TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



暗殺計画(手を伸ばしても届かない命もある)

 

 エフミドの丘から帝都に帰還したデュークは、アレクセイに会いに行った。

「もう休暇はいいのか?」

 事後処理に追われて騎士団本部に泊まり込んでいると聞いたが、疲労を見せる事なく隙なく騎士服を着込んだアレクセイは、静かに緋色の視線をデュークに向けた。

「ハルルでキャナリに会った。何かあったのか?」

「アスピオの研究所で爆破事件があった。キャナリには調査に向かわせている」

 そう言いアレクセイは眉間の皺を揉みほぐしつつ立ち上がり、デュークに応接机のソファーに座るように促す。ちょうど騎士団長補佐官のドレムが紅茶を用意し、一礼をした後に彼は執務室を後にした。

「テムザの事件について、何かわかったか?」

「テムザの研究所が内密に乗っ取られていた。脅されたヘルメスが高出力の兵装魔導器(ホブローブラスティア)を作らされ、それを狙った魔物も出現したそうだ」

「……その対処でソフィアは傷を負ったと?」

「そうらしい。詳しくは戻ってから聞かねばならぬが、当面はノードポリカで療養する予定だ」

「そうか………事件の背景は?」

海凶(リヴァイアサン)の爪の構成員が実行班であることから、評議会の貴族が噛んでいることは明らかだ。引き続き、ダミュロンが調査中だ」

 武器商人ギルドとされている海凶(リヴァイアサン)の爪は、本質は暗殺ギルドであり、帝国貴族が汚れ仕事を依頼することが多かった。

「アスピオの方は?」

「今現在報告にあがっているのは、魔導器がらみの爆発事故だ」

 そこで言葉を止め、アレクセイは眉間に皺を寄せる。

「研究員が何名か犠牲になった。テムザの方でも、警備していた騎士と研究員が亡くなっている」

 人的被害が出たことに、アレクセイの緋色の瞳に陰が過った。

 

 人魔戦争が起きていたならば、騎士団の半数は死に、複数の地方都市が灰燼と化し、千倍以上の犠牲者が出ていたことを考えると、今回は犠牲は殆どないと言っても過言ではない。しかしその微細と言える犠牲で、これ程までに心を痛めているアレクセイを見ると、人魔戦争で受けた心の傷はいかほどであったことか…

 始祖の隷長(エンテレケイア)の〈暗きもの〉に殺されたダミュロンやステルに心臓の魔導器を埋め込み、生き返らせてしまう程にはアレクセイは精神的に追い込まれていたのは間違いない。人間に裏切られて、エルシフルを殺されたデュークもまた傷ついていたため、その時に彼の心境を推し量ることなどできなかったが…

 

「どうしたデューク?」

 これまでの時間のループでの出来事を追憶しているうちに表情に現れていたらしく、アレクセイが気遣うような視線を向けていた。

 良く見ると目の下に隈を作り、心なしか顔色が悪いアレクセイ。

「……休め、アレクセイ」

「……私は……」

「シムンデルとリアゴンに先ほど会った時に聞いた。テムザの事件からあまり眠ってないのだろう? 私は暫くここにいる。何かあったら起こすから、それまで仮眠しろ」

 自身が選抜して側に置いている騎士団長補佐官らの名前を挙げられ、過労状態を誤魔化しきれないと悟りつつも、アレクセイは休む事を抵抗する。

「しかし…」

「ある程度の事務仕事は、クオマレたち補佐官が熟るのであろう? だったら休め」

 無理を押して限界だったのか、結局は折れてアレクセイは仮眠室へと足を向けた。

 今までの時間のループの中ではできなかったこと、考えもつかなかったこと。それをすんなりできた自分に、デュークは少なからず驚いたのであった。

 

  §

 

 ソフィアが帝都に帰還した。

 そしてソフィアは翌日からいつも通り、黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)に出勤する日々に戻った。

 それなりに溜まった黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)の仕事をしていたある日、ソフィアに訪問者が来た。

 その者の名はルブラン。

 ダミュロン率いる騎士団長直属部隊「シュヴァーン隊」の表の隊員で、真面目で身分に関係なく相手と接することから、市民街と下町の警邏を担当する事が多かった。

「下町の水道魔導器(アクエブラスティア)でトラブル?」

「はい。下町の顔役であるハンクスが、お手隙の時に来て欲しいと…」

「確か…過去に警邏していた騎士が着服した税の過払い分を使って水道魔導器と照明魔導器(ルクスブラスティア)の新調すると言う話でしたね?」

「その設置工事に横槍が入りまして…詳しくは会って話したいと」

 

 以前兄のアレクセイから、徴税と称してカツアゲをする騎士への対応について、ソフィアは相談を受けたことがあった。

 ソフィアは、不良騎士を全部突き止め、税金と称して回収して着服したお金は給与から天引きするか、懲戒免職するかを選ばせたら良いと助言した。加えて、下町の警邏をシュヴァーン隊の表の隊員にさせる事で、騎士が下町の住民に無体することは減ったらしい。

 一方で騎士たちの着服額は、本来の納税額を超過している事がわかった。そこで、そのままお金を返還するか、水道魔導器と照明魔導器の新調をするか、騎士団から依頼を受けて黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)が仲介に入った。

 すっかり顔馴染みであるハンクスと話し合ったところ、下町で自主的に発注したら粗悪品が設置されると後者を選んだため、デズエール大陸へ渡る前に黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)として発注したのだが…

 

「承知しました。伺いましょう」

「いえ、お待ちを! もう暫くしたら護衛がきますので」

「帝都内ですし問題は…」

「アレクセイ騎士団長の命令です! しばしお待ちを!」

 ルブランの圧に押され、ソフィアは護衛が来るまでできだけ多くの仕事を片付ける事にしたのであった。

 

 護衛にはシュヴァーン隊の副隊長であるステルが来た。

「ノンノン! 今は(イエガー)ネ」

「……思い切った方向性で別人に成り切るのね…」

「ミーは完璧主義者なのネ」

「茶番はともかく、どう思う?」

 二人は先ほど起きたことについて、情報整理する。

 

 下町の噴水は、周辺住民の生命線と言える給水機能を一手に引き受けている。

 そこの水道魔導器の調子は2年前から悪く、ソフィアがたびたび無償で調整をしてきた。そして正当な理由で帝国が水道魔導器を交換する状況になり、ついでに新調した水道魔導器に廉価版照明魔導器をつけようと手配した。

 それに横槍を入れたのは、ミラレームという女貴族。下町の噴水一帯を買い取る予定だから、自身が認めない以上は工事をするなと言う暴言だった。

 ソフィアは黎明の残月(トリウィア・ミラージュ)の会長として、貴族のディノイア家の一員としてミラレームと面会した。そして、自身は国から受注していること、国の事業ということは、下町の噴水は国有物であると帝国が認めている証左であり一個人は売買できないと伝えた。そして止めに、騎士団からの正式な仲介依頼書、皇帝のサイン入りの工事許可証を提示したわけだが…

「表向きは引き下がったけど、交換後の古い水道魔導器を欲しがるとはどういうこと?」

「ずいぶん必死に食い下がりましたネ」

「国有物だから私個人で売れないと言ったら、横流ししろと言うし…もしかして噴水一帯を買い取ろうとしたのは、古い魔導器が目的?」

 

 ソフィアの脳裏に先日の高出力魔導器…ゲームの世界で問題となったヘルメス式魔導器が浮かんだ。

 高出力魔導器には、魔導中継筐体(エアルコンテナ)の接続歴がなかった。これには理由がある。

 魔導中継筐体の接続により標識が入ると、魔核(コア)の術式紋の追加が不可能となる。素人の書き換えによる事故防止のためという言葉を聞き入れ、ヘルメスがこの仕掛けを入れたのであった。

 つまり、魔核の術式紋の書き換えで作られる、高出力魔導器が作成できなくなる。

 

「……もしかして、高出力魔導器を作るため? だったら…テムザの一件と今回の件は…」

「会長?」

「イエガー、急いで屋敷に帰ります。書状を書きますから、それを急ぎ兄様のところへ持って行ってください」

 

  §

 

 蝙蝠型の魔物…バットが急降下し襲いかかって来る。

「凍牙!」

 ソフィアは術技を込めたナイフを放ち、複数のバットの羽を凍らせて堕とす。それをジリが刀で斬り捨て止めを刺していく。

 続いて襲ってきたベアをジリが後方に下がってかわし、ソフィアが眉間に「雷電」を放って動きを止め、ジリが胸を一突きして止めを刺す。

 背後から飛びかかってきたウルフを、ベアの背から引き抜いた刀でジリは防御する。間髪入れず「爆烈」の術技を込めたソフィアのナイフが、ウルフの腹部に刺さった。鈍い爆発音と共に腹部に大穴を空け、ウルフは動きを止めた。

 

 互いで互いを庇い魔物を斃すも、それより早いペースで魔物が部屋に召喚されていく。

「このままじゃ不味いねえ」

「ちょっと考えがあります。少しの間、一人で持ち堪えられますか?」

 そう尋ねるソフィアの言葉にジリが頷くのを見るや否や、ソフィアが「衝波」の術技を連続で放ち穴をあけ、簡易的な防御壁を作り始める。

「無駄よ! 装置を止めない限り、逆結界内に魔物は送り込まれていくわ!」

 ソフィアとジリを閉じ込めた逆結界の外。

 逆結界と魔物の転送を制御している魔導器(ブラスティア)の前に立つ女貴族ミラレームの高笑いが、深夜の地下室に響き渡った。

 

 このような状況になったのは今から数時間前、ジリが屋敷のソフィアの部屋に忍び込んだことが発端であった。

「ユーリとフレンが姿を消した!」

 人の気配で飛び起きたソフィアに対して、ジリは焦った様子でそう伝えた。

 あの後ジリは、ミラレームは娘を盾に取られて動いていると独自の情報網から知った。しかしその情報には娘の監禁場所といった詳細情報が含まれており、長年の勘から故意に流された情報とジリは考えて、日を改めてソフィアに相談する予定であった。

 しかしその情報を盗み聞きしていたらしく、ユーリたちが勝手に動いて捕まったらしい。彼に同行し見つかり一人逃がされたジャレスが、泣きながらジリにそう知らせて来たのであった。

 高出力魔導器の密造が疑われることから、口封じをされる可能性が高いと判断して、ソフィアは即座に行動を起こした。手紙を書き、家令に急ぎアレクセイに届けるよう指示を出した。続いて廉価版写影魔導器(フォトブラスティア)の試運転で撮影したアレクセイの隠し撮り写真で護衛を買収し、ディノイア家で飼育している警備犬を一頭借り、ジリと共に夜の貴族街へと手がかり探しに向かった。

 警備犬にユーリの上着の匂いをたどらせると、貴族街を出て、市民街の外壁付近の廃屋に辿り着いた。ソフィアが魔導器追跡モニターで確認すると、廃屋に複数の魔導器の反応が確認できた。

「…あたりですね」

 ソフィアがそう呟くや否や、ジリは廃屋へと飛び込んで行った。ソフィアは手早く書いた手紙を首輪に括りつけた警備犬に、家に戻るように指示を出してから、ジリに続いて廃屋に慎重に入った。

 探索して程なく、一階の部屋にユーリとフレンが閉じ込められているのを発見した。

 二人を救出したその時、部屋の床が開いた。咄嗟にユーリとフレンを部屋の外に突き飛ばしたが、ソフィアとジリは地下室に落下。魔物が定期的に送り込まれる逆結界内に、閉じ込められてしまったのだ。

 

「悪く思わないでちょうだい…見ず知らずの他人より、娘の方が…」

 これは仕方がないことだと自分に言い聞かせているミラレーム。

 ソフィア・ディノイアを消せば、下町から水道魔導器を容易に回収できるだろう。何よりソフィアの抹殺は「上」からの命令で最優先事項となっていた。

 その時、ミラレームの背後の床が突然吹っ飛んだ。

「……え?」

「雷電!」

 床にできた穴から飛び出したソフィアが、ミラレームの足元にナイフを放つ。直後、雷が放たれミラレームはその場に崩れ落ちた。

「地下は結界の範囲外。まあ、知らない人が多いけど…」

 ジリが魔物を抑えている間に、ソフィアは「衝波」の術技で穴を掘り進め、結界外へと脱出したのであった。

 続いて穴から脱出したジリがミラレームを縛り上げる様子を一瞥した後、ソフィアは魔導器を操作する。

「魔物の逆転送…終了。逆結界も解除っと…よし。ジリさん、一度戻って…」

 操作を終えてジリの方を見た、その時であった。

 身体に痛みが走り、突き飛ばされ床に倒れ込んだ事をソフィア認識した。

 そしてビシャリと足元の床に溢れ落ちる紅い液体。

 先ほどまで操作していた魔導器から、矢の無いボウガンが飛び出しており、駆動音が静まっていくのが聞こえる。

 

 ソフィアの視線を動かす…

 その先には………

 

  §

 

 一方デュークは、まだソフィアと会うことを躊躇していた。

 会えばソフィアに、これまでの時間のループの記憶を有しているのか、問いただしたくなってしまう。しかしそれは同時に、デューク自身が記憶を持っていると知られてしまう。

 逡巡している間に、帝都に帰還したソフィアとまだ会っていない事が副官のナイレンにバレてしまい、任地で怪我して帰ってきたにも拘わらず会いに行かない事に対して、非難めいた苦言をされてしまった。

 それでも踏ん切りがつかず、結局深夜まで仕事をしてしまった。流石にこの時間に訪問する訳にはいかないが、明日にはソフィアに会いに行こうと考えた。眠ってしまえばすぐ翌日を迎えてしまう。もう少し気持ちの整理をつける時間が欲しいと、デュークは夜の街を歩く。

 昼間は人が多い通りもこの時間では、人の姿は殆どなかった。今歩いている市民街では、新設された騎士団直属部隊「シュヴァーン隊」が巡回している。ダミュロンの部下でデュークとの顔見知りの騎士が巡回していて、相手の敬礼に対してデュークは頷き一つで応える。

 以前、貴族籍の騎士が下町の子供を水路に投げ込み、それをキャナリとダミュロンが助けた事があった。ダミュロンが更に調べたところ、その騎士と取り巻き達は、必要以上に税を取り立てた上に着服したことが発覚した。超過分を返す名目で、水道魔導器の交換と照明魔導器の設置をするとソフィアが言っていたことを思い出し、いつの間にか彼女の事を考えている自身に対して、デュークはため息を吐いた。

「デューク親衛隊長」

 突然名を呼ばれ振り向くと、そこにはキャナリ隊の小隊長であるゲアモンとヒスームが、それぞれの部下を引き連れていた。

「キャナリ隊の2小隊が共にいるとは珍しい。何かあったか」

「はっ……実は……」

 ゲアモンはアレクセイに命じられてミラレームと言う女貴族の捜査をし、ヒスームは先ほどディノイア家の家令からの緊急連絡で、ソフィアを探していると言う話であった。

 緊急連絡の内容は、テムザの乗っ取り事件で作られた高出力魔導器、それが密造されている可能性が高いこと、それにミラレームが関与していること、その事件に巻き込まれた子供が捕まっていることが書かれていた。

「で、こんな深夜にソフィアは子供の救出に向かったと…」

 相変わらずジッとしていないソフィアに呆れつつも、いつもと変わらぬ行動にしてはアレクセイが腹心のキャナリの部下を動かしている事に、デュークは違和感を覚えた。

「ソフィアほどの腕ならば、多少の事態への対応は可能であろう」

「それが……」

 ヒスームは何かを確認するようにゲアモンを見る。ゲアモンは一つ頷いた後、小声でデュークに告げた。

「ソフィアさんに暗殺者が仕向けられています」

 思いもよらぬ言葉に、デュークは一瞬目を見開く。その時、小さな獣の影が茂みから飛び出てきた。尾を振ってデュークに寄ってくるそれは、軍用犬や警備犬でよく用いられる犬種で…

「お前は……アレクセイの家の警備犬か?」

 デュークの問いに一声鳴いて答え、体をすり寄せるように紙が結ばれた首輪を見せてきた。

 

 紙には子供らの監禁場所を見つけたこと、ソフィアが突入する旨が書かれていた。

 

 ソフィアの居場所を知っているディノイア家の警備犬に案内させ、デュークはヒスームとゲアモン達と共に向かう。

 その途中、金髪の少年と黒髪の少年が路地から飛び出してきた。2人の少年に何処となく誰かの面影を見るデューク、そんな彼の騎士服姿を確認するや否や少年たちは泣きそうな顔で飛び込んできた。

「騎士様!」

「頼む! 助けてくれ‼︎」

 捕まって部屋に監禁されていたところ、2人の保護者代わりであるジリと言う女性、そしてソフィアに助けられたと言う。脱出しようとした時に突然床が開いて、少年たちを突き飛ばして助けた一方、ソフィアらはその落とし穴に落とされたと言う。

 その話を聞き、やはりソフィアを誘き寄せる罠だった事を知り、デュークの背に冷たいものが走る。

 一刻も猶予は無かった。

「デューク隊長、私は騎士団の詰め所に戻り、本部への報告と応援要請に向かいます。ゲアモン、私の部下と共に先行して下さい!」

「わかった。君たち、俺たちを案内してくれないか?」

 大柄の身体を屈めて威圧感を与えないようにして、ゲアモンは少年たちに優しく言う。

「はい!」

「ここを曲がったすぐ先のデッカい家だ。ついてきてくれ!」

 そう言い踵返す少年たち。捕まっていた恐怖から拒否するかと思いきや、率先して行こうとする姿を目を細めて一瞥した後、ゲアモンはデュークに話しかける。

「1/3を連れて裏口を固めます。デューク隊長は正面を押さえて頂いても良いでしょうか?」

「承知した。突入は?」

「ヒスームが令状を持って来てから…と言いたいですが、貴方でしたら先行したところで、文句の言える者は少ないでしょう」

 令状を待たずに先行する事を支持する。視線でそう伝えた後に、別の路地へとゲアモンは部下を引き連れて行った。

 

 少年達の案内で辿り着いた屋敷。案内をしてくれた少年たちを他の騎士に任せ、ゲアモンの方も配置が終わったと伝令から知らせを受ける。

 自身が捨てたいと思い続けている、人間社会を象徴する己が出生に付随した身分。皮肉にもそれを駆使すればソフィアを救える。その時デュークは初めて、ソフィアを救いたいと言う自身の気持ちに気づいた。エルシフルを救ってくれた感謝からか、自身と同じ「記憶持ち」か確認したいからか、デュークには分からない。

 しかし…

「突入する。半数は屋敷内の制圧、残り半数は取り囲め」

 そう言うや否や、デュークは剣気を放って屋敷の扉を粉砕し、中で入口を固めていた傭兵もろとも吹き飛ばした。

 いきなりの強攻に敵味方唖然としている中、デュークは悠々と屋敷の中に入る。そして辛うじて意識のある傭兵を見つけるや否や、喉元を締め上げて壁に押し付けた。

 

「答えろ。ソフィアはどこだ?」

 

 傭兵に案内された地下室。

 

 そこには無数の魔物の死体。

 停止した魔導具。

 そして一人の女性に心肺蘇生を施している、身を紅く染めたソフィアの姿があった。

 





 ジリさんの救済も相当悩みました。
 小説「断罪者の系譜」で書かれている、子供時代のユーリとフレンが経験した事件と、ジリの死の経緯を元にしています。小説は未読のため、設定が甘いところがあるかと思います(汗)
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