pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
ソフィア・ディノイア。
ゲーム「テイルズオブヴェスペリア」の重要人物の一人である、アレクセイ・ディノイアの妹。
自身の魂の存在が原因で蘇生したが、おそらくゲームの世界ではこのタイミングで亡くなったと考えられる人物。
この世界で転生して最初に見たのは、ベッドの白い天蓋の布であった。
一ヶ月近い長き眠りの末に蘇生して目覚め、入れ替わり立ち替わりやってくる人々の話の内容から、現状の大枠を把握した。そして最初にやったことは、記憶が曖昧になっていると申告したことであった。
蘇生の影響だろうと周囲が勝手に納得している中で、身体の主が記した日記の有無を確認した。幸いにも日記があったことから、侍女に頼んで過去数年分の日記を持ってきてもらい、何度も読み直して情報収集に務めた。
そしてソフィアの人となりと、近しい者の情報、取り巻く環境についてある程度把握したところで、蘇生以降から姿を見ないソフィアの兄について家令に尋ねた。
家令は言葉を選びながらもソフィアに状況説明をしてくれた。
兄のアレクセイは、ソフィアが屋敷に運び込まれてからは不在であること。その理由は、両親の船の引き上げ作業と遺体の回収、そして葬儀。発生した負債の清算のために動いていたためであった。
ディノイア家当主だったソフィアの父は、帝国の中枢機関である評議会への復帰を目指し、一族の命運を掛けて二つの大陸を結ぶ新航路の確立を試みた。そして最終確認での航海で、船が難破してしまった。
航海に同行していたソフィアは、父母と共にその遭難に巻き込まれ、ソフィアだけが生き残ったと言う話であった。
「まだライフボトルを使えば間に合うかもしれないと…蘇生する確率は低いと言われましたが、本当に宜しゅうございました」
涙を浮かべてそう言う家令を見て、本当のソフィアは故人で、ここに居るのは中身は別人だと言うことはできず…
「心配をかけましたね。もう大丈夫です」
ソフィアとして生きていく以外に、選択肢を見出すことはできなかった。
その後、療養している間に前世の知識を総動員して、ソフィアは今後の方針を考えた。
一つわかっている事。
それは自身の異世界転生は、誰かがある目的で召喚した可能性が高いという事だ。
その目的とは「悲劇を回避する」こと。
その指示内容に、ソフィアは頭を抱える。やる事が多すぎるのだ。
取り敢えず優先すべきは、この後の全ての悲劇の要因となる、エアルの大量消費を防ぐ事であった。
エアルとは、この世界に存在する全ての物が保有しているエネルギーである。空気中にも存在していて、照明や水道などのインフラはおろか街に結界を張るなど、日常生活を営む上で必要不可欠とも言える
そしてこの
身体の調子が蘇生前と同等に戻ってから、ソフィアは家庭教師による教育を受けた。
ここまで、前世でやったゲーム設定と同じであることを確認し終えて、ソフィアは
故に、
アレクセイ曰く、集めた古文書の中にその情報があるかもしれないという事であった。頼み込んだ末に、アレクセイから古代ゲライオス文明についてと古代文字の読み方を教わり、これまで収集した古文書を読む許可を貰った。
そしていざ読もうとして問題発生。
こうしてソフィアは、
それを知ったアレクセイは、ソフィアにさらなる専門教育をと考えて、
部屋にノックが響き渡った。
「……どうぞ」
日記帳を閉じ、ソフィアは入室を許可する。
一礼の後に入ってきた侍女は、入浴の準備が整ったことを伝えてくれた。
侍女に礼を言い、ソフィアはエッグベア狩りで疲れた身体を癒すべく自室を後にした。
ソフィアがエッグベアを狩った5日後、兄のアレクセイが屋敷に帰館した。
「今帰った。息災か、ソフィア」
この屋敷の主人のアレクセイ・ディノイアが、兄の顔で名を呼びつつ表情を緩めた。
アレクセイは、残された唯一の家族である妹のソフィアとの時間を大事にしていた。アレクセイとソフィアが二人揃って屋敷にいるときは、朝食と夕食を必ず共に摂るようにしていた。
夕食時、アレクセイは教師を引き受けてくれる
「これで組み立てができます。兄様ありがとうございます」
「ソフィアは気が早いな。組み立てるには素材が必要だと…」
「全てきちんと揃えました。この前の狩りで必要な素材は全て集まりましたので」
「………ソフィア…またお前が魔物を討伐したんじゃなかろうね?」
「前も話しましたが、私が欲しい魔物素材のほとんどは、需要が無いためか市場に出回ってないのです」
「騎士団に依頼を出せばいいだろう?」
「流石にそれは気が引けます。かと言って、ギルドユニオンに依頼を出すのは、よろしくないのでしょう?」
帝国の支配を拒否した一部の者が市民権を捨て、帝国の管轄外で生活していた。その者たちは職能ごとに寄り合いを構成し、人民から依頼される仕事をこなして生計を立てている。その寄り合いの事を「ギルド」と呼んでいた。
数十年前にギルドの弾圧に帝国が動いたこともあるが、それは結束を強める結果となり「ギルドユニオン」が生まれた。そんな事情もあり、帝都に住む帝国貴族のソフィアは、ギルドに素材集めの依頼を出すことを躊躇していた。
「第一、自分で丁寧に仕留めた方が、下手に傷めずに素材が多く得られます。素材だけではなく、食材も手に入るから経済的ですし…今日のデザート、美味しいでしょう?」
今日のデザートはオムレットケーキ。
色からして鶏卵以外が使用されているのは明らかである。
「……これはエッグベアの卵が使われてないか?」
「はい。エッグベアの爪が欲しかったので、そのついでです」
「……エッグベアを何体倒した?」
「5体です。私が倒したのは2体だけです」
ソフィアの言葉を聞き、アレクセイは口に含んだオムレットケーキ、思わず吹き出しかけた。
ソフィアに最初に護身術を教えたのはアレクセイであり、彼は基本の護身しか教えなかった。その後、素材確保のために魔物狩りたいと言う願いをディノイア家の私兵が聞き、護身どころか攻撃技も含む武術をソフィアに教え込んだのであった。
それをアレクセイが知ったのは、屋敷の私兵全員がソフィアの鍛錬に関与した後の事であった。全員を解雇できるはずもなく、「ソフィア様は投げナイフがお得意です」と報告してきた隊長を一発殴るだけで、アレクセイはお咎めなしにした。
お咎め無しにはしたが、騎士数人がかりで対応する魔物を仕留めるまで鍛えることを、容認した訳ではないわけで…
アレクセイは机に上に組んだ両手に額を乗せ、深い深いため息を吐くしかなかった。彼もまた、ソフィアを無自覚で甘やかしている一人であった。
「話は変わるが、これから当分の間、屋敷を空ける事になる」
食後の紅茶を飲んでいたとき、アレクセイがそう切り出した。
「当分とは…どのくらいですか?」
「騎士団入団後の研修が終わるまでだ。半年はかからん」
「兄様は…騎士になるのですか?」
「そうだ。当主を継いで色々考えた。どうすれば腐敗し切ったこの国を建て直せるか…評議会に復帰したところで、派閥を持たなければ何も変えられない。それならば、騎士団を改善していく方がまだ可能性はある」
動揺しているのか、ソフィアがカップをソーサーに置いた音がやけに響いた。
「でも…我が家はこれまで騎士はいなかったと聞いています」
「伝手はある。以前にドレイク・ドロップワートと手合わせをする機会があって、騎士団に入らないかと誘われた。彼は『尽忠報国の騎士』と呼ばれる忠勇の士。騎士団を退役後も顧問役を務めている。彼に頼ることにしようと思う」
「…分かりました」
何かするにしても元手がいる。その元手を出す余剰がないというのが、ディノイア家の財政状況であった。屋敷を維持する最小限まで使用人を削減したが、負債を払って残った財産だけでは、破綻するのは目に見えていた。
どちらにせよ金銭を得るためにも、アレクセイが騎士団に入るのは避けられないと、ソフィアは一人唇を噛んだ。
国の将来を憂い、他の貴族らの腐敗に憤り、改革を目指して騎士としての地位を上り詰め、多くの者から慕われ尊敬される。それが未来のアレクセイ・ディノイア騎士団長。しかし、近視眼的な我欲まみれの評議会との政治闘争で成果を潰され続け、支えてくれた信頼できる部下を多く喪い…孤独に蝕まれ、絶望して心が折れ、歪んでしまう。
そしてアレクセイは、目的を果たすためには手段を選ばなくなった。その結果、悲劇を数多く生み出す元凶となり、人類存亡の危機を引き起こす大逆賊へと堕ちる。
『悲劇を回避してほしい』
蘇生する直前に聞いた声に関係なく、ソフィアは優しく真面目なアレクセイが、転落していく姿を見たくはないと思った。
今までに経過したのは2年数ヶ月。
残された時間は23年を切っていた。
オリジナル主は、ゲームの世界で多々の事件の黒幕であった、存在感がありすぎる中ボスのアレクセイ・ディノイアの妹です。
妹がいたことも、妹が昔亡くなったことも、本作品のオリジナルです。アレクセイの性格は、小説「虚空の仮面」を元となっています。
これからソフィアは、アレクセイの救済に向けて動き出します。