pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「ソフィアを暫く帝都から出す」
クオマレら補佐官に用事を申しつけて執務室から出した後、アレクセイはデュークに告げた。
「そうか…」
「
そう言いアレクセイは深い溜息を吐く。
「滞在先は?」
「ユウマンジュだ。出来るだけ帝国の影響の少ない保養地が無いかと探していたところ、ファリハイドのアトマイス卿が提案してくれた。彼の仲介で向こうの受け入れ準備は整っている」
「警備は大丈夫か?」
「別棟を丸ごと借り受ける予定だ。身の回りの世話と称して、シュヴァーン隊の息の掛かった者を配置する予定だ。費用は掛かるが…溜まる一方で使い道のない金銭の有効活用だ。問題ない」
「ソフィアには?」
「伝えてある。二つ返事で承諾してくれた」
そこで言葉を切り、アレクセイは紅茶に口を付ける。
「ソフィアの様子は?」
「平静過ぎる程だ」
「そうか……」
「……自己防衛で暗殺者相手とはいえ、テムザでソフィアは初めて人を殺めたようだ。加えて親しい者が目の前で亡くなる姿を再び見た。それなのに…どうしてこうも上手く繕えるのか…」
「アレクセイ…」
「これほどの経験を、上回り捻じ伏せる程の何かを抱えている。恐らく、テムザの件が起きる前から…」
「だから繕える。それ以上の物を抱えて繕い続けてきたからだと」
「そうだ。どちらにせよ妹に必要なのは、静養するための時間だ」
§
ダミュロンは、亡くなったジリの夫で下町の顔役であるハンクスのところに訪ねて来ていた。
「おそらく彼女は、もう来ないと思う」
素材を受け取りつつ、ダミュロンは静かに告げた。
この後は騎士団に用があるため、黄昏時の橙色の騎士服を纏っての訪問であったが、 ダミュロンの事をよく知っている食堂の親父と女将は、いつも通りの応対をしてくれた。
そんな中ハンクスがやって来て、ソフィアの近況について訊いた答えがさっきの言葉であった。
「そうか……そもそもが、こちらから持ち込んだ厄介ごとじゃ。ジリは守りきれて本望だったじゃろうて、気にする必要はないと言うのに…」
「それもあるんだが…色んなヤツに目を付けられてんのよ…親しい者を作れば、その者に迷惑がかかるって、思い知ったんでしょうね」
「…何を馬鹿な事を。人は人と関わらんと生きていけん。人と関わるというのは、迷惑を掛けて掛けられるもんじゃ。お互い様という言葉を知らんとは…嬢ちゃんもまだまだ若いのう…」
「その迷惑で死んじまったら、残された方は堪えるでしょうが」
「その通りじゃ。それは嬢ちゃんも例外じゃ無いと言う事、よく伝えておいてくれ」
「伝えてんだけど…悲しいほど伝わってないんだよね。これが」
テムザでの一件の後、その身に何かあったらどれだけの人が悲しむのか、プライドも体裁もを投げ打って諭したつもりで起きたこの一件。ダミュロンも少なからず精神的に堪えていた。
ソフィアは帝都を発った。
出立前に頼まれた素材の受け取りと屋敷への送付を終え、 ダミュロンはもう一つの頼まれごとのため、騎士団本部へと向かう。ソフィアに頼まれた資料や書状が纏められた荷を持って、ダミュロンはアレクセイのいる団長執務室に入る。
そこにはアレクセイの他に、キャナリ、ステル、そしてデュークの姿があった。
そのままの流れで、今回の一件に関する情報整理へと話の話題は移った。
ソフィアがノードポリカへ静養し始めた頃、アスピオで爆発事故が起き、複数名の研究者が死亡する惨事があった。キャナリ先導で行われた調査で、
そしてテムザの研究所の乗っ取り事件。ヘルメスが停止させた高出力魔導器を改めて調査したところ、改造された
最後に下町での一件。高出力魔導器に転用可能な魔核として
そしてダミュロンとステルが、別々に探って行き着いたのは…
「カクターフ公か…」
「
「申し訳ございません。証拠は見つけられませんでした。引き続き
仕事とは言え、夫のステルが暗殺ギルドに身を置くことに少なからず抵抗があるのだが、それ以上に唯一無二の親友を殺されかけた事に怒り心頭のキャナリが口を挟む。
「…閣下、兄の証言では駄目でしょうか?」
言外にそれを証拠としてカクターフへ突撃する許可を、キャナリは冷え切った笑みを浮かべて求める。
キャナリの兄フィアレンはカクターフ派閥の評議員。彼からの密告で、カクターフ公がソフィアの暗殺計画の背後にいる事は知らされていたが…
「無理だな。フィアレンが切られてそこで終わりだ。彼には無理せず、そのままカクターフに付いてもらった方がいいだろう」
冷静に言ってはいるが、紅茶に投入する砂糖の量から、アレクセイ自身は相当怒りを抱えていると、 ダミュロンたちは察することができた。
糖分摂取で幾分か気持ちが落ち着いたのか、アレクセイはソフィアからの書状に目を通す。そして無言で右隣にいるデュークへと書状を回し、そのままキャナリ、ステル、最後に ダミュロンへと回って来た。
そこに書かれていたのは、ソフィアが古文書の解読で考察した、古代文明が滅んだ経緯についてであった。
エアルの調整する
その結果、現れた「星喰み」により世界が滅びかかった事。
原因となった魔導器を、社会維持に必要な最小限の物だけ残して廃棄すると、古代人は始祖の隷長と約束した事。
「始祖の隷長…魔物の一種なんじゃないの?」
「いや。実際会ったが理性はあるし、普通に意思疎通はできた」
「それはテムザの時か?」
「御名答。で、テムザでは実際に高出力魔導器を壊しに来た」
「…書いている内容と齟齬はないと言うわけか…我が妹ながら…いつからこんな情報を抱えていたんだ…」
アレクセイは頭を抑えて、半ば呻くようにそう言った。
「だが、
眉間に皺を寄せつつ、今まで黙っていたデュークがそう言う。その言葉に反論するように ダミュロンが口を開く。
「ソフィアが言うには『リゾマータの公式』と言うエアルを自在に操る術式が、宙の戒典に刻まれている可能性が高いらしい。それを解読できればエアルを還元することも、分解することも可能だそうだ」
「高出力魔導器の拡散が確定的になってしまった以上、エアルの乱れは避けられないわね…」
「エアルの乱れを糺す研究を、進める必要があることか…」
賛同する考えを口にするキャナリとステル。それでもアレクセイの反応は鈍い。
「……ソフィアから固く口止めされたことですが…」
「……なんだ?」
「テムザの一件で、手元の資料だけで構築した不完全な術式で、ソフィアはエアルを鎮めました。その結果……彼女は死にかけました」
「っ‼︎」
「そんな報告は聞いて…」
「始祖の隷長が助けなければ、ソフィアは確実に死んでいたでしょう。そして同じことがあれば、確実にまたやるでしょう」
ソフィアとそれなりの付き合いがあるこの場の者たちは、 ダミュロンの言葉が正確な予測であると、痛いほど認識した。
重い沈黙が辺りに流れる。
「…承知した。陛下に話してみよう」
「アレクセイ、私からも掛け合おう」
「助かる、デューク」
アレクセイのその言葉をきっかけに、流れ解散となった。
「閣下……彼女のあの性格、どうにかなりませんかね?」
もう少し自分を大事にできないのか?
そう尋ねるようなダミュロンの翠の瞳と、ソフィアと同じアレクセイの緋の瞳がかち合う。
「……両親と遭難するまでは、普通だった。だが…他者が死んで自分が助かるのはこれで2度目だ」
そう言いつつ視線を机に落とすアレクセイを見て、 ダミュロンはソフィアが抱えた傷の深さを思い知るのであった。
§
時間のループ、帝国にエルシフルを謀殺された怒りも有り、半ば奪う形でデュークはそれを手中に収めた。そしてデュークは宙の戒典の力で、世界各地で暴走し始めるエアルクレーネを鎮めていった。
ソフィアは、地方都市に分割して遺されていた古文書の解読から、宙の戒典の暴走したエアルを抑制する機能は、複数の機能が組み合わさって発現していることを突き止めていた。つまり、複数の機能を構築する術式をそれぞれ読み解き、術式の組み合わせを変える事で、エアルの自由自在な操作を可能にすると踏んでいたのだ。
その術式…ダミュロンがソフィアから聞いたと言う「リゾマータの公式」が存在していることは、デュークも知っている。そしてそれが、星喰みから世界を救った鍵となった。
この時点でそれが解明できたのならば?
宙の戒典の貸出しを皇帝に願い出ると言うアレクセイに手を貸す決意をし、アレクセイと共にデュークは皇帝に謁見した。
皇帝クルノス14世との交渉は、予想通り難航した。
レギンの死後、彼が後見となっていた次期皇帝候補のヨーデルを騎士団が擁している。騎士団へ皇位の証である宙の戒典を貸し出す事は、評議会と騎士団の軋轢を生むと危惧したからだ。
「そもそも、皇族の物をおいそれと外に出すわけにはいかぬ」
「昔、レギン殿下にクラウ・ソラスを貸し出した例があるはずです。私個人への貸出しという形では?」
「クラウ・ソラスと宙の戒典では比較にならん。現状では少なくとも親衛隊の隊長であるお前に貸し出す事は難しい」
「それでは、騎士団を辞めます」
「……良いのか?」
デュークではなくクルノス14世はアレクセイに確認を取る。
「前から打診しておりました。デュークは充分尽くしてくれました」
「……デューク、宙の戒典は皇位の正統性を示す証。それを皇位継承権のあるお前が、一時的に持つと言うのは評議会が…」
「ならば、皇位継承権を返上します」
「……バンタレイ家の再興が絶たれる事と同義であるぞ」
「構いません」
デュークにとっては既定路線であった。
今までの時間のループの中で最も遅くなったが、デュークはエルシフルと世界を巡る旅に出る。そしてこの時間軸では、高出力
始祖の隷長に関してですが、帝国側が保持する記録が本当に全くなかったのか疑問に思ったわけですね。始祖の隷長のアスタルを祀るバクティオン神殿があったことを考えると、地方都市には残っていたのではないかと考えました。
地方都市は人魔戦争で始祖の隷長が殆ど灰燼にしたわけで…平和的解決に繋がる相互理解の手がかりを軒並み潰してしまったとしたら、それは何ともやるせないですね…