pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
レギンはデュークの後見人であった。
文字通り家を喪ったデュークを保護し、貴族らの悪意から皇族の血を引く者が生き延びる術を教えてくれた恩人でもある。
デュークは彼に対しての恩義を感じており、時間のループの中では助けようと何度か試みたこともあった。しかし、彼の死のタイミングと場所は一定では無く、間に合うことは一度もなかった。その時々で正確な情報を迅速に得られれば、また違ったであろう。今のデュークのように…
親衛隊の長としての地位と立場。
今までの時間のループで捨て続けていたことが、レギンを救えなかった理由に他ならないと、デュークは今更ながら理解した。
だからこそ…
「アレクセイ…」
「どうしたデューク?」
「休暇を申請したい」
§
言外にレギンの元へ馳せたいデュークの気持ちを汲んだアレクセイは、多忙ながらも休暇を許可してくれた。
ナイレンに親衛隊を任せて、デュークは一人帝都を出る。
馬を使ったとしても、ペルレストまでは時間を要する。そう考えたデュークは、馬をハルルの村に預けて、一人エフミドの丘へ向かった。
今までの時間のループと同様であれば…
エフミドの丘の頂上、純白のローブを纏った青年が一人で海を眺めていた。
その後ろ姿を見つけたデュークは、懐かしさのあまり言葉を失う。
一方で青年の方は、気配に気づいたらしく振り向き、デュークの姿を認めるや否や、表情を綻ばせた。
「久しぶりだね。デューク」
デュークはエルシフル…
デュークの頼みを二つ返事で承諾し、人化を解いたエルシフルは、デュークを乗せてペルレストへと向かおうとする。
程なく街影が見えるかどうかという時、エルシフルはエアルの乱れを感知した。嫌な予感がしたデュークは、エアルの乱れの中身へ向かうように願った。
そして魔物の群れが人影を囲い込もうとしている現場を見つけた。
エルシフルの鳴き声一つで魔物は散り散りに逃げ、人化したエルシフルと共に、魔物に襲われてかけた者の元へとデュークは駆け寄る。
「デューク様⁈」
「お前は…確かレギン殿下の側近の…」
男はレギンが最も信用していた側近の、紫滲む宵闇色の瞳を持つ傭兵であった。そしてその周囲に複数の騎士が倒れ伏していた。
魔物は傭兵に達する前に追い払われていた。にも拘わらず、傭兵の抜き放たれた剣の刃は血に濡れていた。
事情を聞くのを後回しにして、傭兵はデュークをレギンの元へと案内する。
暫く歩いたその時…
「しばし待て」
エルシフルが停止するように促す。
向かおうとした先には、ユラユラと光の粒子が舞い踊っていた。
高濃度のエアルであると知っているデュークはエルシフルの言葉に従い、傭兵を押し留めて停止する。それを確認するや否や、エルシフルは周囲に漂う光を吸い込み始める。
「一体何を?」
「大丈夫だ。エアルを吸収して薄めているに過ぎぬ」
程なく光が薄まり、不明瞭だった視界が少し開けてくる。そして激しく破壊された大型魔導器らしき物を、デュークは認識できるようになった。
「……いつものようにギガントモンスターの討伐をしていた。その時、新入りの副官が勝手に一般人を脅し、初めて見る兵器魔導器を戦いの場に持って来させた」
傭兵の話では、レギンの静止を無視して使用された兵器魔導器で目的のギガントモンスターを倒せたらしい。しかし突然光が立ち昇り、気がつくと魔物に取り囲まれていたそうだ。
「高濃度のエアルに曝され許容を超えた生物は、魔物へと変容する。そして魔物をより凶暴化させるのだ」
「呼び寄せられただけではなく、新たに生まれた魔物にも囲まれたと言うわけか。それで、貴殿が離れたあの場にいた理由は? 倒れていた騎士たちは…」
「あの腐れヤロウたちは…自身らの失態を隠す為に、生き残った民間人を始末しに来た」
傭兵の言葉を聞き、デュークはあの騎士らがあの場にいた理由、そして誰に殺されたのかを理解した。
「……民間人は?」
「ファイナス達が護衛して離脱した」
「他の魔物討伐隊の騎士らは?」
「半数がファイナスに同行して…残り半数はレギン殿下と共に、我らの脱出路を切り開いて…」
光の靄が晴れるにつれて、明らかになる惨状。
魔物に混じって、騎士達の骸が地面に横たわっていた。
生存者は絶望的かと思われたが、一人だけ見つけることができた。
「レギン殿下……」
片足がなく、腹部が大きく切り裂かれていながらも、レギンは名を呼ばれてゆっくりと顔を上げた。
「すぐ治療を……」
「待て! もう手遅れだ」
「何言ってんだ⁈ 殿下はまだ…」
「わからぬか? 魔物になりかかっている。この状態で治癒術を掛ければ…魔物化が進んでしまう」
静かにそう言うエルシフルの言葉を聞き、デュークはレギンの身体にある傷から血が出ていないこと、そして壊れた鎧の下で緑に光る肌に気づいてしまった。
「……どうにもならないのか?」
「本来ならば彼の命は尽きている。それでも生きているのは、半ば魔物化しているからだ。エアルの影響を除けば人に戻れるやも知れぬが…それはこの者の命を断つことと同義」
そう言うエルシフルの声はとても哀しげであった。
エルシフルならば何とかしてくれる。デュークは彼に多大な期待を一方的に寄せ、万能であると信じ込んでいた事に初めて気づいた。自身の中で何かが崩れ、そのまま膝を突きそうになるのを耐えた結果、デュークはその場から一歩も動けなくなった。
その間にレギンはゆっくり立ち上がり、近くに落ちていた柄が中程で折れた槍を拾い、刃こぼれが著しい剣を鞘に納め、そのままデュークに向けた。
「デューク…すまぬがこの剣を…リッチとカレンに渡してくれ。2人の居場所はこの者が知っておる」
「殿下⁈」
その言葉を聞き、デュークらを案内してきた傭兵が聞き返す。
「お前もデュークと同行しろ。2人を頼む…」
黙り込み視線を地面に落とすも、絞り出すような声と共にその傭兵は、片膝を突いてレギンに頭を下げた。
「……身命を賭して」
「頼んだぞ」
レギンが鷹揚に頷いた後に上げた傭兵の顔には、もはや感情の類は無かった。
「殿下……預かりましたクラウ・ソラスは?」
「あれはもう良い。こうなってしまっては、剣の存在は逆にあの子らを危険に陥れる可能性が高い」
「では、折を見て皇帝陛下へ…」
「誓いと共に内密に借り受けたのは何十年も前の事。今下手に動いて存在が明るみになれば、預け先の者にどのような矛先が向けられるか分からぬ。そのままにしておけ」
「……承知いたしました」
「民草を守る者を主人とする神の剣。然るべき時、然るべき者の手に渡る。そう言う類の剣だ。デューク、その旨を兄上に…皇帝陛下に伝えてくれないか」
デュークはレギンが何をしようとしているのかわかった。しかし、理解したくはなかった。
彼は今こうして話している。生きているのだ。それなのに…
「デューク……ここへ駆けつけてくれた事を感謝する。誰かの価値観ではなく、自分の価値観を持って自由に生きろ」
そう言ったのち、レギンは傭兵…最も信頼を寄せている側近に自刃の介錯を頼んだ。
冒険王と名高い、皇弟レギン・ジェミナイ・ヒュラッセイン。
人々が魔物に襲われる事なく、平穏に過ごせる世界を創り出すため、帝国内の未踏の地を探索してきたレギン遊撃踏査団。それを拡充させた騎士団の魔物討伐隊は、隊の半数の騎士達と隊長である彼の死に加えて、レギンを裏切った副官の死亡、そして踏査団時代からの側近が失踪した事で、解散されたのであった。
皇弟レギンが率いるレギン遊撃踏査団の壊滅。ゲームでは触れられるだけなので、詳細は捏造させていただきました。次代の皇帝を操りたい帝国評議会の貴族にとっては邪魔となるレギンを、罠に嵌めて壊滅させたのが真相じゃないかと考えた訳です。
本来の流れと随分と変わってしまった結果、この世界ではファイナスが同行したこと、さらにデュークが介入したことで、なんとか半数は生存することに成功しました。そしてレギンを暗殺する捨て石にされた騎士らが逃げる時、証拠隠滅のために自身らが巻き込んだ一般人を殺そうとして、ファイナスがその命令に背いたと言う形となりました。