TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

20 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



ドン・ホワイトホース(いいところを見てみたい)

 

 ギルドの巣窟「ダングレスト」。

 

 帝都があるイキリア大陸とは海峡を挟んで隣に所在するトルビキア大陸。以前にもトルビキア大陸にある港町カプワ・トリムには来たことがあるが、そこから先へ進んだことは無かった。

 樹木がやたら成長して、巨大な虫型の魔物が多い森を抜けた先、太陽の位置に関係なく黄昏の空に照らされた世界に、結界に守られて街が姿を現した。

「へえー…あれがダングレストか。規模は帝都と同じくらいだな…」

 思った以上の規模にダミュロンは驚き声を上げる。

「そうなのじゃ! 魔導器(ブラスティア)も多くの者に普及しておるし、どこぞの帝都より過ごしやすい街なのじゃ!」

 そう言うのは初老と言える年齢を全く感じさせない、金髪を左右のお下げに結ぶ女性、アイフリードであった。

 

 ギルトユニオンの元首、大首領(ドン)ホワイトホースの面会に当たって、ソフィアが相談したマリー・カウフマンは、自身の幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)ではなく、中立性を考えてユニオンに加入していない有力ギルドを仲介者とすることを助言した。

 そして候補に上がったのは、関わりがある海精(セイレーン)の牙であった。カプワ・トリムで副官のサイファーに相談したところ、首領のアイフリードが面白そうだと自らが同行することになった。

 おかげで、ソフィアと付き添いのダミュロンは、直ぐに大首領(ドン)ホワイトホースと面会することができたが…

 

「それでのお…サイファーの奴ときたら…」

 久しぶりに会うらしく話が尽きないのか、アイフリードの一方的な話は中々終わらない状態であった。

「テメエいい加減にしろっ! 俺だって暇じゃねえんだ‼︎」

 痺れを切らしたドンは、強引にアイフリードの話を打ち切って、ソフィアたちの方を見た。

「で? アレクセイの小僧の妹が、何しにきた?」

「端的に言うと、儲け話をしに来ました」

「……ほう?」

「実践した方が早いですので、照明魔導器(ルクスブラスティア)を少しお借りできますか?」

 ソフィアの言葉にドンが頷くのと同時に、部屋の照明近くのギルド員が横にずれる。ソフィアは照明魔導器(ルクスブラスティア)に風属性の魔導中継筐体(エアルコンテナ)を接続する。

「そしてこれは送風用の魔導器(ブラスティア)。ご覧のように魔核(コア)が壊れたジャンク品ですが」

 ジャンク品の魔導器(ブラスティア)魔導中継筐体(エアルコンテナ)に繋げたところ、勢いよく風が噴き出てきた。

「っ⁈」

「使える魔導器(ブラスティア)が一台でもあれば、ジャンク品も使えるようにする代物、それがこの魔導中継筐体(エアルコンテナ)です」

 魔導中継筐体(エアルコンテナ)を目の当たりにし、天を射る矢(アルトスク)の幹部は驚きの様相だが、ドンは全く動揺する様子は見せなかった。

「……それで?」

「この魔導中継筐体(エアルコンテナ)を広く普及させるために、ギルドユニオンの協力をお願いできないでしょうか?」

「散々魔導器(ブラスティア)を独占してきた帝国貴族が言ってくれるな」

「そこは私如き末端が、どうにかできる範疇ではありません。私が関与できるのは、これから公表予定のこの魔導中継筐体(エアルコンテナ)くらいです」

「はっ! 敵地であるギルトユニオン本部に単身で来るどころか、ガキ時分にカウフマンやアイフリードを誑し込むのが下っ端たあ…帝国に先はねえなぁ…」

「ギルドユニオンを敵と思ったことは、私自身はありません。このままでは帝国に先はないことは否定しませんが、だからと言って魔導中継筐体(エアルコンテナ)をギルドが独占にしていいと言う理由にはなりませんし、それは自由を重んじるギルドらしいとは言えませんね」

 そう言うソフィアの肩を、ダミュロンが後ろから軽く叩く。今のは言い過ぎという合図である。

 暫し沈黙が流れた後、地鳴りかと思わんばかりの笑い声が響き渡る。

「そりゃあ違ぇねえなあ…これだけの代物、公開前に情報提供してきた事は認めてもいいだろう。だが、ちいとばかし条件がある」

「お聞きしましょう」

「周りの奴らを納得させる必要がある。この代物使って、一戦受けてもらおうじゃねえか」

「承知しました。私の代わりになりますが、ダミュロンが受けましょう」

「……俺への伺い無しで決定か…」

 一方的に指名され、ダミュロンは項垂れる。その様子を笑いを噛み殺しつつドンは、より深く探るような視線をソフィアに向けた。

「もう一つは、嬢ちゃんの真意を聞かせてくれねえか? 何が目的だ?」

「何がって…魔導中継筐体(エアルコンテナ)を広めるのが目的ですが」

「なぜ独占しようとしない」

「独占したら、周りから確実に妬みと逆恨みを買います。そんな中では、私は楽しく生きていけないです」

「権力をつけて排除すればいいじゃねえか」

「そんな殺伐とした状況を楽しめるほど私は図太くありませんし、予め回避する様に動いた方が労力が少なく済みます」

「金を使って雇った相手に任せりゃいいだろうよ。富を独占するのも容易だ。そうなりゃ、思うがままとは思わねえのか?」

「富も金銭も使い所がないと意味がありませんよ。富を独占して不味い酒を大量に消費するより、社会に還元して新たな良い酒を生み出す原動力にして、多種多様な美酒を少しずつ嗜む方が楽しい生き方ですよ」

 淡々とそう答えるソフィアを、周囲の者の大半は不可思議な生き物の様に見る。

「ドン・ホワイトホース。ソフィアは嘘を吐くのは不得手なんですよ。思考がぶっ飛んでるから、こっちはつい深読みしちまうけどな」

「そうじゃなあ…ここまで権力欲や金銭欲が無いとなると、色々と勘繰ってしまうからのう…」

 ダミュロンの言葉に頷きつつ同意するアイフリード。

「権力や財力で痛い目に遭ったことが無い、良き友と家族に囲まれた、恵まれた環境にいただけですよ。だからどちらも、選択肢を増やすための道具以上の価値は見出せないだけです」

 振り返ってそう反論した後、ソフィアは再びドンの方を向き直す。

「その恵まれた環境を壊す事なく生きたい。そう願っているだけです」

 

 今、ソフィアが悲劇を回避するために動いている最大の理由はそれであった。

 

 ここで一つ注訳。

 ソフィアのディノイア家は、評議会の席を無くしてから没落の一途を辿り、起死回生を狙った事業も失敗した上に当主が亡くなると言う憂き目に遭っている。

 そこからの廉価版通信魔導器(コールブラスティア)による台頭で、妬みが大量に降っている現状。それ故に一時期では帝都に居られなくなり、ファリハイドに滞在する目に遭っていた。とどのつまり、恵まれたとは言い難いある意味過酷な環境を、ソフィアは過ごしていたと言える。

 

「全く気にして無いところが、ぶっ飛んだ思考なんだよな…」

 

 廉価版武醒魔導器(ボーディブラスティア)を装備し、ドンと対峙している現状に現実逃避をしつつ、ダミュロンはそんな事を考えていた。

 

 ドンとの対戦。

 ダミュロンは1分耐える事ができた。

 戦闘訓練を受けていない者としては快挙だったらしく、ダミュロンの尊い犠牲により、ギルドユニオンの協力を取り付ける事ができたのであった。

 





 ドンとアイフリード(パティ)は盟友と言う話ですので、2人の絡みを書いてみました。それと、結局ダミュロン(レイヴン)はドンと一戦する運命だったようで…まあ、これを切っ掛けにドンは気に入る訳ですが…
 次話から話が急展開していきます。今までもありましたが、ちょくちょくpixiv版から加筆修正を加えていければと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。