そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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 やぁレイヴン、待たせたな。ウォ~ッチッチポイント・アルファの観光以来か。
 積もる話もあるが、おさらいに入ろう。

 617:強化人間C4-617、あるいは独立傭兵リンクス。今をときめくイレギュラー。自分の戦う理由を探しながらも敬愛する「おにいさま」の元で戦い抜いている。

 621:強化人間C4-621、あるいは独立傭兵レイヴン。4周目のイレギュラー。尊敬する「せんせい」が導く4周目の展開がこれまでと違い過ぎてあわあわしている。

 ナイン:ジェネリックCパルス変異波形。銀髪薄幸美少女傭兵たちに「おにいさま」「せんせい」と呼ばれるハーレム状態。最近怪しげな暗躍ムーブがすごい。

 エア:本物のCパルス変異波形。激動の展開を前にややナインに疑いを抱きつつある。それはそれとして接触できる唯一の他者としてまあまあ依存もしている。





Chapter4
1か月前、多くにとって唐突に、それは起こった


 

 

 

『……さて、まずは状況の整理から始めるべきだろう』

 

 

 

 ハウンズのセーフルーム。

 現在は封鎖機構の勢力圏内に入り、幾多の封鎖兵器によって安全を確保された、AC収容ドック内。

 

 そこに吊るされたAC「フォーアンサー」の、慣れ親しんだコックピットの中で。

 傭兵部隊ハウンズの強化人間、C4-617……現在は独立傭兵リンクス・ウィズ・カラーを名乗っている少女は、静かに自身の飼い主の言葉を聞く。

 

 

 

『ルビコン3の情勢は、先日の一件……アイスワーム撃破ミッションにおける、ハスラー・ワンの登場によって、大きく揺らいだ』

 

 

 

 次の瞬間、彼女の目の前、黒く沈んでいたメインモニターに、中央氷原を映すマップが映し出され……。

 そこに、いくつかの光が灯った。

 

 マップ上に、赤と青、黄、そして少数の緑のマーカーが、各所にぽつぽつと浮かび。

 それらを中心に、それぞれの色の円形が広がり……最終的に、ルビコン3の地表を染め尽くす。

 

 赤は、惑星封鎖機構。

 黄は、ベイラム。

 青は、アーキバス。

 少数の緑が、ルビコン解放戦線。

 

 マーカーは各勢力の補給・戦略基地を示し、そこを中心とする円形範囲はそれぞれの勢力圏を意味している。

 

 ……いいや、意味していた、と言うべきだろうか。

 

 

 

 

『既にコーラル集積地点は、全ての勢力の知るところとなった。

 ウォッチポイント・アルファ。アイスワームが、そしてAC「ナインボール」が守護しようとしたそここそが、封鎖機構が秘匿してきた場所だ』

 

『故に、ベイラム・アーキバスの両企業、そして両企業に敵対する封鎖機構及び解放戦線は、ウォッチポイント・アルファを中心に陣を敷いていた。

 これより、4つの勢力によるコーラルの獲得競争とその妨害が、本格的に始まると思われていたが……そうは、ならなかった』

 

 

 

 マップが、ウォッチポイント・アルファを周辺として視点を移す。

 大まかに言って、アーキバス3、ベイラム2、封鎖機構4、解放戦線1の割合で広がっていた、各勢力の拠点群だったが……。

 

 ある時、急激な変化が現れる。

 

 表示された時刻は、ベイラムとアーキバスによる、アイスワーム撃破作戦の決行時間。

 

 中央氷原の観測不能領域ど真ん中に、一層輝く赤色の光が現れ……。

 それ以降、状況が一転した。

 

 

 

『システムの代弁者、ハスラー・ワン。仮称AC名「ナインボール」。

 ……奴はハウンズたちを、コーラル集積地点へと案内した後……』

 

『企業の戦略拠点に対し、AC単騎により襲撃を行い、これを壊滅させ続けた』

 

 

 

 赤色の光は、観測不能領域から、ウォッチポイント・アルファに移動した後、周囲の黄と青のマーカーへと向かい始めた。

 

 そして、それが通り過ぎた基地は色を喪う……つまりは、壊滅していく。

 まるで意思を持つ天災か何かのように、赤色の光は、凄まじい速度でルビコンの情勢を塗り替えていく。

 

 そうして補給拠点が陥落すれば、当然ながら勢力圏も狭まっていくわけで。

 それから1か月と経たずして、ウォッチポイント・アルファを中心とした半径100kmの範囲から、ベイラムとアーキバスの占有区画は失われ……。

 

 残るは、点々と残るルビコン解放戦線の拠点と。

 光の動きに合わせて拡大した、封鎖機構の赤い勢力区画だけだった。

 

 

 

『現時点でも、企業は反転攻勢をしかけようとはしているが……上手くはいっていない。

 まるで作戦の情報が漏れているかのように、反撃は尽くその初動を潰されている。

 どれだけ離れた場所であろうと、戦力を集結させようとすれば、「ナインボール」かアイスワームによって拠点ごと潰される憂き目にあっているらしい』

 

『それらから企業は、システムがルビコン3の封鎖に対し、想定以上に本腰を入れていると解釈したらしい。

 特に、アーキバスは合理主義だ。「ナインボール」によるこれ以上の壊滅的被害と、本格的に封鎖機構と事を構えることを忌避し、ルビコン星系から手を引くことを考慮に入れることも考えられるだろう』

 

 

 

『それは……』

 

 617は思わず、首輪型の発声デバイスから、驚嘆の声を漏らしてしまった。

 それだけ、男──ウォルターの言葉は、何度聞いても衝撃的なものだったから。

 

 そして、ウォルターの話の腰を折る形になったそれを、参加者の誰一人として咎めようとはしない。

 その驚きは、この会議に参加する者たちの殆ど全員──「せんせいならそれくらいできるよね~」なんて呑気に考えているC4-621を除いた──に共通していたから。

 

 本来、企業は個人とは桁違いの資本力と技術力を以て事を為す、この世界の経済主体だ。

 旧い文化圏における「国」にも等しいそれをAC1機で相手し、あろうことか圧倒するなど……。

 常識的に考えれば、おおよそあり得ることではなかった。

 

 なにせアーキバスは元々、あの最強のC兵器たるアイスワームを前にしてなお判断を揺るがさず、むしろ打倒を目指して行動していたのだ。

 あれだけの兵器を前にして、アーキバスは全くと言っていい程に行動指針を変えなかったのである。

 

 その判断は、さかしまに……。

 

 AC「ナインボール」が、アイスワームすら超える脅威であることと。

 

 そして何より、彼を味方につけたハウンズ陣営が、ルビコン3の実質的支配権を有したことを意味していた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 想定外の形で終わったアイスワーム撃破作戦、そしてウォッチポイント・アルファの観光案内から、早いもので1か月。

 

 あれから、ルビコンの情勢は一変した。

 

 ウォルターが語った通り、企業の勢力圏が極端に縮小し、それと同時封鎖機構が勢力圏を広げた、というのもそうだが……。

 何より、彼の擁するハウンズチームが、もはや一介の傭兵部隊とは言えない影響力を有したこともそうだろう。

 

 何故そうなったのかと言えば……封鎖機構のシステムが、宣言したのだ。

 

 ルビコン3の封鎖を行う為、傭兵部隊ハウンズと同盟を結ぶ、と。

 

 

 

 本来、これは在り得べからざることだった。

 

 そもそも惑星封鎖機構は、完全な中立・公平性を保つため、揺らぎのある人間の思考を必要としない。

 あらゆる判断をシステム、つまりはAIに移譲することで、数値によって冷徹に管理し、実行する。

 それによって、感情的な誤謬や失敗を徹底的に排除しているのだ。

 

 それ故に、封鎖機構は他の勢力と手を取り合うことはない。

 

 同列の同盟関係を結んでしまえば、相手の意図を汲む……つまりは、何らかの感情的判断にその方針を左右される可能性が生じてしまうからだ。

 

 

 

 ……そんな封鎖機構が、しかし、傭兵部隊ハウンズと手を結んだ。

 

 システムのロジックに破綻がないこと、バグが生じていないことは、定期的に行われるシステムメンテナンスにより判明している。

 システムはただ、これまでと変わらず、淡々と評価を下したのだ。

 

 ハウンズの戦力評価は極端に高く、ルビコン星系に投入することのできる封鎖戦力では、これと敵対した条件下での封鎖実行は困難である。

 そして、ルビコン星系での封鎖中立性を保つこと以上に、コーラルという危険物質の封鎖は、優先度スコアが高い、と。

 

 同盟条件の一つとして、ハウンズの星系外の封鎖に対する不干渉は約束されているが……。

 それでも、たった2人の傭兵チーム相手に、封鎖機構のシステムがこのような判断を下すのは、異例と言う他ない判断だった。

 

 

 

 そして、そんな封鎖機構とハウンズが……。

 この度、招待制の会議を開いた。

 

 封鎖機構の意思の表象、ハスラー・ワン。

 傭兵部隊ハウンズから、独立傭兵レイヴン並びにリンクス・ウィズ・カラー、そしてその飼い主たるハンドラー・ウォルター。

 

 彼らが主催する、ルビコン3の今後を決する会議。

 

 招かれた参加者は、あの日ハスラー・ワンによって、ウォッチポイント・アルファに集った者たちだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

『一点、修正を加えさせてもらおう、ハンドラー・ウォルター』

 

 

 

 招待された参加者の一人目は、アーキバス専属AC部隊、ヴェスパー第四隊長たるV.Ⅳラスティ。

 

 ……いいや。

 

 彼は既に、V.Ⅳとは言えないだろうが。

 

 

 

『アーキバスが撤退を考えている、という話だったが、それは部分的に正しく、部分的に間違っている。

 確かに、アーキバスはコーラル獲得競争からの離脱を考えているようだが……それはあくまで、本社の意向に過ぎない。

 実際にこの星系に派遣されているアーキバス社員には、撤退の意向は告げられていなかった。……少なくとも、私が出奔した、つい先程まではね』

 

『察するに責任者が──この手の策略は十中八九スネイルの仕業だろうが、上層部から寄せられた情報と命令を伏せているんだろう。

 なにせ、この状況でただ撤退するだけでは、ただの敗走だ。彼のキャリアに瑕を付けてしまう。

 どうやら結果を残したくて、躍起になっていると見えるな』

 

『……と。この情報は、ひとまず手土産だとでも思ってくれ』

 

 

 

 元より、ヴェスパー部隊のパイロットという立場は、彼にとって仮初の身分に過ぎない。

 

 その真の姿は──ルビコン解放戦線のエースパイロット、ラスティ。

 

 抑圧されたルビコンを解放すべく、企業に潜入していた調査員だ。

 

 彼が企業に求めていたのは、情報と機会。

 ハスラー・ワンによってそれらが満たされ、ルビコンにおける戦いが最終局面を迎えた今、動きを取り辛くなるであろう潜入先に残る意味は皆無だった。

 

 故に彼は、情報を集めるだけ集め、逐電。

 愛機たる「スティールヘイズ」もちゃっかり持ち逃げし、現在は解放戦線の基地へと身を寄せているらしい。

 

 

 

 ……そして、今この場で、貴重な情報を提示するということは、即ち。

 自らの目的のため、この会議の中核を担っているハウンズチームへの協調を見せる意味合いが強い。

 

 解放戦線は、ともかく。

 そこに所属する戦士の一人たるラスティは、ハウンズを認めている。

 

 大切な人たちを守りたいという、自分に似た背景を持つ、力あるイレギュラー。

 自らの生き方と背景を探し、今はそれを見出しつつある、新たなるイレギュラー。

 

 この二者と共にならば、未だ見ぬルビコンの夜明けも開けるかもしれない、と。

 そんな可能性を見出していたのだ。

 

 

 

 そして、その一方で。

 どうにもスタンスを決めかねている男もいた。

 

 

 

『……まぁ……俺からは、なんとも言い難いが……何も言わねえわけにもいかねぇよな。

 今ん所、レッドガンに動けっつう命令は来てねえ。

 ま、どうせあの無能共のことだ、状況の急変に付いて行けずにあたふたしてんだろうよ』

 

『だが、そもそもアイツらの判断がミシガンの野郎の行動よりも早かった試しはねえ。

 次にベイラムが動くとすりゃあ、レッドガンの独断専行って形になるだろうな。それか、あのアホ共が涎垂らして飛びつくようなうま味のある状況になるか、か。

 レッドガンはいつも、実績で周りを黙らせてきた。今回も、コーラル獲得に失敗しただの何だのと言われて責められないよう、何かしら対策は練るはずだ。

 ……あくまでも俺の予想でしかねえけどな』

 

 

 

 気まずそうに言ったのは……。

 レッドガンの5番手、G5イグアスだった。

 

 あのウォッチポイント・アルファに招かれた者の一人である彼もまた、所属企業たるベイラムの使者として、この会議に参加していた。

 

 ラスティと違い、別に企業と袂を分かったわけではない彼は、この場で口にできる情報にも限りがある。

 しかし、だからと言って、何も口にしないわけにもいかなかった。

 

 故に、語って良いと聞かされた情報と、彼の推測だけを口にしたのだ。

 

 

 

 この会議において、ベイラム上層部から任されたイグアスの役割は、2つ。

 ハウンズ陣営及び封鎖機構からの情報収集と、ルビコン3での戦局を可能な限りベイラム有利になるよう誘導することだ。

 

 ──無理言うんじゃねえ!! というのが、正直な感想である。

 

 前者は、会議に参加していれば、ある程度は可能だろうが……。

 後者に関しては、そりゃもう明確にハッキリと、不可能だと断言できた。

 

 なにせイグアスは、これまで目の上のたんこぶとして意識していたために、口にはしないながらもハウンズチームの強さを正しく評価していたし……。

 ハスラー・ワンに至っては、戦場にてその悍ましいまでの強さに直面し、死すら覚悟したのである。

 

 単体戦力でも軍としての戦力でも負けてるんだから、要求なんぞ通せるかボケ!!!

 現場も知らねえ上層部のカス共が、死に腐れ!!!

 ……というのが、偽らざる本音であった。

 

 更にぶっちゃけて言えば、レッドガンの隊長たるミシガンに対してはともかく、ベイラムという企業自体には大して思い入れや帰属意識もないので、いっそ普通に裏切ってやろうかとすら思っているくらいだ。

 

 イグアスが今、内心吐き気を催すような緊張に襲われながらも、かろうじてベイラムの一員としての立場を全うしているのは、「ミシガンにどやされるのが嫌」というそれだけの理由だった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

『なるほどな、情報提供感謝しよう』

 

 

 

 ラスティ、イグアス。

 両企業と繋がりのあった二者の言葉を引き継いだのは……。

 

 この会議の発起人であり、主導者でもある、封鎖機構の意思の表象。

 

 ハスラー・ワンだった。

 

 

 

『さて、その上で……。

 この場で、封鎖機構の次なる判断を告げよう』

 

 

 

 唐突に発された、この会議の確信とも言える議題。

 

 一同が息を呑み、次の言葉を待つ中……。

 

 ハスラー・ワンは、相変わらず無感情に、それを告げた。

 

 

 

 

 

 

『ルビコン星系に駐屯する、アーキバス・コーポレーション勢力を、排除する』

 

『驕りを持ちすぎた者、秩序を破壊する者。この星には、不要だ』

 

 

 







 ということで、Chapter5開始です。
 お待ちくださった読者様には、お待たせしてしまいすみません……!
 他作品の執筆に熱が入ったりTRPGの部屋を用意したりしてた上、5月が想定の3倍くらい忙しく、まともに執筆時間を確保できませんでした。
 なんとか仕上がったので、本日から毎日投稿を開始します。対よろです。


(追記)
 AC6のDLCかAC7、どこ……? ここ……?(絶望)
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