TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



ユーリ・ローウェル(人員確保は手札を増やす)

 

 ユーリ・ローウェル。

 

 帝都ザフィーリアの下町で育った孤児。

 下町の顔役のハンクスとその妻のジリを中心とした、下町の大人たちを親代わりに育った。

 たまに来る騎士は下町の皆から金銭を巻き上げ、そのお金は「塀向こう」の貴族が浪費していると知ってから、幼馴染のフレンと共に騎士を一泡吹かせたり、それに対して報復を受けたり、そんな日々で帝国に対する鬱憤を溜め続けていた。

 

 しかしそれでも、昔に比べれば随分良くなったらしい。

 

 大人たちの話によると、ある貴族様の女が下町に訪れるようになったのが切っ掛けだと言う。

 その女は、騎士が討伐した魔物を下町に卸す道筋をつけた。そして得られた魔物素材を買い叩かれないように、下取りの相場価格と言った知識を下町の人に教えてくれた。回復薬を下町で作れる方法を考えてくれたのも彼女という話であった。

 さらに巡回する騎士を、ヘッポコだけど下町の者を虐めない人に変えてくれるよう口添えをしてくれた。そして下町の水道魔導器(アクエブラスティア)のメンテナンスをしてくれた上、使えなくなる前に新しい物に取り替える手筈を整えてくれたと、大人たちは感謝していた。

 それを教えてくれた、ユーリにとって母親代わりとも言えるジリはもう居ない。あの女が引き寄せた騒動で、あの女を庇って死んだのだ。そう言い残したあの女…ソフィア・ディノイアは、あれから下町を訪れることは無かった。

 

 ユーリが訪れた時には既に、ジリの墓石の前には既に白百合の花束が供えられていた。その隣にユーリは、赤いカーネーションの花束を捧げる。子供の頃は短かった黒髪は長く伸び、屈んだ拍子に視界を邪魔する位置にきた横髪を、ユーリは鬱陶しげにサラリと耳へと掛けた。

「ユーリ。お待たせ」

 ユーリと同じ騎士見習い服を纏った金色の髪の青年が、背後から声を掛けてきた。

「おう、フレン。お前の姿を見て喜んでただろう」

 紫水晶の色が滲む黒い瞳を向けられ、フレンは少し困った表情で蒼色の瞳を揺らした。

「どう…だろうか……結局母さんには、この姿は見せられなかった」

 昔に流行病に罹るも持ち直したフレンの母であったが、後遺症で少し肺を悪くしていた。騙し騙しで今まで来たが、フレンの騎士団の入団試験合格を受けた翌日に息を引き取っていた。

「ジリさんへの挨拶は?」

「済んだ。あの女に会ったら、偶には下町に顔見せろって代わりに文句を言ってやるって」

「…もう少し素直な言い方は無いのかい?」

 そう言いつつも、フレンはユーリが頑なに名を呼ばない者…ソフィア・ディノイアとの再会を、少し楽しみに感じていた。

 

 橙色の騎士服を着た男が「もうここには来ない」とハンクスに伝えに来た時、ユーリは話を盗み聞きしていた。

 ユーリはソフィアが会長である黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)に何度も足を運んだ。しかしソフィアは長期間不在にする事が多く、帰ってきたと思ったら今度は王城勤務になり会長職を辞したという話を聞いた。

 ソフィアが辞めた事に納得がいかないと、ジリが亡くなった責任なのかと食い下がるユーリとフレンに、ソフィアの後を継いだ黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)のフェドロック会長は説明してくれた。

 帝国を良くしようと行動するソフィアを快く思わない貴族が命を狙い始め、他者が巻き込まれるのを防ぎたいと、ソフィアが望み判断した事であると。

 

 ユーリはその事を知って衝撃を受けた。

 ソフィアみたいなマトモな貴族が居る一方で、相変わらず大部分はクズ貴族が占めている現状。帝国はクズ貴族からマトモな貴族を守らない現実。貴族であるソフィアを守らないのならば、平民ましてや下町の者への対応は絶望的であろう。ジリの死はその一部が表面化したにすぎなかった。

 黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)に将来的に入らないかと、ユーリとフレンは誘われたが、二人は断って帰宅の途についた。

 二人はぽつりぽつりと話し合った。

 帝国を変えるには中から変えるしかない。それは以前に出したユーリとフレンの結論。それを果たすために下町の人間が進める道は、黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)と帝国騎士団。

 正しい者が悪き者に虐げられる事なく生きる世界。その実現のために剣を振いたいとユーリは決めた。

 騎士団に入るという気概がより強くなり、ユーリは苦手な座学も周囲が驚くほどの頑張りを見せ、筆記試験はスレスレだったがフレンと共に入団試験を合格する事ができた。

 

「長期休暇中?」

「ああ、そうだ」

 騎士見習いの教育担当総括でもある、親衛隊長のナイレンがそう答える。

 親衛隊長のナイレン・フェドロックは黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)の最初期メンバーで、妻が現会長であることからソフィアとは旧知の仲であった。好都合と言わんばかりに、ナイレンをダシにソフィアと会おうとしたユーリとフレンであったが、それに対する回答が「不可」という内容であった。

 

 休暇という事はいずれ復帰するだろうと、ユーリとフレンは切磋琢磨して騎士見習いとして日々過ごしていく。

 そして見習い期間を終えたが、ソフィアはまだ帰還しなかった。

 

  §

 

 ユーリとフレンは無事に騎士見習いを卒業し、騎士になった。

 そして二人の研修先は、帝都とデイドン砦の間にある街、エルカバルゼであった。

 同期の貴族出身の騎士たちは「帝都以外のハズレ」と揶揄したが、現在エルカバルゼの守備についているのはソムラス隊。貴族と平民の混成部隊のキャナリ中隊長が腹心の一人、ソムラス隊長が率いる隊であった。

「いやいや…ヒスーム隊長やゲアモン隊長の方が功績を上げてますし、何よりダミュロン隊長首席には敵いません」

 持ち上げるフレンに対して、ソムラスはやんわりとそう告げた。

「ダミュロン・アトマイス隊長首席…アレクセイ騎士団長直属部隊を率いる懐刀。右腕と名高いキャナリ中隊長に並ぶ騎士の中の騎士!」

「そうそう。皆に比べたら、僕はそこまでの人間じゃないよ」

 柔和で穏やかな見た目のソムラス。しかし馬車や騎馬の操作は騎士団随一と言われる腕で、元キャナリ小隊出身の古参で、熟練の変形弓の使い手でもあった。

 その事を途切れる事なく告げる幼馴染を見つつ、ユーリは欠伸と共に伸びを一つし、慌ただしい様子の周囲に目を向けた。

「ソムラス隊長。そろそろお偉いさんが来るんじゃないですか?」

 ユーリに指摘され、ソムラスはフレンと騎士談義を切り上げて、賓客を迎える準備へと向かった。

 

「……なんでこういう事態になったんだ?」

「お前が安請け合いしたからだろう?」

「僕は街の中までならいいと言ったんだ! 街の外に出るなんて…」

 言い合う声が聞こえたのか、少し前を歩いていた少女は申し訳なさそうに振り返る。

「あの……本当に申し訳ございません。旅が終わりましたら、きちんと貴方方の上司の方のご説明いたしますので…」

 肩口まで切り揃えた薄桃色の髪に、天色の瞳。白を基調とした花のような少女がそう口にした。

「承知いたしました。エステリーゼひ…」

「馬鹿! 貴族のお嬢さんのエステルだろうが」

 正体を口にしようとしたフレンを、ユーリは良きから小突いて黙らせる。

「その……ユーリ、フレン。よろしくお願いします」

「はいはい。なんだか分からんが、あんたの先生から出された宿題なんだろう? それで俺たちがご指名と聞いちゃあ、興味がないと言えば嘘になる」

 曰く、エステルは先生から幾つかの課題を出されたそうだ。

 

 一つ目、ダングレストまで旅をして現状を把握する事。

 二つ目、旅路の中で友を作る事。

 三つ目、ユーリ・ローウェルとフレン・シーフォを説得して供にすること。

 

「どこのどいつが俺たちを指名したか知らねえが…騎士団に顔がきく奴だとありがたいぜ…」

「ソムラス隊長…姫様を探してるんだろうな…」

「だな。だからお前は今からでも帰れ」

「護衛が君だけでは危険だ。僕が承諾した事でもあるし、最後までつきあう」

「あのなあ…お前は成績優秀で、研修が終わったら小隊長になるのがほぼ確定なんだろう? ンな事したら、それが取り消しに…」

「自分の意思を曲げてまで、僕は地位にこだわるつもりはないよ」

「……ったく…しゃあねえなぁ…んじゃあ、行くとしますか」

 

 こうして旅は突然始まったのであった。

 





 人魔戦争が無くなった影響で色々と変化が起きています。
 エルカバルゼは残っているし、ナイレンは親衛隊長のため、ユーリとフレンは元キャナリ小隊のソムラスの隊にいる形です。
 ユーリとフレンはまだラピードと出会っていませんが、ゲーム開始の時間より一年以上早く、序盤に近いイベントが発生していく形です。
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