pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「やっと目ェ覚ましやがったか」
ぼやけて見える天井を認識し始め、何度か瞬きをしている時、
「じいさ…」
枕元に座っているドン・ホワイトホースに応えつつ、ベッドから起きあがろうとした時に後頭部に痛みが走った。その痛みで何があったのか、レイヴンはようやく思い出した。
「じいさん……俺を殴った時、手加減しなかっただろう」
「けっ……無策で攻撃しようとしたテメエを止めるのに、そんな事まで気ぃ回るわけねえだろうよ」
その言葉を聞き、レイヴンは〈暗きもの〉に弓を引こうとした事を思い出した。そして、その切っ掛けとなった直前の出来事が過ぎる。
胸を貫かれていたの俺だったのに…
無意識に胸を押さえながらレイヴンは溜息を吐く。
「ドン……ソフィアは?」
「容体は落ちついている。ベリウスの話じゃ数日休めば回復するってこった」
「……………は?」
意味がわからず、レイヴンは聞き返す。次に脳裏に浮かんだのは、夢の自身の胸に埋め込まれた魔導器…
もしやソフィアの胸にソレが⁈
「何でえ…顔色やら表情をひっきりなしに変えやがって。てめえ…あン時のベリウスの話、全然聞いてなかったみてえだな?」
「ベリウスの…話?」
「エアル過多……だったか? その治療をあの化け物がした」
「………治療?」
その時、ソフィアに付いていたアイフリードがやってきた。
「おう、目が覚めておったか。ちょうどソフィアも先ほど目覚めて…」
アイフリードの話を最後まで聞く事なく、レイヴンは急ぎ部屋を後にした。
§
テイルズオブヴェスペリア。
このゲームの世界で起きる悲劇の全ての元凶は、人間が生み出した
エアルの激減が発生すると、星は恒常機能に従って中核に蓄えたエアルをエアルクレーネから大気へ放出する。結果、エアル高濃度地点が発生し、エアル過多で動物は魔物へと変容する。そしてそれは、均衡を保つためにエアルを食べる
一部の始祖の隷長は「星喰み」へと変わり、世界に危機が訪れた。その時人類はようやく始祖の隷長の訴えに耳を傾け、互いを滅ぼそうとしていた争いを止めた。
そして人類と始祖の隷長は協力し、脅威を退けた。
その後、必要最小限の魔導器を棄てると人類は始祖の隷長と約束する。しかし、長き年月で人類は約定を忘れ、棄てた魔導器を再び利用し始めていた。
世界の管理者を自称する
ゲームの世界では、ヘルメス式魔導器が世界を危機に陥れる。その警告をヘルメスにするのは良い。しかし彼一人だけに知らせて、一方的にたった一年と期限を作るのはどう言う了見だ?
始祖の隷長にも序列があろう。それを無視して軋轢なく即座にできるとなぜそう思える?
始祖の隷長の約定を違えた人間が悪い?
寿命が短い種族でその間、どれだけ世代交代していると思う? 忘れぬように手を尽くすどころか接触を断つとは、敢えて相手が約定を違えるように仕込んだとしか思えない。
現に
帝国の皇族も何をやっていたのだ?
なぜ皇族や貴族間で情報を伝え続けなかったのだ?
エアルを操作して還元できる
ファリハイドで見つけた古文書にあった、制作途中の不完全な術式を使わなくて済んだものを…
何よりも誰よりも…
この事態の元凶を知っていたにもかかわらず、充分な準備ができなかった自分が憎い。
だから不完全な術式でエアルを還元しきれず、エアル過多で死にかかっているのは自業自得な訳で…
「う……ぐぅ………がっ……」
熱く、冷たく、臓腑が絞られ混ぜっ返されるような痛み。自分の中身が溶けて急速に造り変えられる違和感。
掻き乱される意識の中でソフィアは考える。
エアル過多が悪影響を及ぼすのは、人間も例外ではない。軽い場合は体調不良、重い場合は命を落とす場合もある。自己完結で済めば良いが…
下手をすれば魔物になる。
魔物になったら厄介だ。
それを討伐するのは?
ダミュロン? キャナリ?
デューク? アレクセイ?
人魔戦争で死んだり心が壊れたり…
それを免れたのに背負わせたくない…
だったら……
こちらを伺うように見下ろす黒い獣。
始祖の隷長の〈暗きもの〉。
願いが通じたのか〈暗きもの〉は、槍と化した獣毛をソフィアの胸に撃ち込んだ。
§
ソフィアが目を覚ますと、西日が窓から差し込む部屋のベッドにいた。
「おう! 目が覚めた様じゃのう‼︎」
声が聞こえた方を見ると、枕元の側でアイフリードが安堵の笑みを浮かべていた。
「ここはノードポリカだから安心するのじゃ。皆を呼んで…」
「何人死にましたか?」
ソフィアの声がやけに部屋に響く。
「……62人じゃ。常駐の騎士と
「……そうですか」
「ヘルメスと言う男は無事じゃぞ! 研究所はお主が地下室へ避難を促したおかげでほとんどの者は無事じゃったし、テムザの村はベリウスがウチとドンを送ってくれたお陰で、守りる事ができたのじゃ!」
「……何故私は…生きているのですか?」
ソフィアが呟くように尋ねた直後、部屋の扉が開く。
「〈暗きもの〉が、其方の中の過剰なエアルを吸収したのじゃ。荒っぽいやり方じゃが、傷一つ残っておらぬじゃろう?」
「ベリウスが来たなら、ウチはみんなを呼んで来るのじゃ」
一人の老婆…ベリウスと入れ替わりに、アイフリードは他の者を呼びに部屋を出ていった。
「…貴女は…〈暗きもの〉と同族ですか?」
「何故そう思う?」
「…そうでなければ、テムザ山の村まで人を運べないですよ」
「そうじゃのう…ここは狭いゆえ人化は解けぬが、アイフリードとドンには正体を明かした」
「テムザに来る前に、〈暗きもの〉が貴女に会いに来たのですね」
「そうじゃ。看過できないエアルの乱れを察したと、その原因を取り除くと言っておった。さて、其方のことはドン・ホワイトホースから聞いている…
ベリウスの正体もそうだが、ゲームで知っていたとは言えない。あくまで知り得た情報からの憶測という形でソフィアは答える。
「…複数の古文書に点在していた断片を繋ぎ合わせた情報だけです。古代に生み出された
ベリウスの瞳孔が縦に伸びて、程なく元に戻る。
「……大枠は知っておったわけか」
「はい。巨大
始祖の隷長の〈暗きもの〉が強襲してきた混乱に乗じ、研究員を脅していた
そこでヘルメスに会う事ができ、
このままでは、止めても破壊してもエアルの乱れは不可避だった。
「ファリハイドのアトマイス家の古文書に、エアルを還元する術式の硏究経過の一部が載っていました。うろ覚えの付け焼き刃で、一か八か自身で術式を構築してエアルの還元を試みましたが…」
「術式は不完全で、エアル過多に陥ったと言うわけじゃな」
「魔物になりかかって…後々面倒だと処分してもらおうとお願いしたのですが、〈暗きもの〉は何を思って私を助けた…」
そこでソフィアは扉が開いていることに気づき、今まさに入室してきた
要らない気を利かせたベリウスは2人を残してそっと退室した。
部屋に入ったダミュロンは、壊れ物を扱う様にソフィアを抱きすくめた。
その背が小刻みに震えている事にソフィアは気づいていたが、背を摩りたくても指先一つ動かせないのが現状であった。
一方ダミュロンは、思ったよりも軽く柔らかい身体に、ソフィアが異性だと改めて認識した。そしてただの人で、傷付けば血を流し命を落とす事もあるのだと当たり前のことに今更ながら気づき、そして喪う恐怖に駆られた。
程なく、ダミュロンはソフィアをベッドにおろす。
そして覆い被さるように四つん這いになり、翠の瞳でソフィアの緋色の瞳を見据えた。
「何?」
「結婚しないか?」
「ダミュロン?」
「勝手に死なれるのは耐えられない」
「後生大事に私をしまい込んで、その結果どれだけ罪悪感を背負うつもり?」
「……喪わなくて済むならば…」
「今の時点でそんな顔をして…どれだけ貴方が傷つくか…」
「軟禁される君自身へ、少しは気持ちを割いてくれ」
「引きこもりは引きこもりなりの楽しさがある。ユウマンジュなら50年は居られる」
「……幻の高級宿かよ…ンなことされちゃあ、俺が破産する」
一世一代の告白のはずが、臆病からくる仄暗い願望を引き摺り出され、いつの間にか何時もの軽口混じりの会話となっていて…
やはりソフィアと甘い空気を作ることすら難しいと、ダミュロンは苦笑する。そこでようやく頬に流れる雫に気づき、自身が涙を流していた事に気づいた。
「……すまん……忘れてくれ…」
「そこまで追い込んで申し訳ない…」
「……死んだと思ったぞ」
「一か八かの賭けだったことは認める」
「…何時もの用意周到はどうした?」
「想定外の事態が起きた」
「危なくなったら、逃走一択じゃなかったのか⁈」
「身を張ってでも止める必要があった」
怒りを抑えられなくなった声に対しても、淡々とダミュロンに言葉を返すソフィア。そんな彼女を苦々しい表情で見返して、ダミュロンはゆっくりとベッド脇の椅子に座る。それを見届けてからソフィアは、徐に口を開く。
「ダミュロン、
「は……冗談キツいな。あんな化け物じみた奴、どうやって…」
「あの時、高出力
「はあっ⁈」
「始祖の隷長にとって高出力魔導器の存在は致命的だからね。ならばそれを生み出す人間ごと排除しようとするのは、当然のこと。私たちが街近くの魔物の群れを殲滅するのと同じ理屈」
「………」
「人と始祖の隷長の全面戦争となった場合に戦うのは、貴方や兄、キャナリにステル…帝国騎士団だ」
「それは…」
「倒せる? 戦って生き残る自信は? 皆が死んで一人生き残るより……私一人の犠牲で皆が助かる方が良いと考えは……」
不自然に言葉が途切れ、ダミュロンはソフィアの様子を伺う。閉じた双眸に規則正しい微かな寝息。
額に張り付いた一筋の銀の髪を耳に掛けてやり、ダミュロンは深く椅子に座り直した。
「お前の犠牲で俺たちが傷つく事を考えられないのか?」
人魔戦争の実情は、始祖の隷長の人社会を無視した突発的かつ一方的な勧告と、騎士団の騎士の半数に留まらず複数の地方都市を殲滅した虐殺行為です。始祖の隷長の言い分としては、魔導器でエアルが狂って世界が狂うから、その原因の人間を滅ぼすためと言う話ですが、始祖の隷長が人間を滅ぼせるかと言えば、個体数の差からそれは困難であると思われます(この辺りは始祖の隷長の見込みが甘かったと言えます)。おそらく生き残りがより強力な兵装魔導器を開発して、世界の破滅が早まって千年前は世界が滅びかけたのではないかと…
つまり一度争いが起きれば和解はほぼ不可能となってしまい、どちらが全滅するまで戦うしかないところまで追い込む、根本解決から程遠い悪手では無いかと思うわけです。ゲームの世界では、同族の始祖の隷長を鎮めたとはいえ、半数近くの民を虐殺された帝国は引き下がれなくなりエルシフルを殺すしかなかったし、部下をほぼ皆殺しにされたアレクセイも強力な兵器を求める以外の方法を絶たれた訳で…