そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 本来強制監査妨害(僚機)は、第二工廠外縁のLCをいくつか片付けてカタフラクト&エクドロモイをレイヴン、ケイトと一緒に倒せば終わり。なんならレイヴンたちが強すぎてその辺歩いてるだけで勝手に終わってる。
 ……がしかし、4周目のALTミッションではゴーストが出張って来るからちゃんと働く必要があるぜ! というイメージ。

 隙あらば殴って来るゴースト君、ついに強制監査妨害にも出動。
 まぁ即帰宅しちゃったけど。





認めよう、君の力を。今この瞬間から、君はリンクスだ。

 

 

 

 BAWS第二工廠における、強制監査妨害。

 惑星封鎖機構はこの強制監査に、LC機体を主力とした部隊を派遣するはずだったが……。

 匿名の情報源から、これを独立傭兵レイヴンが妨害しようとしている、というリークがあった。

 そのため、システムはレイヴンという脅威に対し、更に特務機体4機を派遣することを決定。過剰とも思えるような戦力を投入することとなった。

 

 しかし、内3機は急なアサインということあり、到着が遅れ……。

 4機の内1機、そのカタフラクトだけが、先んじてBAWS第二工廠に到着。

 

 そこで見たのは、破壊された見覚えのない機体残骸と、それを為したと思しき独立傭兵のAC。

 そのACはレイヴンの使っていた「ナイトフォール」ではなく、また今使っているらしい「Loader 4」でもない。

 そして勿論、ACに友軍識別タグなど付けられてはいなかった。

 

 カタフラクトに搭乗した特務少尉は、この状況に僅かに疑問を覚えはしたが……すぐに気を取り直す。

 何がどうなっていようが、彼のすべきことは変わらない。

 

「……強制監査における障害を排除する」

 

 惑星封鎖機構の最大の特徴は、その判断の殆どをシステムに委託、あるいは依存していることだ。

 故にこの組織における役職や階級は、一般的なそれとは意味合いが異なる。

 

 彼は特務少尉──特務員は実質的には二階級上位の階級と同等に扱われるので、一般的な大尉に相当する立場──ではあるが、だからといって特別な権威や権利を有しているわけではない。

 彼ら封鎖機構の人員は、人である前に、この機構のパーツの一つだ。

 その性能が比較的高いが故に上位の役職に割り振られてこそいるが、決定的な程の命令権を有しているわけではない。

 

 封鎖機構の組織構成員は、例外なく全てが、ただシステムに従う。

 その判断伝達を上位の立場の人間が仲介したり、現場での詳細な規定をすることはあれど、本質的に彼らは同じ歯車であり、上下関係と言うより同志に近い関係性だ。

 そしてそれが、封鎖機構の特例的と言って過言ではない程に強い結束を生んでいる。

 

 カタフラクトを駆る特務少尉もまた、そんな封鎖機構の構成員の一人。

 預けられた機体を用い、与えられた任務を執行しようと……本来ここにいてはいけない独立傭兵の機体を撃破しようと、その武装を起動させた。

 

 こうして、独立傭兵リンクスの「フォーアンサー」と、封鎖機構特務少尉のカタフラクトの戦いが始まったのだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 カタフラクト。

 この機体の最大の特徴はやはり、巨大なキャタピラに挟まれている脆いMT……ではなく、機体左側に装備している得物、可変式の9連レーザーキャノンだろう。

 

 AC規格の機体にはとても取り付けられない、それ単体でACに比肩する程の大きさを誇るこの武装は、当然ながら凄まじい重量を持ち、ジェネレーターにも並々ならぬEN負荷をかける。

 カタフラクトは極めて大きなキャタピラとジェネレーターを備え、なおかつ他に一切のEN系武装を装備しないことによってこれを解決している。

 

 しかし、それだけのコストを支払うだけあって、このレーザーキャノンは非常に強力な武装だ。

 遠距離にいる相手に対して行う、充填したエネルギーを収束して撃ち出す狙撃。

 近距離にいる相手に対して行う、横に広く拡散して放つ制圧射撃。

 どの距離帯にいる相手に対しても有効打を持ち、なおかつ下手に直撃すればACのAPが半分以上飛びかねない、汎用性と火力を両立した恐るべきメインウェポン。

 

 かつてカタフラクトに挑んだハウンズの中で、620はこの攻撃を回避することができず、右腕を、左腕を、そして上半身を切り飛ばされた。

 その戦いでは、617自身がこの攻撃に晒されることはなかった。それよりも早く、ハウンズが繋いできたバトンを受け取り、機体を破壊したからだ。

 

 しかしその後、ナインブレイカーにてナインが再現したこれと戦い、617は理解せざるを得なかった。

 このレーザーを回避するのは確かに難しい、と。

 

 カタフラクトは、レーザーキャノンをメインウェポンとするコンセプトの機体。それを搭載するために莫大なコストまで支払っている。

 となれば当然、その命中精度に関わるFCSの性能を出し渋るわけもなく、この照準補正は既存のAC規格FCSよりも遥かに優秀なもの。

 617はシミュレーションの中で、幾度となくこのレーザーに機体を刺し貫かれ、死んだ。

 

 

 

 ……しかし。

 そうして幾度となく積んで来た経験が、それらから得られた知識が、彼女を生かす。

 

 

 

 走行するカタフラクトのレーザーキャノンにエネルギーが充填されていき……200メートル程の距離を空けて並走する「フォーアンサー」に向けて放たれる。

 9つのレーザーは横に広がり、10メートルはあろうかという線状の攻撃として「フォーアンサー」に襲い掛かるが……。

 

 直前、リンクスは一気にブースターの方向を変え、後方に向けてクイックブーストを噴かした。

 

「っ!」

 

 それまでかかっていた慣性が殺され、逆に急加速する。

 ACのコックピットは耐衝撃性が高いが、それでも全てを殺し切れるわけではなく、急激な加速による負荷がリンクスの脳を揺らした。

 

 けれど……その甲斐あって。

 

『っ! このAC、カタフラクトのレーザーキャノンを……!!』

 

 その射撃は、空を切り裂いてどこかへと消えた。

 

『躱せる……シミュレーションと同じ……!』

【いいぞ、リンクス。オーバーヒート中に叩き込んでいけ】

 

 呟いたリンクスは、オペレーターの声を聞きながらアサルトブーストを起動し、一気にカタフラクトの前へと回り込み、MT部分へとその両腕に持つマシンガンを叩き込んだ。

 

 

 

 カタフラクトのレーザーキャノンを支える、高性能FCS。

 これは確かにAC規格のソレとは次元の違うものだ。

 

 しかし、それでも、あくまでもFCSでしかない。

 「フォーアンサー」に積まれたそれと同じように……スペック的な限界はある。

 具体的に言えば、クイックブーストによる慣性を殺した急な方向転換を、完璧に追い切れるわけではない。

 

 例えば、ACが現在の進行方向にこれを噴かしたのであれば、優に捉えられるだろう。

 急な推進力がかかったとしても、方向が変わらなければ高性能FCSがその動きを捉え切れる。

 

 同じく、ACが停止している状態からクイックブーストを噴かしても、まず避けられはしないだろう。

 FCSが追い切れなかったとしても、横に広がる線状の攻撃は、多少のズレを許容する。

 

 しかし……ACが現在の進行方向の逆に、それもレーザーキャノンを発射する直前にこれを噴かしたなら?

 発射までの僅かな猶予の中で火器照準の補正は間に合わず、レーザーはACの進行方向と真逆に放たれる。

 線状攻撃とはいえ、所詮は10メートルという短さだ。とてもではないが、逆方向へと飛び出すACを補足することはできない。

 

 勿論、言葉で言う程簡単なことではない。

 カタフラクトがいつ、どのタイミングでレーザーキャノンを放つかを完璧に意識・把握し、それに対して最適の動きを入力しなくてはならない。

 実際に許される入力の猶予は、恐らく1/10秒程度。

 常に思考と判断に追われる戦士として、これを十全に為し得るのは熟練の手並みと言う他ないだろう。

 

 だが、リンクスは既に、そこに足を踏み入れている。

 

 

 

『意識的に……常に、考えて……』

 

 戦場に対し過集中状態にあるリンクスの思考を拾い、首輪状のデバイスからポツリと漏れた言葉。

 それはいつか、彼女の「おにいさま」から指示されたことだった。

 

 意識しろ。

 無意識に、悪癖となった動きをするのではなく……。

 一挙手一投足の全てを、自らの意識で行え、と。

 

 敵から危険な攻撃が飛んで来た時に、ブースターの向きをそのまま、反射的にクイックブーストを噴かすのではなく。

 それが来る可能性を常に予測し、その時に備え、即座に無作為な方向へ切り返せるよう意識する。

 

 その人間の意志は、あらゆる機械の予測限界を超える。

 

 二次ロックのかかっていた垂直ミサイルを、滑らかな蛇行移動で躱し切り。

 飛ばされたバズーカの爆発範囲から、ただ一度地を蹴ることによって逃げ去り。

 高精度かつ高密度なレーザーキャノンの射撃さえも、自由自在な機動を捉えることはできない。

 

『馬鹿な……システムは、ここまでの脅威など……っ!?』

 

 今、独立傭兵リンクスは確かに、惑星封鎖機構の計算を超えるイレギュラー足り得ていた。

 

 

 

【…………美しい】

 

 彼女の動きは、完成まではまだ遠く。

 けれどナインはそこに、一種の美を見出した。

 

 時に空をひらひらと舞う蝶のように。

 時に獲物を狙って鋭く落下する鳥のように。

 

 「フォーアンサー」の動きは……特に敵の攻撃へ対応し躱そうとする動きは、緩急が付けられ、鈍いようでしかし鋭く、読み辛いものになってきている。

 

 粗はある。慣れていない。ミスだって多く、焦燥もないわけじゃない。

 それでも……。

 

 ……どんどん、厄介になってきている。

 

 リンクス。その名を背負う意味は、重い。

 本来であれば、それこそ戦略級の働きができる者のみが名乗るべきものであり……。

 彼女の強さは今、着々と、そこへと近付いている。

 

 その事実に、ナインは、内心で笑みを浮かべていた。

 

 

 

『馬鹿な……細部まで調整された特務機体が、こんな寄せ集めに……!!』

 

 スタッガーした機体にパルスブレードを叩き込まれ、着々とAPを削られつつある特務少尉の叫びに、ナインは一転、くくっという苦笑を漏らした。

 それはどうしようもない、一面の真実だったからだ。

 

「フォーアンサー」の各種パーツは、決して優れたものというわけではない。

 そこまで信頼のない傭兵にでも売り出される、あるいは無料で頒布されるようなパーツばかりだ。

 販売する企業もバラバラで、勿論最適化など程遠い。

 

 ……しかし。

 結局のところ、ACの戦闘力というものは、機体以上に本人の腕に左右されるのだ。

 

 ナインが本気を出せば、どんな機体データを使おうと、今のリンクスを圧倒できるように……。

 強力無比なレーザーキャノンや高性能なFCSなどなくとも、自らの機体を手足の延長として使いこなすようになりつつあるリンクスは……彼よりも、強い。

 

 無論、無傷とはいかない。ガトリングによる小さな負傷の連続や、幾度か当たったミサイル、一度だけ掠めてしまったレーザーにより、リペアキットは2つ消耗してしまったが……。

 それでも……彼女はもう。

 

【行け、リンクス!】

『……はい!』

 

 もう、圧倒的な力に蹂躙される、か弱い命ではない。

 

 

 

 そうして、おおよそ3分の戦闘の後。

 パルスの奔流、青白い光が、カタフラクトのMT部分を引き裂く。

 

 特務機体カタフラクトはその場に崩れ落ち……数秒後に内部から発火、爆炎を立てて破壊された。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 「フォーアンサー」は敵の爆散から逃れるために使ったクイックブーストの勢いを殺し、通常のブースト移動へと移行して……少しして、その動きを止めた。

 

【敵性機体、撃破確認。お疲れ様、617】

 

 617の脳内に響く、赤い声。

 しかし、ドクドクと鼓動が鳴り響く中にあっては、それも聞き取り辛かった。

 

『……勝ち、ました』

 

 呟く彼女に、どこか満足げな声でナインが応える。

 

【君単体にとっては初めての特務機体との決戦、それに自らの精神との戦いでもあっただろう。

 よく冷静に戦い抜いた。そしてよく生き残った。……また一歩、強くなったな】

『っ、はい……!』

 

 コックピット内の617は、その表情に、これまでにない程の喜びを乗せた。

 

 強くなった。

 それをナインに、おにいさまに認めてもらうことは、今の彼女の目標の一つ。

 

 カタフラクトという、仲間たちの仇を、自分の手で討ち取ったこと。

 それと並ぶくらいに……彼女は、自らが前進しているということが、嬉しかった。

 

 

 

 そんな617を微笑ましく思いながらも、ナインは少し待った後、気を引き締めさせようと厳しめの声を出す。

 

【……さて。大物は潰して十分な仕事はしたが、まだミッションは終わっていないぞ、リンクス。いつか君の言っていた通り、帰るまでが戦場だ、気を抜くなよ。

 ここからは基地正面方向に向かいながら、もしもLC機体がいれば撃破。正面を突破するレイヴンに合流し、彼女の戦いをサポート…………。

 

 ……ッ、ああ!?】

 

 脳内に響くナインの声が、荒ぶる。

 今までに聞いたことのない怒気を含んだそれに、ピクリと、617の体が震えた。

 

 しかしそれも気にしていられないのか、617の視界の端でチクチクと尖る赤い光が声を出す。

 

【クソ、輸送ヘリに偽装していやがった! 俺の探知の弱みを知ってんのか……!?

 リンクス、基地正面に急げ! 敵性ACが三機現れた、それもトップランカーだ! 今挟み打ちにされるのは良くない、今すぐにでもレイヴンと合流を……!!】

 

 しかしそこで、ナインが言いかけた言葉を遮るように、「フォーアンサー」に通信が入る。

 

『ナイン!!』

【っ、レイヴン!?】

 

 相手は友軍、今回の作戦の要であるレイヴンの「Loader 4」。

 ナインと617、どちらにとっても因縁浅からぬ独立傭兵は、焦燥に満ちた声で叫んだ。

 

『本当だった! 今、エクドロモイとカタフラクトを倒したら、ケイトに「だまして申し訳ありませんが」っておそわれて……!

 その上、もう一機来た! ごめん、そっちにまで回れない!!』

 

 

 

『……一体、何が……?』

 

 混乱の余り疑問を漏らす617。

 そんな彼女の前に……2機のACが降り立った。

 

『お前がリンクスか。さて、アイツが注目する傭兵の手並み、どれ程のものか見せてもらおう』

 

 一機は、パルススクトゥムを備えた撃ち合いに強い四脚AC。

 

『キング、大口を叩かない。任務、わかってるでしょ?』

 

 一機は、中距離向けの高火力武装を多数搭載するタンクAC。

 

 

 

 その2機のACを前にして、ナインは声を響かせる。

 

【……可能性は考えていないでもなかったが、現実になるか。

 識別名キング、AC「アスタークラウン」。及び識別名シャルトルーズ、AC「アンバーオックス」。

 どちらもアリーナのトップランカーであり……傭兵集団「ブランチ」の一員だ】

 

 それは、今までに617が聞いたことがない程、苦いものだった。

 

 

 







 この2人、まーた騙して悪いがされてるよ……
 ゴースト多数→カタフラクト→完全連携のキングシャルトルーズという鬼畜コンボ、多分歴戦のレイヴンでも撃退し得るヤツ。
 現在の状況は、AP5,000くらい、リペアキット0、残弾30%以下、アサルトアーマー残り1回。果たしてどうするか。

 なお621の方はケイトと真レイヴンに絡まれているので応援は望めません。
 C4-621は、私が対処します(迫真)
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