TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



コゴール砂漠(事前の事件要因の全把握は難しい)

 

 魔導器(ブラスティア)は製造法が失われており、貴重である事も相まって帝国が独占的に管理を取り仕切っている。そのため、貴族街と下町では普及している魔導器の質や数に大きな格差があった。ソフィアが目指しているのは、魔導器(ブラスティア)によるエアルの消費を削減することもあるが、魔導器(ブラスティア)から代替機関の道筋をつけて、その技術をできるだけ多く広めて格差を減らすことも目的の一つであった。

 その問題に加えて、今後待ち受ける悲劇の一つが不可避であると理解してしまったソフィアは、魔導器に頼らない全く新しい世界への道筋をつける事に苦心していた。そんな中、ヘルメスが重力を変える魔物素材と水晶を組み合わせて簡易発電器の試作に成功したのであった。

 一方で黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)の構成員は、貴族に加えて有力な商家ながらも平民も加わり、200名を超える大所帯となっていた。ダミュロンを始めとした騎士団との兼任者は顧問とし、仕事の内容ごとに分けてそれ毎の長を定める事になった。部下たちが身分に関係なく能力で長を決める姿を見て、次世代の貴族社会を担う者の意識改革が進んだ成果を目の当たりにし、ソフィアは肩の荷が降りた気持ちになった。

 

 順風満帆であった故にソフィアは失念していた。

 始祖の隷長(エンテレケイア)という存在を…

 

 デズエール大陸。コゴール砂漠。

 

「もう少しでテムザと言うわけだけど…その目は何?」

 簡易結界内に張ったテントの中。レイヴンにジト目で見られ、ソフィアが尋ねる。

「いやさ……俺が行った時は砂漠の寒暖の差で結構苦労した訳よ…何か反則じゃなあい?」

「反則って…今入っている断熱性のテント? 首に下げた小型冷風器? いつでも冷水が飲める給水器? それらを動かす新作の氷属性用魔導中継筐体(エアルコンテナ)? それとも、その全部の物資を入れた廉価版収納魔導器(チェストブラスティア)の空間収納?」

「その全部なんだけど…まあいいわ。予定より早く着いたんだから」

 そう言いレイヴンは、テムザ山の麓にあるヘルメスの研究所周辺と、研究所内の地図を開く。

「一ヶ月前にヘルメスから救援を求める連絡があった。帝都の騎士団本部から通信機でテムザの研究所と連絡をとったところ、ヘルメスの救援要請は誤りだったとの回答があった」

「ヘルメス先生との応対は?」

「出来なかった。念の為アレクセイの大将は、ステル…この場合は(イエガー)と呼ぶ方がいいか。アイツを派遣したわけなんだが…」

「時期的に挙式直後ね…」

「現場判断で動けるのが、俺かイエガーの二人しか現状いないもんでね…」

 シュヴァーン隊には表向きの騎士と裏向き要因の騎士がいる。裏向きの正式な隊員はステルのみで、他は定期契約を結んだ外部の協力者なのだが…

「確かに研究所に関しては、外部の人間である協力員には頼めないか…で、私を呼んだ理由はコレを使いたいから?」

 そう言いソフィアは、廉価版収納魔導器(チェストブラスティア)の空間収納から、前世でいうところのノートパソコン様の機械を引き出した。

「完成してたのね…って言うか、持ってくるとは思わなかった」

 これは、ソフィアが次の事業として考えている魔導器(ブラスティア)の盗難対応用に作成した、魔導器(ブラスティア)追跡モニターである。

 魔導中継筐体(エアルコンテナ)に接続したことがある魔導器(ブラスティア)には、接続履歴という形で標識がつく。その反応を捉えて、位置情報がわかるという代物であった。

 魔導中継筐体(エアルコンテナ)の普及に従い、黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)へ現存の魔導器(ブラスティア)を用いた稼働チェック依頼が増加している。その件数は、帝国とギルドが把握している魔導器(ブラスティア)の発掘数の6割を越えた時から、ソフィアは未来の事業の一つとして準備を進めていたのであった。

 起動させると、反応が多数存在するエリアが見つかる。そこが研究所と考えて焦点を当てて拡大していく。

「やっぱない…か…」

 地図と照らし合わしつつレイヴンは呟く。

「研究所の建物の外、裏側にどデカい魔導器(ブラスティア)があんのよ。何のための代物かよくわからんとのことで、専門家を呼び出すことにしたわけ」

「追跡モニターに反応がないということは、非正規品か、魔導中継筐体(エアルコンテナ)に接続したことがない古い魔導器(ブラスティア)を使った代物というわけか…こちらでのチェック履歴がないから詳細データは辿れない。実際見てみるしかない」

「そうしたいのは山々だけど、一番警戒が強いんだよね」

「研究所の中の人…ヘルメス先生に訊くのは?」

「イエガーもそう考えて侵入したら、騎士や研究員には見えない人間がわんさか居て、アイツは俺と違ってヘルメスの顔は知らないから、一時撤退したんだと。で、大将(アレクセイ)に指示を仰いで今に至るというわけ」

「…研究所が何者かに乗っ取られた?」

「だろうね。常駐の騎士は一人も見当たらず、代わりに幅を利かせていたのは、暗殺ギルドの海凶(リヴァイアサン)の爪の戦闘員という話だ」

 

 夜闇に紛れ、ソフィアはレイヴンと共にテムザのヘルメスの研究所に侵入する。

 例の魔導器本体の警戒が強いことから、ソフィアは実験室の資料室に忍び込んで情報を探る。一方で、レイヴンは何とかヘルメスとの接触に成功し、状況を把握することができた。

 情報が得られたことから、ソフィアとレイヴンは一時撤退して、先刻小休止をとった地点で再度簡易結界を張る。砂漠と同じ色のテントは迷彩にもなることから、そこで互いの情報を交換する。

「どこぞの貴族が背後に居るみたいね。ヘルメスの囲い込みが目的。普通に脅されているけど、テムザ山の住民も人質に取られている」

「ヘルメス先生の住んでいる街ですよね。奥様は亡くなられたけど、娘さんがいるんでしたよね?」

「魔物寄せの魔導器(ブラスティア)で、魔物に襲わせるとか言われているらしい」

「気候で魔物が寄らないだけで、結界があるわけではないと聞いています。そんなことをすればひとたまりないでしょう」

「となると…先に攻略すべきはテムザの街の方となるね…ちょっくらマンタインまで戻って人手を集めますかねぇ」

「だったら、私は残って見張りをする」

 一緒に戻るものと思っていたため、レイヴンはソフィアの言葉に驚く。

「研究所の外に作られたあれは兵装魔導器(ホブローブラスティア)。しかも威力を上げるために無茶な改造をしている。万が一暴走すればとんでもない事が起きる」

「その万が一が起きた時、止めるために残りたいって言うのね…しかし…」

「他に対処できる人が居るわけじゃない。ならば私が残るしかないでしょう?」

「まあそうなんだけど…一応俺はアンタの護衛なんだけどねえ…」

 レイヴンはソフィアを残す事を渋っていたが、珍しく必死に食い下がるのに押されて、結局レイヴンは一人でマンタイクに戻ることになった。

 予備の廉価版収納魔導器(チェストブラスティア)をレイヴンの武醒魔導器(ボーディブラスティア)に繋げ、空間収納に当面の食料や水、回復薬を入れ、小型冷風器、給水器、氷属性用魔導中継筐体(エアルコンテナ)も渡した上で送り出し、ソフィアは安堵の息を吐いた。

 

 人魔戦争の勃発は回避できたと思っていた。しかし…

「ヘルメス式魔導器(ブラスティア)…」

 ゲーム世界で、ヘルメスが開発する予定だった機械。出力を上げた代償で膨大な量のエアルを消費する代物。

 脅されたヘルメスが生み出したのは、明らかにその類の代物であった。

「あの兵器魔導器(ホブローブラスティア)が一回攻撃するだけで…今使用されている全魔導器のエアル消費量の数百倍…いや数千倍がごっそり消費されてしまう…」

 研究所への侵入時に見た資料から試算し、ソフィアの眉間に深い皺が寄る。

「エアルのバランスが崩れる…もし今現在、エネルギー充填をしていれば既に彼らは感知しているはず」

 そして破壊のために動き出すだろう。

 世界のエアル調整を担う始祖の隷長(エンテレケイア)が。

 

 人魔戦争。

 それはゲームの世界で起きた悲劇。

 世界を守るため、エアルを乱す人間を滅ぼそうとした一部の始祖の隷長(エンテレケイア)が、立ち向かった騎士と複数の地方都市を蹂躙した虐殺行為。

 その引き金が引かれるかどうかの分岐上に居るのだと、ソフィアは否応なしに突きつけられた。

 

  §

 

 兵装魔導器の監視のためにソフィアを残し、レイヴンは一人マンタイクに戻っていた。

 

 魔導中継筐体を発明した天才ヘルメスのいるテムザの研究所が、乗っ取られている事が明らかになった。娘が居るテムザ山にあるクリティア族の村へ魔物を嗾けると脅され、ヘルメスが無理やり作らされた物騒な兵装魔導器が研究所に鎮座している始末であった。

 ステルと交代したレイヴン(ダミュロン)は、ソフィアと共にテムザまで来た。これでステルを追って来そうなキャナリもまた、この地に来ることはない。

 

 悪夢のように二人が命を落とす事はない。

 

「って……俺は何を考えているんだ…それより人手をどう集めるか……」

「おい、レイヴン。こんな所で何してやがる?」

 聞き覚えのある声に驚きレイヴン(ダミュロン)が振り返る。

「ドン? それにアイフリード⁈」 

 ソフィアがデズエール大陸へ渡る際に同行したと聞いていた、ドンとアイフリードの姿がそこにあった。

 





ゲームの世界では、アレクセイの協力でヘルメスは致命的と言える程のエアルの乱れを作る「ヘルメス式魔導器」を作りましたが、本作では貴族に脅されて作るような形となりました。
強力な力を求めるのはアレクセイ1人だけとは限らないし、状況によって人が変われど求める者が居なくなる事は無いと言う訳です…
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