そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 休めって言われたのになんか平然と仕事に駆り出すエアちゃんに「えぇ……」となったのも今は昔。
 その辺りに解釈を付けるのも二次創作の楽しみです。





話が…違うっすよ…しばらく、休めって……

 

 

 

【レイヴン。先程の中央氷原の件ですが……ここについて、ベイラムからレイヴンのアドレス宛てに依頼が来ているようです】

【リンクス、君にも来てるぞ。ベイラムからではなく、アーキバスのものになるが】

【あなたたちのハンドラーは、今は休むよう指示を出していましたが……。

 先日から2人とも、ずっと……ナインブレイカー、でしたか。あの仮想戦闘シミュレーションにこもり切りですし、久しぶりに実戦に出るのも良いのではないでしょうか。

 そのため、私とナインから、これらの依頼の実行を提案します】

 

【それでは、ミッションのブリーフィングを開始する。

 君たちに今来ているのは、ウォルターが両社に持ちかけた中央氷原のコーラル集積情報、その確証を得るための先行調査依頼だ。

 ……よし、分からないことを素直に聞けるのは良いことだ、617。もうちょっと簡単に言えば、中央氷原に本当にコーラルがあるのかを調べてほしい、という感じ。

 一度きりの依頼というより、長期の協力依頼、という感じだな】

 

【問題は、私たちのいるベリウス地方から中央氷原までの間には、広大なアーレア海が広がっていること。

 最短の直線距離で、おおよそ4,000km。いくらACといえど単騎で踏破可能な距離ではありません。

 そのため、グリッド086上層区画に備え付けられた、大陸間輸送用カーゴランチャーの使用を提案します。これを使えば、おおよそ20分弱で中央氷原に到着できる計算です。

 え? 安全性? ……内部の荷物が破損しないよう、内部でサスペンションによる固定と緩衝材での衝撃緩和を図る構造のようです。頑丈なACの装甲ならば、問題は生じないでしょう】

【いや、まぁ……うん。計算上、安全ではある。ジェットコースターも真っ青な恐怖体験かもしれないが……命の危険があるっていうのは今に始まったことじゃないからなぁ……】

 

【グリッド086は、「ドーザー」と呼ばれる、コーラルを向精神薬として扱うならず者の巣窟です。

 中でも「RaD」を名乗る一派は、非常に好戦的な武器商人。最上層に辿り着くまでの道中は、彼らによる襲撃を受ける危険を伴うでしょう】

【だが、君たちの実力であれば、その程度の抵抗など容易に対処可能だろうし……。

 ああ、そうだ、リンクス。俺たちからすれば、多少は勝手知ったる土地となる。運が良ければ撃つ以外の仕事になるかもしれない。

 それに、仮に戦闘になったとしても……】

 

【私たちが、あなたたちをサポートします】

【俺たちが、君たちをサポートしよう】

 

 

 

 * * *

 

 

 

 既に一度終わったとはいえ、宇宙規模の熾烈さを誇ったコーラル獲得競争の余波を受け、(あくまで過疎星系としては、という前置きが付くが)ある程度発展しているルビコン3において、空中に施設されたメガストラクチャー「グリッド」は珍しいものではない。

 三桁の数字が振られて識別されることからも察せる通り、それは星中で凡そ700強という数存在しており、ルビコンで空を見上げれば大抵の場合はこれらが目に付くことになるだろう。

 

 今回のハウンズの目的地点であるグリッド086は、その内の1つであり……。

 その中でも、表向きには既に放棄されてまともに運用されていない、いわゆる廃棄グリッドにあたる。

 

 人間は生活圏を拡げ、生活を豊かにする毎に、周囲の環境を汚染せずにはいられない。

 この宇宙進出と開拓が進められる時代においてもそれは変わらず、地表に近い旧時代のグリッドはコーラルを筆頭とする汚染物質に呑まれ、既に放棄されているケースが多いのだ。

 

 そうして居住空間を放棄する度に、それを足掛かりとして、上へ上へとその建築を伸ばしていき……。

 人はいずれ破綻するその時まで、バベルの塔を積み上げ続けるのである。

 

 そんな時勢、清浄な空の世界で大っぴらに生活することのできないならず者や不法者の類は、汚染に塗れた地表付近のグリッドでその生涯を始め、そして終えることになる。

 ドーザーと呼ばれる彼らは、まさにその典型例にあたるだろう。

 

 エアの語った、「RaD」。

 その正式名称を、「Reuse and Development」。

 

 現在ドーザーの中で最大手にあたるこの集団も、勿論例に漏れず……。

 しかしその中で、最大の変わり種でもあった。

 

 その多くが規則や規範という言葉を忘却した暴力屋であるドーザーでありながら、彼女たちは独自に汎用兵器やMT、果てには土木用のACパーツの研究・開発を行っていた。

 つまりは、それを成し得るだけの資金力と資源、そして何より知識や開発力があるということで、この時点でルビコンの恵みを生でイッてパチパチ弾けて脳みそ幸せになっている他のドーザーとは一線を画している。

 

 しかし、だからと言って、彼女たちはただの技術屋集団というわけでもない。

 各地で通路を封鎖し障壁を作った結果、彼女たちの根城たるグリッド086は半ば迷路のような構造となっており、その各所に隠れ潜むようにして迎撃用のメカが配置されている。

 更にランカーのAC乗りを2人(少し前までは3人だったが、1人は圏外落ちした)擁しており、その単純戦力はルビコニアンたちの反抗戦力である解放戦線とも並ぶ程。

 

 高い開発力を持つ技術屋でもあり、生み出した商品をやり取りする死の商人でもあり、純粋な暴力を振るうこともあるならず者でもある。

 そんな多角的な側面を持つのが、RaDという集団だった。

 

 そして、そんなRaDにはここ最近、ピリピリとした空気が漂っている。

 

 その要因は、3年前に急に現れ、この組織を仕切るようになった女傑の苛烈な性格もあるが……。

 何より少し前に起こった、とんでもないキチガイのクズに騙されて、占有していた区画をインフラごとぶっこ抜かれたという事件が大きい。

 

 あの一件以来、RaDのボスは非常に機嫌が悪くなってしまい、それまで以上に外からやって来る者に対して警戒心を向けるようになった。

 故に今、グリッド086を何のアポイントもなく訪れた者は、鮮烈で心の籠った「おもてなし」を受けることになるはずだ。

 

 

 

 ……そのはず、だったのだが。

 

『おっ、俺のマッドスタンプがぁああ~ッ!?』

 

 グリッド086侵入から少ししてレイヴンとリンクスに襲い掛かって来た、ランク圏外落ちしたしょっぱいACは、僅か十秒強で撃破されてしまった。

 

 マシンガンを主体とし安定してACS負荷を稼ぐAC「フォーアンサー」と、一発一発の火力が高くスタッガーへの決定打を持つAC「Loader 4」の相性は、非常に良く。

 更に言えば、彼女たち自身の能力も、ルビコン3でもトップクラスのもの。

 

 それが2対1で掛かって来るともなれば、強化人間かすらわからないような程度の低い動きをしていた門番は、瞬殺を免れなかったのである。

 傍観していたエアとナインが憐れに思うレベルの一方的な戦いであった。

 

『…………? 何ですか、今の様子のおかしいACは?』

「門番のひと。アリーナ最下位……あ、今回は最下位じゃなくて圏外の……ら、らみー?」

【はい。識別名、インビンシブル・ラミー。機体名、マッドスタンプ。アリーナランク、圏外です】

【ご、ごめんなラミー……別に恨みがあるわけじゃないんだが……】

『おにいさま、襲い掛かって来たのはあちらですし、脱出ポッドも飛んでいました。617たちは悪くない、と考えます』

「ひとまず、行こうか。グリッド086探索はここからだよ」

【レイヴン? 細かいことですが、私たちの目的は探索ではなく上層を目指した侵入で、別にグリッドを探索する必要性は……】

【よーし、隅から隅まで探して並み居るMT全部ぶっ飛ばして、誰から支払われてるかよくわからん加算報酬獲りに行こう!】

【ナイン???】

 

 一行は軽快に会話を交わしながらも、周囲への警戒を怠らず……。

 特にナインとリンクスは、これから開くはずの隔壁の方へと目をやっていたが。

 

 そんな彼らに、広域放送で呼びかける女性の声があった。

 

『ビジター! 好き放題やってくれてるようだね……』 

 

 ぴくりと、621の肩が揺れる。

 聞き慣れた声。彼女のよく知る声。

 ……けれど、きっと、声の主は自分のことを知らないだろう。

 

 大切な人に忘れられるのは、慣れている。

 慣れているけれど……辛くないわけではない。

 

 カーラと「初対面」になるのは、実に三度目。

 今回も面識のない「ビジター」として、彼女と一から信頼関係を構築しなければならない。

 

 そのためにも、621は痛む心を殺し、自身の有用性を証明しようと奮起して……。

 

 

 

『……と思ったら、なんだアンタかい。

 アイツに聞いていた傭兵、どんなもんかと思っていたけれど……まさかアンタがその片割れだったとはね。

 まあいい……入りな!』

 

 カーラの言葉に、目を見開いた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 結論から言えば、621が僅かに抱いた希望は、残念ながら打ち砕かれた。

 ただしその代わり、別の形で新たな希望が浮上してくることにはなったが。

 

『久しぶりだね、ストレンジャー。今回もちゃんと手土産を持って来たんだろうね?』

『そちらが気に入るかはわからないけどな、カーラ。あと、できればヘッドパーツをまた見てもらいたい。スキャン距離を伸ばして頻度を落とす方向で』

『いいだろう、それもアンタの手土産次第だが……ソイツは?』

『大体予想は付いているだろう。中央氷原に向かう』

『なるほどねぇ。……ああ、いいだろう、通りな』

 

 カーラが知っていたのは、621ではなく、617……より正確に言えば、彼女の体に宿るナインだったのだ。

 

 彼女は617の乗騎「フォーアンサー」を確認すると、軽い挨拶を交わした後、いつも621が通っていたものとは別の隔壁を開き、案内を開始。

 それに沿って進む道には、敵性MTは配置されておらず……。

 あまり聡い方とは言えない621にも、これが敵ではなく身内用に使う通路なのだと察せられた。

 

「せんせい?」

【ああ、うん。まぁ疑問には思うよな。

 実は、ルビコン1からルビコン3に密航した時、封鎖機構の衛生砲がカスってルートが逸れてしまってな。結果としてグリッド084近くの地表……ここから程近い場所に不時着することとなったんだ。

 その後、RaDのジャンク拾いのMTと交戦になって……色々あって休戦、ビジネスパートナー的な関係になっていた、というわけだ】

「なる、ほど?」

 

 ナインがカーラと知り合いだなんて想像すらしていなかった621は、「Loader 4」を前に進ませながらほへーと声を漏らしていた。

 対し、ナインは苦笑するような口調で言う。

 

【不時着は偶然だったが……せっかくなら、カーラとは先んじて顔を繋いでおいた方が良いと思ってね。

 カーラの機嫌とか情勢次第では普通に戦闘になる可能性もあるし、気が緩まないよう、今までは教えて来なかったけど】

 

 そんな方法もあるのだな、と621は頷く。

 

 仕事で知り合うより早く接触を図り、仲を深めておく。

 その意識を呼び覚まして以来ずっと戦いの中にあった621にとって、その発想は完全に発想の外にあるものだった。

 

 

 

 そして、そんなやり方もアリなのだとすれば……。

 1つ、彼女の悩みを解決できるかもしれない方法が思い浮かんだ。

 

「……せんせい。その、もしも……ウォルターに、コーラルのことを相談して……」

【それは、難しい】

「っ……」

 

 全てを語るまでもなく切って捨てたナインの冷たい答えに、621は怯んでしまう。

 

 しかし、そんなナインの続く言葉からも、微かな痛みと無念が窺えた。

 

【仮に、だが。

 1周目の君が、ウォルターの猟犬として託された仕事をこなそうと決めた君が、エアに説得されたとして。コーラルとして人と共にありたいのだと、そう言われたとして。

 君はそれに応えたか? 君の決意は揺らいだか?】

「…………」

 

 617やエアには伝わらない、個人にのみ宛てた交信。

 621は機体を駆る手こそ止めないまでも、視線を下に落とすことでナインの質問に答えた。

 

【人は重大な決断を前にして覚悟を固める。そうなれば、既に言葉は意味をなさない。

 互いに譲れないものがあれば、時に戦いを以てしか事を前に進められなくなる。言葉ではなく、力こそが全てになる。

 それは……君自身、理解しているだろう】

「……うん」

 

 ずっと、そうだった。

 三周のルビコンの戦い、だいすきな人やあいぼうと思っていた相手との戦いを経て──三周目は、なんかこう、ちょっと違ったが──、しかし一度だって言葉で戦いが終わったことなどなかった。

 常に621が選択し、力を振るって、終わらせてきたのだ。

 

【俺たちは「4つ目の答え」を諦められない。

 ウォルターは友人から託された「仕事」を……きっと、自分では捨て去れないだろう。

 戦いは避けられないんだ。残念ながら】

「でっ、でも!」

 

 最終的に、ウォルターは止めなければならない。

 彼の目的は、コーラル変異波形であるエアと、決して共存し得ない。

 それはわかる。

 

 しかし、話し合いで解決できれば……ウォルターを救えるかもしれない。

 もう、ウォルターを殺さなくていいかもしれない。

 

 今も621のまぶたに焼き付く、赤く流れていく風と落ち行く船、そしてその上で動きを止めたウォルター。

 あんな景色は、もう二度とは見たくない。

 

 故に、621は声を上げたが……。

 

【大丈夫、殺すまでやる必要はない。そこは俺が止める。

 ……君一人でも、俺一人でも、きっと答えには届かないだろう。けれど俺たちが揃えば、できる。必ずだ】

 

 ナインは、強くそう言い切った。

 確かな自信を覗かせ、621を安心させるように。

 

【俺は既に、617を助けている。本来生き残れない誰かを救うのは慣れたものだよ。

 だから……大丈夫。絶対に大丈夫だ。

 一緒にウォルターを助けよう、621】

 

 その言葉と……何より、頭に感じる、微かな温かさに。

 

「……うん」

 

 621は、その頬を緩め、目を細めた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そうして一行が、複雑に曲がったり上がったりする通路をしばらく進んだ先。

 そこには……。

 

「せんせい?」

【あれー? なんか想定と違うなぁ……戦わずに済むと思ったんだけどなぁ……?】

 

 一台の、兵器が鎮座していた。

 

 直線が多い、旧時代的なデザイン。

 だがそれ以上に目立つ最大の特徴はと言えば、後方に背負うように取り付けられた、大型の溶鉱炉だろう。

 

 そのやどかりのようなフォルムの機体の名は、「EC-0804 SMART CLEANER(スマートクリーナー)」。

 幾度となく621が交戦してきた、RaDの兵器である。

 

 

 

 ……が、しかし。

 今目の前に立ち塞がるスマートクリーナーは、今まで戦ってきたものとは様子が違っていた。

 

 具体的には。

 いつも両手に付けていた、一対の巨大な破砕アームが……右手側だけに集中して、なんと6本も取り付けられていることだ。

 

 なんだこの馬鹿みたいな機体はと瞠目する621の耳に、カーラの言葉が届いた。

 

『ストレンジャー。アンタの提案してくれた、「グラインドブレード」だったか……最高に笑える発想だ。

 せっかくだ、歓待の用意が整うまで、あんたらの身で有用性を確かめさせておくれよ!』

 

 カーラの言葉と共に、スマートクリーナーがゆっくりとその体を起こし……。

 2機のACに向けて、その笑えるほどデカい凶器を構えた。

 

「せんせい!?」

【ごめん617、621! これは完全に俺が悪い!!

 とにかく今は生き残ることを優先しろ! うおおおおメインシステム戦闘モード起動ォ!!】

【……リンクス。ナインはいつもこんな調子なのですか?】

『いつものおにいさまは、もう少し冷静沈着なのですが……でも、今のおにいさまも楽しそうなので、617は良いと思います』

 

 

 







 クソ馬鹿破砕アーム6本セット、相手は死ぬ。
 多分621が今まで戦ってきた中でも群を抜いた頭の悪い武装、ただし直撃すれば即死です。
 直撃すれば、ね……。
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