TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



新興都市ヘリオード(能力の有無と向き不向き)

 

 翌日、カプワ・ノールとカプワ・トリム間の船便が再開されたが、足止めされていた人々が殺到し、すぐには船に乗れそうになかった。

 そこへ依頼を手助けした礼として、レイヴンは伝手を使ってユーリらが乗る船の手配をしてくれた。幸福の市場(ギルド•ド・マルシェ)のマリーの護衛依頼という形だが、海精(セイレーン)の牙の船に同乗させてもらう形で、ユーリらは海を渡った。

 ユーリは、騎士団を辞めて幸福の市場(ギルド•ド・マルシェ)に来ないかとマリーに勧誘され、海精(セイレーン)の牙のアイフリードに「ウチの婿にならぬか?」と言い寄られたりした。そしてサイファーが「ムスコじゃなくてムコかよ…」と突っ込みつつも、一行は無事にイキリア大陸からトルビキア大陸のカプワ・トリムにたどり着いた。

 

 マリーとアイフリードとは別れ、ユーリらは次の街へと向かう。

「それにしてもユーリは凄いね。大きなギルドから二つから勧誘されて」

「俺だけじゃねえよ。フレンにも声を掛けようとしていたぜ。お前、俺を生贄にして逃げただろう?」

 恨みがましくそう言うユーリの言葉を、フレンは笑顔でかわす。

「どこのギルドも人不足でねえ、青年たち位の年齢で使える人材がいなくて、困ってんのよ。お陰でおっさんは大忙しよ」

「あら、おじさまだってまだ充分若いわよ」

「中年に片足突っ込んでんじゃない」

 レイヴンを擁護するジュディスの言葉を、リタは容赦なく否定する。

 その時エステルは、先頭にいたはずのカロルの姿が無いことに気づく。そして浮かない表示で最後尾を歩くカロルを見つけて、その隣へと歩み寄った。

「どうしたんですか、カロル」

「…ユーリもフレンもすごいなって思って…それに比べてボクなんか…」

「あのなあ、カロルは今何歳だよ?」

「11だけど…」

「俺やフレンの半分くらいしか生きてねえじゃないか。まだまだこれからだろう」

「そうよ。少年はまだまだ伸び代があるんだから」

「そっか…そうだよね!」

 ユーリとレイヴンに励まされて、カロルは元気を取り戻して先頭を歩き始める。

「で、次はどこの街だ?」

「カルボクラムだよ。そろそろ着くんじゃ…見えてきた!」

 上空に見える結界魔導器(シルトブラスティア)が見えてきて、カロルは歩みを早めていった。

 

「疲れた…」

 街に着いた時は、既に日が沈んでいる状態であった。それもそのはず、ユーリらはカルボクラムに着くも、ほとんどの住民がいない有様で、宿屋がやっていなかったからである。

 まだ日が高かったことから、その先のヘリオードまで行くことになり、それなりの強行軍になってしまった。

「それにしても、どうして人が居なかったのでしょう…」

「騎士の命令で移動させられたって話でしたね。一体何時からそんな…」

 エステルの言葉にそう答えるフレン。それを横からレイヴンが口を挟む。

「2週間前に通った時は普通だったわよ」

「それは本当、おっさん」

「本当だよ。ボクも10日前に通った時も普通だった」

「カロルがそう言うなら、信憑性は高いわね」

「……リタっちもジュディスちゃんも、おっさんの言葉、信じてくれないのね…」

 そう言いがっくりした態度を取るレイヴン。

「そう言う態度が胡散臭いと思うぞ…っつーか…ここも随分と閑散とした街だな」

 レイヴンを軽くあしらった後、ユーリは街の様子を見ると、民家の数に対して人の気配が希薄に感じた。そのことに違和感を覚えながらも、ユーリたちは近くの宿屋へと向かうのであった。

 

「ヘリオードは結界魔導器(シルトブラスティア)が見つかって、最近でき始めた街だけど…街の建設の仕事がキツくて、逃げ出す人が増えてるって最近聞いたよ」

 宿屋で迎えた翌朝、思い出したようにカロルがそう言った。

「人が逃げ出せばその分工事は遅れる。となると、別から人を連れてくる必要があると」

「レイヴンの言葉通りだったら、カルボクラムから連れ出された人達ってまさか…」

「ちょっと、また『ほっとけない』とか言うんじゃないでしょうね?」

 リタは半ば責めるような口調で、エステルに食ってかかる。

 これからダングレストに向かう予定なのだが、エステルは先に進むことを躊躇していた。

「でも……カルボクラムで残っていたのは、ほとんどが子供でした。もしこのまま大人たちが帰らなかったら…」

「それで『ほっとけない』って訳だな」

「……はい」

「と言うことならば…」

 そう言いつつユーリは、騎士服と鎧を脱いで軽装になる。

「ちょっと、ユーリ。何をするつもりだい?」

「んー…建設作業者のキャンプがあるって聞いたんでな。ちょっと探ってくる」

「ユーリ。僕たちは騎士だ。正当ではない方法は…」

「だったらお前は、お前のやり方でやればいいんじゃねえの?」

 ユーリにそう言われて、フレンは少し思案するも諦めたようなため息を吐いた。

「…だったら、僕は僕のやり方でやらせてもらう」

「おう」

 

 結局ユーリは先に進まず、ヘリオードに滞在する事になった。

 二手に別れて情報収集し、再び宿屋に集合したのは日が傾いてからのことであった。

「作業員のキャンプだが、カロル先生のおかげで少し情報が掴めたぜ」

「酷いよユーリ…」

 そう言いカロルは大きなバックからはみ出して見えていたリボンを、慌てて奥へと突っ込み直した。

「可愛かったわよ。カロリーヌちゃん」

「もう! なんでボクが女装しなきゃなんないんだよ!」

「仕方がないでしょう。私が見張りの騎士を誘い出そうとしたけど、着替えた途端におじさまが倒れてしまったんですもの」

 レイヴンに抗議するカロルに、ジュディスはやんわりと状況説明をする。鼻を抑えてジュディスから顔を背けるレイヴンを見て、リタは盛大にため息を吐く。

「……何があったか何となくわかったわ」

「私たちは騎士団の詰め所に行って来ました。駐留している騎士団の隊長の方がヘリオードの執政官代行をされていると聞いたのですが、生憎その方は不在で…」

「その執政官代行は誰か分かったのか?」

「騎士団のキュモールだ」

 問いに答えたフレンの言葉を聞き、ユーリは盛大に顔を顰める。

「そりゃあ居たとしても、話は聞けなかっただろうな」

「ユーリたちの知り合い?」

「騎士団の同期。貴族出身の騎士で、ごりっごりの貴族至上主義者」

「見習い後、研修期間を飛ばして小隊長になって、最近になって隊長に昇進したらしい」

「ずいぶん早い出世だけど優秀なの?」

「家の力ってやつだな」

「うわあ…」

 ユーリの答えを聞いて、カロルは心底嫌そうな顔をする。

「騎士団の詰め所で、通信魔導器(コールブラスティア)でソムラス隊長と連絡を取った」

「……おいおい…マジかよ。なんでまた…」

「詰所に居た魔導士から話を聞いたんだけど、ここに見慣れない魔導器(ブラスティア)が運び込まれて、魔核(コア)を弄っていたらしいのよ。どうも違法改造されてるっぽいのよね…」

「非正規に改変された魔導器(ブラスティア)の情報を掴んだら、直ちに報告するようにと言われている」

 リタに続いてそう答えるフレンの言葉を聞き、ユーリはそんな指示があったと朧げに思い出した。

「…そうだったな……で、ソムラス隊長は?」

「すぐこちらに向かうそうだ。だから隊長が来るまで…」

 そう言うフレンに、ユーリは首を横に振る。

「あの…ソムラス隊長には、ちゃんと私から事情を話しましたから…」

「そうじゃないんだ、エステル」

「それでは遅いわ」

「それはどう言う…」

 ユーリに続くジュディスの言葉を聞き、リタは尋ねる。それに被せる形でレイヴンは口を開いた。

「断片的な話しか聞こえなかったんだけど…もう少しで完成だから、集めた人たちを口封じをするって…」

「そんな!」

「ってわけだ。俺は今夜向かおうかと思うが、どうする?」

 ユーリの言葉を受け、フレンは迷うように視線を彷徨わせた。

 





 ヘリオードの結界魔導器がゲームの世界で故障するのは一年後なので、ここではそのイベントは発生しません。本作の大筋に関係ないため省いていますが、ソフィアがデュークと世界を回っている時に調整済みで暴走は起きる事はありません。
 カルボクラムは破壊されておらず、アイフリード(パティ)は相変わらずサイファー達と一緒に海賊ギルドをやっている状態です。
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