TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

42 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



動き出した計画(悪循環が完成すれば詰みに近い)

 

「どうした、ソフィア?」

 ぼんやりとしていたソフィアに、アレクセイが尋ねる。

「…すみません。ちょっと考え事を…」

 先日のミムラとの…自身と同じ異世界転生者との邂逅に気を取られ、注意力が散漫になっていた事を反省しつつ、ソフィアはダミュロンからの報告を聞く。

 今日は紫羽織のレイヴン仕様ではなく騎士団の隊服姿で、黒髪を下ろし橙色の騎士服を身に纏っていた。

「アスピオでの爆発事件。漸く容疑者が掴めました」

「キャナリの捜査で内部犯であることは断定されていたな」

「はい。それで亡くなった被害者について洗い出しましたところ、ガリスタ・ルオドー博士が浮上しました」

「ガリスタ・ルオドー博士?」

「ガリスタの目撃情報がありました。目撃した時期は、昨年と3ヶ月前となっております」

 被害者の遺体は個人の判別が困難なほど破損していた。爆発は協力した研究員の口封じに加えて、己が自身の行方を眩ませるために起こしたと、この場にいた者は即座に理解した。

「…報告を続け給え」

「最初の目撃者は海賊ギルドの海精(セイレーン)の牙の副官である参謀のサイファー並びに首領のアイフリード。昨年、船を出して欲しいという依頼人がいて、その者の姿がガリスタに酷似しておりました」

「行き先は?」

「ノードポリカです。その道中で奇妙なことがあったと…」

「奇妙なこと?」

「幽霊船と出会し、船内から赤い箱を回収したそうです」

 その言葉を聞き、ソフィアの脳裏にゲーム内でのある出来事が想起される。主人公が偶発的に聖核(アパティア)を入手する[イベント]。

 即ちその赤い箱の中身は…

「その赤い箱はどうなりましたか?」

 突然ソフィアが口を挟んできた事に一瞬驚くも、ダミュロンは答える。

「サイファーの話では、幽霊船の船長の日誌を手がかりに届け先を探して届けると、依頼人が申し出たそうで…」

「そのままガリスタに預けたわけだな」

 アレクセイの言葉に頷くダミュロン。

「閣下。ソフィアが何を懸念しているか分かりませんが、おそらくその懸念が的中する代物が箱に入っていたかと」

「どういう事だ、キャナリ?」

「私より、ステルが報告したほうがいいかと」

 キャナリに促され、ステルが静かに報告を始める。

「3ヶ月前、5大ギルドの『遺構の門(ルーインズゲート)』と魔物専門の傭兵ギルド『魔狩りの剣』に対して依頼がありまして…」

 高出力魔導器(ブラスティア)の情報が拡散している形跡を掴んでから、ステルは海凶(リヴァイアサン)の牙だけではなく、 魔導器(ブラスティア)の発掘を手がける遺構の門(ルーインズゲート)にも潜入していた。

「依頼場所はバクティオン神殿。依頼内容は遺構の門(ルーインズゲート)には神殿内の仕掛けの解除、魔狩り剣には護衛というものでした。依頼人の代理として来た者が…」

「ガリスタ・ルオドー博士だったと」

「容姿と他者の呼称から間違いないかと。そして彼が持ち込んだ大きな兵装魔導器(ホブローブラスティア)が、遺跡の奥にいた魔物を一撃で葬り去りました」

「…威力からして高出力魔導器だろうな」

「おそらくは。ただ、不思議なことが二つありまして」

 そこで言葉を切り、ステルは指を一本上げる。

「一つ目、その魔物が死んだのち、遺骸は消え去り拳大の結晶体が残りました。その結晶体のことをガリスタは『聖核(アパティア)』と呼んで回収しておりました」

 続けてステルは指を二本上げる。

「二つ目、例の兵装魔導器(ホブローブラスティア)には、その聖核(アパティア)が嵌め込まれていました」

魔核(コア)ではなく?」

 キャナリの言葉にステルは肯いた。

「ガリスタがそう呼んでいたので、間違いないかと」

 

 時間切れ。

 そう理解したソフィアは腹を括った。

 

「これは…古文書や研究から、憶測から憶測を重ねたことですが…」

 前世の[ゲーム]内の知識では確定しているが、今までに集めた情報では決め手に欠けていた。しかしここでの隠匿は悪手と考え、ソフィアはさらに話を続ける。

始祖の隷長(エンテレケイア)の死後に残されるエネルギー結晶が聖核(アパティア)と呼ばれるそうです。私の推測ですが、聖核を加工したものが魔核(コア)ではないかと…」

 ソフィアの言葉を聞き、驚きダミュロンが立ち上がる。

「待て待て! ステルの話から総合的に考えて、バクティオン神殿にいた魔物は…始祖の隷長(エンテレケイア)と言うことか⁈」

「おそらくは」

「あの化け物じみた始祖の隷長を一撃で倒す、そんな威力を持った兵装魔導器が既に出来上がっている。そう言うことなのか…」

 ソフィアが黙って肯く姿を見て、ダミュロンは思わず崩れ落ちるように席に着く。キャナリは思わず口元を手で押さえ、ステルが彼女の肩を支えつつ苦い表情をしていた。

「それだけでは済まない。それと同じ物を作れる聖核を、バクティオン神殿でさらに手に入れた。高出力兵装魔導器が量産されるのも問題だと言いたいのだな?」

「…そのとおりです。そして今こうしている間にも、水面下で聖核を集めている可能性が高いです。始祖の隷長を狩る手段は、既に持っているのですから」

 事態の深刻さに、皆一斉に押し黙る。

「…依頼人は辿れたのだな?」

「はい、閣下。しかし…評議会に名を連ねる貴族が数十名です。下手に手出しはできません」

「ステル、ガリスタの行方を探る前に、依頼人の貴族をリストにまとめて渡せ。陛下と相談をする。キャナリ、帝都内…特に王城内の警備を強化、ナイレンと協議した上で配置は任せる。ダミュロン、ギルドの方で同様の依頼が入った経歴を調査だ。お前の判断で、ドン・ホワイトホースに情報開示してもよい。ナイレンには私の方から情報共有をしておこう」

「午後までにはお渡しします」

「承知しました」

「御意」

 密談は解散となり、ステル、キャナリ、ダミュロンは退室して行った。

 

 会議が終わっても席を立とうとしないソフィアを訝しみ、アレクセイが声をかける。

「どうした、ソフィア?」

「…評議会の貴族相手では、止めることはできないのではないでしょうか」

「…世界が滅ぶと知れば、流石に考え直すだろう」

「矛先を向けようとしている相手の言葉など、聞き入れるとは思いません。しかも私たちを敵視している相手は、自分に都合に良い情報しか信じない者たちばかりです」

「分かっている。相手が納得する様に情報を伝えれば問題はあるまい。好き好んで滅びたいと思う者などいないだろう」

 始祖の隷長を殺して得た聖核で、エアルクレーネからエアルの過剰噴出を誘発する高出力魔導器を大量に作り出す。それは地上のエアル濃度を急激に上昇させる上に、始祖の隷長を全滅に追いやりエアルの調整者を消し去る行為であった。

 高濃度のエアルが満ち溢れて、生物が住めない世界へと変容させる、世界滅亡まで一直線の所業である。長期的な視野を持ち、社会性を営むまともな感性の持ち主なら、避けようするのが普通であろう。

 しかし…

「残念ですが、今日の快楽のため明日滅んでも構わないと考える人間は一定数存在します。権力に固執する者は、そう言う考えを持つ傾向が大きい。今の帝国の上層部を構成する大半の者が…」

 思い詰めた表情を複数回の深呼吸で、ソフィアは微笑に整える。

「兄様、自由に動ける時間をくれませんか?」

「それはならん! まだお前を狙った者は…」

「そう、カクターフ公は健在。でも…今やらなければ…」

「だが…両殿下の教育はどうする?」

「もう粗方終わっております。今は復習をやっているのにすぎません」

黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)は?」

「新会長のフェドロック夫人を中心に軌道に乗っています。もう私の手から離れていますよ」

「ナイレンの妻だったな。彼女も中々優秀だ」

「キャナリも子育ての相談相手として心強いって言っていました」

 そう言い、何かを成し遂げる必要性に迫られ思い詰めるも、気丈に笑みを浮かべようとする妹。

 そんなソフィアに対して、アレクセイは何処までも甘い兄であった。

「……条件がある。デュークを同行させる。クロームに伝え、迎えに行かせる」

「承知しました」

「陛下からの許可は私がとっておく」

「本当にありがとうございます。アレクセイ兄様」

 そう言いソフィアは、ただただ深く頭を下げるのであった。

 

 こうして表向きはデュークとの婚前旅行という体裁を整え、ソフィアは各方面への挨拶を済ませていく。

 騎士団のキャナリや、黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)のフェドロック会長には、対面で会った上でソフィアは幾つかお願いしていった。

 さらにソフィアは、アレクセイを介してヘルメスと皇帝クルノス14世に、ダミュロンを介してドンやアイフリードにマリーと言ったギルドの面々へ、挨拶と今後に関わる情報そして幾つかのお願いを記した書状を託した。

 

 ソフィアがデュークと共に、エルシフルの背に乗って旅立ったのは、1週間後のことであった。

 

  §

 

嬢ちゃん(ソフィア)は帝都を出たんだな」

 そう言いドンはレイヴン(ダミュロン)に鋭い視線を向ける。

「状況が変わったのよ」

聖核(アパティア)ってぇモン狙いで、始祖の隷長(エンテレケイア)が狩られていると…で、ソイツを碌でも無いこと使う馬鹿どもがいるってわけか」

「端的に言うとそうなるわね。それを裏からどーにかしたいって言われちゃあ、こっちも止められんよ」

「はっ! どいつもこいつも、嬢ちゃんに甘えみてえだな」

「大将が腕利きの護衛つけたから、問題ないでしょう」

 ソフィアにはデュークと始祖の隷長の盟主とされている者が同行している。その状態でどうにかできる者の方が少ないだろう。

「で、てめえはてめえで調べごとか?」

「魔物狩りと称して、ギルドに依頼を出している可能性は高いからねえ…」

 託児施設に併設されている仲介所を覗いてみるかと、今後の計画について考えているレイヴンにドンは話しかける。

「……レイヴン。バルボスの件、てめえで処理できるなら、首突っ込んでも構わねえ」

「…じいさん、いいのか?」

 ノール港とトリム港の間に沈む結界魔導器の破片の引き上げ作業。魔核の横流しにバルボスが関与している可能性が高い事を、レイヴンは突き止めていた。しかし、ギルドユニオンを構成する5大ギルドの一つ、紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)の首領であるため、踏み込むべきか躊躇していた部分もあった。

「気になる事があってな。何年か前か嬢ちゃんが珍しくギルドユニオンの運営に口出したことがあった」

「ソフィアが?」

「ダングレストでインフラ関係の魔導器を保守していたギルドが解体した時だったか…介入して阻止するように言われてよお。ギルドユニオンで図ったが、バルボスのヤロウが強固に反対したもんで、結局そのまま解体しちまった」

「……結界魔導器(シルトブラスティア)水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)が盗まれんように、天の射る矢(アルトスク)から巡回人員を出すわ」

「おう! てめえは話が早くて、重宝するぜ」

 ダングレストのインフラ関係の魔導器は、一度魔導中継筐体(エアルコンテナ)との接続履歴があるため、魔核を盗んだところで高出力魔導器への転用は不可である。それでも念には念を入れたほうがいいと、レイヴンは考えたのであった。

 





 オリ主(ソフィア)主体の視点はここでひとまず閉幕です。
 次話にダミュロン(レイヴン)視点を挟んで、いよいよテイルズオブヴェスペリアの主人公ユーリ・ローウェルの登場となります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。