TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



帝国評議会の貴族(クズの醜態は蜜の味)

 

 帝都ザーフィアスに戻ったソフィア。

 

 アレクセイ・ディノイアの騎士団長就任式は滞りなく終わった。式前後では、ソフィアはダミュロンと親しげに会話しているからか、言い寄ってくる貴族の令息は殆ど無かった。祝賀会に移った後も、接触を試みた若い貴族たちは、ダミュロンが華麗に丸め込んで、ソフィアとまともに話す間も無くお帰り頂いていた。

 何でも器用に卒なくダミュロンに内心感心していた時、挨拶回りを終えたアレクセイが、近づいてきた。

「久方ぶりだなソフィア。息災だったか?」

「はい。ファリハイドでは良き日々を過ごす事ができました」

 ソフィアが屋敷に帰ってからも、式典の準備やらでアレクセイは帰宅することはなかったため、こうしてアレクセイと直接会うのは、2年ぶりであった。

「騎士団長就任、おめでとうございます。アレクセイお兄様」

 淑女の礼をとるソフィアに一つ頷き、アレクセイは隣にいる少年に視線を向けた。

「ダミュロン・アトマイス君だね。妹が世話になっている」

「お初にお目にかかります。スパルド・アトマイスが次男、ダミュロンと申します。閣下、この度は騎士団長就任、おめでとうございます」

 隙なく貴族の礼を取るダミュロンに、アレクセイは鷹揚に頷く。その時、ソフィアはアレクセイの背後に、一人の男性が立っていることに気づく。

 白金の髪、真紅の瞳に白磁の顔。

「ああ、彼は私の友人だ。私たちの遠縁でもある」

「デューク・バンタレイだ」

 

 名を聞き、ソフィアは驚き内心息を呑む。

 ゲームの世界でラスボスであったデューク・バンタレイ。

 

 デュークの過去は謎とされているが、話の端々では騎士団に所属していたことは判明している。今がちょうどその時代なのだと、ソフィアはようやく事態を飲み込み、淑女の礼を取った。

「お初にお目にかかります。ソフィア・ディノイアと申します」

 ソフィアの名乗りを無言で頷き応えたデュークは、皇帝を守る近衛兵の隊服を纏っている。それなりの地位に居る人物らしく、ソフィアに話しかける隙を窺っていた貴族の親子は、皆一様に一歩下がり遠巻きでこちらを見ていた。

 その様子を一瞥した後、アレクセイはソフィアに話しかけた。

「二人とも疲れただろう。そろそろ屋敷へ……」

「おお、アレクセイ殿。それが今話題の妹御かな?」

 一際大きな声で声を掛けてきた初老の男。背後に2人の男を引き連れ、その一歩後ろに長く青みがかった黒髪の少女が付き従っていた。

「……ソフィア。彼はカクターフ公だ。後ろのお二人はガデニア卿とエングリス卿だ」

 アレクセイの纏う空気が数℃下がったと思いつつ、ソフィアは3人に淑女の礼をとる。

「そうそう。我が縁戚でもあるが、エングリス卿の娘が君と同い年でね」

 アレクセイに「卿」をつけず、エングリスにはつける様子を見て、ソフィアはどう言う関係かすぐに察した。

 そう冷めた心で眺めていた所、エングリスの後ろにいた少女が姿を現して、淑女の礼を取る。

「キャナリ・フォン・エングリスと申します」

 凛とした声で自己紹介をする少女に、ソフィアも礼を返す。

 名前に「フォン」が付いていることから、評議会に席を持つ貴族なのであろう。おそらく3人とも評議会の貴族で、「公」が付くカクターフは公爵で派閥のトップとソフィアは推察した。

 一方カクターフは、品定めする様な視線でソフィアと隣のダミュロンを眺める。

「年近い同性の友人も必要でしょう。格下の男を侍らす趣味があると、噂を出さないためにも」

「…お心遣い感謝します。狩りを趣味としております故、同性の方と接する機会に恵まれませんので」

「狩りとは…女性としては少々野蛮な…」

「そうですね…少々悪趣味かもしれませんが、中々見られないものが見られます。命を救った者に罵詈雑言を言う礼節を欠く者、真っ先に護衛に逃げられる人望のない者、雨が降ってもいないのに服を濡らす赤子のような者」

 誰とは言わぬが、それぞれの言葉の時に向かい合っている3人の男をソフィアはしっかりと見つめた。

 心当たりがあるのか目に見えて動揺する中、一つ咳払いをしつつカクターフたちは、挨拶もそこそこにその場から退散した。

 

 それを機にアレクセイもまたソフィア達を引き連れて、屋敷に帰ることになった。デュークもまた、ディノイア家の屋敷へ向かう馬車に乗り込み、ソフィアは少し驚いた。

「バンタレイ様も屋敷にお呼びするのですね」

「……ソフィアが挑発するような言葉を発したあの場に、残して帰る訳にはいかんだろう。前々から言っているが…」

「バンタレイ様は兄様のご友人なのですか?」

「話を聞けぇ! 帰って早々お前と言うやつは…」

 そう言い項垂れるアレクセイを、ダミュロンが同情の視線を向ける。

「…やっぱりこの様な感じなのですね……」

「……妹には振り回されただろう。交友関係を持ってくれた事、改めて礼を言わせてくれ」

 何かが通じ合った兄と友人に、心底心外だという視線をソフィアは向けた。

「迷惑はかけてません。先ほどの話でも、誰とは名指ししてませんし、明るみになって困るのは向こうです。報復に出ようものなら、カクターフ公が腰抜かして失禁したのが事実であると、自白した様なものですよ」

 淡々とそう言うソフィアの言葉を聞き、デュークが顔を背けて噴き出した。

「……何か面白い事でもありましたか?」

「いや……すまない…アレクセイがここまで表情を崩すのは珍しい…」

「……お前こそ、噴き出す姿など初めて見たぞ」

 そう言った後、アレクセイは一際大きなため息を吐いた。

「縁談の話が増え続けている…」

「近いうちに義理の家族ができるのですね」

「真面目な話だ。黙って聞きなさい…ソフィアのと縁を結べば、廉価版通信魔導器(コールブラスティア)の恩恵に預かれると考える者が少なくない」

「……特定の婚約者を作るのも難しい状況になっていると?」

「そういうことだ。私の方は職務を優先させる事を理由に、今まで通り無視する。だがお前はそうはいかない。候補がいる様に見せかけて時間を稼ぐ」

 その言葉を聞き、ソフィアは一瞬目を見開いた後に少し眉を寄せる。

「…お二人が候補ですか?」

「そうだ」

「…そのような目的で、ダミュロン様を帝都に連れてきたわけではありません。初対面であるバンタレイ様に、その様な迷惑をかけるわけには…」

「こちらは織り込み済みですよ。家としてはディノイア家と接点を維持できる。俺は帝都に滞在できる上に、乗り気でない縁談を進められることは無くなる」

 ソフィアの言葉を遮るようにダミュロンは答える。

「私も似たようなものだ。下手に皇族の血筋を引いている故、バンタレイ家の再興を手伝うだの、見返り目的で近づく者が後を絶たない」

「…逆に厄介ごとが増えていませんか?」

「今更増えたところで、どうということもない。ならば状況を利用し、少しでも協力者を増やす方が良いだろう? お前がマリー・カウフマンを引き込んだように」

 その件を持ち出されては、ソフィアは拒否権は無かった。何より、ゲームでは全て己が1人のみでやり遂げようとしていたアレクセイが、協力者を作ろうとしている様に対して嬉しくも感じていた。

「……承知しました。不束者ですが、よろしくお願い致します」

「共に過ごした一年で、帝都の貴族令嬢への憧れは跡形もなく消えて、何も期待してないから大丈夫」

「アレクセイから君の事を色々と聞いて、異性と認識するのは難しいと判断したゆえ、全く問題ない」

「……ダミュロン、後でゆっくりお話ししましょう。兄様、私がいない間、どんな話をしていたのですか?」

 ソフィアの言葉にそれぞれが応える前に馬車は停車する。

 屋敷に到着した様子であった。

 





 登場した貴族の名は、小説「虚空の仮面」で出てきたアレクセイの政敵から取っています。諸々の詳細は捏造ですが…
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