pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
帝都から一時的に出ることとなったソフィアは、出立前に兄アレクセイに宛てた手紙をダミュロンに託した。アレクセイは、 ダミュロン、デュークらがいる前で書状を改めて、その内容をその場に居た者たちと共有した。
ソフィアの書状には、古文書の解読で考察した古代文明が滅んだ経緯について書かれていた。
エアルの乱れを糺す
原因となった魔導器を、社会維持に必要な最小限の物だけ残して廃棄すると、古代人は始祖の隷長と約定を交わした事。
予想以上の内容をソフィアが知っていた事に、デュークは驚いていた。ソフィアの書状の内容の正誤について検証していくが、テムザの事件で始祖の隷長に接触したダミュロンが、信憑性が高い見解を示した。
ソフィアが示した情報量にアレクセイは頭を抱えるも、デュークは何故このタイミングで彼女が情報を公開したか、その理由を理解していた。
最近、連続して3つの事件が発生した。テムザの研究所の乗っ取り事件、アスピオの爆破事件、下町の
これらは全て、ヘルメスを脅して作らせた高出力魔導器の生産技術が流出した事を指していた。高出力魔導器は、デュークの知る時間のループの中で問題となったヘルメス式魔導器そのものであった。その技術が、利己主義の腐った帝国評議会の貴族らの手に落ちた。故にソフィアは情報の公開に踏み切ったのであろう。アレクセイらが混乱する事を承知で…
ソフィアは
テムザの事件で、エアルを鎮めるためにソフィアが死にかけたと言うのだ。
ソフィアは不完全で人間では扱いきれない、エアルを鎮める為の術式を知っている。それは同じ事態が起きれば、ソフィアは命懸けで同じことをする。それはこの場にいる誰もが容易に想像できる未来であった。
そしてデュークはアレクセイと共に、皇帝から宙の戒典を借り受けることに成功する。しかしそれと引き換えに、デュークは今現在自身が持つ地位を全て失うことになった。
帝国騎士団を退団する手続き。
王城で皇位継承権を返上する書類へのサインを済ませる。
そして借り受けた宙の戒典の包みを抱き、デュークはディノイア邸を訪れた。
ソフィア宛の追加の荷物を受け取るためであったが、そこにはアレクセイだけではなくダミュロンの姿もあった。
「ソフィアの護衛についているソムラスには、アスピオからユウマンジュまではデュークが護衛に付くと連絡した」
「そうか…」
アレクセイの声にそう答えるも、デュークの視線は自然とダミュロンの方に向けられる。
「ソフィアの年も28になる。ここで正式に婚約者を決めたいと思う」
「……ソフィアが居ないところでか?」
「ソフィアはどちらでも構わないと言っている」
「……そうか」
「言っとくけど、誰でもって訳じゃないらしいよ。抱かれていいのは俺とデュークだけって言っていたから」
ダミュロンの言葉に、アレクセイは飲みかけた紅茶を吹き出しかける。
「……ソフィアからその発言を引き出した経緯は後で聞くとして、ダミュロンとの承諾は得ている。後はお前次第だが…」
そう言いアレクセイは緋色の瞳をデュークの紅の瞳に向ける。
「デューク・バンタレイ。正式にソフィアの婚約者になってくれはしないか?」
§
ソフィアの後を追う途中でジュディスに会う前の経緯を追憶していた時、自身に近づく足音にデュークは気づいた。
「何とか場を収めてきました。ジュディスちゃんも落ち着きましたし、あとはヘルメス先生の家族次第ですね」
一足先にハルルに着いていたデュークに追いつき、話しかけてきたのはソフィアであった。
「そうか…」
ただ一言だけ答えるデュークに苦笑を返しつつ、ソフィアはハルルの街中央に鎮座する大木に視線を向けた。ちょうど花が咲く時期らしく、薄桃色の花びらがヒラヒラと辺りを舞っている。月光と樹に取り込まれた
「綺麗…」
そうソフィアが呟くと、デュークは自身の荷袋から白ワインを一瓶と、木のカップを二つ取り出した。
木のベンチに座り、酒を交わすソフィアとデューク。
「…アレクセイから手紙を預かっている」
そう言い渡された手紙を、ソフィアは一度黙読した後、真偽を確かめるように一部を抜粋して声を上げる。
「正式な婚約……私と貴方が?」
「君の安全をより確保するためだ。評議会、騎士団、ギルドに所属せず、暗殺者に遅れを取らない人物。それに合致しただけだ。そもそも、婚約者候補であったしな」
「しかし……騎士団を辞めたと…」
デュークの服は鎧どころか騎士服すら着ていない。休暇を取って来てくれたと思いきや、親衛隊長まで上り詰めた帝国騎士団を辞めたという話だった。
「コレを借りるためだ…」
そう言い荷袋の隙間からデュークが見せたのは、一振りの剣。
「
「え……でも…これは⁈」
「必要なのだろう?」
「研究の進度に大きく影響しますが……まさか貸し出しできるとは…」
門外不出の帝位の証。
その
「私も一応皇族の端くれだ。私の管理下にあるなら、当面の間貸してくれる。ただ、皇位継承に関与しないと示すことが条件だった」
「…それで騎士団を辞めたという事ですか?」
「加えて帝位継承権の返上だ」
「それはっ…バンタレイ家の再興が不可能となったと同義ではないですか⁈」
「興味はない。むしろ纏わりつく虫が多く、辟易していたところだ」
デュークの言葉を聞き、お家再興で寄ってくる新興貴族の虫除けに、自身の婚約候補になってくれたことを思い出した。
「しかし……だからと言って……」
「生きとし生ける者、心あるものの安寧」
「え?」
「家族、屋敷、居場所…全てを失ったと絶望し、帝都を出て己が命すら失いかけた時に出会った我が友。彼の願いだ。君がしてきたことは、しようとしていることは、私が知る限りそれに近いものだと思っている」
「…どう…でしょうか」
「……私にはそう見えた。だから……これを託したい。我が家で伝えられた、花嫁に渡す婚約の証だ」
そう言いデュークが懐から出したのは、古びているが細かい彫金細工が施された、懐中型の
そう言われては断れず、ソフィアは時計魔導器を手に取る。
「……あ…」
雫がぽろぽろと流れ落ちる様を見て、デュークは驚きソフィアの顔を覗き込む。
新緑色の瞳から絶えず涙がこぼれ落ちる。
ソフィアの瞳の色は緋色のはず?
その疑問がデュークの口に出る前に一陣の風が吹き、舞い落ちた花びらで一時的に視界不良になる。
“この世界へ来た時…聞こえたあの声…願い…それは『私』の願いだったのか……ならば私は…”
微かな声と共に見える髪の色が、花弁の色に染まった薄桃色に見えるのは気のせいか。
程なく風は止み、デュークのワインのカップに花びらが一つ降りたった。
「すみません…目にゴミが入ったみたいで…」
そう言い笑みを浮かべるソフィアは、いつもと同じ銀の髪の奥から、緋色の瞳をデュークに見せた。
「いや……」
言葉少なくそう答え、デュークは先ほど見た幻影を押し流すように、花弁共にワインを飲み干した。
それ見た後、ソフィアは躊躇いがちに口を開く。
「デューク様、その……私が原因で騎士団を辞めるなんて…」
「…共に旅に出て世界を見ないかと、以前から誘われていた」
「その方と旅に出たいから、騎士団を辞めたのはついでだと仰りたいのですか?」
その言葉に肯くデューク。
ソフィアは気持ちを落ち着かせる様に、空になったデュークのカップにワインを注いだ。
「ついでに逗留先へ送ろう」
「それは流石に…場所は海向こうの別大陸で…」
「温泉郷ユウマンジュだろう。問題ない…そろそろ時間だ。夜が明ける前にハルルを出るぞ」
そう言いワインを飲み干し、少し中身が残っているワイン瓶の栓をデュークは閉める。ソフィアはその間にカップのワインを飲み干し、下級水魔法「シャンパーニュ」で二つのカップを軽く濯ぎ洗う。
そして二人して夜明け前のハルルの街を後にした。
ペイオキア平原。
ぼんやり明るく光り始める東の空に向かって歩き始めて程なく、草原に一人の青年が立っていた。
そして青年が光を纏った直後、金と銀の混ざった純白の翼を持つ大鵬の様な竜に姿を変えた。その目には理性的な光が灯っている。
「
『仲間内では〈偉大なるもの〉と呼ばれているが…我が友、デュークと同様にエルシフルと呼んで欲しい』
「エルシフル…」
『〈聡きもの〉…其方らがベリウスと呼ぶ者から聞いている。あの〈暗きもの〉に説教をしたとか…』
エルシフルはそう言いクツクツと笑うが、デュークの視線が痛いのでテムザの件はあまり話してほしくないと、ソフィアは内心冷や汗をかいた。
ここ最近は特に無茶が多かったことから、兄アレクセイをはじめとした皆が過保護になっていて、少し居心地悪く感じていた。そして帝都をしばらく離れたいと言えば、温泉郷ユウマンジュへの長期滞在を手配してしまった。どれだけの伝手と金銭を掛けたかと思うと、ソフィアは軽く頭痛を感じた。
『まあ、乗りたまえ。あまり人目に付くのもよくはないのだろう』
ソフィアの祈りが通じたのか、エルシフルは話題を変えて、自身の背に乗るようにデュークとソフィアを促した。
羽ばたき一つで、一気にハルルの街は眼下で小さい姿となった。魔法でバリアを張っているのか、上昇による加重や風圧は全く感じなかった。
『エアルクレーネが活発化しておる』
「エアルクレーネ?」
「世界のエアルが不足した時、星が均衡を保つために貯めたエアルを噴出する、エアルの源泉。高出力
そう言い目を伏せるソフィアを慰めるように、デュークはその肩を抱く。
「エルシフルよ…人一人でできることは余りにも限られている。彼女一人責任を負わせるようなことは…」
『分かっているデューク。しかしながら、人間が過ちを犯すのは二度目。看過出来ぬと人間の根絶を主張するものも多い。だが…』
二人を労うような静かな視線を向けつつ、エルシフルは言葉を続ける。
『その領袖たる〈暗きもの〉が、エアルを乱す機械を破壊する方針に転換した』
「破壊してください」
迷わずそう言うソフィアに対して、デュークは驚き見開く。
「ただし、極力人間を傷つけないように。人間が始祖の隷長を敵と見做せば、打ち払うために膨大な数の高出力魔導器を製造する事になるでしょう。そうなったら、どちらが滅ぼうが生き残ろうが関係ない! 世界が崩壊してしまう…」
『其方の意見は良くわかった。出来うる限り説得しよう』
「ありがとうございます。エルシフル」
海を越え、初めて訪れる大陸が姿を現す。
大陸の大部分を占める森の中央に、ポツンと立っている建物。近くから湯気が幾筋も流れ、微かな硫黄の匂いがした。
温泉郷ユウマンジュに到着したようであった。
人魔戦争を回避したため、エルシフルは生存している状態です。