pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
月夜のようだと誰かが言った。
夜会で墨色の髪のダミュロンがエスコートをする時、またはお茶会で黒髪のキャナリと談笑する時の銀髪のソフィア。
銀髪の偉丈夫たるアレクセイ騎士団長に控える時、または白亜の麗人たるデューク親衛隊長と並ぶ時の、隊長首席である墨色の髪のダミュロン。
身に余りすぎで零れ落ちている現状の立場に気遅れがするも、それを覆い隠すような量の仕事がダミュロンに振ってかかる。
本物の貴族。
キャナリ曰く、ソフィアはそれを目指していると言った。自身の出自である貴族に対して、ダミュロンは好感の欠片も無かったが、健全な国家運営が行われる一助として動くソフィアの姿は、本来あるべき為政者たる貴族の姿として好ましいものと思っていた。
自身にしては珍しく、ダミュロンはソフィアの仕事をフォローするため、積極的に動いていた。互いの家同士の思惑により、ダミュロンはデュークと共にソフィアの婚約者候補となったが、それ以前に彼女は自身にとって大切な友人であった。彼女が悩んでいた時も、自分なりに情報を集めるのに奔走した。不本意ではあったが、父スパルドにも地方都市とギルドとの関係性について尋ねたところ、意外にも親切丁寧な内容が記された返信が来て驚いたものであった。ソフィアの兄アレクセイの友で、彼女の
やがて、廉価版通信魔導器や廉価版
魔導器に革新的な発展をもたらす魔導中継筐体に関する業務のはずが、人材派遣業務にまで手を伸ばした事で殺人的な忙しさとなってしまった。そして不足している人材を増やす為、貴族の家の嫡子以外に声がけをして迎え入れていった。
貴族が一般市民に対して過剰に税を徴収する要因として、膨れ上がった身内の存在も少なからず影響を与えている。穀潰しが稼ぎ頭へと変わった結果、少しばかりではあるが苛烈な税の取り立てが減ったと言う声をダミュロンは耳にするようになった。
ダミュロンが最近になって頻繁に見る、夢、希望、友、家族、故郷、そして己が命、全てを喪う悪夢…
胸を摩る癖の原因となっている不安を壊し、新たな未来を築いている実感から、ダミュロンは今まで感じたことの無い充実感と達成感を得ていた。
その一方でダミュロンは、不器用な生き方しかできないソフィアを支えたいと思った。
ソフィア自身、特定な何かに固執するような人間ではない。それは同時に、世の恋人同士のように、一人の者に対して想いを注げるような生き方が出来ないと、彼女自身が理解している。故に、自身にそれを望む相手…特定の恋人を得る事に対して抵抗を抱いていることは、ダミュロンは理解していた。
だからダミュロンは「友人」として、共に改革を目指す「仲間」となる事が目標となった。目標達成を目指し、ファリハイドに帰らず帝都に残るため、そしてソフィアの改革を共に進めるアレクセイらを支えるため、ダミュロンは騎士団に入り、真面目に訓練と任務に励むようになった。その結果が仕事に追われている現状というわけで、ダミュロンは「半ば自業自得だ」と自嘲するも、充実した日々を過ごしていたのであった。
「騎士団長直属部隊を任されるんだって?」
新たに与えられた隊長首席の執務室を訪れ、ダミュロンに差し入れを渡しつソフィアが尋ねる。
「今すぐじゃない。ドレイク殿を始め時期尚早という声があった」
「いつかは出来ると言うことか…部隊を任されたら、
ソフィアの言葉を聞き、ダミュロンは差し入れのソルトバタークッキーの袋を開ける手を止めた。
「ああ、でも完全に辞められると流石に困るから、顧問という形で残留してもらえれると助かるのだけど…この仕事量を考えると…」
そう言いソフィアは、執務机どころか応接机の半分を占拠している書類を脇に寄せつつ、二人分の紅茶をおいた。
「その分アンタの方に仕事が行くでしょうが。そっちだって抱えている仕事量が大概でしょう?」
「仕事の合間に研究。ファリハイドの俺の家にあった古文書の次は、フェドロック家の古文書を解読しているんでしょうが。ヘルメスと新しい研究も進めているわで…そのためにこの前にはテムザにまで行って…」
「研究は趣味で、そのついでに旅行しただけ」
「それに、下町と市民街での子どもへの出張教育のお菓子まで作って…」
「お菓子はついでだから、そこまで負担じゃない」
「作る量からして、子供らのお菓子がメインで、俺らの差し入れがついででしょうが」
そう言うダミュロンの言葉に否定も肯定もせず、ソフィアは曖昧な笑みを浮かべた。
§
ダミュロンが隊長首席に就任して一年も経たない頃、大きな事件が起きた。
皇弟レギンの死去。
彼が率いた魔物討伐隊の壊滅。
アレクセイに命じられ、
その中に重要性の高い情報を見つけたダミュロンは、報告のためにアレクセイと面会していた。その時、一人の男が騎士団長の執務室に飛び込んできた。
「デューク?」
珍しく取り乱した様子の彼の姿に驚きつつ、アレクセイがその名を呼んだ。
「先ほどファイナスと面会しようとしたが…彼は何故死んだ⁈」
デュークの言葉を聞き、初耳だったダミュロンは驚きアレクセイに視線を向けた。
「……まだ極秘事項だ。声を抑えろ、デューク」
「今回の件、カクターフが絡んでいることに関係しているのか?」
デュークの口から出てきた名を聞き、ダミュロンは窺うような視線をアレクセイに向けた。
「……最初から説明してくれ」
アレクセイに促されてダミュロンは整理した情報を説明していく。
今回の事件の原因は、魔物討伐隊の副官が前騎士団長から大型魔導器を借り受けた事が発端であった。ギガントモンスターに使用する
稼働した結果、レギンらが居た周囲のエアルが濃くなった一方で、そのさらに周囲を囲うようにエアル濃度が薄まった。その範囲内にペルレストも含まれていたのだが、エアルの希薄化で通信機は不通となってしまったのであった。これは、通信魔導器は大気のエアルを介して、音声情報を遠くへ伝達する仕組みであったためである。
それに気付かないままレギンらは魔物に囲まれ、救援を呼べない厳しい状況に追い込まれた。魔導器の運搬要員として連れてきた民間人を脱出させるも、隊は隊長を始めとして半数を失ったのであった。
「民の脱出について、意見の食い違いが出ている。護衛についた騎士の一部が民間人を殺害しようとしたという話で、レギンの側近が主犯という者がいる一方で、ファイナスは副官が主犯で側近が応戦したと言っている」
「ファイナスの言葉に間違いない。自身らの失態を揉み消すためだと、私も側近から聞いた」
そう言うデュークとアレクセイの紅と緋の瞳がかち合う。
「被疑者から伝え聞いた言葉では、正確性に欠ける。副官を擁護する側も同様だが…副官が死んでいる以上、側近だった傭兵のほうの事情を聞く必要が…」
「その必要はない。昨日私が看取った。彼は…主の敵であるカクターフとガデニアを討とうとした。ガデニアは仕留めたが、反撃を受けてその傷で……」
「……ファイナスが殺害されたのは、それが原因ですね」
会話に割って入ってきたダミュロンの言葉を聞き、デュークは驚き凝視してきた。
「ガデニア卿を使ってキュモール卿を踊らせて、レギン殿下を排除しつつキュモール派の勢力を削ることがカクターフ公の狙い。向こうも目的を果たしたと言うわけで、ファイナスの助命を条件に手打ちと言う形で交渉していたのですがね…」
「一体何の話を……」
「その矢先で襲撃を受けて、騎士団側が仕掛けたと思ったのであろう。今朝方、刑部卿から取り調べ中の事故で死亡したと連絡が入った」
アレクセイの言葉を聞き、傭兵の軽率な行動が原因でファイナスは命を失ったと悟ったらしく、デュークは片手で目を覆い俯いた。
「ソフィアに仕切り直しの交渉を依頼しますか?」
「いや。最後まで私が責任を持って行おう。奴らはファイナスに罪を擦りつけるつもりであろうが、そうはさせてなるものか!」
「民を処分する命令は副官から発せられた。副官はファイナスにとって上司となりますので、命令違反の罪は覆す事はできないでしょう。今回の原因の魔導器絡みから、罪に問えるのは前騎士団長まででしょうか? 極刑は免れませんから、死に物狂いで抵抗するでしょうね」
「……ファイナスの遺族が危険か……ダミュロン、ソフィアにその事を伝えてくれぬか?」
「確か奥方と息子さんでしたね。彼女と相談して、何とかしますよ」
ファイナスはレギンと同様に生存させるかかなり迷いましたが、この後の展開を考えた上でゲーム通りの展開となりました…
レギンの暗殺に使われたものは、劇場版でガリスタが生物を魔物化させた魔導器に近い物と考えて貰えればと思います。