pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「リタちゃん、美味しい?」
もきゅもきゅとサンドウィッチを食べるリタは、ソフィアの問いに静かに頷いた。
先日、廉価版
ヘルメスには亡きクリティア族の妻との間に、ジュディスという娘がいる。そしてアスピオに居た時、モルディオ博士との間に娘をもうけた。それがソフィアの目の前に居る、リタ・モルディオであった。
ヘルメスは軟禁状態の解放後に、モルディオ博士の死を知った。テムザの研究所を引き払い、アスピオへ移るのは決定事項。そこでヘルメスは、ジュディスにリタとモルディオ博士の事を話し、共にアスピオに移ろうと考えたが…
「娘相手ではね…」
結論を言うと、情報の開示に失敗してジュディスは家出をしてしまった。見つけるまで帰れないと、その間リタを見て欲しいとソフィアはヘルメスにお願いされたのであった。そしてそのまま音沙汰がなく、一週間が経過しようとしていた。
「食材の買い出しに行きたいけど…一人でお留守番できるのかな?」
不在中に自称モルディオの友人夫妻が家捜しする可能性もあることから、ソフィアは外出することが躊躇われた。それに…
「ママは…まだかえらないの?」
「…もう少ししたらパパが来るから、それまで私と一緒に待ってようね」
ソフィアがそう言い頭を撫でると、こちらを伺い疑うような目を伏せ深い息を吐いた。
5歳前後の幼さの割に、色々としっかりしているリタ。研究にかまけて放任状態であったと考えられるが、そんな母親でもやはり慕っていたのであろう。夜中に飛び起きることもあり、短時間でも一人にさせるのは憚れる状態であった。
正確な間隔で数回扉を叩く音が響く。
誰かと思いソフィアがドアを開けると、そこにはデュークの姿があった。
「ここでお会いするとは思いませんでした。ヘルメス先生に御用ですか?」
デュークは無言で横に体をずらすと、奥からクリティア族の少女が姿を現した。
「え……もしかして…貴女はジュディスちゃん?」
過去に数回見た記憶を手繰り寄せて問いかけるソフィアに対して、ジュディスは赤藤色の目を潤ませつつ咎めるような視線を向けた。
「貴女がソフィア・ディノイア?」
「そうよ」
「貴女が…父さんを取ったの?」
「はい?」
「父さんは…私だけの父さんなのっ‼︎」
そう言うや否や、ジュディスは泣き崩れてしまった。
そのまま玄関口で泣かれても困るため、ジュディスを家の中に入れるソフィア。そしてそのまま立ち去ろうとしたデュークを捕まえ、家に中に通して事情を聞き出した。
「え⁈ ジュディスちゃんは私を訪ねて帝都まで来たのですか?」
目を赤く腫らしているジュディスと、事情が飲み込めていない様子のリタに、ソフィアはハチミツをたっぷり入れたホットミルクを出しつつ尋ねると、デュークは無言で肯いた。
「いや…子供一人で移動できる距離じゃ無いのでは?」
「
「バウルよ‼︎」
横からジュディスは訂正する。
「つまりバウルという名の
「デイドン砦付近で私が見つけて、降りるように促した。そこで事情を聞いてここまで連れてきたのだ」
「なるほどね……先ほどヘルメス先生に連絡しましたので、近いうちに帰ってくるとは思いますけど…」
携帯型の廉価版
「…この子……父さんの子供?」
「そう。名前はリタちゃん。貴女の妹」
「それで……貴女が母親なのね…」
ジュディスの言葉の意味が、一瞬理解できなかった。そして理解できた瞬間、ソフィアは大慌てで席を立ち上がった。
「ち…違う違う!」
「父さんと一番たくさん手紙を送りあっていたのは貴女よ。その手紙の送り主を辿って、私はここまで来て…」
「だから私はただの弟子で…第一、婚約者がちゃんといます。ほらここに」
そう言いデュークの方を見ると、彼は呆然とした様子でこちらを見ていた。
「デューク様…そんな表情で見たらより疑われて…」
「いや……自覚があったのだなと思って」
「あるに決まってるでしょう! お菓子作って差し入れに行っているじゃないですか!」
「……月1から隔月だがな」
先日ダミュロンが言っていた通り、頻度が少なすぎたとソフィアは今更ながら後悔する。
「リタちゃんは5歳だけど、その時期は
「でも…」
「そもそもリタちゃんの髪と目の色は母親譲り。私ともヘルメス先生とも似てないでしょう?」
ジュディスが言葉を発する前に、ソフィアは客観的証拠を並べて否定してく。
「普通にその娘の母親を連れてくればいいだろう?」
デュークがそう言ったその時、リタの手にあったマグカップが音を立てて倒れる。飲み干していたらしく中身は零れなかったが、雫がぽたりぽたりと食卓を濡らす。
呆然とした表情で、ただポロポロと涙を流すリタ。
「ママ……ママ…ママぁあっ‼︎」
半ば叫びながらリタは部屋の奥へと走っていった。奥から聞こえる音から、扉を開けたりひっくり返して、何かを探している様子であった。
「……先日のアスピオの爆発事故で、リタちゃんの母親のモルディオ博士は亡くなりました」
その言葉を聞き、ジュディスは息を呑む。
「…それでヘルメスはアスピオに引っ越そうと」
「それもありますが…先日の占拠事件を受けて、テムザの研究所は閉鎖し、帝都から目が届きやすいアスピオに移動する事になりました。救援要請を入れたのは一ヶ月前ですが…半年以上監禁されていたとのことです」
その言葉を聞き、驚き目を見開くジュディス。
「父さんが……最近家に帰らなかったのは、あの子の所にいたからじゃ無いの?」
「ヘルメス先生がアスピオに来ていたのは、年に10日あるかどうかだったはず。リタちゃんが生まれた後、研究が忙しくてここ5年はテムザに居たことは、ジュディスちゃんがよく知っているんじゃないかな?」
「じゃあ……私は勘違いをして…」
「もうすぐ父親が帰ると伝えても…姿を消した母親を探すのを止めない。おそらくリタちゃんには、父親という存在がよく分かっていないみたいね」
ソフィアの言葉を聞くや否や、ジュディスは席を立って物音が聞こえる部屋へと走っていった。
ヘルメスが帰宅したのは、ジュディスとリタが寝静まった深夜を過ぎた頃であった。
連絡を受け取った時にはカプワ・ノールに居たらしく、そのままアスピオに来たという話であった。
現行の研究は一時凍結して、エアルの乱れに直接対処可能な「リゾマータの公式」の解明を最優先にして欲しいと、ソフィアは持参した資料をヘルメスに渡した。
研究の打ち合わせ後に、ヘルメスはテムザ山のクリティア族の里にある「大いなる輪」について語りはじめた。
「集団で争いなく生活するため、ナギーグを介して感情を共有する。そうすることで、感情の極端な昂りはなくなる。研究への熱意も、新発見をした時の喜びも、近しい者を亡くした哀しみも…」
ヘルメスは言うには、クリティア族としての生き方として「大いなる輪」に入る場合と、入らずに「
そしてヘルメスは、ジュディスの選択肢を増やすため、里を出ても輪に入ったままでいられるのか確かめたと言う。結論を言うと、輪に入ったままで帝都へもアスピオにも行けた。しかし、輪に入っている間は感情の起伏は小さくなる。それは妻を喪った哀しみも例外ではなかった。
結果、ヘルメスはリタの母親と関係を持ってしまった。
「自身の薄情さに堪えてね…精神ショックで『大いなる輪』から外れてしまい、逃げるようにテムザに帰ってしまった」
モルディオ博士が子供を身籠ったと連絡を寄越したのが、それから半年後であったと言う。
「それから、アスピオに訪れるたびに二人に会いにいった。最初は罪悪感からだったが…愛おしいと思うようになったよ。不思議とリタを愛おしいと思う度、ジュディスの事もより一層愛おしいと思ったよ。この気持ちが薄まるのならば、
「…朝になったら、ジュディスちゃんとリタちゃんとよく話し合ってください」
「朝になってから出立しても…」
「家族水入らずを邪魔したくありませんし、ハルルで宿をとります。色々とあって…しばらく帝都を離れることになりました。その逗留先がかなり遠方ですから、少しでも早く向かいたいのです」
「そうですか…しかし…」
「デューク様が送ってくれるという話ですので大丈夫です。向こうに着きましたら連絡しますので」
そう言い軽く挨拶した後、ソフィアはヘルメスの家を後にした。
小説「竜使いの沈黙」では、ジュディスはナギーグを使ってヘルメスの心を覗き、母親違いの妹の存在を知って衝撃を受けて、喧嘩別れをしたままテムザが崩壊し、故郷と仲間、父ヘルメスを喪います。
ヘルメスはジュディスの母親の死の哀しみが薄れることを恐れて、テムザのクリティア族の社会にある「輪」入ることに消極的でした。そこから「輪」に入った状態でリタの母親に会ったとき、前妻を亡くした哀しみが薄れていた結果、関係を持ったのでは…と考えた訳です。