ伏兵いるじゃねえか……】

 

 

 

 * * *

 

 

 

 BAWS第二工廠内部、コーラルプール前。

 今回の作戦において本隊となる独立傭兵レイヴンこと621は、先んじてこの工廠内部に潜入し、作戦開始を待っていた。

 

 BAWS第二工廠における、強制監査妨害。

 前回となる三周目においても請け負ったミッションだったが、今回は少しばかり事情が違う。

 何しろ、ケイト・マークソンとかいうよくわからない依頼人は、「自分と独立傭兵リンクスを僚機として付ける」と言い出したのである。

 

 現状621は、独立傭兵リンクス自体には強い興味を抱いていない。

 ナインがサポートする相手であり、恐らくはだからこそ不可思議な強さを持つ女性傭兵。

 しかしその強さは、まだイレギュラーと呼べるものではない。

 621が戦えば……どのような場所であれ、どのような状況であれ、必ず621が勝つ。

 ……そんな相手を優先するナインにややもやもやした思いを抱えてはいるものの、それはリンクスへの興味とは言い辛いだろう。

 

 彼女にとって大事なのは、やはりそのオペレーター、ナインだ。

 共に戦える相手であり、自分のことを知っている相手であり、共に新たな答えを探す同志……いいや、ウォルターの言葉を使えば「友人」であり、そしてとても頭の良い「せんせい」。

 彼と取る定期的な連絡とやり取りは、周回を経て荒み切った621の心に、一時の安らぎをくれていた。

 

 勿論、今回の依頼についても、621は事前にナインと相談していた。

 彼がこれについてどう思うか、受けるべきか否かを尋ねたが……。

 

【……少し悩むが、受けよう。

 オールマインドが何を考えているかを計りたいというのと……そろそろ俺たちも君とウォルターに姿を明かすべきだろうからな】

 

 結果として、両陣営はこのミッションを受けることを決めた。

 

 

 

「♪」

 

 緊張もなく、けれど弛緩もなく、621は楽し気に鼻歌を漏らす。

 ミッションに向けた精神的な高揚と、ナインと一緒に戦えることへの期待が、彼女の心を躍らせる。

 

 その全てを、今から封鎖機構にぶつけようと思っていたのだが……。

 

 ……ウォルターから作戦開始の合図が来るよりも早く、想定になかった通信が届いた。

 

 いいや、それは通信ではない。

 視界に赤いノイズのような線が走り、声が見えるかのような錯覚を覚える、それは……。

 

「交信?」

『どうした、62……』

 

 ウォルターの言葉に対して食い気味に、621の脳内に声が響いた。

 

【すまん、レイヴン、緊急だ。

 君はそのまま作戦を進めて構わないが、情報を共有しておく。

 

 ケイト・マークソンは、いいや、オールマインドは裏切った。現在リンクスは例のステルス機、ゴーストによる狙撃を受けている。

 君の方にもゴーストが……あるいはそれ以上の手勢が向かう可能性もある。君ならば容易く蹴散らせるとは思うが、注意してくれ】

「ナイン……私、そっちに」

【いや、問題ない。そちらはそちらで作戦を進めてくれ】

 

 そう言い、脳内の赤い声は……視界の中で凝固したソレは、微笑むように輝いた。

 

【君の同盟相手を信じてくれ。俺とリンクスなら、この程度超えられる】

 

 

 







 オマちゃんさぁ……。
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