pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
ダミュロンが帝都に来て10年近く経過しようとしていた。
「目の下の隈が酷いけど…ちゃんと寝れている?」
そういうソフィアの顔も大概だと言いたいが、自身が不眠気味なのは間違いないため、ダミュロンは黙って誤魔化す。
「
「良いって良いって。ここ乗り切れば、後が随分楽になるでしょう?」
規模が拡大した
「交渉営業部門」、「改良開発部門」、「人材派遣部門」、「庶務事務部門」と、仕事の内容ごとに分けてそれ毎の長を定めた。現在、その引き継ぎ作業が佳境を迎えていて、これが終わればダミュロンやステルと言った騎士団との兼任者は、顧問という形で組織から一歩手を引く形となる。
「仕事が多くて、睡眠が確保できていないのでは? やはり騎士団の方に集中した方が…」
「その騎士団での仕事の関係上、ギルドユニオンとのパイプを維持する必要があんのよ。
「ダングレストへは明後日から?」
「そう。大将から頼まれた仕事もあるし、今回は半年以上はあっちかねえ…」
「ドンの人使いが荒いようだったら連絡して。私が交渉するから」
「ドンに直接物言えるのはアンタくらいだよ」
そう軽口を言うもソフィアの心配は解消されないらしく、別れ際に安眠効果のある茶葉を手渡される始末であった。
ダミュロンが不眠なのは仕事というより、悪夢に魘される事が原因であった。
キャナリが死に、そして自分自身も死ぬ。
それが最近繰り返し見る悪夢であった。
§
「おい……レイヴン! てめえ、聞こえてんのか‼︎」
ようやくギルドでの自身の名称を呼ばれている事に気づいた
「あだぁっ‼︎ じいさん、殴るこたあないでしょう?」
「へっ……何遍呼んでも返事しねえからだろうが! ウチの幹部になって、俺の右腕とか持て囃されて、調子乗ってんじゃねえだろうな?」
「じいさんが次々仕事押し付けてくっから、疲れてるだけでしょうが」
軽口で返すレイヴンにもう1発お見舞いしようとするが、ドンの拳をレイヴンはヒョイと避ける。
「けっ……カプワ・トリムで物資が送り込まれてるみたいだが、何か聞いてねえか?」
「ああ、あれ? 何でも孤児院を作るらしいよ。カプワ・ノールの今の執政官、フィアレンが孤児院で子供らに教育してるとか聞いた
「最近になって
自身の同僚である
新設された騎士団長直属部隊「シュヴァーン隊」。
ギルドとの間は小康状態。
騎士団内部では、隊長職の貴族による経費の中抜きと着服、徴税と称して市民から金を巻き上げていた騎士達の検挙…
どれも関係ないと思った末に、これからの予定で思い当たる事項を見つける。
「ああ…イエガーの奴、真珠を探してっからそれじゃないかね。その買取で何かしら譲歩してもらう約束とかでマリーちゃんと話つけて、見返りに出資してるとか」
少し前に、
その辺りの事情をかい摘んで説明すると、ドンは鼻を鳴らして顎に手を置いた。
「俺を踊らせようとするたァ…舐められたモンだ」
「じいさんにさっきの話を吹き込んだのは、何処のどいつよ?」
部分的な情報だけを伝えて、ギルド間…下手をしたらギルドと帝国間の不審を増長させようとする悪意を、話の裏でレイヴンは感じ取った。
「その大元を調べるのが、テメエの仕事だ」
「……予想はしてたけど…人使いの粗いことで…」
そう軽口を叩きつつもレイヴンは仕事の為に動き出そうと、今では着慣れた紫の羽織りを翻した。
「ところで、テメエの方はどうなんだ?」
「どうって……見ての通りたった今、仕事を押し付けられたところで…」
「馬鹿野郎! テメエは身を固めないのか?」
ドンはソフィアとの関係を聞いているのだと理解して、
「……そういう甘い関係じゃないのよ」
「あまり
「周りの奴らが放って置かないから、大丈夫よ」
アレクセイの目が届かない帝都外へとソフィアが出る時は、シュヴァーン隊の協力員が密かに護衛についている。ただ問題が発生しても、護衛が出るまでも無くソフィアが自力で解決してしまうのだが…
「それとも、何か気にかかる事でもあるわけ?」
そう軽口を叩くレイヴンに対して、ドンは真剣な視線を向けた。
「……何かに警戒しているのか、気ィ張ってるように思える」
「警戒? ソフィアがか?」
「何か…焦ってるんじゃねェのか?」
ドンに言われて、レイヴンにも少し思い至る事がある。
ソフィアが現在、魔導器に取って代わる全く新しい仕組みのエネルギー機関の開発を試みていた。これは、現在の帝国貴族の既得権益に大きな影響を与える事は明白で、特に帝国評議会からの大きな反発が予想された。
何故、今、その開発に固執するのか…
その時、
§
翌年、キャナリと
引き締まった長い手足を包む、キルサンタスの花の刺繍が施された純白のドレス。長い黒髪を隠す、隊の徽章を模した模様が織り込まれた輝くヴェール。その隙間から垣間見える柔らかい光を放つ真珠のイヤリング、そして首を飾る真珠のネックレス。
麗しい新婦に手を取る純白の燕尾服を纏った新郎。互いの視線が交わると、柔らかく蕩ける空気に包まれる。
その様を見た後、ダミュロンは隣に居るソフィアに視線を向ける。
穏やかで喜びを隠しきれない笑みをソフィアは溢していた。
そして涙が一雫。
途切れることなく、ぽろぽろと涙が流れる様を見てしまった隣に居るデュークは、驚きのあまり固まってしまった。
「どうした⁈」
ダミュロンが小声でソフィアに尋ねる。
「その……感極まって……嬉しくて……」
「友人の結婚式でそんな状態で、閣下の時とか大丈夫かね…」
そう言いつつもダミュロンは、ソフィアの姿が他者から見えないように壁になる様な体勢を取り、そっとハンカチを渡す。
「妹として身を固めて欲しいけど…兄様は仕事と研究が友人で恋人だから…」
「その言葉、そのままアンタに返すわ…」
「返す言葉もない…でも、キャナリ…本当に良かった」
「本当に……そうだな…」
由来不明の幾許かの心の痛みを感じるも、ダミュロンは二人を祝福する気持ちで満たされた気分に浸っていた。
その余韻に浸るまもなく、ステルはアレクセイに命じられて、遠方への任務に従事することとなる。
デズエール大陸。
テムザ。
ステルの任務先を聞き、足元から悪夢が首をもたげ、自身を地獄へ引き摺り込むような錯覚に、ダミュロンは襲われたのであった。
ゲームの世界では人魔戦争が起きた前後の時期です。
人魔戦争が発生した年が過ぎて、キャナリとステル(イエガー)が結ばれるも、帝国貴族らの権力の根元が魔導器であることに変わりはない状態です。