TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



レイヴン(被害を受けた時に問題を認知する)

 

 ユーリら一行はカプワ・ノールに辿り着いた。

 

 しかしこの後の天気が荒天になると見込まれている事から、カプワ・トリムへ向かう船は軒並み運休となっていた。

 運行が再開するまで宿屋で休むことになり、そこでカロルが所属している傭兵ギルド「魔狩りの剣」のメンバーと出会った。

 大きな半円状の剣を体に掛けている、カロルと同い年くらいの少女。カロルは「ナン」と彼女の名を呼んで合流しようとしたが、キッパリとクビ宣告を受けてしまった。

 

「ハルルの樹のこと、カロルの言っていたことは本当なのに…酷いです…」

「でも、戦闘で逃げる常習犯だったら…先へ進むのが怖くなって嘘をついたって疑われて当然よね」

 落ち込み膝を抱えて道の隅に座り込むカロルをエステルが慰めようとするも、リタは容赦ない言葉を言い、カロルはより深く頭を沈み込ませた。

 その時、ユーリたちの背後から突然声が聞こえた。

「おりょ、カロル君じゃなあい? どっしたの、そんな所で」

 紫羽織を纏い、適当に後頭部にまとめた黒髪、風来坊と言える見た目の男が声をかけてきた。

「誰だ、おっさん」

「レイヴン?」

 ユーリに問いに答える前に、カロルがその名を呼ぶ。

「知り合いですか?」

「ギルド『天を射る矢(アルトスク)』の幹部だよ」

「つまり…ギルドユニオンの幹部?」

「騎士様にしちゃあ、よく知ってるじゃなあい」

 そう言い笑いかけるレイヴンを、フレンはじっと見つめる。

「なに?」

「いえ……」

「少年、『魔狩りの剣』はデイドン砦に向かったけど、急がなくて大丈夫?」

 言い淀むフレンを脇目に、レイヴンはカロルへと話しかける。

「あー…このガキんちょ、追い出されて…」

「違うよ! そろそろ…違うギルドへ移ろうかって思ってたし…」

 リタの言葉にムキになってそう言うも、カロルは頭を再び下げてしまった。

「なあるほど。で、今は青年たちと旅してるってわけか。騎士服を着てるところから、嬢ちゃん2人の護衛ってところか?」

「エステ……ル様の護衛です」

「もう1人は成り行きでついてきた同行人だ」

「成り行き言うな! 私には目的が…」

 フレンに続くユーリの言葉に反論するリタ。

「…騎士2人だし、ま、いいでしょう。ちょっと人助けしてみない?」

「急に何よ。胡散臭いわね…」

「本題に入る前に構えないでちょうだい…」

 速攻で断る気配を見せるリタを落ち着かせるようにそう言うレイヴンに対して、エステルは向き合って尋ねる。

「人助けってどう言うことですか?」

「…エステルの『ほっとけない病』が始まったな…」

「ユーリ、そう言う言い方は…」

 ユーリの言葉を嗜めるフレンを他所に、レイブンは説明を始める。

 

 カプワ・ノールの執政官は評議会議員のフィアレン・フォン・エングリス。

 元は父のラゴウが治めており、代替わりして暫く経ってようやく最近になってカプワ・ノールに来たと言う。前の執政官であったラゴウという男、評議会議員の立場を利用してカプワ・ノールの民から搾り取った税金を、己が趣味に注ぎ込んでいたという。

「その趣味と言うのが魔物集め。元々は魔物狩りで名を上げた一族って言うのもあっての趣味なんだが、存命中に紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)から珍しい魔物、『リプガロ』が欲しいと依頼していたらしい。で、10年以上経った今になって捕まえたと紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)が連れてきたんだが、フィアレンは違約金を払うからと受け取りを拒否したんだと」

 しかし、何年もかかって捕獲した魔物を受け取り拒否されて、紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)は腹に据えかねた。

「で、その魔物をこの近辺に放置してトンズラ。お陰で住民が襲われると言う被害が出てる」

「ふーん…だったら、アンタが退治すりゃいいじゃないの」

「したいのは山々だけど、俺様弓使いだから前衛がいんのよ。『魔狩りの剣』に依頼しようとしたけど、断られちまってどうしようかと考えていたところだったのよ」

「…ユーリ、フレン。私たちも手伝いませんか?」

「しかし危険では…」

「いいんじゃねえの? どうせ当分は船が出ねえし、俺たちが居れば大丈夫だろう」

 ユーリは乗り気の様子で、フレンは思わず嗜める。

「しかしユーリ…」

「やりたい事を言ってくれるようになったんだ」

 ユーリの言葉にフレンは、エステルが旅に出たと言う切っ掛けを思い出す。

 エステルが教育係の先生から出されたと言う課題。その真意について考え続けていたが、おそらく「籠の鳥」状態だった彼女に実践を積ませたかったのではないかと、フレンは考えはじめていた。

 書物でしか知らなかった事象を目の当たりにして、自身で考え決断して行動を起こす。

 この数日で、確かにエステルは随分変わったとフレンは感じていた。

「……わかった。その魔物がいる場所は?」

 乗り気になった様子見を見て、胡散臭い笑みを浮かべつつレイヴンは説明を始めた。

 

 魔物に詳しいカロルのおかげで、早々にリプガロを見つけ、苦戦しつつも思わぬ闖入者のお陰で鎮静化に成功した。

 報告からそのまま執政官のフィアレンに招かれ、ユーリらは屋敷で一泊することになったが…

 

「一体どう言うつもりかしら?」

「…ちゃんと置き手紙はしたわよ」

「リタ。『ちょっと出かけてくる』っていう言葉は、何日も不在にする時の言葉じゃないわよ」

「…思ったより、時間がかかっただけ。言っとくけど、まだ帰らないわよ。ジュディス」

 瑠璃色の髪から赤藤色の眼を覗かせ、クリティア族の女性…ジュディスはため息を吐く。

「…わかったわ。父さんには私から連絡するわ」

「連絡って……帰るんじゃないの?」

「妹が危なっかしい事しているのに、そのまま帰るわけにはいかないでしょう?」

 ジュディスとリタが言い合っている間、フレンは先ほどの討伐依頼の経緯を思い返す。

「リプガロに付いていたあの首輪は何だったんだろう?」

「あんなに暴れてたのが、嘘みたいに大人しくなったよね」

「突然戦いに入ってきた美人のクリティアっ娘が、槍で壊した途端だったよねぇ…調べるってフィアレン執政官が持っていったけど…」

「あら、ジュディスって呼んでくれて良いのよ。おじさま」

 レイブンの声に反応したジュディスは、そう言い妖艶な笑みを浮かべる。

「ありがと。ジュディスちゃん。取り敢えず俺様の事はレイヴンで」

 鼻の下を伸ばしつつ自己紹介するレイヴンを横目に、ユーリが話しかける。

「ジュディス…は長いな…ジュディで良いか?」

「ええ。良いわよ。妹がお世話になったみたいね」

「やっぱりリタのお姉さんだったのですね。私、エステルと言います」

「ボクはカロル」

「ユーリだ。こっちはフレン」

 

 簡単な自己紹介を終えた時、屋敷の主…フィアレンが客間へと入ってきた。

「お寛ぎのところ申し訳ない。君たちは確か、ダングレストまで行く予定だったね」

 フィアレンは、青みがかった黒髪を掻き分け銀縁眼鏡のズレを直しつつ、黒灰色の瞳を向けた。

「はい。その予定です」

「新しい依頼を受けてくれないか? この書状を、ギルドユニオンのドン・ホワイトホースに渡して欲しい」

 そう言いフィアレンはフレンに書状を託す。封蝋にエングリス家の印璽が押されていることを確認するフレン。その時、レイヴンはフレンの背後から手を伸ばし、書状を手に取った。

「俺の方がいいだろう。天を射る矢(アルトスク)に所属してるわけだし、この後ドンに会う予定もあるしね」

「それでは貴方にお願いします。それと、これが今回の謝礼です」

「おっさんがもらっとけよ。アンタが受けた依頼なんだし」

「そう? じゃあお言葉に甘えるかねえ」

 そう言いレイブンは、謝金の入った袋を受け取った。

「それでは今夜はゆっくりお過ごしください。それと…そこの若い騎士の2人」

「ん?」

「僕たちの事ですか?」

「見せたいものがあります。少し付き合ってくれませんか?」

 

 エステルの護衛はリタやカロルらが引き受けると言う言葉に甘え、それでも渋るフレンを誘い、ユーリはフィアレンの誘いを受ける。

 ユーリとフレンを連れ、フォアレンは屋敷の地下室へと降りていく。

「父は妹と折り合いが非常に悪かった。決定的になったのは、ファリハイドの別荘での一件だ」

 そう言いフィアレンは、地下室の重厚な扉を開く。

「くっ……」

「何だ…この臭いは…」

 何とも言えない臭気にユーリとフレンは顔を顰めた。

 石畳の大部屋には赤黒いシミが床や壁に付着し、大部屋の両脇に鉄格子の部屋が並んで設置されていた。

「……ここは?」

「クズ親父……失礼、亡き父ラゴウの趣味の部屋です。丸腰の人間と魔物を戦わせるための」

「……なっ⁈」

 フレンの問いに答えたフィアレンの言葉に驚き、ユーリとフレンは言葉を失う。

「別荘では魔物同士を戦わせて鑑賞するだけでだったのですが、途中で人と魔物を戦わせようとして…妹がそれを知って通報しましたが、未遂である事、評議会の議員である事を盾に有耶無耶にされ、父は別荘を手放しました。妹はそれで家を出てしまいましたが…」

「で性懲りも無く今度は、お膝元でそれをやったと」

「最初は犯罪者の処刑方法としてやっていたしそうです。それも許されざる事ですが…」

「確かに、罪に応じて処罰も定められています。魔物に喰わせると言う残虐な方法は、法に反した行為だ」

 ラゴウの行為に対して、ユーリとフレンは不快感を露わにした。

「それどころか父は、自身の裁量で犯罪者を作ろうとした。税金を上げて、払えない者を犯罪者に仕立て上げ、その者を魔物の餌にしようとした。その様を鑑賞したいと言う、悪趣味な欲を満たすために」

 ラゴウの所業を聞き、ユーリとフレンは絶句した。するとフィアレンはくるりと振り向き、良い笑顔で2人の方を見た。

「街を訪れていた騎士がそれを知り、法を犯している証拠を揃えて刑部卿に渡した。父ラゴウは刑部卿に金銭を渡した。騎士は告発を黙殺された上、危険な任務で民を見殺しにする命令を受けたが、その命令に背いた上に亡くなったと聞いた」

 その話を聞いて、フレンの顔色が青褪める。フレンの父親が亡くなり、母親共々市民街を出た経緯は…

 そしてフィアレンは2人に問いかけるように、ゆっくりと言い含めるが如く問いを口にした。

「結局、執行する側の主観と都合で判断される。根本解決は、法整備とその遵守の徹底化だが、整う前に何人もの無辜の民が殺されようとしている。君たちはどう行動する?」

 その問いに答えようとする前に、フィアレンは口を開く。

「突っ込んだ話題をしてすまなかった。妹の部下の人柄を知りたいと思った。直接話をする機会は貴重だから」

「妹って、家を出たって言う?」

「キャナリ・フォン・エングリス。今はキャナリ・エングリス・ガデニアだけどね」

「キャナリ中隊長⁈」

 その名前が出てユーリとフレンは驚く。

「さて、そろそろ戻ろう」

 フィアレンに促され、地下室を出る階段を登ろうとするユーリたち。

 

「……君の代わりに手を下したんだ。少しは感謝してほしいね」

 フィアレンの声はユーリの耳には届かなかった。

 





 ゲームのレイヴン登場イベントですが、執政官はラゴウではないので、住民への圧政や魔物の餌にするような虐殺はない状態です。当然普通に屋敷に入れるし、嵐を起こしていた魔導器もありません。
 ジュディスは魔導器狩りをしていないし、普通にリタと姉妹として過ごしています。
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