pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「そろそろお前の後見人を降りようと思う」
19歳を迎えたデュークに、皇弟レギンが徐に切り出した。
「そして帝国騎士団での私の地位をお前に継がせたい」
「近衛隊の隊長ですか?」
「アレクセイ騎士団長は、騎士団の改革を模索している。その第一歩が、近衛隊から親衛隊への再編成だ」
現在の近衛隊の騎士は、皇帝または評議会議員の推薦状を持つ、貴族の騎士に限られていた。家が騎士団への影響力を保持するため、貴族の嫡子以外の者が放り込まれるケースが大半であり、評議会議員の身内となる帝都貴族で固められていた。近衛隊は騎士としての質はお世辞にも良くはない上に、騎士団を帝国評議会の下部組織に落としている要因でもあることから、皇帝が改善策を求めていることはデュークも知っていた。
「アレクセイは、入隊の必須事項から推薦状を削除する方針でしたね」
「必要不可欠な改革と考えているが、当然反発は大きい」
「私が辞退した場合の最有力候補は?」
レギンが告げた名を聞き、デュークは顔を顰める。
その名は近衛隊の筆頭小隊長で、前騎士団長の子飼いであり、アレクセイと次期騎士団長の座をかけた御前試合で、卑劣な手を使ってきた相手であったからだ。
レギンからの同様な申し出は、これまでの時間のループの中で何度かあったが、デュークは一度も引き受けたことはなかった。そして彼の代わりに、アレクセイがその地位に就任していた。
しかし現在、アレクセイは一足飛びで既に騎士団長となっていた。これまでの時間のループの中ではあった、近衛隊から親衛隊への再編成の中での地盤作りの機会は失われた事になる。アレクセイが親衛隊を私物化する可能性は低くなったが、新たな親衛隊長に評議会側の人間がなってしまえば孤立して暴走する時期が早まる危険性が高かった。
そこまで考えを巡らせたデュークは、レギンに承諾の意を示した。
その数ヶ月後、近衛兵の長の皇弟レギンは近衛隊長の地位と共に皇位継承権を返上した。継承権に関しては、近衛隊への入隊規定の改正との交換条件として評議会から提示されたのだと、デュークは後ほどレギン本人から聞いた。
そしてアレクセイ主導で、近衛隊から親衛隊へと再編が行われた。
デュークが親衛隊長になるにあたり、アレクセイは自身の元部下であるナイレンとエルヴィンを親衛隊に引き込んだ。例の近衛隊の筆頭小隊長の派閥に騎士から反対の声が上がるかと警戒した。しかしレギン個人が率いていた「レギン遊撃踏査団」を元に、騎士団の「魔物討伐隊」が編成され、近衛隊内の彼らの派閥は丸ごと移籍された事から、驚くほどスムーズに親衛隊の編成は実現したのであった。
レギンがここまで御膳立てしてくれた事に、感謝の念が絶えないとアレクセイはデュークに溢すように言ったのは、ディノイア邸で開かれた内輪の祝賀会であった。
この祝賀会は、近衛隊から親衛隊への編成が終わり、その隊長にデュークが就任したこと、そして遅くなったがアレクセイの騎士団長就任の祝いを兼ねており、旧アレクレイ隊の面々に加えて、ソフィアとダミュロンも参加していた。
今までの時間のループでは既に故人だったソフィア、この時期はまだ帝都に居なかったダミュロン、そもそもデューク自身がこの祝賀会に参加すること自体が、本当の意味で初めてであった。
「どうした、デューク」
アレクセイに話しかけられ、デュークはソフィアとダミュロンから視線を外し、ナイレンとエルヴィンの方を見た。
「ナイレンとエルヴィンは地方貴族だが…親衛隊への引き入れには無理をしたのではないか?」
「レギン殿下の推薦があったから、問題はない。ナイレンも旧友からの頼みを、快く引き受けてくれた」
「旧友?」
「知らんのか? 殿下とナイレンは友人関係なのだよ」
初めて知った事実にデュークは驚く。今まで、どれだけ周囲が見えていなかったのか、突きつけられた気分にもなった。
「第一、帝都在住の新興貴族では比べようがないほど格上の古き血筋ではないか。誇りと矜持がない貴族としての品格がない者よりは、よほど親衛隊に向いている」
際どい内容を話し始め、不審に思ったデュークはアレクセイの持つグラスに視線を向ける。
「ユルギスにも親衛隊に移って貰いたかったが、彼にはフェドロック隊を継いで、ユルギス隊の隊長になってもらわねばならない」
語るのを止めないアレクセイの手には、乾杯の時のシャンパンではなく赤ワインが入ったグラスがあった。
「いずれファイナスには是非ユルギス隊の副官になってもらって…」
聞いてもいないことまで話し始めるアレクセイの顔が、いつもより赤みを帯びているのは気のせいではなかった。
アレクセイは甘党で下戸である。
普段の式典では任務を盾に断り、会食では成人したデュークを同伴させて、彼がこっそり飲み干していたが今日は…
「アレクセイ、酔っているな」
「何だデューク。私は今、騎士団の未来の展望をだな…」
話が噛み合っていない。
完全に酔っているアレクセイをどうしたものかと考えたその時、ソフィアが近づいてきた。
「兄様……今思い出しましたが、念のために一度お部屋に戻られた方がいいかも…」
「何を言っている。宴は始まったばかりではないか?」
「……昼間に少し……その……」
言い淀みつつ、何かを誤魔化すような笑みを浮かべるソフィアを見て、アレクセイは何かを勘付いたらしい。
「お前……また私の部屋の下にある倉庫で、実験をやったのか?」
「一々離れに戻るのが面倒で…ちょっとした確認をしたかっただけで…」
「そうやって私の部屋の床を何度貫通させれば気が済む⁈ 床を鋼鉄製にすべきが迷っているところだぞ!」
「今回はそこまで派手にやっていません」
「床に大穴を開ける前提を基準に話すな! ただでさえ衝撃で物が落ちるゆえ、壊れ物を棚に置けなくなっているのだぞ!」
「今回は大丈夫です……多分」
「多分?」
「片付けはしましたし、確認していませんけど、多分上の階は大丈夫です! 恐らくきっと」
弁明するソフィアに残ったワインを押し付け、アレクセイは周囲の者に宴の中締めを宣言した。そしてデュークにしか気づかない程度のやや危うい足取りで、早々にホールを後にした。
「多分部屋に着く頃には酔いも回って、そのまま寝ると思います。念のため、後で侍女に水を持って行かせます」
「……頻繁に部屋を壊しているのか?」
「破壊したのは一回だけですよ」
「お前が『破壊』と判定するのは、一般的に『大規模半壊』以上を指す。一部損壊を入れるとどれくらいのやらかした?」
「…………」
「……即答出来ぬほどやったのか?」
「三桁には至っていませんよ」
「桁が異常であると認識しろ」
そうため息を吐くデュークを尻目に、ソフィアはアレクセイから預かった赤ワインの残りを飲もうとする。デュークは「まだ未成年だろう」と苦言と共に取り上げて、赤ワインを飲み干したのであった。
近衛隊と親衛隊がごっちゃになっている感じでしたので、当初は近衛隊、再編と拡充したのが今の親衛隊と言う形にしました。
アレクセイが親衛隊に入らなかった影響が出てきています。そんな中でデュークがやる気になって引き受けたらどうなるか…と言う感じでさらに別の展開へと動く予定です。
皇帝に連なる血筋で、始祖の隷長の盟主であるエルシフルの友のデュークが、自身の地位と立場を捨てずに理解した上でうまく立ち回れば、多くの悲劇を回避できたんじゃないかとも考えてしまいます。