pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「貴族部隊の方が乱れているな…」
エルヴィンの声を聞き、
帝国騎士団の組織改変で結成された2中隊で、合同魔物討伐が行われていた。そしてダミュロンは別件で手が離せないナイレンの代理として、親衛隊のエルヴィン小隊を連れて騎士見習いの引率に同行していた。
「ミルバン小隊の動きが鈍い……フルブラの奴…隊長が指揮もせずに逃げてどうする…」
「評議会議員の三男だったか。立派な肩書きをお持ちで」
「貴族部隊のグラナダ中隊長は気づいていないようだな。このままでは魔物に抜かれる危険性があるな…少し手助けしたほうがいいか。キャナリ中隊長の所に行ってくる。任せていいか、エルヴィン小隊長」
「それはいいが…隊長首席のお前が行かなくても…」
「キャナリに責任を押し付けられると、後々面倒だろう?」
本隊のキャナリと打ち合わせをした後、ダミュロンは魔物の群れに対して混乱をもたらす魔法、ヴァンジーロストを放つ。
目に見えて魔物の動きが鈍り、その間にソムラス隊がフォローに入って、態勢の立て直しを行う。それを眺めていた時、聞き覚えのある張りのある声が聞こえて来た。
「ユーリ、見たかい? あの技、ドレイク様が真の騎士と認めて、ダミュロン隊長首席に教えたと言う、騎士団の秘技って話だ!」
「秘技ねえ…光って、ちょっと動き鈍っただけじゃねえか。使い道がよく分かんねえな…」
声の方へ視線を向けると、長い黒髪の青年と金髪の青年の姿があった。
ユーリとフレン。
一時期に下町で目を掛けていた少年たちが、騎士見習いとなって今ここにいる事に、ダミュロンは思わず笑みを浮かべた。
その時、一人の女性騎士が息を切らせて姿を現した。
「大変です! 後方に突然魔物が現れました!」
報告に来た者は、後方の騎士見習い達の監督をしていた新米騎士のヒスカと名乗った。
突如襲って来た魔物は、ウルフに似ているが攻撃力が強い上、毒攻撃を有すると言う。その言葉を聞き、エルヴィンは眉を顰める。
「ガットゥーゾだとしたら厄介だぞ。咆哮にスタン効果がある」
「ヒスカと言ったな。急ぎキャナリ中隊長へ報告しろ!」
「はっ‼︎」
ヒスカが本隊へ向かったのを見送った後、ダミュロンがエルヴィンと誰を向かわせるか相談している間に、ユーリとフレンが後方へ向かって走りだしてしまった。
「おい!」
「ちっ……俺が先行する。エルヴィンは騎士見習い達の付き添いに残す人員を決め次第、追ってくれ」
そう言い残し、ダミュロンはユーリらの後を追う。
程なくウルフの5倍の大きさがある獣型の魔物…ガットゥーゾと、それに襲われている二人の騎士見習いの姿が見えた。直後、一人がもう一人を突き飛ばし、それを囮にしてガットゥーゾから逃げ去る姿が見えた。
「キュモールのヤロウ…」
「アシェット‼︎」
知り合いらしくその名を呼んで庇うように、ユーリとフレンは剣を抜いて対峙する。
武醒魔導器を持っていない者では無謀の一言。対処するにも距離が離れていて、魔法では巻き添えの危険が高い。ダミュロンは、一か八か時間稼ぎを試みる。
「魔物の意識を彼らから逸らさねば…」
間に合うかどうか…それでもこれ以外に方法はない!
目眩しの撹乱効果のある光。それを出現させる術式を構築しようとしたその時、ダミュロンの脳裏にある光景が浮かぶ。
黒髪の青年と金髪の騎士。
二人が対峙する自身らを遥かに凌駕する敵。
昨日見たばかりの悪夢で冷静さを欠いたためか、いつもより扱うエアルが多くなってしまったためか、ヴァンジーロストが変容して発現してしまった。
「っ?!」
自身の内から聞こえる秒針を刻む音。
周囲の音が消える。
周囲の色が褪せる。
凍りついたように何もかもが停止していた。
何が起きたかわからず驚くも、この停止時間は有限だと本能的に理解してからは、ダミュロンの動きに迷いは無かった。
ガットゥーゾに一太刀斬りつけ、ユーリらを庇う形で立ち塞がった時、空間が割れる音と共に時間の凍結が解除された。
「散るように」
ダミュロンが振り下ろした剣撃は地面を穿ち、衝撃波でガットゥーゾを仰け反らせて吹き飛ばした。
石礫を目眩しとして、エルヴィン小隊がホーリーボトルを掛けつつ、ユーリらを前線から離脱させる。一方、吹き飛ばされ仰け反ったガットゥーゾの腹部に矢が刺さる。
「撃て! 一矢も無駄にするな‼︎」
「隊列交代遅れるな! 隙なく放てっ!!」
おそらくキャナリの指示で駆けつけただろう、ヒスーム隊とゲアモン隊の弓兵が左右から矢を降らせる。その様子を見つつダミュロンは剣を構えて独り言を呟く。
「精度はヒスーム隊が上、連射はゲアモン隊が上ってところか」
激しく身体を震わせ、何かを溜めるように少し頭を下げるガットゥーゾ。しかし先ほど斬りつけた時に仕込んだ時錬爆鐘が炸裂し、咆哮を放つ直前にガットゥーゾは仰け反った。
「舞うが如く」
騎士団の基本通りの型で連続で斬りつけるダミュロン。隊長首席に就任した折にアレクセイから与えられた、エヴァライトを鍛えた真紅のナイトソード。速度の乗った鋭い剣撃は、確実にガットゥーゾの首の皮膚を削っていく。
そして最後の一太刀で、ゴトリとガットゥーゾの首が断ち切れ地面に転がり落ちた。
その様を見て、周囲から歓声が上がる。
しかしその声より自身の呼吸音、心音が大きくなり、冷や汗が先ほどから止まらない。ダミュロンの視界の周辺から闇が迫り、震えた膝は地面に着き、急に音が遠のき消えた。
「気がついたか?」
声が聞こえた方へ焦点を当てるように、ダミュロンは瞬きを繰り返して視線を動かす。
「……ヒスーム?」
「私が分かるなら大丈夫そうだな。キャナリ中隊長を呼んでくる」
そう言い部屋を出たヒスーム。眠気が酷く少し微睡んていた時に、キャナリが部屋に入って来た。
「ダミュロン良かった…2日も寝ていたのよ」
「2日……魔物討伐は?!」
起きあがろうとするが倦怠感が強く、ダミュロンは上半身を少し浮かせるのがやっとであった。
「無理しないで。滞りなく終わったわ。ここは帝都の騎士団宿舎、貴方の部屋よ。生命力が落ちているから、あと5日は安静」
「しかし仕事が…」
「団長閣下が方々に連絡済み。安静にしなさい」
笑みを浮かべているが、有無を言わさない圧力をキャナリはかけてくる。
「……わかったよ。キャナリ」
そう言いダミュロンは、起こしかけた上半身を深くベッドに沈めた。
「で……何があったの?」
「わからん。ヴァンジーロストを発動しようとしたら、気力が根こそぎ奪われて、突然周りが止まった」
「止まった?」
「時間が停止したようだった。それで間に合うことができたが…」
ダミュロンの言葉を聞いたキャナリは、何かに思い至ったように口を開く。
「…聞いたことがあるわ。騎士団の秘伝の禁術があるって」
「禁術?」
「刻を5秒間止める『ストップフロウ』と言う最上級魔法」
「時間を止める…なるほど、言われてみれば確かに。だが、禁術というのは?」
「術者の負担が大きすぎて、命を落とした騎士が続出したらしいわ」
そう言いキャナリは、目を細めてきっぱりと言い切る。
「ダミュロン、その魔法の使用は禁止」
「…………努力する」
§
帝国評議会の一部の貴族らによる、水面下での
そんな折、エステリーゼ姫を視察に向かわせる事となる。籠の鳥状態をカクターフ公は維持したかったようだが、視察を頻繁に行うヨーデルと比較され、評議会の中でも比較的良識派の貴族達の中には、実績が出始めているヨーデルの支持に傾く者も出始めていた。
エステリーゼの初めての視察先は、帝都に一番近い都市であるエルカバルゼであったのだが…
「エステリーゼ姫の旅を影から護衛するように…ですか?」
エステリーゼが新米騎士2人を連れてエルカバルゼから出た報告をした折、ダミュロンはアレクセイにそう言われた。
「私…と言うより、ソフィアの依頼だ」
そう言いアレクセイは、数枚の書類をダミュロンに渡す。
「……ソフィアの計画通りと」
「そうだ」
「と言うことは根回しも…」
「陛下はご存じだ。自由にさせるようにとのことだ」
そう言う疲労を隠しきれていないアレクセイを見て、ソフィアの「やらかし」は久しぶりだと思いつつ、ダミュロンは「レイヴン」に姿を変えて帝都を出立したのであった。
人魔戦争は起きていないので、キャナリ小隊の面々は元気に騎士をやっています。大半の者が隊長か小隊長で活躍中です。ヴァンジーロストからストップフロウに派生するため、このような話の流れを捏造しました…
次話からようやくユーリとフレン、エステルがメインで登場予定です(ここまで長かった…)。