pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
この世界は「テルカ・リュミレース」と呼ばれている。
世界には魔物が跋扈し、人は魔物の侵入を防ぐ結界が張られた街の中に閉じこもって生活を営んでいた。そして大半の者は、街の外に出ることもなく生涯を全うする。
しかし街と街の繋がりを維持するため、凶悪な魔物から街を守るため、飽くなき好奇心ゆえに、極一部の者が結界の外へと出ることもあった。
凶悪な魔物に襲われているこの馬車もまた、街と街の物流を維持する目的で、次の街へ向かう途中の旅路であった。
馬車を守るように、十数名の護衛らしき男たちは、各々の得物である剣や槍で、魔物に応戦している。
「何でこんな所にエッグベアが⁈」
「大方クオイの森から来たんだろう…」
そう言い、憎々しげに自身らの体格を凌駕する熊の魔物、エッグベアを睨みつける。
直後、背後の同僚が放った矢がエッグベアの目を貫いた。怯んだ隙に槍を突き出したところ、幸運にもエッグベアの胸を貫くことができた。
何とか1体を倒すも、残り2体が連携をとり始め、馬車の護衛たちは一気に押される。
その隙を突いた1体が、豪奢な馬車へと駆けて行き、馬車に向けて腕を振り翳した。
ザシュッ
ウギャィゥウウッ⁈
振り下ろされる前、腕にナイフが刺さり、エッグベアは警戒するように後退した。
護衛がナイフが飛んできた元に視線をやると、小柄な人影が茂みを縫うように走り抜け、再び茂みの中からナイフを放った。術が仕込まれているらしく、額に刺さったナイフに稲妻が走り、エッグベアの動きが止まる。
攻撃が浅いと護衛は追撃しようとしたが、間髪入れずに次のナイフが放たれ、刺さった胸から急速に岩が成長した。結果、胸に大穴が空き、エッグベアは仰向けに倒れ込んだ。
突然の出来事で呆然としている護衛、仲間が倒されて怒り狂ったもう1体への対応が遅れてしまった。
「しまった‼︎」
しかしエッグベアは護衛に攻撃を加えることなく、勢いに任せたまま地面に倒れ伏す。その背の中央の毛皮は焼け焦げ、抉れて背骨が無くなった奥に、血溜まりの大穴が開いていた。
「大丈夫ですか?」
成人していない高い声で話しかけつつ、エッグベアを2体倒した者は茂みから出てきて、少し大きめのフード付きマントを羽織った姿を現した。
護衛らが答える前に、騒動が収まったと判断したのか、馬車の扉が開いた。同乗者であるメガネの少女を残して、男は一人馬車から降り、自身らを救った者に声をかけた。
「こちらは問題ない。私はカウフマン。助けていただき感謝する。何か謝礼で望む物はないか?」
カウフマンに尋ねられ、マントのフードを外さないまま少し考えた後、先ほど倒したエッグベアを指差した。
「貴方の護衛が倒した分も含めて、エッグベアの素材をいただけないでしょうか?」
「それは構わないが…だがそれでは謝礼としては不十分…」
カウフマンの言葉の途中で、茂みから複数の武装した男たちが姿を現した。統一感のある身なりからして、何処かの私兵のようであった。
「お怪我はありませんか⁈」
「大丈夫です。そっちはいくつですか?」
「2体です」
「こっちは3体。必要量は確保できたから撤収しましょう」
「了解しました!」
マントを被った子供が主人らしく、私兵たちは指示通りにエッグベアを担ぎ、砦へ続く道へを歩き始めた。
「それでは、失礼致します」
そう一礼した後、私兵たちに続いてカウフマンの馬車を後にした。
護衛の怪我は軽微、馬車に損傷がないことを確認して、カウフマンは馬車に乗り込んだ。
「さっきの子、すごかったですね。お父様」
馬車に乗っていた少女が、そう話しかけてきた。
「あの私兵が身につけていた家紋…ディノイア家の者で間違いないだろう」
「ディノイア家?」
「帝都の貴族の一つだ。帝国の評議会に名を連ねるほどの名門だったが、ここ数代は選出されていない。巻き返しのために新航路を開くのに失敗して、当主が亡くなったと聞いたな」
「……さっきの子、素材を欲しがっていたけど、生活が大変なのかしら?」
「マリー。他所の家、特に貴族には余計な詮索はしないことだ。さあ、行こう。予定より遅れたが、ハルルへ向かおうじゃないか」
そうしてカウフマン一行は、次の街を目指して馬車を出発させたのであった。
このテルカ・リュミレースを治める国家は一つしか存在しない。故に名称はなく「帝国」と呼称されている。
古代からの血統を受け継ぐ皇帝を頂点に、政治を担う評議会と、軍事・治安維持を担う騎士団の二本柱で国家運営を支えていた。
帝国への貢献を認められた者には皇帝から貴族の位が授けられ、重要な役職を任されいた。そのため、評議会の席は必然と貴族が占めており、一国しか存在しないという対抗国がない故、流動性の少ない社会構造となり、建国から千年という年月の中で、貴族の地位は特権階級化していた。
民と公益を守る責務を負う故の特権の筈だが、近年では権力の濫用や富の独占などの不正が横行し、一般市民を下民と呼んで蔑む貴族が多い状況であった。
その帝国の都がザーフィアスであり、この世界で最も強固で最大の大きさを誇る結界に守られた街でもあった。
上記の社会構造を反映して、帝都は貴族街、市民街、下町と身分ごとに住む区画が分けられていた。
先刻、エッグベアを倒した一行は、倒した獲物を荷台に乗せ、下町に繋がる門から帝都に入場した。
そしてそのまま下町の食堂へ向かい、食堂の主人に希望する素材を記したメモと共にエッグベアを引き渡した。
「じゃあ、解体しときますんで、ご希望の素材は明日にお渡しします」
「急な依頼を受けていただき、いつもありがとうございます。明日の昼に人を遣わします」
「分かりました。で…他の素材、本当にもらっちゃっていいんですか?」
「当然です。最優先で解体をやってもらう対価ですので」
「いつもありがとうございます」
そう言い深く頭を下げる主人に、マントを被った子供は片手をあげて応えて食堂を出る。
荷台や諸々の道具はすでに私兵が片付け終えた様子で、護衛の一人以外の姿はなかった。
そして下町の端に移動し、中央公園の境にいる道端の馬車に乗り込んだ。護衛が御者台に乗り込み、隣の御者へ指示を出すと、馬車は静かに動き出した。
馬車は貴族街へと入り、ある屋敷の前に停車した。
馬車から降りてきたのは、銀髪で緋色の目をし、紺色のドレスに身を包んだ一人の少女であった。
「お帰りなさいませ。ソフィア様」
「変わりありませんか?」
「アレクセイ様から手紙が届いています」
そう言い家令は、一通の手紙とペーパーナイフが乗った銀の盆をソフィアに向けた。
ソフィアの兄で、このディノイア家の当主アレクセイからの手紙には、近いうちに屋敷に戻る旨が記されていた。
ソフィアが手紙の内容を伝えると、有能な家令は出迎えの準備をすると答えた。
「それから、今日の狩りの素材、明日には出来上がるそうです。受け取りをお願いします」
「承知しました。しかし下町に依頼を出さずとも…」
「この近辺で頻繁に出したら怪しまれて、他の貴族に勘ぐられるのも面倒でしょう? それに一度出した事があるけど、解体費用を素材の買い取りで相殺してくれないから、現金が必要になります」
不要な素材を売ってお金に変えるとしても、中間マージンがかなりかかり、解体費用をギリギリ賄えるかどうか。手間を考えるとむしろマイナスというのが、ソフィアの感想であった。
「それに、下町の方が素材を丁寧に扱ってくれるのよ。彼らにとっては、どれも貴重だから」
「左様ですか…」
「割りのいい仕事を失いたくないから口は固いし、必要な素材以外は引き取ってもらえるし、それで解体費用を相殺してくれるから現金を用意する必要はないですし、みんな幸せで万々歳です」
「左様ですか」
「それでは部屋に戻ります」
「承知しました」
一通りの仕事を終えるや否や、ソフィアは自室へと漸く戻った。
侍女たちが入浴の準備をしている間に、ソフィアは今日で狩った魔物と得られた素材の記録し、これまでに得た素材と共に集計する。そして多くの栞が挟まれた専門書を見返して、メモの内容と比較した。
「ふう……何とか全部揃った……自力で素材を集めるため、魔物が狩れるまで鍛えるのに1年。魔物素材を集め始めて約半年か…」
呟くようにそう言って、ソフィアは日記帳を手に取って、2年前に記したページを開いた。
初めての船旅に思いを寄せて、期待に胸を膨らませていたことが、半ば踊る筆跡で書かれていた。
その船旅で、人生の終焉を迎える事になるとは、思いもよらなかったのだろう。
ソフィアはそこで遭難し、生死を彷徨って蘇生した。
正確には、別世界の住民であった魂が、今の身体に入り込んだ。このソフィア・ディノイアの生を引き継ぐ形で、異世界転生をしたのだ。
前世でやり込んでいた「テイルズオブヴェスペリア」のゲームの世界、ゲームの舞台から25年前の時代に。
pixivでは完結済みですので、毎日21:00更新を目指します。
デュークは第3話以降で登場予定です。