TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



闘技場都市ノードポリカ(立場上命令です)

 

 ソフィアが27才を迎えた年。

 ゲーム内で人魔戦争の勃発した年を越え、無事にキャナリが結婚できたとソフィアが安堵していた矢先のことであった。

 

「救援要請? ヘルメス先生からですか?」

 ディノイア家の屋敷、中庭。

 月1〜2回程度、同じ日に休みを取り手合わせしている兄アレクセイが、その日課を始める前にソフィアに切り出した。

「情報源は?」

「『鴎』だ」

「……兄様、それって…」

「そう。白鳥(シュヴァーン隊)からだ」

 

 アレクセイが掲げる騎士団の改革も、ここ5年で評議会の中で中立派が増え、騎士団反対派は賛成派と同割合になってからは、今までよりスムーズに進められるようになった。結果、キャナリは試験的に作られた貴族と平民の混成小隊の小隊長を経て、隊へと拡充された初の混成部隊の隊長となった。

 そして黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)の顧問と二足の草鞋ながらも、キャナリの副官を経て騎士団長の補佐である隊長首席になっていたダミュロン。彼が率いる騎士団長直属部隊「シュヴァーン隊」も創設された。このシュヴァーン隊、帝都の治安維持を主に行う「表の隊員」よりも、定期契約を結んだ外部の協力者…「裏の隊員」は重要な役目を担っている。

 それは諜報活動である。

 

「重大さは分かりましたが、ヘルメス先生はデズエール大陸ですよね? 新婚早々、遠方出張させたんですか?」

 ソフィアは友人(キャナリ)の家庭事情を踏まえて小言を言う。

「…(ステル)については、(キャナリ)には承諾をもらったが…」

「騎士団という組織の性質上、上司からのお願いは命令と同義。拒否できる訳ないでしょう」

「新設したばかりで人手が足りんのだ」

「それは分かりますが…で、この場で私に話したと言うことは、黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)への依頼ではなく…」

「お前自身への依頼だ。ヘルメスの開発品に接触する者を最小限にしつつ、自衛ができる専門家となると、お前しか居ない」

「そうでしょうね。それでは、今日はこれから黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)へ行って不在中の指示をして参ります。それを終え次第、そのまま出立します」

 そう言いソフィアは席を立ち、手早く戸棚を開錠して、狩りの時普段使いしている背負い袋を取り出す。

「おい…旅支度に時間が…」

「この中に入れた廉価版収納魔導器(チェストブラスティア)の空間収納に、旅や狩り用品一式、野外で試運転をしたい廉価版魔導器(ブラスティア)や器材が入っているから大丈夫です」

「……お前…旅に出る機会を伺ってたな」

 アレクセイの問いに答えず、ソフィアは鼻唄まじりで手持ちの武醒魔導器(ボーディブラスティア)に廉価版収納魔導器(チェストブラスティア)をセットし、水や食料、回復薬など当面の物資を空間収納内から背負い袋に詰めていった。

「護衛はどうする?」

「最近の狩りは単体でする事が多いですし、余計な戦闘を避けるなり、離脱を考えると一人の方が良いかと」

「だが一人でデスエール大陸へ行くのは初めてであろう? 先行している者をつける」

「助かります。カプワ・ノールかトリムから、デスエール大陸のノードポリカへ向かいます」

 

 一ヶ月ほど出張で不在にすると伝え、阿鼻叫喚の黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)を後にし、ソフィアは帝都を旅立った。

 そしてカプワ・ノールで、偶然ノードポリカへ向かうと言う海精(セイレーン)の牙のアイフリードに会って頼んだところ、二つ返事で了承してくれた。

 同乗者の頼みを一つ聞くことが条件であったが…

「おう。アイフリードが言うには、夕刻にはノードポリカに着くそうだ」

「…通信機は空いたようですね。次、使わしてもらいますよ。ドン・ホワイトホース」

 初老となったとは言え鍛え込まれた大柄な体、顔に刻まれた刺青は迫力があれど、理性的な視線をこちらに向けるドン。ギルドユニオンのトップである彼がその同乗者であった。

「寄り道する形だが良いのか?」

「この船に乗らなかった本来の到着予定よりは早いでしょうから、大丈夫ですよ。念の為兄様には連絡を入れさせてもらいますが」

 最初期に公開した廉価型通信魔導器(コールブラスティア)は改良が進み、個別の機体番号を入力すれば、特定の機体への通信が可能となっていた。

「それより、戦士の殿堂(パレストラーレ) 統領(ドゥーチェ)が私と会いたいって話ですが、私と会えなかったらどうするつもりだったのですか?」

統領(ドゥーチェ)ベリウスが呼びつけてるのは、廉価版魔導器(ブラスティア)の関係者だ。レイヴンあたりを呼びつけようとした時、ちょうど嬢ちゃんが来たと言うわけだ」

 以前に騎士団からのギルドへの潜入調査と、黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)が受けた人材派遣を兼ねて、ダミュロンはギルドユニオンに勤務していた事があった。この時、偽名をドンに勝手に決められ、5大ギルド筆頭の天を射る矢(アルトスク)のナンバー2にまでのし上がり、今でも籍を残していると言う話であった。

 そうやって水面下で完全に引き抜こうとするからタチが悪いと思いつつ、ドンにソフィアは手持ちのクッキーを勧める。

ダミュロン(レイヴン)は今結構忙しいんですから、無茶振りしないでください」

「無茶振りさせてる筆頭が言うじゃねぇか」

 そう豪快に笑いつつドンは、ソフィアからクッキーを袋ごと奪い取り、一気に3枚口に放り込む。

「ほう…紅茶とオレンジピールか…悪くねぇ」

「お褒めに預かり光栄です」

「嬢ちゃんが作ったのか⁈」

「金銭的に苦しい時があって…兄は口が肥えてますから、否応なく腕は上がりましたよ」

「ほお…アレクセイの小僧は甘党か」

「帝都で買えるお菓子のお勧めを、上から10位まで解説付きで教えてくれますよ。新作出る度にチェックしてますし」

「そりゃあ話が合いそうだなあ」

 そんな話をしていると、アイフリードが昼食を知らせに来てくれた。

 ソフィアとドンは二人で船室へと入っていった。

 

  §

 

 闘技場都市ノードポリカ。

 デスエール大陸有数の都市で、闘技場ギルドの戦士の殿堂(パレストラーレ)のトップ、統領(ドゥーチェ)ベリウスが治める街である。

 ドンと共に戦士の殿堂(パレストラーレ)の本部へ向かうも、ベリウスは新月しか面会しないと言われ、総統代理のナッツは申し訳なさそうに出直すよう伝えてきた。ドンは悪態を吐きつつも、運良くソフィアと出会えたこともあり、当初の予定より早く到着した事も事実であるため、その場は引き下がることになった。

 新月まで2週間ほどある。ソフィアとドンはそれぞれ自身の用事を済ますことにして、一度別れることになった。

 夕闇迫る街で、ドンはアイフリードに「サイファーも交えて、心ゆくまで語り明かすのだ」と言われ連れていかれ、ソフィアは一人宿屋へと向かった。

 

「お迎えに来ました」

 宿屋の扉脇、落日後の空に似た紫色の羽織りを着た男の姿があった。

「てっきり(ステル)と思っていたけど、(ダミュロン)が同行してくれるのね」

「新婚さんにはちょーっと酷と思って、大将に交代を申し出たんだわ」

「兄はデリカシーはないから」

「いや、似た者兄妹でしょう。アンタこそ旦那(デューク)と最後に会ったの何時よ」

 表向きでは婚約者となっているデューク・バンタレイ。親衛隊長になった彼に会ったのは、一ヶ月前に菓子を差し入れに行った時かとソフィアは思い出し気まずくなる。

 大きな溜息を吐くダミュロンから視線を外し、ソフィアは話題を変える。

「…急いだ方が良いんですよね、明朝出立しましょう。ええっと…」

「そうねえ…ま、とりあえず『レイヴン』で」

 そう言い、見慣れた翠の瞳をレイヴン(ダミュロン)は向けた。

 





 コードネームはキャナリは金糸雀(カナリア)から「雀」、イエガーは名の由来と思われるトウゾクカモメ(pomarine jaeger)から「鴎」と言う感じにしました。
 ソフィアは名の由来が「philosophy」ですので、「智」の象徴である「梟」と言う感じにしてます。
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