そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを   作:アリマリア

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I WAS ARQUEBUS!!!

 

 

 

 V.Ⅰフロイトが斃れた頃合い。

 

 リチャード前哨基地、管制棟では……。

 

『おかしいな……私は、V.Ⅰになるはず……』

 

 V.ⅧだかV.Ⅶだかの「さいこぱす」が、特にこれといった見どころもなく、普通に死んでいた。

 

 そもそも、別にめちゃくちゃ強い相手とかでもなく、むしろ弱い方の雑兵AC乗りだ。

 独立傭兵レイヴンと出くわせば、至極当然の末路だと言えるだろう。

 

 

 

 同時、「Loader 4」の中に、基地の彼方からの通信が届く。

 

『……ふぅ。AC「ロックスミス」撃破、問題なく完了しました。

 様子見とAP、ACS負荷調整のために少々被弾はしましたが、問題なく処理できました。

 引き続き増援部隊への警戒、並びにアーキバス戦力の逐次撃破に努めます』

 

 僅かに興奮の窺える617の報告に、僚機たちはそれぞれに反応を示した。

 

【お見事。崖上に補給ドローンを手配した、一応補給しておいてくれ】

 

『マジかよ……コイツ、1対1でアーキバスの頭を潰しやがった』

『ふ、こちらも負けてはいられんな。奮えよイグアス、お前から前に出たのだからな』

 

『流石だな、朋友。こちらもペースを上げていくとしよう』

『ラスティ、急き過ぎるな。既にV.Ⅵメーテルリンクは撃破している。一度体勢を整えるぞ』

 

 ナインからは、賞賛と心配が。

 ベイラムからは、驚嘆と奮起が。

 解放戦線からは、感心と平静が。

 

 それぞれ、617に注がれる。

 

 

 

 そして、彼らが向けたものとはまた違う感想を、621は漏らした。

 

「……つよくなったね、リンクス」

 

 フロイトを、余裕を持って撃破できる。

 それは紛うことなく、自分に次ぐ最強の証明だ。

 

 617を、時に可愛らしい妹のように、時に賢く頼れる仲間のように621からすれば、その成長が感慨深かった。

 

 

 

『……おねえちゃんとして、負けてられない。私も進もう』

『え……レイヴンが、お姉ちゃん、ですか…………?』

『え?』

『い、いえ……』

 

 お互いに微妙なすれ違いを感じながらも、621は「Loader 4」を前へと進めた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そうして管制棟の中を、621は駆けた。

 

 通信設備、サーバー、向かってくる敵機に、吊り下げられていた兵器。

 目に付くものを片端からぶっ壊しながらも、唯我独尊問答無用の行軍は続き……。

 

 その果てに、管制棟の下層にて、目標の元に辿り着いた。

 

 

 

『おう、遅かったな野良犬ゥ! 手ェ貸せ、コイツボコるぞ!!』

『っ……おのれ、ベイラムの飼い犬に続き狂犬とは……!!』

 

 「Loader 4」が辿り着いた時。

 真っ白な壁に囲まれたACの格納庫にて、2機のACが矛を交えていた。

 

 片や、V.Ⅱスネイル乗機、「オープンフェイス」。

 片や、G4イグアス乗機、「ヘッドブリンガー」。

 

 ……ただし、後者に限っては、以前に見た時とは大幅にアセンブルが異なっていた。

 

 外装パーツは、ベイラムのパーツを軸にしているのは違いないが、オールマインドのハンティング報酬で供与されるパーツが組み込んでいるし。

 リニアライフルにマシンガン、4連マルチロックミサイルにパルスシールドという、中距離の正面戦闘を想定した模範的な武装構成だったそれは……。

 今やハンドガンにバズーカ、8連ミサイル、パルスブレードと、攻撃的なアセンに様相を変えている。

 

 

 

 そんな武装の中でも、621は左肩にハンガーされた武装に目を付けた。

 

「! ぶった! ぶったぎりだ!」

 

 「HI-32: BU-TT/A」。

 かつて621も愛用していた、スタッガーした相手への畳みかけに長けたパルスブレードだ。

 

 面白い型番、無難に使いやすい性能、高い攻撃力と直撃補正、軽い負荷と重量。

 あらゆる面で優秀に纏まった、かつての621のお気に入り武装の1つだった。

 

『あ!? ……ああ、パルスブレードのことか。そういやそんな型番だったか』

「ぶった良いよね……良い……。使いやすくてつよい、一番さいこうなタイプの武器」

『いいから手伝えっつってんだろテメェからぶっ殺すぞ!』

『無理なことをようほえる』

『うるせえ!!!』

 

 好きな武装を見たあまりオタクみたいになっていた621を、イグアスは半ギレ状態で怒鳴りつける。

 

 

 

 そして、広域放送に乗ったその和気藹々とした話に、スネイルは叫んだ。

 

『やかましい、封鎖機構に轡を付けられた獣畜生共が!!!

 この私を……企業を! アーキバスを!! 愚かにも貶めようとする品のない害獣!!!

 私ではなくベイラムを選んだ封鎖機構も! どいつもこいつも、私を苛立たせる……!!!』

『キンキンうるせえぞテメェ! 話に入ってくんじゃねえ!!』

「あんまり怒ってるとはげるよ。てかはげろ」

『つうかなんだコイツ、自分と企業を同一視してんの普通に頭おかしいんじゃねえのか?』

「頭アーキバスだから。私こそが企業だー(笑)」

『ッッッ!!! 死ねッッッ!!!!!』

 

 ついに自分まで品性を捨ててマジギレしたスネイル。

 

 「オープンフェイス」は張り付いていた「ヘッドブリンガー」をアサルトアーマーで追い払い。

 「Loader 4」に向けて、レーザーランスを用いて突進してくる。

 

 

 

 しかし。

 その感情的な攻撃に対して、621の対応には、感情がなかった。

 

「お前がしね」

 

 先程までのふざけたやり取りが嘘だったかのように冷たく吐き捨て、ひらりとその突進を躱し。

 彼女はアサルトブーストを起動、その後ろ背中にショットガンをぶち当てつつ、逆関節の脚で思い切り蹴りつけた。

 

『ぐっ──この、足癖の悪い……!』

「せいかくが悪いよりマシ」

『はっ、言えてらぁ!』

 

 仰け反ったオープンフェイスに対し、続けてイグアスが小さく飛び跳ね、上空からバズーカを落ち下ろす。

 

 綺麗に「Loader 4」から射線を外した攻撃は、直撃こそしなかったものの「オープンフェイス」にクイックブーストを強い、その上爆風はその機体を煽ってAPを大きく削り取る。

 

「へぇ、うまいじゃん」

『っ! ……はっ、上から目線で評価してんじゃねえよ!』

 

 621の素直な評価を、イグアスはぶっきらぼうを装って答えた。

 

 その言葉には微かな喜色も含まれていて、一般的に言えば照れ隠しにあたるものだったが……。

 621はそういった細かいニュアンスを汲むのが得意ではないし、スネイルは彼らの都合になど全く興味がなかったので、イグアスの真意は闇の中へと葬られたのだった。

 

 

 

 ……しかし、懐かしいなぁ、と。

 621は内心で、奇妙な既視感を憶えた。

 

 「オープンフェイス」、「ヘッドブリンガー」。

 621には、この2機のACと同時に、戦場で矛を交えた記憶があった。

 

 3周目、コーラルリリースへと繋がる、621にとっては直近の周回。

 集積コーラル到達の途上、彼女は傭兵支援システムオールマインドからの指示を受け、伏兵として漁夫の利を狙っていたスネイルを襲撃した。

 

 そして直後、誰かから唆されたらしいイグアスが突っ込んで来て、三つ巴の戦いになったのだ。

 

 どちらかを集中的に狙おうとすると、もう片方が殴り掛かって妨害してくるし。

 武装をリロードしてからスタッガーに持ち込もうと調整しても、勝手に殴られてタイミングがズレたりもする。

 これが純粋な敵というならばまだ警戒できようものだが、あまり慣れないバトルロワイヤル形式だからこそ相手の動きが読み辛くなり、どうしても被害がかさんでしまった。

 

 アレは直前の周回だったので、621にとっては比較的直近の記憶。

 そこそこ苦戦させられた、苦い経験だったのだが……。

 

 それも、時と場合によって変わるもの。

 まさか、イグアスと協力してスネイルを殺そうとするような展開が来るとは……。

 当然ながら、621は欠片たりとも想定してはいなかった。

 

 ……そして、それに案外、悪い気がしないことも、また。

 

 

 

『イラつくぜ……野良犬に、憧れたんだ……』

 

 前の周で、長らくの因縁に決着を付けた時。

 最後に呟かれた言葉は、これまでのものと違って、とても純粋で真っ直ぐだった。

 

 余計な繕いもなく、反感もなく、ただ自らの心根をそのまま吐き出した刹那。

 それを聞いて、621はようやく、イグアスという男を少しだけ理解できた気がした。

 

 だからこそ……今でもうるさいとは思うし、なんならウザいし、鬱陶しくもなるが……。

 それでも、イグアスに対して、そこまで不快感も持ってはいない。

 

 こうして肩を並べることも、そう悪いとは思えなかった。

 

 

 

「足、引っ張らないでね」

『テメェがなァッ!!』

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そんな2人に対し。

 

 スネイルの心境はと言えば、当然ながら苛立ちと苦悩に満ちていた。

 

 何故こんなことになったのか。

 そんな意味のない問いばかりが、頭の中をリフレインしている。

 

 

 

 全ての計算が狂ったのは、アイスワーム撃破ミッションだった。

 

 あの時、余計な横槍が入らなければ。

 自分以外の誰かが狙われていたなら。

 第四隊長が裏切らなければ。

 上層部が道理も弁えない無能でなければ。

 

 もしそうであれば、今のような状況には陥らなかったはずだ。

 

 ベイラムではなくアーキバスが、自分こそが、この趨勢に食い込んでいた。

 封鎖機構とすら友誼を結べたかもしれない。

 コーラルはアーキバスが独占することができただろう。

 当然、スネイルはアーキバスでの立場を確かなものとし、現実の戦場を知らない無能共を排除して、より確かな采配でアーキバスを牽引できただろう。

 

 あと一歩だったのだ。

 コーラル集積地点の情報を探ることさえできれば、アーキバスの勝ちだった。

 

 ベイラムなどという、脳みそのあるべき空間にまで筋肉を詰め込んだ連中に、頭脳戦や政治の面で負ける気などさらさらない。

 スネイルからすれば、もはや未来は約束されたも同然に見えていた。

 

 それなのに……。

 

 

 

『ハスラー・ワン、お前さえいなければ……。

 いいや、あの場に第四隊長ではなく、フロイトがいれば……!!

 フロイトならば、あの「ナインボール」さえ障害にはならなかったはずだ!!!』

 

 そう。

 

 彼が絶対の信頼を置く、フロイトさえいれば。

 アーキバスにおいて負けなし、ただ一人孤高の最強であったフロイトさえいれば……。

 

 ハスラー・ワンすら撃破せしめた。

 

 そう、スネイルは信じていた。

 

『ハッ……貴様らも、いつまで調子付いていられるか見物だな!

 既にフロイトはこの基地に到着しているだろう!

 貴様らの悪運も、その到着と共に絶えることになるわけだ!!』

 

 フロイトが戦場に出ている以上、敗北の可能性はない。

 そう思うからこそ、スネイルは1対2の戦況であろうと、変わらず余裕を保っている。

 

 

 

 対し、向かう2機のACの中で。

 

「は? 何いってんのこのばか。油断したりしなきゃ、617があの戦闘狂なんかに負けるわけないし」

 

 621は上機嫌な様子を一転、不愉快そうに眉をひそめ。

 

『それは無理筋だろうがよ……っつか、そのご自慢のエース様、ついさっき野良猫に負けて死んだっつってたじゃねえか。連絡来てねえのか……?』

 

 イグアスはその妄信っぷりにドン引いていた。

 

 

 

「……はあ、もういい。おまえと話すのは不快。さっさと終わらせる」

 

 621は呟き、ACを前に進める。

 イグアスと連携し、じわじわとアドバンテージを取るような戦い方から切り替え……。

 積極的に、敵を押し潰す、彼女本来の戦術へ。

 

 これまでハウンズ対策として、彼女たちの戦闘映像を山ほど見ていたイグアスは、そのスタンスの変化を鋭敏に察し、追従するように彼もまた前へ。

 2人はクロスファイアの形を基本に、スネイルを挟み込んで苛烈な攻撃を浴びせていく。

 

『くっ、害獣共が……アーキバスの手を煩わせるとは、どこまでも愚かな!!

 道理も弁えぬのなら、平服して首を差し出せ!! 企業の御前だぞ!!!』

『コイツマジで狂ってんじゃねェか……?』

 

 

 

 無論、「オープンフェイス」もただやられるだけではない。

 プラズマライフルやスタンガンで抵抗しようとするものの……。

 

 そもそも、中量級の「ヘッドブリンガー」と「Loader 4」に対し、「オープンフェイス」は重量級。

 敵機の攻撃を躱すというよりは、受け止めながら殴り返す戦法を主軸とする機体だ。

 

 ……しかし、肉を切らせて骨を断つ戦術が通用するのは、彼我の戦力差が等しい時だけ。

 

 1対2で戦えば、軽い攻撃は勿論、本来ならば是が非でも回避すべき攻撃すらも回避しきれなくなり。

 ダメージレースはどうしたって向こう側に傾き、本来ならばどっしりと構えて反撃することすらままならない。

 

 故に、じわり、じわりと……いいや、目に見えて明白に、趨勢は傾いていき。

 

『馬鹿な、何故フロイトは……!?

 在り得ない! この私が、アーキバスが、こんなところで終わるというのか……!?

 それもッ、このような犬畜生共によって!? 何も為せないままに!?

 こんな、こんな理不尽があっていいというのかッ!!??』

 

 「オープンフェイス」がスタッガー。

 スネイルの声音に、ついに恐怖と焦燥が溢れたところで……。

 

 621は、右肩の武装を稼働させながら、言った。

 

 

 

「おまえには、いつもこれをぶちこむことにしてる」

 

 それは、スネイルもよく知る武装だった。

 いいや、それどころか、彼らアーキバスがわざわざ彼女に供与したものだった。

 

 VE-60SNA。スタンニードルランチャー。

 

 彼女が「ワーム砲」と呼び愛用していた兵器。

 本来は敵機の電気系統に干渉し、シールドの発生を抑止したり、敵機を鹵獲するために作られた兵器。

 

 ……けれど、今この瞬間の使用用途は、そんな穏当なものではなかった。

 

「死ね」

 

 純粋な殺意と共に、その杭は過たず、コックピットに向けて放たれ……。

 

 

 

『ッ!!』

 

 スネイルは、反射的に脱出装置を起動する。

 

 まだ終わったわけではない。

 アーキバスの頭脳の中核たる自分が死なない限りは、いくらでも再起の可能性があるのだ。

 

 だからこそスネイルは、逃走を敗北とは思わない。

 

 これが正しい行動だと疑うことなく。

 むしろ、爆散する本機から脱出ポットが無事に射出されたことで、戦略的な勝利を確信すらして……。

 

 

 

「もう、逃がさない」

 

 

 

 「Loader 4」が、破片に偽造した小さなポットを見逃さず、大きく脚を振り上げる姿を視認して……。

 

『やめろッ、こんな、こんなことが許されると思って……ッ!!

 ぐっ、ぁ、ぎゃぁぁぁああああッッッ!!!』

 

 ただ、断末魔を上げることしか、できなかった。

 

 

 







 本日の傭兵事情

・識別名
 Rb31 独立傭兵「リンクス・ウィズ・カラー」
 ランク6/A(3↑)



・アセン
 『フォーアンサー』

 右腕:MA-E-210 ETSUJIN(バーストマシンガン)
 左腕:MA-E-210 ETSUJIN(バーストマシンガン)
 右肩:Vvc-706PM(六連装備プラズマミサイル)
 左肩:PB-033M ASHMEAD(パイルバンカー)

 ヘッド:HC-2000/SOS HOUND EYE(オリジナル)
 コア:EL-TC-10 FIRMEZA
 アーム:VP-46D
 レッグ:NACHTREIHER/42E

 ブースター:IB-C03B: NGI 001(高負荷高性能)
 FSC:FC-008 TALBOT(近中距離改良型)
 ジェネレーター:DF-GN-06 MING-TANG(中容量高補充)
 コア拡張:アサルトアーマー(3回)
 リペアキット:使用可能(3回)



・収支
 +1,317,077c

[アイスワーム撃破(alt)]
 +320,000c(基本報酬)
 +200,000c(V.Ⅰ撃破)

[経費]
 -7,100c(武装修理費)
 -10,080c(外装修理費)
 -1,116c(内装修理費)
 -38,010c(弾薬費)
 -5c(必需品購入)
 ─────────────────────
 +1,780,766c(463,689cの黒字)



《617追記》

 今回のミッションも無事に終了。
 おにいさまも、621も、大きなけがはなかった。
 わたしは、それがうれしい。

 ……でも、同時に、もっと戦いたいとも思ってしまう。
 もっとうでをみがいて、もっと強くなって、もっとおにいさまにほめられて、もっとウォルターと621にたよられたい。
 そしてなにより……もっともっと、命がけの戦いをしたい。

 むじゅん、してる。
 仲の良い人たちの無事を願いながら、自分は危ない戦場をのぞんでるなんて。

 でも、それがわたしなんだって、最近思うようになった。
 人間は、本当に、むずかしい。



《ナイン追記》

 計画は順調に推移。
 次回辺り、オーバーシアーで……その次は、いよいよか。
 引継ぎの資料を作成しとかないとな。エアなら、上手くやってくれるだろう。

 617も621も、いよいよ育って来た。期待できそうだ。

 ……怒られるかなぁ。怒られるだろうなぁ。
 でも、全ての火種を断つには、これがベストな道。
 大丈夫。最後に至るのは、きっと最高の答えなはずだから。
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