そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 この変態、ミームでしか喋らないからタイトルに困りませんね! いやぁ楽でいいぜ!





新しいご友人……楽しい時を過ごしましょう♡

 

 

 

『ストレンジャー、RaDのカーラだ。直に話すのは久々だね。

 アンタの、特に赤い方とはまた色々話したいもんだが……今はどこもかしこもてんてこまいだ。

 早速だが本題に入ろう』

 

『あんたたちが絡まれた技研の遺産……アイスワームについてだ』

 

 

 

『封鎖機構だけなら、企業が手を組めば何とかなるだろう。

 それに中型までのC兵器なら、あんたが対処もできるだろうね。

 ……だが、あの化け物は規格外だ。真正面からぶつかって攻略できる代物じゃない』

 

『あの巨体、側面の厚い装甲、膨大なAP、追尾性の高いミサイル、邪魔になる子機、コーラルを流用したプラズマ爆発。奴の面倒な点を挙げて行けばキリがない。

 けど、何より厄介なのは……常時展開されている、二層からなるコーラル防壁だね』

 

 

 

『一層目、頭部周辺を守るプライマリシールド』

『これは言うならば、とんでもなく強い指向性を持った、コーラルパルスアーマーだ』

 

『衝撃を外に逃がすことに特化したこれは、通常のパルスアーマーの数倍、あるいはそれ以上の耐久性を持っている。

 正面から打ち破ろうとすれば……まあ、いくらあんたやビジターでも苦戦は避けられないだろう。

 馬鹿正直に破壊するよりは、系統でも狂わせて、コーラルパルスの還流自体を停止させる方がまだ現実的だろうね』

 

『更に言うなら、仮にこれを破ったとしても、再展開までの時間は1分そこらってところだ。

 あのデカブツを追い込もうとするのなら、瞬間的な火力も求められるだろう。

 それはもう一層のシールドについても言えることだがね』

 

 

 

『そして二層目、全体を覆うセカンダリシールド』

『こっちは純粋に、可視化できる程に圧縮したコーラル、その微細運動により衝撃緩和を為す防壁だ』

 

『……ま、簡単に言うなら、奴の周りには常時、半気体の壁があると思えばいいさ。

 ただし、もたらされた衝撃の強さに応じて急激に硬質化する壁だけどね』

 

『仮にプライマリシールドを破れたとて、通常兵器の攻撃じゃ、このセカンダリシールドを突破することはできない。

 勿論、あんたたちの使うAC規格の武装程度じゃ、どうやったって貫けはしないだろう』

 

『これを機能停止させようとするなら、常識外れの笑える火力が必要になる。

 防壁を一点に集中させても防ぎきれない火力をぶつければ、コーラルは一時的に散逸するはずだ。

 とはいえ、これが続くのは30秒あるかないか、ってところだろうけどね』

 

 

 

『……つまり、あんたたちがアイスワームを潰そうって言うんなら、手段はただ一つ』

 

『プライマリシールドとセカンダリシールドを、同時に機能停止させる。

 そしてそこから30秒程度の短い猶予の間に、一挙に火力を叩き込まないといけないわけだ』

 

『ま、そもそも二層のシールドをどう破ればいいか、って話になるわけだが……』

 

『そこでだ、ストレンジャー。

 私が二層目、セカンダリシールドをこじ開ける得物を作る。

 RaDは元より、デカい花火が大好きな連中の集まりなんだ。ここらで封鎖機構の連中の鼻っ柱に一発お見舞いしてやろうって寸法さ』

 

 

 

『さて……その手伝いも兼ねて、あんたに一つ、仕事を頼みたい』

 

『場所はグリッド012。開発初期に作られた崩落寸前の区画だが……』

『そこに、私らを裏切りRaDを抜けた、救いようのないクズが隠れ住んでる』

 

『クズの名は……「オーネスト・ブルートゥ」。

 こいつを消すんだ』

 

『奴の乗騎AC「ミルクトゥース」はうちで組んでやった機体だ。当然、最適化も施してある。

 欠点は乗り手がクズなところくらいだね。注意しな』

 

『……奴は、RaDから金と技術と、私がこっそり組んでいた秘密道具を持ち逃げした。

 その秘密道具が、アイスワームのセカンダリシールドをこじ開けるのに必要なのさ』

 

 

 

【……送信されて来たメッセージは以上。今回のミッションと、これからの指針だな】

 

【アイスワームは難敵ですが、RaDの協力があれば、セカンダリシールドを破ることはできそうです。

 レイヴンは「プライマリシールドならやぶる方法はある」と、心当たりがあるような言い方をしていましたし、アイスワームの撃破も多少は現実的になってきたでしょうか】

 

『……アリーナランク8/C、オーネスト・ブルートゥ。

 621があれだけ警戒し、カーラが私たちに排除を依頼する相手。それだけ難敵であると予測できます。

 アリーナの再現機体は大して問題にはなりませんでしたが……というか、何故カーラが組んだのにあんなミスマッチな機体になっているのか不思議なくらいですが、警戒を厳とする必要があると考えます』

 

【……うん。まあ、はい】

 

【な、ナイン? そのどこか虚ろな反応は一体……。

 ああいえ、とにかく、今はミッションのことですね。

 警戒を強めることは決して悪いことではないでしょう。今回も私たちがサポートしますから、この修羅場を潜り抜けましょう!】

 

 

 

 * * *

 

 

 

 グリッド012。

 識別ナンバー2桁の中でも最序盤のそれは、ベリウス地方中央付近に存在する、旧い空中施設だ。

 

 空中とは言っても、他のグリッドに比べると、その標高は低い。

 そもそもグリッドは、地表部の汚染が本格化したことで、上空へ逃げるように建てられた人類の居住区だ。

 しかし、人の欲と技術の代償は尽きることなく、時と共に汚染はゆっくりと上空へ迫り、それに応じて新たなグリッドが上空へと建てられていった。

 結果として、グリッドのナンバーは後半になる程、高い標高に建てられる傾向にある。

 

 ……そうしてグリッドが乱造された、コーラルを巡る戦いは、既に半世紀前も前のこと。

 強欲な企業の手が退いたことで、ルビコンの地表の大部分から、人の健康を著しく害する程の汚染はなくなっている。

 廃棄されたグリッドもまた然りだ。

 

 しかし、既に廃棄してしまった区画は長らく人の手が入っていない。

 当然ながら、整備の手を入れなくては安全に住むことも難しい。

 しかし企業のマンパワーなき今、食糧生産すらも追いついていないルビコニアンたちにそんな余裕があるかと問われれば、それは当然否なわけで……。

 

 結果として、基本的に廃棄グリッドは当時の状態のまま放置されており。

 多くのドーザー──RaDや、これに敵対するジャンカー・コヨーテスもまた例に漏れない──は、廃棄グリッドを不法に占拠して暮らしていた。

 

 

 

 そして今、ジャンカー・コヨーテスの拠点であるグリッド012に、絶賛成長中のイレギュラーが訪れた。

 

 「フォーアンサー」が指定の場所に辿り着いたことを契機として、彼女の脳内に赤い声が響く。

 

【……作戦領域に到達。これよりご友……えー、クズ……じゃなくて、オーネスト・ブルートゥ排除を、開始する】

 

 普段のキッチリした様子はどこへやら、どこかぼんやりした声で作戦開始を告げるナイン。

 

 それに対して、変異波形の片割れ、エアが気遣わし気に声を上げた。

 

【……やはり、ナインは調子が悪い様子ですね。621も取り乱していましたし、それだけこのミッションが重荷になっている、ということでしょうか。

 ナイン、少し休んでください。今回は私がオペレートを担当しましょう】

【いやいや、それには及ば……いや、思いやりを無下にすることこそ失礼か。

 すまん、エア。悪いが、今回はよろしく頼めるか】

 

 一瞬否定しかけ、しかしそれを受け入れたナイン。

 エアはむしろ、普段滅多に人を頼らない彼に任されたからだろう、嬉しそうに声を上げる。

 

【ええ、任せてください。リンクス、今回はよろしくお願いします】

『はい、お願いします、エア……いえ、オペレーター』

 

 617としては、愛しのおにいさまが不在となるのは、少々寂しい気持ちもあったが……。

 それ以上に、気疲れの様子が見えるナインを安心させるため、今はミッションへと向き合うことを決めた。

 

 

 

 メインシステム、戦闘モード起動。

 

 もはや聞き慣れたCOMのボイスを背景に、617は戦場を俯瞰した。

 

 エアの手によってヘリから投下された作戦開始地点は、グリッド012の頂点にあたる部分だ。

 目標地点は、ここからずっと下部にある。

 

 比較的高度が低いとはいえ、グリッド012があるのは、地上から数十kmの高所。

 ここから地表に自由落下すれば、ACSを搭載した兵器でさえ損傷を免れないだろう。

 そんな中、617は点々と生えたグリッドの外壁に沿って降下していかねばならない。

 

【グリッド012の地形はなかなか厄介で、上部のグリッド011以外に、直接連結したグリッドはありません。

 そして、どうやらこの連結部以外には手厚い防衛網が築かれているようで、下部から接近して侵入を試みた場合、ヘリごと撃墜される可能性が高いようです。

 どうしても離れた地点からの侵入になってしまいますが……リンクス、どうかご武運を】

 

 ……とは、ここに向かうまでに聞いたエアの話だ。

 

 

 

 ひとまず、617は自機を前へと走らせ始める。

 

 勿論、警戒は怠らない。

 クールダウンが終わる度にスキャンを走らせ続け、細かく周囲に目線を走らせている。

 

 彼女はこれまで、グリッド012に来たことはない。

 当然ながら土地勘もなく不案内。どこにどんな罠があるかもわからない。

 

 そんな状況で目標地点を目指すには、ガイド役が欲しいところだが……。

 いつもならそこを補ってくれるナインは、今回お休み。

 その代わりというわけではないだろうが、より詳しい人間がミッションに協力を申し出てくれた。

 

『現地に到着したようだね、ストレンジャー。何回も攻め入った場所だ、案内役は私に任せな』

 

 そう語るのは、ミッションの依頼人でありRaDの頭領でもある、シンダー・カーラだ。

 

 

 

 カーラは今回のミッションに対して、それはもう、とんでもなく前向きだった。

 というのも、ミッションの対象が非常に深い因縁のある相手だったからだ。

 

 かつてRaDに在籍していた男、オーネスト・ブルートゥ。

 ドーザーにあるまじき慇懃な態度、一見誠実なように見える心、そして確かな能力。

 それらを買って、彼を近くに置いていたカーラはしかし……。

 RaDの技術と資金をがっつり持ち去られ、更にはカーラの作っていた「秘密道具」をインフラ丸ごとぶっこ抜かれるという、とんでもない裏切りを受けた。

 

 海千山千であるはずのカーラの目さえ騙し切る、恐ろしい演技力。

 あるいは、それを常に素で行っている、狂気。

 

 それを前に、カーラはものの見事に騙されてしまい……。

 

 故に。

 

『ブルートゥを消すんだ。それで誰もが幸せになる』

 

 彼に対し、悍ましい程の害意と殺意を滾らせている。

 

 「RaDの頭領としてのカーラ」の、唯一無二の汚点。

 それを、そして彼女に残った余剰な感情を払拭するためにこそ、カーラは案内役を買って出た。

 

 

 

 いつも泰然と構えていたはずのカーラが、しかし今はその言葉に憎悪を滾らせている。

 それだけ相手は悪辣で狡猾、なおかつ強力なのだろうと、617は改めて緊張を張り詰めさせる。

 

『ええ……行きます』

 

 「フォーアンサー」はその身を躍らせ、建築物を足場に、目標地点へと降下していく。

 

 幸い、カーラのおかげで目安となる目標地点のマーキングは為されている。進む先に迷うことはない。

 

 とにかく緊張と警戒を解かないよう、617は警戒を厳として眼下の施設を睨み……。

 

 

 

『ようこそビジター! いいえ、あなたはストレンジャーと呼ぶべきでしょうか?

 このような僻地まで来てくださるとは……素敵だ♡』

 

 ……飛び込んで来た広域放送の意味が理解できず、固まった。

 

 

 

『…………? 何故、感激するのでしょうか?

 私はオーネスト・ブルートゥの敵。敵の到来を喜ぶ、というのは道理に合いません』

【ふむ……。…………。……少し考えてみましたが、よくわかりませんでした。どうでしたか?】

『あ、わかりました。「まぞひすと」というものかもしれません。この前RaDの整備担当が教えてくれました』

【ええと、それは……どうでしょうか。その、マゾヒストというのは……少々変わった性質のようですから。

 それとリンクス、ナインの前ではその言葉を使わないことを推奨します。ナインは少々過保護な面がありますから、下手に耳に入れてしまうとRaDが滅びかねません】

 

 

 

 617とエアが歩を進めつつも、首を傾げている中。

 通信を繋げているらしいカーラの口調には、苦味が走った。

 

『……ブルートゥ。あんたが盗んだものを返してもらいに来た』

 

 しかし、憤怒と殺意の滲むその言葉にも、相手は動じることはなく。

 

 むしろ極めて親し気、かつ楽し気に言葉を投げ返す。

 

 

 

『おや……? ストレンジャーはカーラのご友人でしたか。

 素敵だ……♡ ならば私にとっても友人同然です♡

 新しいご友人♡ 楽しい時を過ごしましょう♡♡♡』

 

 

 

『……………………???』

【……………………???】

 

 617とエアの脳内を、疑問符が埋め尽くす。

 

『私をストレンジャーと呼んだ以上、私とカーラの接点は知っていたのでは?

 それに、カーラがブルートゥを憎んでいる以上、この間に友人関係は成り立たないものと推測します。であればブルートゥと私の間にもこれは成立しないのでは?

 あと、殺しに来た相手と楽しい時間を過ごす、とは……ひょっとして彼は、今侵略を受けているということを理解していないのでしょうか?』

 

【ど、どうなのでしょう……図ったような通信のタイミングからして、私たちの存在には元より気付いていたように思えますが……。

 武装し、戦闘モードを起動したACが攻めてきた以上、侵略を受けているのは自明。それを理解しないような者を、ナインやレイヴン、カーラが警戒するでしょうか。

 それに、もしリンクスの予想通り、カーラとの接点を知っていたのだとすれば、相手は想定以上に情報収集能力の高い相手……。

 いえ、しかしそれなら、何故知らないフリをするのでしょう? このように露呈しやすい嘘など、吐く意味はないと思うのですが……。

 もしや、こうして相手の真意を探らせ、思考の余裕を奪うのが目的なのでしょうか?】

 

 

 

 いよいよ混乱と困惑を深める、617とエア。

 後者の声は聞こえていないはずだが……通信の向こうで、カーラは深くため息を吐いた。

 

『詐欺師の言葉程軽いものもない。放っておきな、ストレンジャー。

 この煩い口が二度と開かないようにするためにも、奥へ進むよ』

『は、はい……了解しました、カーラ。

 ……その、確認なのですが、オーネスト・ブルートゥはカーラのご友人ではないのですよね?』

『次それ言ったらグラインドチェーンソーブレードでぶん殴るよ、あんた』

 

 

 







 617:とても真面目で、最近は思慮深くもなった。
 エア:人間的な常識こそあまり知らないが、落ち着いていてとても真っ当。
 ナイン:今回不在。

 結論:ツッコミ不足。
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