pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
レイヴンは遠い目で眼下の海を見ている。
レイヴンらは海を渡ってテムザ山へと向かっている。比喩ではなくて、ドンの連れの老婆が変身した大狐が海面を走っているのだ。
「よそ見すんじゃねえ。落ちるぞ」
「なになに、何なの? じいさんの知り合いってどうなってんの⁈」
共に大狐に乗っているドンに、レイヴンは食って掛かるように尋ねる。
『レイヴンと申したか?
「エンテレ……ケイア?」
『エアルの調整を行う世界の調整者…とそう呼ぶ者も居る』
そう語る大狐が、デスエール大陸有数の都市で、闘技場ギルドの
「ったく…とんでもない友達持ってるわね。じいさんのことだから、そう驚くことじゃあないけどねえ」
「へっ! 伊達に歳は取ってねえからな」
「何を言っておる。ベリウスの正体を知ったのは、つい先ほどではないか」
「アイフリード、テメエ! 余計な事を言うんじゃねえ!」
「で、どこへ向かうのだ?」
ドンの抗議を聞き流し、アイフリードはレイヴンに尋ねる。
「まずはテムザ山のクリティア族の村だ。そこを対処しなければ、本命の研究所の
ここまでの道中で互いの目的を話している。そして共に、テムザの研究所の兵装魔導器を停止させて破壊する事で、目的は一致していた。
テムザ山。
険しく細い山道を強風が吹き下ろし、山頂のクリティア族の村へ魔物が侵入する事を防いでいた。しかし…
『……エアルが乱れた?』
「見るのじゃ!」
アイフリードが指差す先、魔物が人に乗り掛かり喉笛を食いちぎろうとしていた。
「トリガーチューン!」
素早く抜いた銃を連射し、ヘーヴィボトムの頭部を撃ち抜き破壊するアイフリード。そのままベリウスから飛び降り、麓へ続く道から湧き出てきたオノオノをアイフリードは攻撃し始めた。
「レイヴン! てめえは魔物寄せの魔導器を探して壊せ!」
そう言うや否や、ドンも飛び降り様に大刀を振り下ろす。
「太刀影っ‼︎」
放たれた剣撃は一直線に伸び、オノオノやディッドリースを纏めて一気に両断していった。
『この先、エアルの乱れがある。一気に向かうが良いか?』
里へ侵入しようとしている魔物は、アイフリードの予測不能なトリッキー攻撃にドンが悪態吐くも、なんだかんだで連携して数を減らしている様子である。
「来ませ! 運命の友‼︎ 何が出るかのぉ……お⁈」
「参るっ‼︎」
「サイファー⁈ てめえ、ノードポリカにいたんじゃねえのか⁈」
「ほほう…大当たりなのじゃ! 味方諸共攻撃する破壊神じゃなくて良かったのじゃ」
「博打がかった技使うんじゃねえっ‼︎」
彼らの心配をするのは野暮と言うもの。レイヴンは了承の意を伝え、ベリウスに掴まり目的の物を探す。
ベリウスがエアルの乱れを探ると、程なく目的の魔導器と、周囲を固める黒ずくめの人間を見つけることができた。
相手がベリウスの姿を認める前に、レイヴンは連続して矢を放って黒ずくめの者を射抜く。
『ほう……人間にしてはやるではないか』
「そりゃまたどうも」
賞賛するベリウスに軽く答え、レイヴンは魔導器を停止させ魔核を引き抜いた。
魔導器を動かしていた者は、テムザの研究所を占拠している、暗殺ギルド
その時、近くで剣戟の音が聞こえる。
他に魔導器がないか探っているベリウスに一声掛けたのち、レイヴンは音が聞こえる方へと向かった。
飛べない魔物は村への唯一の出入り口でドンとアイフリードが抑えているが、空を飛ぶ魔物は直接魔導器に集まっていた。それでも魔導器周辺に魔物がいなかったのは、誰かが抑えていると推定され…
「……子供⁈」
魔物の群れの奥で見え隠れする小柄な人物を見つけ、レイヴンは驚き声を漏らす。
空を舞うように飛び上がり、ラビラブの耳を斬り裂き落とす。ヒラヒラを舞うようなその姿は、朝焼け色の翅を持つ蝶のようで…
見惚れていたレイヴンは、少女の背後から急降下攻撃する魔物の存在に気づくのが遅れた。
「きゃあっ‼︎」
悲鳴が聞こえると同時にレイヴンは駆け出すが、既に少女の周囲には多くの魔物が集まっていた。個々で射抜くには時間がない。魔物と少女の距離が近すぎるため、弓技での複数攻撃や魔法は巻き込む危険が高い。
それならば…
「舞うが如く」
弓に展開させつつ、突進して斬り込み少女の側まで駆け寄る。
「碧の刹那っ!」
少女が自身に気づくのと同時に、レイヴンは周囲8方向へ同時に矢を放って、少女を囲んでいた中距離の魔物を射抜く。
「紅の螺旋っ‼︎」
続けて周囲に火球に変化させた矢を螺旋様に放ち、近くに纏わりついていた魔物を一気に焼き払った。炎に覆われる魔物を目眩しにし、レイヴンは少女の手を掴みその場から一気に離脱する。そして…
「受けよ! 白銀の抱擁! インヴェルノッ‼︎」
氷魔法の術式を構築し、残りの魔物を凍結し霧散させた。
乱れた息を整えつつ、レイヴンは少女の方を見た。
小柄な体格には不釣り合いな槍に縋りつきつつ、目を見開き身体を震わせて声も出ない少女の様子に、どれ程の恐怖を味わったのかとレイヴンは心が痛んだ。そして傷に気づき回復術を掛けようとして、ある事を思いついた。
「愛してるぜ」
術式の本質が理解できていれば、発動時の詠唱は型通りでなくても問題ない。
アレクセイが話していた事を思い出して試したところ、無事に治癒術は発動して少女の傷を癒した。可笑しな詠唱で傷が治り、驚いた少女は藤色の髪の奥に覗かせた赤藤色の瞳を、丸くしてレイヴンを見つめてきた。
少女の姿に妖艶な美女の面影が過ぎり、レイヴンは何処となく懐かしさに駆られた。
直後、少女の表情が強張る。その視線の先はレイヴンの背後の上空に固定されていた。振り返りソレが視界に入った瞬間、レイヴンの総毛は立ち、魂の奥底から凍りつく様に時間が止まった。
雷槌の様な視線。
無数の槍と見紛うような、鋭く長い漆黒の毛で覆われた巨体。
翼もなく浮かび上がり、絶えず蠢く様に形を変える、四肢が無い褐色の細長い体躯。
悪夢が現実として現れた。
弓を構えるキャナリの背。
塵も残さず消し飛ばされた希望。
一矢報いる事もなく胸を貫いた黒い槍。
アレは…あれはあれはあれはあれはっ‼︎
突然首根っこを掴まれるレイヴン。
「ぐえっ⁈」
ベリウスの背に自身を引き上げた相手へ、レイヴンは視線を向けた。
「じいさん?」
「粗方片付けてきた。念の為アイフリードとサイファーを残してきた」
『エアルが激しく乱れておる。〈暗きもの〉がその原因となっている場所へ向かっておる』
その言葉を聞き、研究所の兵装魔導器が起動してしまった事を悟る。万が一それが動いた時に対処するため、ソフィアが研究所近くで待機していることに思い至り…
血の気が引くもレイヴンは込み上げる吐き気を抑え、ベリウスにその場所を伝える。
頼むから居合わせないでくれ!
ソフィアの性格を考えると、その可能性は低いと分かっていたが、レイヴンは願わずにいられなかった。
「ヘルメスっ‼︎」
研究所上空に着くや否や見つけた人物の名を呼び、レイヴンは衝撃を風魔法で無理やり相殺し、ベリウスから強引に飛び降りてヘルメスに駆け寄る。
「ダミュロンか?」
知っている顔を見て安堵したのか、ヘルメスはその場に倒れ伏す。
「手を貸してくれ…ソフィア様が…」
「ソフィアが対処しているのか? まだ兵装魔導器は停止していないのか?」
「停止はさせたが……既に膨大なエアルを充填済みで…ソフィア様はそれをなんとかしようとしているが、彼女一人ではあの量のエアルを扱い切れない! ダミュロン、君は魔法は使えたな? 頼む! 力を貸してくれ‼︎」
詳細は分からずとも、ソフィアが無茶をしようとしている事は分かった。
ヘルメスの案内で向かったのは、例の
人の頭ほどの大きさがある魔核から眩い光を放つ魔導器の前、後ろに留めている髪が解けて銀髪を乱しながらも、複数の操作盤を出現させて作業するソフィアの姿が遠目で見えた。
「ソフィ……」
直後、風圧と共に何かが堕ちる様に降りてきた。
それはまさしく絶望の影…
『待て! 待つのじゃ! 〈暗きもの〉‼︎』
ベリウスの声を無視して、〈暗きもの〉はソフィアごと魔導器を吹き飛ばさんとする為、体毛の下に隠していた細長い口を開き奥を輝かせ始めた。
「邪魔をするな! この魔導器が集めているエアルを還元しなければ、エアルの乱れは発生する。それを止めないと意味がないだろう!」
目の前の脅威に動じる事なく言い放ち、ソフィアは魔導器のキーを叩く事を止めない。その様子に興味抱いたのか、〈暗きもの〉は光を収めて口を閉ざした。
「エアルの乱れを正すため、少し時間をくれと言っている! それともお前は、殺戮を楽しむ事が目的で、破壊行為を正当化するために、大義を掲げているのに過ぎないのか⁈」
ソフィアの言葉が通じているらしく、〈暗きもの〉は一瞬見開かせた後に目を細め、言葉の真偽を探るようにソフィアが構築し始めている術式に触れた。
「人間だろうと始祖の隷長だろうと、未来に責任を押し付けて、そのまま放置。気づきどうにかしようと足掻くのは、心ある極一部の人間。それを責め立てる、無責任な傲慢を私は認めない!」
その場に呑まれていたダミュロンは、初めて聞く激情を滲ませたソフィアの様子を見て、言いようのない不安に襲われた。
直後、ソフィアを囲む幾重にも重なる術式が組み立てられていった。
「駄目ですソフィア様! その量のエアルに人が耐えられる訳が……」
「術式展開! 還元開始っ‼︎」
組み立てられた術式が光の粒子となって消えていくと同時に、魔導器の魔核に宿る光は急速に失われていく。やがて魔核から光が消え、続いて術式も解ける様に消え去り、ソフィアの身体に微かに燈る光のみが残された。
直後、ソフィアの身体は崩れ落ちる。
「ソフィアっ‼︎」
やっと出た引き攣るような声で名を呼び、ダミュロンが駆け寄ろうしたその目の前…
〈暗きもの〉が放った攻撃がソフィアの胸を貫いた。
誰かが自身の名を呼ぶ声が聞こえるが、獣のような叫び声が邪魔でよく聞こえない。
痛む喉からその声は自身が発したものと気付くより先に、ダミュロンは変形弓を展開させて矢を番ていた。
そして………
力をつけてきた騎士団や新たに出てきた黎明の残月を警戒して、貴族らがより強力な兵装魔導器を求めることは自然なことであって…それが原因でエアルが乱れて、人魔戦争に似た危機が発生しても不思議ではないと言うことです。