そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 やぁレイヴン、久しぶりだな。合流以来か。
 積もる話もあるが、おさらいに入ろう。

 617:強化人間C4-617。イレギュラーの素質を持った銀髪薄幸美少女傭兵。ついにウォルターとの再会を果たしハウンズに帰還。最近の悩みは、ナインと621が話していると何故かもやもやしてしまうこと。

 621:強化人間C4-621。原作主人公でイレギュラーな銀髪薄幸美少女傭兵。突然生えて来た理解者と先輩に困惑しながらも、嬉しく思っている。最近の悩みは、617とナインが思ったよりも親しいっぽいこと。

 ナイン:転生したらコーラルだった件。ひとまずは思った通りに事態が動いているので安堵している。最近の悩みは自分の話になると和やかだった617と621の空気感が微妙な感じになること。なんで?

 エア:意思を持つコーラルの変異波形。ようやく交信可能な人間が現れたと思ったら、会話を交わせて接触もできる同種までポップした。僥倖とかいう次元ではない。

 ウォルター:ハウンズの飼い主。自分が死なせたと思ってた娘が生還した。僥倖とかいう次元ではない。多分カーラとの通信で男泣きしてる。ナインのことは感情面では認めつつも理性面で疑っている。
 




Chapter2
617はついにハウンズと一体になった


 

 

 

 ベリウス西部、オールマインドが提供する傭兵たちのセーフルームにて。

 一人の初老の男性が、椅子に座った二人の銀髪薄幸美少女傭兵に対して、口を開く。

 

「これは、ある友人からもたらされた観測情報だ。見ろ、617、621。

 先日の、ウォッチポイントでの逆流によって引き起こされた、コーラルの局所爆発。それによって散ったコーラルの拡散には、一定の指向性が見られた。

 コーラルの群知能による集合……それが向かう先は、広大なアーレア海を越え対岸に位置する、中央氷原。

 つまるところ、この広大な中央氷原のどこかに、大量のコーラルが眠っているということだ。

 お前たちの次の戦場は、そこになるだろう」

 

 初老の男性……ハンドラー・ウォルターはそこで、空中に投影したいくつかのデータを消し、言葉を止めて二人の少女を見る。

 じっと真面目にこちらを見るC4-617と、相変わらず何を考えているか読み辛いC4-621。

 自らの配下であり、本人たちには決して伝えることはないが、娘のように思っている傭兵たち。

 そして、ウォルターの判断ミスにより、それぞれ喪いかけた子供たちでもあった。

 

 ルビコン1での基地殲滅戦。

 無理なミッションを押し付け、617は死ぬところだった。

 

 つい先日のウォッチポイントでの戦い。

 逆流したコーラルに呑み込まれ、621は死にかけた。

 

 後者は、621単体でなんとか生還できたが……。

 前者は、「ナイン」を名乗る新たなハウンズオペレーターの干渉がなければ、どうしようもなかっただろう。

 

 もう二度とあのようなことがないように……などと、言っていられる余裕はない。

 ウォルターには、自らの存在を挙げて成し遂げなくてはならない、友人から託された使命がある。

 だからこそ彼女たちを買い、育て、そして使うのだ。手段と目的を逆転させるわけにはいかない。

 

 けれど……彼女たちを気遣う程度の余裕までもないかと言えば、それは否。

 集積コーラルへ至る手がかりこそ発見されたものの、それは決定的なものではない。

 状況は一つ先へと進みこそしたが、同時に未だ緩慢だった。

 

「俺はこれからしばらく野暮用で外す。

 中央氷原に向かう件については、企業に情報を売ってパトロンが付いてからになる。

 戻るまでの指示を出す。ハウンズ、617、621……お前たちは、しばらく休め。

 617は一人でルビコンでの戦いを生き抜いてそう間も無く。621はコーラル逆流をその身に受けた直後だ。体には相応以上の疲労が蓄積しているだろう。

 次のミッションを十全に熟すためにも、コンディションを整えろ。今はそれが、お前たちの仕事だ」

 

 そう言い残して、ハンドラー・ウォルターは立ち上がり、ハウンズたちの元を去った。

 

 独立傭兵リンクス、もとい強化人間C4-617。

 独立傭兵レイヴン、もとい強化人間C4-621。

 ハウンズに所属する2人の傭兵は、飼い主であり主人であるウォルターの言葉に、素直にコクリと頷き、主人へ忠誠を見せた。

 

 

 

 見せた……のだが。

 実のところ、彼女たちが完全にウォルターに胸襟を開いているかと言われると、難しいものがあった。

 

 617も621も、確かにウォルターを想っている。

 飼い主として、大切な人として、父のような存在として、強く信頼している。

 

 が、しかし。

 だからこそ、言えないこと、言わないこともあった。

 

『……本当に、ウォルターにこの「声」のことを話さなくても良いのでしょうか?』

 

 ウォルターがその場を去った後。

 銀の髪に赤と青の髪飾りを付けた少女、617が首を傾げ、その首輪状のデバイスから声を発する。

 

 それに対して答えたのは、横に座っている621ではなく……。

 彼女の視界の隅、左右にそれぞれ映る、2つの赤い光だった。

 

【仮に伝えても、幻聴が聞こえていると思われるのがオチだろう。変にウォルターの心労を増やすことはないさ。

 何、彼女だって君や621に害意があるわけじゃない。むしろ俺と同じようにミッションをサポートしてくれる。……だよな?】

【ええ、そのつもりです。……まさか、あなたたち両方と交信を交わせるとは思っていませんでしたが】

 

 左右に分かれた赤い光同士が、ぴかぴかと光って脳内で言葉を交わす。

 

 耳を介さず、脳に直接届くような、2つの赤い声。

 なんとも奇妙な現象だ。ナインの存在に慣れつつある617ですら、これが何なのかよくわっていない。

 

 

 

 しかも、617にとって、何より驚くべきことは……。

 

「うん、私もそう思う。

 ウォルターはいろいろ、抱えすぎてる。エアは敵じゃないし、だいじょうぶ」

 

 横にいる621にも、赤い光──ナインとエアの声が届いている、ということだ。

 

 脳内で響くこの赤い声は、どうやら617と621にだけ、距離の制限なく届くらしい。

 逆にウォルターは、どれだけ近付こうと2人の声が届かないようだった。

 

 元よりナインという存在は617にとって不可思議なものではあったが、エアの合流によってその不可解さは更に増したと言っていい。

 結局2人はどういうモノなんだろうと、617は首を傾げる。

 ……が、ナインに【まぁ、色々あるんだ。その内ちゃんと説明しよう】と言われたことで思考を打ち切った。

 

 おにいさまが後回しにするというのだから、それで問題ない。

 そう確信するくらいには、617はナインに信頼を置いている。

 

 

 さて、この赤い声が何なのかはさておき。

 617としては、次に気になるのは新たな仲間らしい存在、エアのことだ。

 

『エア……。おにいさまと同じような存在であると聞きましたが』

【ええ、そう、ですね。改めて、ルビコニアンのエアと言います。

 強化人間C4-617……独立傭兵リンクス。突然交信を始めてしまい混乱していると思いますが、ナインと共にあなたたちをサポートしていきたいと思います】

 

 「ナインと同じような存在」と言われ、上ずった声を漏らすエア。

 しかし、こうして丁寧に挨拶してくれるのだから悪いひとではないのだろうと、617はひとまずのあたりを付けた。

 

 617がルビコンで知り合ったのは、依頼で関わるだけの希薄な関係性を除くと、ナインとパッチ、それからヴォルタもといヤクザ・オブ・ザ・ガチタンゴッド、そして621くらい。

 圧倒的に対人経験が不足していると言っていいだろう。

 

 そんな彼女の経験則からすると、ちゃんと挨拶をしてくれるのは大体良い人だった。

 逆に悪い人は、なんかこう、雑に扱ってきたりするのだ。ルビコン1でのアーキバス基地副長とか。

 ということは、エアも良い人なんだろう、と617は判断する。

 傭兵としてのクレバーさをナインから教えられながらも、どうやら617の人を信じやすい純粋さは失われていなかったらしい。

 

 更にその上、今回はナインが【エアのことは信じていい。仲間だ】と保証してくれている。

 故に今の617には、エアを疑うという発想はない。

 おにいさまが言うのだから間違いないと、617は信頼を置く。

 

 この二点から、617は現時点で既に、エアを身内として判断していた。

 

『こちらこそよろしくお願いします、エア』

 

 

 

 ハウンズの617と621、そして彼女たちと交信を図る、コーラル変異波形のエアと新人類ナイン。

 

 後にルビコンの争乱の中心となる四人は、こうしてファーストコンタクトを終えたのだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

【さっそくですが、私から二人にお話が】

 

 ひとまずの挨拶を終えた後、赤い光の片割れ、エアが言葉を響かせる。

 

【先程ウォルターも言っていた、コーラル局所爆発。

 二人も見たと思いますが……ウォッチポイントでのコーラル逆流の結果、ベリウス北部、北西ベイエリアが消失しています】

 

 こくりと、617と621は頷く。

 

 輸送ヘリで拠点へと帰っている最中、ウォルターからAC内ディスプレイに転送されてきた、サブカメラの映像。

 ヘリから遥か彼方を映すそれには、凄まじい規模の爆発が巻き起こっている様が映っていた。

 更に……片や特別なコーラル強化人間であり、方やナインによって感覚を拡張された強化人間であった彼女たちには、その爆風に乗ったコーラルの流れも見て取れたが。

 

 エアの言葉に、ナインが補足を付け加える。

 

【コーラルは一定の密度・量・圧力の条件が揃うと、外側へと文字通り爆発的に広がる習性を持っている。潜在的な爆弾……と言うと、少し過激になるが。

 センシングバルブの破壊によってウォッチポイント・デルタから逆流が起きたことで、流動していたコーラルの流れに変化が起き……それが他のウォッチポイントにも影響したんだろう。

 ウォッチポイント・ジータ……君たちが行ったあそことは別のウォッチポイントの、センシングバルブに繋がるパイプ内のコーラル流動量が大幅に乱れ、偶発的にこれらの条件を満たしてしまった。

 結果として、半径数十キロメートルの大地が消し飛び、海に沈んでいる】

 

 ナインの話を聞いていた621は、なんとなく、コーラルリリースを思い出した。

 

 今回はウォッチポイントから地中に伸ばされたパイプ、その中に一定量のコーラルが詰め込まれることによって、凄まじい爆発と拡散が起こったらしい。

 それは……その構図は、バスキュラープラントがルビコンからコーラルを汲み上げようとパイプを伸ばしていた状況と酷似している。

 

 要するに、今回の件は非常に小さな規模でのリリースなのかもしれないと621は感じたのだ。

 

「……人は、巻き込まれたりした?」

【いいや、確認する限り、この爆発による人的被害はゼロだ。

 元より各ウォッチポイントは寂れた区画に建設されている。呑まれたのも、封鎖機構の無人兵器程度で済んだはずだ。

 ……621、しっかりと色々考えてるな、偉いぞ】

「むふん」

 

 小さく胸を張る621。

 

 617は、どことなく不満げな目を視界の端の赤色に送り……。

 そんな二人に、まだ対人経験の少ないエアは【?】と困惑していた。

 

 

 

【話を戻しますが……今回の爆発は地形を塗り替える程の被害をもたらしましたが、これさえも、かつての「アイビスの火」とは比較にならない程小規模なものです。

 アレは……まさしく、星の形を変えてしまう程のものでしたから】

 

 その言葉に、それぞれがそれぞれの反応を示す。

 

 エアは、かつて自らの同胞を焼き払ったあの大災害について忌避感を持ち、今度はあのような事態を決して起こさせまいと心に決め。

 

 621は、自らが至った結末、2つ目の答えを想起し、そしてその際に敵対した相棒の最後の言葉を噛みしめて、僅かに視線を落として。

 

 ナインは、自らが理解しているコーラルの現在量と破綻へのタイムリミットを概算し、忸怩たる思いを抱き。

 

 ……そして617は、小首を傾げた。

 

『アイビスの火?』

 

 この場でただ一人、その言葉の意味するところを知らない彼女のため、エアは僅かに現存する画像データと共に説明する。

 

【かつてルビコン3で発生した大災害です。

 集積したコーラルが拡散しながら燃え広がり……ルビコン3の地表全土は勿論、周辺星系を巻き込んで甚大な火災を引き起こした、というものです。

 その際に原因となったコーラルも、その殆どが消失。当時のコーラル獲得競争は勝者なきまま終わりを遂げ、ルビコン3は半ば廃星として捨て置かれることとなりました】

『……? しかし、コーラルは現在ルビコン3に残っていますが』

「コーラルは放っておくとふえるから。ちょっとだけ残ったコーラルが時間をかけてふえたんだと思う」

 

 いくら脳筋とはいえ、ルビコンでの戦いを3周した621は、ある程度の事情を呑み込めている。

 そのため、617の疑問に答える声は淡々としていた。

 

【加えて言えば、当時から封鎖機構は小規模に動いていたようだが、この一件をもってコーラルの危険性は確かなものとなり、現在の手厚い封鎖が敷かれるようになったようだ。

 そして数年前にとある傭兵共がコーラルが残っていることを企業にリーク。それを以て第二次コーラル獲得競争が始まり……ウォルターは目的達成のために君たちを連れて参戦した、という流れだ】

『……なるほど』

 

 完全に理解できているわけではないが、ある程度の事情を雰囲気で呑み込み、617は頷いた。

 

 

 

 改めて、エアは話し始める。

 

【レイヴン、そしてリンクス。……あなたたちにお願いがあります。

 集積コーラルに到達するその時まで、あなたたちとの交信を続けさせてほしいのです。

 コーラルを巡る、この二度目の戦いがどこに向かうのか、私は見届けなくてはならない。

 一人の、ルビコニアンとして】

 

 その真摯な言葉に対し、621は即座に、617も感情を交えず、頷いた。

 

「もちろん。エアはあいぼうだから、一緒にいてくれないと困る」

『おにいさまが仲間だと言うのなら、何も問題はありません。

 ハウンズとして、617はサポートを望み、その代わりにこの「交信」を続けることを約束します』

 

 想定以上の、快諾。

 実はかなり緊張していたエアは【相棒……?】と困惑しながらも、深く安堵したように、その赤い光をチカチカ光らせた。

 

 【改めて、よろしくお願いします。あなたたちを、全力でサポートします】

 

 

 

【…………え、俺は? なんかこう、ないの?

 いや、別に欲しいとかじゃないけど、仲間外れ感があってやや寂しい】

 

 2人と違ってノータッチだったナインは呟く。

 対し、エアは……少なからぬ困惑と、それから期待を込めて告げる。

 

【ナインは……その、正直に言えば、どのように接していくべきか迷っている部分があります。

 私にとって、明確に言葉を交わし、接触できる同種は、得られないと思っていたものなので。

 ですが、可能であれば……共にこの戦いの行く末を見届けたい。

 共にあって欲しいと、そう思います】

【うん、勿論。君と、そして君の同胞たちの明るい未来。それもまた、俺の求める未来の形の一つだ。

 これからよろしくおねがいするよ】

【っ、接触……ああ、温かい……】

【握手ってヤツだ。まぁ俺たちは手とかないけどね】

 

『おにいさま』

「…………せんせい」

【何? ……え、本当に何? なんで二人ともそんな顔してるの?

 大丈夫? ストレスあるんならナインブレイカーやっとく?】

 

 

 







 本日の傭兵事情

・識別名
 Rb31 独立傭兵「リンクス・ウィズ・カラー」
 ランク24/E(1↑)

・アセン
 『フォーアンサー』

 右腕:MG-014 LUDLOW(実弾軽マシンガン)
 左腕:MG-014 LUDLOW(同上)
 右肩:Vvc-703PM(三連プラズマミサイル)
 左肩:HI-32:BU-TT/A(ウェポンハンガー、初期パルスブレード)

 ヘッド:HC-2000/SOS HOUND EYE(オリジナル)
 コア:EL-TC-10 FIRMEZA
 アーム:NACHTREIHER/46E
 レッグ:NACHTREIHER/42E

 ブースター:ALULA/21E(高性能高燃費)
 FSC:FC-006 ABBOT
 ジェネレーター:DF-GN-06 MING-TANG(中容量高補充)
 コア拡張:パルスプロテクション(4回)
 リペアキット:使用可能(3回)

・収支
 +246,446c

[ウォッチポイント襲撃(ALT2)]
 +380,000c(基本報酬)
 +50,000c(ウォルターによる特別手当)
 +90,000c(不明機体の撃破6機分)

[経費]
 -14,980c(武装修理費)
 -27,014c(外装修理費)
 -2,206c(内装修理費)
 -14,080c(弾薬費)
 -5c(必需品購入)
 -64c(ハウンズ帰還パーティ経費)
 -452,000c(EL-TC-10 FIRMEZA購入費)
 -220,000c(ヤクザ依頼代金二件)
 ─────────────────────
 +56,096(190,349cの赤字)



《ナイン追記》
 一応、原作基準で考えればchapterを突破したことになるか。
 621とエアっていう原作組に617を合流させられたこと、改めて胸を撫で下ろす思いだ。
 ……これからも、四つ目の答えを得るため、選んで殺し、選んで生かさなければ。

 ところで、資金も溜まってきたので思い切ってパーツを購入。
 フィルメツァとかいう軽量汎用コアパーツ、あまりにも神。値段こそ高いけど序盤から終盤まで隙なく使える、自由度の高いパーツである。俺も愛用してた。デザインも独特で結構好き。
 というか実質周回特典にあたるアルバと同格の性能のパーツが序盤に解放されちゃいかんでしょ。

《617追記》
 ウォルターと、またちょっとおわかれ。
 でも、しかたない。元気そうでよかった。
 それと、「よく戻った」って言ってもらえた! えへ。

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