pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
白い顔に容赦なく朝日が照らす。
何度も瞬きを繰り返す度に焦点が合い、白い壁紙に覆われた天井が真紅の瞳に映った。
「……ここは…」
常の自身の声より数段高い音が聞こえ、驚き上半身を起こす。純白の髪は自身のものだが、幾分か短く感じる。自身の手はこんなに小さかっただろうか?
何より、最近負った傷が見当たらない。
そこに気づいて漸く思い当たり、ベッドから飛び降りて、鏡越しに自身の姿を見て愕然とした。
間近の記憶より大きい真紅の瞳、子供らしさの残った柔らかな顔立ち。
「また……なのか」
声変わり前の高い声で呟き周囲を見渡すと、遠い日々に過ごした部屋である事に気づく。
そしてそれは、数えれないほど何度も繰り返した、「時間の逆行」の開始点であった。
「私は…まだ時間の輪環に閉じ込められているのか…」
そう呟く声には、落胆ではなく安堵の響きがある事に思わず苦笑する。何故なら彼……デューク・バンタレイは、世界が滅ぶ直前に時間を逆行しているからであった。
そして逆行先の時期はいつも同じ。
家を亡くし、成人までの後見人となった皇弟のレギン・ジェミナイ・ヒュラッセインが、旧知のドレイク・ドロップワートへ自身を預けた辺り。家を亡くした折の逃亡先で出会った友との約束を果たすため、剣を習い始めて一月ほど経過した頃。
何時も通りならば、そろそろ…
規則正しく数回、部屋にノックを響き渡る。
「デューク、起きてるか?」
「起きてる。アレクセイ」
デュークの声を聞くや否やドアを開けた人物は、デュークの記憶通り、共にドレイクを師としているアレクセイ・ディノイアであった。
「師匠は今日は急用で早朝に出かけたそうだ。これから私は自主訓練するつもりだが、どうする?」
「そうだな…私も付き合おう」
デュークの回答を聞き、アレクセイは嬉しそうに緋色の眼を微かに細めた。
「先に鍛錬場で待っている。支度ができたら来てくれ」
そう言い残し、アレクセイは退室していった。
現皇帝であるクルノス14世。彼の叔母にあたる皇女が、バンタレイ公爵家に降嫁した。
それがデュークの祖母であり、クルノス14世は自身の従兄弟であるバンタレイ公爵に信頼を寄せていた。そして公爵の子であるデュークを養子とし、自身の帝位を継がせようと望んだ。
屋敷が襲われたのは、クルノス14世からの打診から一月も経たないうちであった。表向きは野盗であるが、時間のループの中で複数の貴族家の私兵である事をデュークは知っていた。当時13歳であったデュークは、使用人の機転で荷馬車に紛れて帝都の外へ逃れた。
そしてエフミドの丘で、魔物に襲われていたデュークを救ったのが、
「彼に救われ帝都に送られるまでの旅路…大丈夫、まだ覚えている…」
エルシフルと結んだ「共に旅に出よう」と言う約束。それを心の支えに、デュークは時間のループすらも耐えてきた。
「今度こそ……エルシフルを殺させやしない」
エルシフルと共に生きる未来。
それを手に入れるためには、エルシフルが愛するこの世界、テルカ・リュミレースに起きる危機を乗り越える必要がある。その世界崩壊の危機に関わる重要人物の一人が、アレクセイ・ディノイアであった。彼こそが将来、騎士団長に上り詰めるも、気が触れて狂い、己が権力と知識を駆使して、非意図的とは言え世界を崩壊へ突き落とした愚か者…
成人前の今の時点では、互いの剣の師であるドレイクを介して、兄弟に似た良好な関係を結んでいた。しかし未来の記憶が影響して、ここ何回かの時間のループのデュークは、アレクセイに対して冷淡な態度を取っていた。
デュークの現状を予想すらできるはずもないアレクセイは、彼としては昨日までと同じように、親しげにデュークに話しかける。アレクセイにとってデュークは、腐敗した帝国貴族の中で自身と同じ感性を持つ友人であった。
「先週話したが…父が新航路開発に失敗して亡くなった後始末で、明日から当分の間ここへは来れなくなる」
朝稽古の後、アレクセイがぽつりと告げた。
「……そうか」
無表情で言葉少ないデュークの態度に少し驚くも、アレクセイは苦笑しつつ少し頬を掻く。
「早朝に稽古に付き合わせて悪かったな。下手をすれば今回が最後になると思って、私の我儘に付き合わせてしまったな。すまない」
そう言い頭を下げるアレクセイ。この頃はまだ、素直に己が非を認める事ができていたと聞き流しつつ、デュークは記憶との照合をしていた。その時…
「妹が…ソフィアが生きていたのが救いだ」
「………え⁈」
「生命の危機は脱した。だが、意識を取り戻さないんだ…」
表情が急変したデュークに対して、取り繕うようにアレクセイは説明を加える。
しかしデュークが驚いたのは、アレクセイの事を慮ったからではなく、今までの時間のループで経験していない事象が起きたからであった。
デュークが経験した時間のループの中では、アレクセイの妹であるソフィア・ディノイアは、この時点で亡くなったはずであった。
§
デュークとアレクセイは、クルノス14世の剣の指導役であるドレイクの下で剣を学んでいた。
ディノイア家を引き継いでからアレクセイは、ドレイクの下へ来る機会がめっきりと減った。ソフィアが奇跡的に回復したため、屋敷を維持して妹を養う必要が出てきたからであった。使用人を整理し、両親から引き継いだ遺産をいくつか処分し、資金の確保にアレクセイは奔走する日々が続いていた。
そして当面の生活費を確保し、ひと段落する頃には、鍛錬を続けていたデュークは、アレクセイと勝負ができるほど剣の腕が上がっていた。
「来月の騎士団の入団試験を受ける」
剣での打ち合いを終えた後、徐にアレクセイはデュークに打ち明けた。
「妹には話したのか?」
「既に話してある。妹の方も安定して狩りができるようになったようだ。
「狩り?」
「…家の護衛がいつの間にか戦闘術まで教え込んでいた。単体でエッグベアを討伐できるくらいに…」
「……エッグベア…」
騎士が数人がかりで仕留める魔物を、十代前半の女の子が仕留める。アレクセイの妹らしいと納得もしたが、帝国貴族の子女としてどうかと溜息を吐く彼の苦悩も分かるため、デュークはその事を口にはしなかった。
そして軽く咳払いをした後、時間のループの中でも出会った事がないソフィアの情報を引き出そうと、デュークは口を開く。
「調整や設計だけではなく、
「いや。さすがに組み立ての実践はまだだ。だから私の友人を師につける事になった」
「友人?」
「ヘルメス……彼がその友人なのだが、クリティア族の者で古代ゲライオス文明に興味があってね。帝都の図書館で知り合った」
その言葉を聞き、デュークは記憶の中に該当する人物が当たる。
天才科学者ヘルメス。
世界崩壊の序曲となる、ヘルメス式
「…ヘルメスを妹の師にするのか?」
「ああ。
アレクセイの言葉を聞き、デュークは一瞬目を見開いた。
帝国は
アレクセイの妹のソフィア・ディノイア。彼女が生存してから、自身の知らない出来事が増えてきたようにデュークは感じた。しかしそれも結局は誤差範囲であろうと、デュークは気に留めることはなかった。
デュークの過去は完全に捏造です…
デュークの人間離れした言動や、人に対する根深い不信感は、何度も世界が破滅する未来を見てきた記憶を持って、時間のループを経験しているのでは…という妄想が本作品の原点の一つです。
デュークは王族に連なると言うことから、公爵家(まんま音が「デューク」だし…)じゃないかと考え、小説「虚空の仮面」でアレクセイの政敵だったカクターフが「カクターフ公」と呼ばれていることから、カクターフも公爵家と考えられます。そこで、カクターフとの政争にバンタレイ家が破れたのかな…とか考えました。
アレクセイの父もカクターフが「頭が悪くなければ死ななくて済んだ」的な事を言っていたので、カクターフ側に付かず殺されたのかな…と想像した感じです。公爵家は皇帝の兄弟か従兄弟くらい、侯爵家はそれより遠い皇帝の親戚くらいと考え、ディノイア家を侯爵家にして、デュークの遠縁という感じで設定しました。