TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



ヘルメス(天才魔導器研究者の驚嘆)

 

 魔導器(ブラスティア)

 古代ゲライオス文明の遺産。大気中のエアルを吸収して様々な魔術を発動する装置で、社会の維持に欠かせないインフラの維持にも活用されている。

 

「その構造は、各種術式を刻まれた 魔核(コア)と、出力を調整する 筐体(コンテナ)、ここまではすでに知っているね?」

 穏やかな口調で男性は、ソフィアに話しかけた。

 彼の名はヘルメス。アレクセイが見つけてきた、ソフィアの魔導器(ブラスティア)の教師であった。

 アレクセイが騎士団に入団したのと入れ替わりに、本日初めてヘルメスが屋敷に訪れたのであった。

「帝国の指揮下で、ギルドとの協力の下で発掘しているんですよね。その時に、他の仕組みで動くような魔導器(ブラスティア)は見つからないんですか?」

「そう言った話は聞かないね。見つかっているのは全て同一規格の魔導器(ブラスティア)だけだね。エアルの利用で最適化させた型と考えられている」

 そう言いヘルメスは、人とは異なる長く尖った耳を撫でる。ヘルメスはクリティア族で、耳の後ろから伸びた房状の触角、万物の情報を読み解くと言われている「ナギーグ」という器官を持っている。

 クリティア族はこのナギーグでエアルを感知することもでき、その能力のお陰で古代ゲライオス文明を築き、魔導器(ブラスティア)を生み出したとされていた。

「……古代のクリティア族が作ったものですよね? 大量廃棄に至った理由について、何か伝わっていませんか?」

「テムザでは聞いたことはないな…何せ魔導器(ブラスティア)とは無縁の生活をしているからね」

「テムザはクリティア族の街ですよね? 帝都とは別の大陸にある。その…本当に結界無しで、街は維持されているんですか?」

「ああそうだよ。山の上にあって、風の流れで空飛ぶ魔物は寄り付かないし、地を這う魔物が登れるほど緩やかな山道じゃないからね。

街を出て旅をして初めて結界魔導器(シルトブラスティア)を見て、驚いたものさ」

「それでは、魔導器(ブラスティア)の知識を得たのも、街を出てからと言うことですか?」

「そうだね…放浪者(メルグ)になって、帝国に出入りするようになってからだね……ガッカリしたかい?」

「っ⁈」

 ヘルメスに心境を言い当てられ、ソフィアは思わず言葉に詰まる。

「…すみません。その……私は、今出回っている魔導器(ブラスティア)ではなくて、別の可能性を見てみたいのです」

「ほう……別の可能性?」

「昔は、今見つかっている型以外の魔導器(ブラスティア)も、何種類かあったのではないでしょうか? 試行錯誤した結果、今の型の魔導器(ブラスティア)が発明されたのではないかと」

「ふむ…となると、魔導器(ブラスティア)が今の型に至る経緯を辿れば、 魔核(コア)の術式紋を操作盤で干渉する……いや、それより奥深くの基幹技術に触れられる可能性もあるわけか」

「さらに辿れば、エアルに頼らない機構も見つかるかも知れませんね」

「古代クリティア人が選ばなかった新たな可能性を、この手で生み出せるかも知れないと言うことか…」

 そこで言葉を切り、ヘルメスはソフィアに視線を向ける。

「君は面白い考えをするね」

 そう言われて、ソフィアはどう返そうか迷い、言葉に詰まってしまう。

 

 ソフィアが前世で居た世界では、作業に繋がる動作をする仕組み、動作を促すエネルギーを作る仕組み、それぞれが独立して発展した。

 動作の仕組みとしては、個々の作業用の道具ができ、歯車で動きの指示が複数できるようになった。そして磁石とコイルを組み合わせたモーターができ、電気が動力になってからは真空管や基板、それらを組み合わせた電子演算装置に繋がり、電気を制御し複雑な作業ができるようになっていった。

 エネルギーを作る仕組みは、人力と滑車の組み合わせや動物の利用、小さな道具ではバネやゼンマイが発明されたりもした。大型な道具では水車や風車、それが蒸気機関へとつながった。やがて蒸気機関からタービンによる発電、太陽電池など直接電気を生み出す機構が生まれた。

 道具の進化というのは段階を踏むものであって、全ての段階をすっ飛ばして、最終段階の発掘物をいきなり使っている、この世界での魔導器(ブラスティア)の利用は、ソフィアから見て歪に思えた。

 そしてソフィアは考えた。魔導器(ブラスティア)の発明に至った経緯を遡れば、その過程でエアル以外を利用した方法が見つかる可能性が高い。エアルを使わない代替機関を見つけ、新技術として広めれば、将来の悲劇の大半を回避できるのではないかと。

 

 そこまでの説明は流石にできず、ソフィアは曖昧な笑みをヘルメスに浮かべた。

「…つまり、ソフィア様の目的は魔導器(ブラスティア)に関する古文書を読み解くことで間違いないかな?」

「仰るとおりです」

「ならば、魔導器(ブラスティア)について教えるより、一緒に古文書を読み解く方がいいだろう」

「いいのですか?」

 ヘルメスの申し出はソフィアにとって都合がいいが、本来予定していた内容に比べてヘルメスに大きな負担を掛けることになる。

「私も研究でちょっと行き詰っていてね。解決の糸口になるかも知れないからね。それに君には借りがある」

「え?」

「知っての通り、魔導器(ブラスティア)の管理は帝国がしている。その研究も、学術閉鎖都市アスピオで厳重に管理されていて、アスピオへの出入りも容易に許可が下りるわけではないが、帝国貴族の一員である君の家庭教師と言う肩書きを得て、出入りが許されるようになったんだよ」

 出入りできるまで5年は掛かるかと覚悟していたと言いつつ、ヘルメスは持参した書物を片付けて、ソフィアが読み解きたい古文書を用意するように促した。

 

 ヘルメスは帝国の学術都市アスピオで研究を続けており、ソフィア自身にも貴族淑女としての教育があることから、二人で古文書を解読する作業は10日に1回ほどであった。

 それでも解読する速度は格段に上がり、半年ほど経過すると、ソフィア一人でも読解できる部分がかなり増えてきた。

 魔導器に至るまでの経緯を古文書を遡って探したところ、直接エアルを用いる前段階の記録で、水晶を加圧することによって発生する電気を利用する、コイルとモーターに似た仕組みを見つけた。元知識がないヘルメスにとっては、意味のわからない図にしか見えなかったらしく、彼は違う古文書の読解を始めてしまったが、ソフィアは記載されている材料についてメモを取っていった。

 

 そして次の授業の日、当日になってヘルメスが急用で来れない可能性が高いと言う連絡が届いた。

 その日の予定が無くなったソフィア。翌日は休養日であることを思い出し、前回見つけた古文書の記述から、コイルとモーターを作ろうと思い立った。

 幸い、必要な素材を今まで集めた物の中で見つけることができ、コイルとモーターは早々に作ることができた。

 しかし、水晶を加圧する装置の説明が書かれたページが破損しており、発電装置を再現することはできなかった。

 取り敢えずはコイルとモーターが想像通りに動くか確認できればいいので、ソフィアは屋敷の送風魔導器を拝借し、折り紙の風車の要領でプロペラを作った。

 諸々の準備が整い、ソフィアは一つ頷いた。

「それでは、送風開始!」

 送風魔導器の風でプロペラを回し、コイルを回して電気を発生、その電気を別のコイルに流してモーターを動かし、巻き上げ機の模型を動かすことができた。

「ここまでは問題なし」

 続いて、簡易的に作った配線のスウィッチを操作するソフィア。操作に従って、巻き上げ機は停止、そして逆回転で巻き上げた荷物を下に下ろした。

「今度はどうかな?」

 次のスウィッチを入れると、真空球に入った白金線が輝き始めた。

 思わずソフィアが、小さくガッツポーズしたその時であった。

「それは……一体⁈」

 声が聞こえて振り返ると、そこには驚愕した表情のヘルメスの姿があった。

 

 アスピオでの仕事が予定より早く終わったため、来訪したと言うヘルメス。

 興奮した様子で、ソフィアに矢継ぎ早に質問をするヘルメス。先日見た古文書の内容を参考にして作ったと聞くと、ヘルメスは半ば破く勢いで古文書を食いつくように読み、ナギーグを使って装置の解析を始めた。

「なるほど…風のエネルギーを運動エネルギーに変えて、さらに雷のエネルギーに転換しているのか……そして雷のエネルギーを巻き上げ機を動かす運動エネルギーだけではなく、光への転換をも自在にできるとは…」

 感心したようにヘルメスがそう言った直後、真空球の中の白金フィラメントが切れて、光は消えてしまった。

「これは…素材の強度が足りなかったかな?」

「熱を発するので、耐熱性に問題があるのではないでしょうか?」

 ソフィアにとっては予想通りの結果であったが、ヘルメスは残念そうに真空球を見つめていた。

 白金フィラメントを入れた容器が、完全に真空状態になっていなかったようだ。それから、タングステンみたいな耐熱性が高く電気抵抗が強い物質があれば、電球はおろか加熱調理器具も可能であるが…

 他にいい素材はないかとソフィアが考えを巡らせていた一方で、ヘルメスは古文書を漁り出し、それを見ながら手持ちのメモ用紙に計算式を書き出していった。

「発掘した魔導器(ブラスティア)魔核(コア)に刻まれた術式…術式紋を操作盤から干渉し、機能を改変する技術を追求していたが……魔核(コア)の操作に固執する必要は無かったんだ! エアルを引き出して必要なエネルギーに転換する、外付け機械があれば……」

 ヘルメスは、何か閃いた様子でブツブツと呟きながら、ソフィアが作った装置と古文書を見比べていた。

「術式紋で定められた魔導器(ブラスティア)の機能、顕現する属性も変換できると証明できた。もしかしてエアルというのは……するとマナの仮説も………ソフィア様! この装置の設計図はありますか?」

「あ、はい。下書きでまだ清書していませんですが…」

 そう言いソフィアは、ヘルメスに殴り書きに近い設計図を見せた。

「…この設計図の写しを、取っても構わないでしょうか?」

「それは構いませんが…」

 ソフィアの返事を聞くや否や、鬼気迫る様子でヘルメスはあっという間に設計図の写しを取った。

 写しを書き終えるや否や、ヘルメスは勢いよく席を立つ。

「今日はこれで帰ります! それからひと月ほど、アスピオでの研究に専念しても宜しいでしょうか?」

「えぇ⁈」

 急な話で思わず声を上げるソフィア。

 そんなソフィアの返事を聞くことなく、ヘルメスはあっという帰って行ってしまったのであった。




 
 オリ主(ソフィア)を作るか、知識持ち異世界転生者のモブキャラにするか最後まで悩みました。人魔戦争の鍵となるヘルメスと初期に絡ませて、彼の研究の方向性を変えたらどうなるのかと考えて、交友関係のあったアレクセイの身内が接点を持ちやすいと考えて収まったという経緯があります。
 小説「竜使いの沈黙」から、アレクセイのバックアップが得られるまで、アスピオに出入りできないと言う話題があったことから、認めてもらうために辿り着いたのが「ヘルメス式魔導器」だったのではないかと考えました。つまり、高出力魔導器や魔核の書き換え固執したわけではないので、別の方向性を提示して、それに対して援助することを示せば、良い方向へと進んだのではないかと思うわけです。
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