pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
ファイナスの遺族は下町へ引っ越すこととなった。
彼の命令違反に関する罪は撤回できなかった事もあるが、貴族からの報復を恐れた部分が大きい。
ファイナスの妻のノレインは、
また、今回の件の罪全てがファイナスに被せられることをアレクセイが阻止したこともあり、殉職に伴う見舞金は騎士団から支払われることになった。加えてソフィアは、ノレインを正式に教師として雇うこととし、定期的な給金も支払うこととなった。
この日、下町の
その近くで、ファイナスの息子…フレンが、下町で友人となった黒髪の少年…ユーリと遊んでいる様子が視界に入る。その二人に、ダミュロンは夢の中で見た誰かの面影を感じた。
「あの二人を随分気にしているようじゃのう」
ユーリとフレンを凝視している事に気づいていたらしく、ハンクスはダミュロンに尋ねる。
どう説明すべきか分からず黙っていた時、魔導器の確認を終えたソフィアが、ハンクスに話しかけた。
「確認しましたけど、筐体がかなり摩耗しているみたいですね」
「税の徴収が厳しいと言うのに、取り替える金なんか無いぞ」
「それですが、筐体の刻印を見る限りでは帝国が設置した代物みたいですね」
「つまり国有物だから、帝国が責任を持って改修する代物って訳」
「取り敢えず私が定期的にメンテナンスをして騙し騙しで寿命を延ばして、その間に帝国に取り替えてもらうように交渉しましょう」
こうしてソフィアは、水道魔導器のメンテナンスのために下町へ定期的に通うようになった。そして何かと理由をつけて、ダミュロンがその護衛を買って出るようになった。
何故だか、ユーリとフレンが成長する様を、見たくなったからであった。
§
「貴方がソフィアとの狩り以外で下町へ行くなんて珍しいわね。それを1年以上続けるなんて」
「それはどう言う意味だよ。キャナリ」
騎士団本部にて、共にアレクセイへの報告のために騎士団長の執務室へ向かう廊下で、キャナリがそう言い悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「貴方って…力加減が絶妙じゃない。力を入れるところは真面目にするけど、それ以外は及第点が取れればいいと割り切って、要領良く手を抜くじゃない。だから、休暇を仕事に充てるなんて、珍しいと思ったのよ」
「……それって、褒めてんの?」
軽口を言っているうちに、ダミュロンらは目的の部屋に着く。
規則正しく数回ノックするが、それに応える声は聞こえない。アレクセイは集中すると周りの音が聞こえない事があるため、こう言う場合は一声掛けて部屋に入る事が多い。補佐をする隊長首席たる自身が部屋に控えて仲介をすべきかと思うも、外回りが多い自身では無理だと思い直す。いずれは誰かを常駐させるべきかと考えつつ、ダミュロンは声を掛けつつ入室した。
予想通り、執務机に積まれている書類の陰から、銀色の髪と真紅の騎士団長の隊服が見え隠れしている。
「閣下、二、三報告があります」
キャナリの声に反応するように、書類の奥から覗かせた手は、出直すように身振りだけで伝えてきた。
その事に何となく不審を抱いたダミュロンは、キャナリが制止するのも聞かず、執務机の方に近づいた。二つに分けた銀糸の前髪から覗かせる緋色の瞳。前髪が心なしか短く、瞳は少し大きく睫毛が長いように感じる。
「………ソフィアか?」
「……幾つか、愚痴って良い?」
声を聞いたキャナリも、執務机に座っているのは、アレクセイの影武者に仕立てられたソフィアであると気づいた。
「一つ目、1時間と言いつつ4時間以上帰ってこない兄様。二つ目、今まで10人以上執務室に人が訪れたけど、誰も気づかない事…」
取り敢えず愚痴りたい事を羅列して、ソフィアは大きな溜息を吐きつつ、応接机のソファーに深く座り込んだ。
「そりゃまたねぇ…大将は迫力あるから、殆どの奴らはそうマジマジと見ないわけで…」
「それにしても閣下ときたら…ちょっと私が探しに行ってくるわ」
「お願いできるかな、キャナリ。まだ
ソフィアにも頼まれ、キャナリは事務方へ行ったアレクセイを迎えに行くため、執務室を後にした。残されたダミュロンは、備え付けの簡易キッチンで紅茶を淹れてソフィアに渡した。
「それにしても、災難だったねぇ」
「まあ、待ち時間に騎士団に関する草案を考えていたから…ここは資料が揃っているから、それに関しては進んだけど」
ソフィアによると、そもそもその資料を借りるためにアレクセイの元に来て、そのまま影武者に仕立て上げられたと言う。
「そもそも、なんで影武者作った訳。普通に鍵掛けて部屋を出れば良いだけでしょうに」
「部屋の鍵が壊れたとかで…その修理を依頼に行く間、部屋に居て欲しいって言われた」
「別にあんたが、大将に変装する必要はないだろう」
「それが……髪を染めずに男装して出かけようとした事があったのだけど、その時に『私と間違われたらどうする』って兄様に止められたことがあってね。流石に体格差があるからありえないって言ったんだけど…それを覚えていたみたいで『丁度良い機会だ』と言って…まあ、ある意味兄様と賭けたわけ」
「で、賭けは大将の勝ちと言う訳」
「誠に不本意ながら、私と兄様は似ているみたい…」
そう言い渋い顔をするソフィアを一瞥して、ダミュロンは執務机でソフィアが書きかけている書類を一瞥した。
「騎士団の入団試験の改定案か」
「レギン殿下の死で、騎士団を辞める者が多いとかで相談を受けたからね」
皇弟レギン個人を慕っていた騎士が多く、彼の死を契機に多数の熟練者が騎士団を辞めていた。
「体力基準とかを緩和して、騎士を増やすのではダメなのか?」
「質が悪い者を増やすのではなくて、質の良い騎士を育てて、辞めさせないようにした方が良い」
「それで入団後の教育と割り振りも含めて、改変すると言うわけか」
ソフィアが記した書類には、現状の問題点が分かりやすく記載されていた。
まず挙げられるのは、騎士団内での事務官の不足。部屋の鍵修理依頼にアレクセイが手間取っているのは、それも原因の一つであると言えた。
次に挙げられるのは、出生によって剣を取り扱う練度に著しい差があること。剣に触ったことすらない平民はやる気を無くし、貴族は胡座をかいて鍛錬を怠る事が多かった。
「入団の規定年齢を2段階に分けるのが良いかと思う」
「2段階?」
聞き返すダミュロンに対し、紅茶を一口含んでからソフィアは説明する。
「剣を習った経験のない平民は、年齢制限を16歳に引き下げる。新たに『訓練生』という枠組みを作って、剣の基礎と言った下積みと識字と計算を含む教育に3年間掛ける。そして試験を実施して役割を振る。荒事が不得手でも、騎士団で働く意思がある人は貴重でしょう? そう言う人を事務官に充てられれば良いかと思って」
「なるほど。で、貴族の方は逆に年齢制限を引き上げる訳か」
「基礎は貴族の嗜みで習っているでしょう? 18歳以上として、騎士見習いとして即戦力扱いにして、根拠のない自信をへし折れば良いんじゃないかな」
「『へし折る』って…相変わらず過激な言い方で…だが、基礎すらままならない貴族も一定数は居る」
「それならば18歳の入団試験は、剣を用いた実技試験と筆記試験。16歳の方は体力試験と面接という形がいいか…」
ダミュロンとの会話で固まった内容をメモするため、ソフィアは執務机に戻って、ペンにインクを付けて素早くメモをとり始めた。
「今いる騎士たちはどうすんの?」
「18歳以下の騎士は全て、過去2年以内に入団した騎士見習いたち。全員を新規定での騎士見習いから騎士への昇格試験を受けさせて、不合格者は再度騎士見習いをやらせればいいと思う」
「となると…差し当たり新規にできる『訓練生』の教育担当をどうするか…」
「親衛隊が妥当でしょう。城内勤務しかないから、仕事の合間に対応できる。騎士見習いの教育の総括も追々やらせた方が良いかもしれない。教育対象を継続して看る方がいいだろうし、教育担当は経験を蓄積させるためにも固定化させた方が良いでしょうから」
「デュークが渋りそうだ」
どこか浮世離れして、人との接触を避けている節がある親衛隊長のデューク。ダミュロンが夢で見た姿よりは、幾分か人間に歩み寄っているようではあるが…
「それでもやらせた方が良い。視野が広い者に傾倒するあまり、彼自身の視野も同規模と勘違いしている節がある。実際に経験してもいないのに、全て分かったように錯覚した上で判断をしているところがある」
「ソフィア?」
彼女の語るデュークは、まるでダミュロンが夢で見てきた彼の姿を指しているようで…
「私はね……世界は寛容で、意味がない存在を生み出すほど甘くは無いと考えている。この世界で生きて営む人間と接する機会の中で、それに気づいてくれればいいのだけど…」
小説「断罪者の系譜」や劇場版によると、フレンの父ファイナスは下町の住民を救うために命令違反をし、その結果命を落としたとされています。残されたフレンとノレインは、ファイナスが命令違反をしたことが原因で、市民街を追い出されたとされています。
本作では、下町の住環境はかなり改善されていますし、黎明の残月のバックアップの元、貴族からの報復から守るために下町へ移住した形になりました。