TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



貴族教育交流会(出会いゼロは乙女ゲーにならぬ)

 

 貴族教育交流会の開催宣言は、初日の夜会で華々しく行われた。

 主宰家はファリハイドの中でも名家として知られるアトマイス家。

 その当主であるスパルド・アトマイスへ挨拶をする者は絶えず、人が空くタイミングを見計らうため、ソフィアは少し壁側で待機した。

 

 ふと視線を向けたソフィアは、スパルドの背後にいる同い年くらいの少年と視線が合った。墨色の髪に翠の瞳の少年は、ソフィアに何か気づいたらしく、何か確認するような視線を向け続ける。

 何処かで会ったかと記憶を辿っていた時、スパルドがソフィアの方へ歩み寄ってきた。

「ソフィア・ディノイア嬢ではないか?」

「……挨拶が遅れたこと、お詫び申し上げます。ソフィア・ディノイアと申します」

 名前を言われた以上、隠したところで意味はない。だが、自身がここに居ると自ら知らせる事となり、周囲の視線がこちらに集まる感触は良いものではなかった。

「兄君のアレクセイ殿は、彼が御前試合で優勝された折にお会いした事がある。彼と同じ緋色の瞳と銀の髪でもしやと思ったが…帝都より遥々この地に来て頂き、光栄ですな」

 周辺から漏れ聞こえる話の端々から、廉価版通信魔導器(コールブラスティア)の単語が聞こえ、帝都から離れたこの地であっても、既に自身の事が知れ渡っていると認識した。

 それも、廉価版通信魔導器(コールブラスティア)が広まり、情報が流れる速度が上がった事が最大の理由であることから、自業自得なのではあるが…

「師としておりましたヘルメス様が、廉価版通信魔導器(コールブラスティア)を作られ、研究に専念する事となりました。私へ教育する者が不在となりましたので、帝国貴族の子女としての教育を受けるため、こちらに伺いました次第です」

「廉価版通信魔導器(コールブラスティア)は貴女の発明という噂があるが」

「いいえ。その発明をした偉大な研究者を家庭教師にしていただけです」

 地方都市にまで広がりつつある噂を、ソフィアはキッパリと否定する。スパルドは目を細めて、しばしソフィアを見やった。

「……それは失礼した。有意義な時間を過ごされるように」

「心遣い感謝致します」

 そう言い淑女の礼を取るソフィアを残し、スパルドはその場を後にする。

 続いてソフィアも退場しようかと思ったが、先ほどの挨拶が半ば宣伝となって、貴族の子息子女に取り囲まれそうになる。

 その時、傍から伸びてきた手がソフィアの腕を掴み、人の輪から連れ出してカーテンに脇へと押しやった。そこには隠し階段があり、意図がわかったソフィアはその奥へと姿を消した。

 

 隠し階段の先は裏庭で、程なく一人の少年が姿を現す。スパルドの背後にいて、ソフィアに探るような視線を向けていた少年だった。

「家の者以外は知らない通路だ。アイツらはここまで来ないよ」

「助かりました。ありがとうございます」

 礼を言うと、男の子は軽く手を振って答える。

「いいっていいって。この前助けてもらったし」

「……え?」

「アンタ、この近くで狩りやっていただろう? それ見てたバカが、魔物寄せ使って妨害しようとして、アンタじゃなくてバカの方に魔物が寄ってきて…アイツがあそこまでバカな事をやるとは思ってなかったんだよ。止められなくて悪かった」

 そう言われるが、ソフィアは思い出すことができずに困惑していた。

 魔物をワザと引き寄せてこちらに擦り付けられたことなど、ソフィアは何度も経験していた。逃走補助アイテムを常備しているソフィアは、回避も離脱も容易であることから、全く気にしていなかったのも忘却している一因であった。

「約束、忘れてないだろうね?」

「約束…」

「魔物を解体できる店を教えて、そこまで運んだ時にした約束」

 そこまで言われてソフィアはようやく思い出した。

 狩りの最中、魔物の動きが急に活発化したため離脱したら、いつの間にか居た横幅のある少年の方へと魔物が向かった事があった。その横幅がある少年を庇った少年と目の前の者が重なった。

「ああ! はいはい。あったあったそんな事」

 あの後、魔法を付与した投げナイフと覚えたての魔法、予め作っていた脱出路で難を逃れたが、予定より出費が多くなった上に素材の回収ができなかったことから、ちょっと涙目になった苦い思い出であった。

「………今思い出しただろう?」

「ソンナコトナイデスヨ…」

 そう言いつつソフィアは、必死に記憶を辿る。

「魔物との戦い方を教えて欲しいのですよね? えっと…名前は?」

「ダミュロン」

「ダミュロン様は、何か武器を扱った経験はありますか?」

「……一通りは稽古した事がある」

「それでしたら、貴族教育交流会で共に武術の鍛錬をして、ある程度強くなってから狩りに行きませんか? 私には誰かを鍛える能力はありませんし、そこまで強く無いですから」

「あれだけの数の魔物を倒したじゃないか」

「素材目的の狩りですから、弱点や属性を考慮した下準備をした結果です。想定外の場合は撤退できる備えもしてありますし…でも、通常の戦闘ではそうはいきません。特に対人では護身が限度です」

 ソフィアの言葉に、納得がいかないダミュロンを残し、ソフィアは「それでは明日」と言い残し、その場を去ろうとしたが数歩歩いて立ち止まった。

 そして少し気まずそうな表情で、ソフィアはダミュロンの方を振り向いた。

「…その…正面玄関まで案内していただけないでしょうか?」

 情けない声にダミュロンは思わず吹き出し、ソフィアを正面玄関まで送った。

 

 翌日以降、予定通りに講義や鍛錬が開始したが、ソフィアの予想以上に参加率が悪い状態であった。

 講義では少しは参加者はいるものの、ほとんどが茶会や夜会を誘ったり、誘われたりする場になっていた。会話ではなく手紙を人伝てに回してのことであったが、その度に集中力を切らされるのは、ソフィアは辟易していた。結局ソフィアは、中央最前列に座ることで対処した。授業に集中できるようになった上、教師から良い意味で目を掛けられるようになり、いい感じの人避けになると言う副次的効果も得られた。

 

 鍛錬ではさらに酷く、ソフィアとダミュロンの二人だけの参加であった。

 訓練担当の教官はダミュロンとは顔見知りらしく、「器用で要領がいいことから、ある程度こなしてから訓練しなくなった」と、今回参加してきたことに驚きを隠せない様子であった。

 取り敢えず練度を見ると言うことで、ソフィアとダミュロンは模擬戦を行った。

「アンタは…そんなに強いわけじゃないんだな」

「だからそう言ったじゃないですか」

 5戦してソフィアは最初の1勝のみであった。理由は簡単、ソフィアは隙を見て初見殺しの攻撃を繰り出すスタイル。つまり、それを見切った相手では通用しない戦い方なのだ。

「いや…魔物相手に圧倒していたから…」

「真正面から戦えば、私に勝ち目はありません。だから、相手が力量を発揮しないように策を講じて、自分が有利な状況となるように立ち回っているのに過ぎません。強さを求めているのでは無くて、純粋に素材狙いなので」

「……アンタは、魔物が素材にしか見えてないんじゃないの?」

「ただ単に危険を取り除くためとか、腕試しを目的にしている訳じゃないだけです。だから不測の事態が起きたら、何か別のものに魔物の対処を押し付けて態勢を整えるか離脱します」

 過去にソフィアはエッグベアを1人で複数体倒した事があったが、それはエッグベアが別の者を襲っている隙を突いたにすぎなかった。

「……あん時は、俺やサユジットが囮だったって訳ね…それはそうと、ナイフで術技を使っていたみたいだが…」

「あれはナイフに魔法を仕込んでいるだけです。使い切りにしては仕込むのは大変だし、素材は高いし…一般的な実用性には程遠い代物なんですが」

「相手が隙を見せた時に、その仕込んだナイフで強烈な一撃を加えるか、予め張っていた罠に落とし込むってことね……それってアサシンの戦い方なんじゃないの?」

「家の護衛に教えてもらったのだけど、そう言えばどこかのギルドに居たとか言ってたような…」

「…それって暗殺ギルドじゃない?」

「まあ、ナイフは使い勝手がいいですよ。鋭利なものならばなんでも武器に転用できるし、牽制することもできるから護身にもなるし、私には適したスタイルなんですよ」

 そう言いソフィアは、手持ちのナイフを的に向けて投げる。ナイフは見事中央に刺さった。

「それに、弓矢とか投げナイフと言った急所を突く方が、素材を傷めなくて良いんですよ」

「やっぱり魔物を素材を背負った生き物にしか見えてないじゃないか……」

 そう言いダミュロンは深いため息を吐いた。そして模造剣を片付けて、ダミュロンは弓と矢筒を取り出した。

「弓も使えるんですか?」

「使い方は知ってるが、そこまで練習した事がない。狩りの時はこっちの方が良いんでしょう?」

 そう言いダミュロンは矢を番えて弦を引き、的に向けて放った。

 中央とは言い難いが矢はきちんと的の中に刺さり、訓練していないと言った割には器用だとソフィアは感心したのであった。

 

 そして、ファリハイドでソフィアが滞在して1年経過した。

 その期間でソフィアが交友関係を結べたのはダミュロンだけであったが、共に狩りに出かけるような仲になったのであった。

 





 これが乙女ゲームだったら、攻略者との接点フラグ全折り、唯一接点を持った攻略者からドン引きされているという状態…
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