そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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いま、この瞬間からアーキバスは我々の敵

 

 

 

『てわけで、アーキバスを潰そう』

「「「「『『…………』』」」」」

 

 ハスラー・ワン……改め、ハウンズオペレーターの、ナイン。

 彼の唐突に過ぎる言葉に、その場にいる全員が黙り込んでしまった。

 

 今この場にいるのは、7人。

 より正確に言えば、人間が4人とAIが1つ、変異波形が2つだ。

 

 傭兵部隊のハウンズの、レイヴンとリンクス・ウィズ・カラー。

 そのハンドラーたるウォルターに、オペレーターに就くナイン、そしてサポートを請け負うエア。

 

 そして、もう2人。

 

 

 

「まったく……今後どういう展開に転ぶかと思っていたら、まさかこんなことになるとはね。

 やってくれたね、ストレンジャー。私たちの組んでいたプランは一から十までおじゃんだよ、全く」

『──だが、そのおかげで、予測されていた被害より遥かに軽く事が済んだ。

 ボスはこう言っているが、お前には感謝している、ストレンジャー』

『かまわない。俺も俺に出来ることをしただけだしな』

 

 想定外に早まった最終局面を前に、押っ取り刀で駆けつけた、1人と1つ。

 棟梁のシンダー・カーラと、そのサポートAIたるチャティ・スティック。

 

 ただし正確に言えば、彼女たちの立場も、今やRaDであるとは言い難い。

 仮の姿であったRaDという身分を半ば捨てて、彼女たちは本来の身分……コーラルの管理と焼却を目的とするオーバーシアー、ウォルターの同志としてここにいる。

 

 それぞれが内心で考えるところはあるにしても……。

 少なくとも表向き、ここにいる者たちは全員、ウォルターの指揮下で統一されたチームであると言えよう。

 

 

 

 故にこそ、次に口を開いたのは、ウォルターだった。

 

「……何故、アーキバスを攻撃しようと思った?」

『ん? そこは既に共有したと思っていたが……ああ、カーラには伝えていなかったか。

 オーケー、そこから話そう』

 

 ナインの言葉と共に、室内に設置されていたスクリーンとプロジェクターが起動する。

 誰の手にもならないその動きは、一般的に見れば怪奇現象、あるいは何者かのハッキングを疑うべきものだったが……。

 既に一行の中に、その意図を取り違える者はいなかった。

 

 

 

 ナイン──ウォルターたちがルビコン3で再会した617を、まるで保護者のように寄り添い守っていた、不可思議な存在。

 凄まじく高度なハッキング技術やAC操作技術、持ち得るはずのない知識を持ち、何故か617や621、そしてウォルターに同情的で、幾度となく力を貸してくれた誰か。

 

 ハウンズのオペレーターとして活動していた彼は、先日、あろうことか封鎖機構の中枢システムを完全に掌握し、実質的にこの組織を支配下に置いた。

 以後はシステムの意志の表象として「ハスラー・ワン」と名乗り、ルビコン3において武威を見せつけ、企業勢力に圧をかけている。

 

 ナインが理解の及ばない事柄を起こすことなど枚挙に暇がなく、万全のセキュリティを敷いているここの機器を勝手に操作することなど、序の口もいいところだ。

 封鎖機構の中枢システムすら落としてみせたのだから、もはや何が起ころうとも不思議ではなかった。

 

 

 

 果たして、ナインが今回スクリーン上に映し出したのは……5つの円。

 それぞれの中に、ハウンズ、ベイラム、アーキバス、封鎖機構、解放戦線と名前が刻まれている。

 

『知っての通り、この5つが、現時点においてルビコン3に駐屯する戦力だ。

 自陣営であるハウンズ、俺が掌握した封鎖機構は除くとして……。

 残る3つ、ベイラム、アーキバス、解放戦線。

 これらが俺たちの前に立ち塞がって来得る相手になるだろう』

 

 5つの円の内、2つが灰色に染まって隅に寄せられ、残った3つがクローズアップされ。

 それらが大きさを変え、アーキバスが最も大きな円、ベイラムがそれに次ぐ大きさの円、解放戦線は他2つより二回り程小さな円になった。

 

 

 

『さて……617と621に訊こう。

 これらの内、俺たちが最も脅威として見るべき、排除すべき陣営はどれだ?』

「アーキバス!」

『……同意します。617もアーキバスであると判断します』

 

 元気いっぱい私怨たっぷりに手を挙げて答えた621。

 617はその後に、少し考えた後頷いた。

 

『ふむ、理由を聞こうか』

「アーキバスはうざい。ずるいことする。だからじゃま。くそ眼鏡ぶっころしたい」

『現時点における戦力はアーキバスが最も大きい。

 また、ラスティの言葉が正しければ既に上層部が及び腰になっているため、星系外へと撤退させることも困難ではないと思えます。

 総合的に言って、排除すべき優先度が高く、また排除しやすい状況であると推察します』

 

 「それぞれに面白い意見だ」と、ナインは評価した。

 

 621は……そもそも、企業戦力を脅威と見なしていない。

 真正面からぶつかれば、自分は決して負けない。

 故に脅威になるのは、奇策に長けたアーキバスだけだ、と。

 ……過去の周回で2回程、それで捕虜にされたことが、トラウマになってしまっているのかもしれない。

 

 一方で617は、純粋に戦力比とタイミングを見ていた。

 アーキバスは強大な戦力を有しており、なおかつ本社が損切りを考慮に入れている今、強く叩けば星系外への撤退の気風をより強めることができる、と。

 愛弟子のような存在である617が、すっかりその辺りの思考を回せるようになったことに、ナインは満足げな息を吐いた。

 

 

 

『うん、そうだな。2人の意見を俺も支持しよう。今叩くべきはアーキバスだ。

 ……だが、俺からは、もう1つの理由も提示しよう。もうウォルターたちには共有したことだがな』

 

 続けて、ナインが言った言葉は……。

 少なからず、カーラを仰天させるものだった。

 

 

 

『アーキバスさえこの惑星から排除すれば、他の2陣営……ベイラムと解放戦線とは、長期的に協調姿勢を取れるから、だな』

 

 

 

「……おいおい、何の冗談だい、それは」

 

 流石に口を挟まざるを得なかった。

 

 カーラ程に、このルビコンの確執を知る者もいない。

 

 惑星の寒冷化、それに基づく食糧不足、餓えるルビコニアンに、コーラルによる汚染と、ルビコン3という惑星は実に終わり散らかしている。

 そこにコーラルを獲得せんと乗り込んで来る企業は、ルビコニアンやルビコン3の状況など考えることもなく、傍若無人に資源を採掘するばかりで荒らしたい放題だ。

 

 故にこそ、ルビコニアンたちと企業が手を取り合うことなど、あり得ない。

 あるとしても、あのアイスワームの討伐のように、共通の敵がいる時一時的に戦うだけだ。協調姿勢とは到底言えないだろう。

 

 仮にアーキバス撃破の目的で一時的に協力したとしても、それが叶った段階で、再び敵対関係に戻る。

 なにせ両者の目的は、おおよそ真逆とすら言っていいのだ。

 長期的な協力関係の構築は、おおよそ不可能なはず。

 

 更に言えばそこに、コーラルを危険視し、封鎖せんとする封鎖機構もいる。

 実質的にはナインが掌握しているとはいえ、最低限コーラル封鎖のために、大義名分は必要だろう。

 むざむざ危険性のあるコーラルを星系外へ持ち出すことなど、到底許されないはずだ。

 

 

 

 ……と、それがカーラの認識だったのだが。

 

 ナインはそれを、軽く否定した。

 

『冗談じゃないさ。というのも、俺が封鎖機構を落としてるからな。

 システムは、封鎖機構単体ではコーラルの封鎖を永続的に続けられないと判断した。

 故に、企業による研究によってこれを無害化すること、爆発的な自己増殖機能を凍結もしくは減衰させることを条件として、コーラルを資源として制限付きで販売することを許可する。

 そしてこの利益の一部を、コーラルの防衛にあたる解放戦線に供与する。これによってルビコニアンたちの安定した生活という、彼らの一番の目的は満たせるだろう。

 勿論、企業の圧政は封鎖機構の方で跳ね除ける。できればそこで、ハウンズの力も借りたいところだ。彼女たちの安定した生活にも繋がるだろう。

 ルビコン3という土地は貧しいが、幸いコーラルという資源があるからな。管理さえ徹底すれば、ここに外貨をもたらすのは難しくない』

 

 ベイラムはコーラルを独占販売・活用する権利を得る代わり、コーラル研究費用を出す。

 それによってコーラルの爆発的拡散と環境汚染を制御することで、封鎖機構としてもコーラルの封鎖の必要性をある程度考えなおすことができるだろう。

 

 解放戦線は封鎖機構の管轄下でコーラルの不法な略奪を防ぐことで、星系外からもたらされる莫大な外貨を得て、日々の生活を安定させることができ、苦しい現状を立て直すことだってできるだろう。

 

 一方封鎖機構は企業による圧力を押し留めて解放戦線を支えることで、ルビコン3の状況を好転させ、現地の人間と協調してコーラルの封鎖を行うことができる、と。

 

『勿論、それぞれの陣営にとって、理想的な未来というわけではないだろうが。

 それでも、アーキバスという企業を一つ潰しさえすれば、俺が大体上手く事を纏めることができる。

 なにせ封鎖機構が後ろ盾になって太鼓判を押すんだ、特にベイラムの上層部なんかは利益に飛びついて来るだろうさ』

 

 

 

 「おぉ……」と目を輝かせる621、深く考え込む617の横で。

 

「へえ、なるほどねぇ……」

「…………」

 

 カーラとウォルターは、その言葉に目を細めていた。

 

 封鎖機構や彼自身の武力を前提とした、ベイラムと解放戦線の調停。

 あまりにも現実味のないその話に呆れた、という側面もあるが……。

 

 ──何よりそれは、彼らオーバーシアーの望みとは、決定的に相反するものだったから。

 

 オーバーシアーの目的は……ルビコン3に残った、全コーラルの焼却。

 コーラルを資源として残すことで、ルビコン3の復興を目指すナインのプランとは、どうしても相反してしまうものだ。

 

 未だ、ハウンズの2人やナインには明言してはいないが故に、ナインはこの案を上げて来たのだろう。

 ……あるいは、察しの良すぎるナインのことなので、理解した上でなんらかの意図を持って伝えてきているのかもしれないが。

 

 

 

 しかし、少なくとも目の前の目標に限って判断すれば、彼の立てた計画は十分に利用し得るもの。

 

 そう認識したからこそ、カーラは頷いて見せた。

 

「……確かに、ヴェスパー部隊は強硬姿勢みたいだしね。まずはここを落とすってのは頷ける話だ」

 

 コーラルの焼却という彼女たちの目的において、最大の推進力となるのは、膨大な資金を以てコーラル集積地点の調査を行う企業だが……。

 同時、最大の障害もまた、資源としてコーラルを求める企業だ。

 

 解放戦線は現状の打破を望んでいるだけで、ミールワームの飼料や燃料としてコーラルを必要とはしているし、ある種のアイデンティティのような拘りはあるが、一片たりとも手放すつもりはないという程ではないし。

 封鎖機構はむしろコーラルの危険性を認識しており、オーバーシアー程に急進的ではないにしろ、焼却できるのならしてしまいたいというのが本音だろう。

 

 それに対して、企業はコーラルを一片残らず独占することを望むだろう。

 自然、コーラルを守ろうとする意思も、全陣営の中で最も強い。

 

 資金力や兵力の面から見ても、やはり最大の敵は企業……。

 特に、その施策や行動に容赦も倫理もない、アーキバスであることは明白だった。

 

 故に……そこから先、どうなるかはわからないとしても。

 ひとまず、協力してアーキバスを落とすことに、否はなかった。

 

 

 

『よし、それでは、まずはアーキバスを潰す方向で。

 連帯感を強めるためにも、ハウンズ、封鎖機構、ベイラム、解放戦線の四陣営合同で、徹底的かつ確実に叩き潰してやろう。

 幸い、奴らの弱点はかなり露骨だし、そう苦労もしないだろうが』

『弱点……ですか?』

 

 こてりと小首を傾げた617。

 しかし、彼女以外の者たちは、なんとなくその正体を察していたし……。

 

 特に、621は、うげっという表情をしながら、それを確信しているようだった。

 

 

 

「……V.Ⅱスネイル。

 あの死にぞこないのいんけんくそ眼鏡さえぶっ殺せれば、アーキバスはそれでおわりでしょ」

 

 

 







 ナイン&封鎖機構&ハウンズ&ベイラム&解放戦線 vs スネイル(アーキバス)

 これは熱いマッチになりますよ! 是非皆さんもスネイル単勝に賭けましょうね!
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