TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



親友(同じ状況を作れば同じ結果が齎される)

 

 窓を叩く雨音を聞き、リタは重たい瞼を上げる。

「ここは……」

 どこかの宿屋らしく、そのベッドの上に自身は寝かされていることにリタは気づく。

「そうだ……暴走した魔導器(ブラスティア)を止めようとして…」

 光の粒子が視認できるほどエアルが噴出する中、リタは己が知識と技術を駆使して暴走した魔導器(ブラスティア)を止めた。直後、滞留していたエアルに吹き飛ばされて…

 そこまで思い出したリタは、ハッとなって自身の身体の様子を確認した。吹き飛ばされて壁に激突し、身体を強打したはずなのだが、怪我どころか身体の痛みすらない。何より自身は高濃度のエアルに晒されたはずなのだが…

「特に異常は無い…どうして?」

 さらに記憶を辿り、リタを庇うように間に割って入ったエステルの姿を思い出す。そして彼女に触れるや否や、エアルが霧散していったことも…

 ハルルの時は周囲のエアルが集まり、そして樹は蘇った。

 エアルを自在の操るそれは…

「リゾマータの公式…」

 思わず上半身を起こしたリタの視界の端に、薄桃色が映り込んだ。そそてリタは、上半身をベッド預けて眠るエステルの姿を見つけた。

「もしかして…治癒術をかけ続けてくれた?」

 

 リタの父ヘルメスと、母違いの姉のジュディスはクリティア族。

 明確な共通点と確かな繋がりがある2人と違い、リタにはエアルを直接感知する能力は持ち合わせていない。そもそも5歳以前の父と姉の記憶は朧げで、父との繋がりが感じられるのは魔導器(ブラスティア)の研究だけ。そしてアスピオに居る者たちは、リタ自身では無く彼女の魔導器(ブラスティア)研究成果だけに興味を持っている、リタは他者に対してそう認識していた。

 自身と他者を繋ぐのは魔導器(ブラスティア)だけ。そう考えたリタは魔導器(ブラスティア)の研究を続けてきたが…

 

“リタが一緒に来てくれて嬉しいです。同世代の女の子と知り合うのは初めてですので”

 

 何でも「ほっとけない」と見ず知らずの他人を気にかけて、ここへ至るまでの道中での寄り道の原因だった。しかし知識も技能を取り払った「リタ・モルディオ」と言う個人を、一人の女の子として尊重してくれたのも事実であった。

 彼女と交わした学問以外の他愛のない会話、自身が作った生卵サンドを頑張って食べてくれた姿、慣れない雑事で失敗した時のフォロー…リタはこの旅を悪く無いと感じている事に気づいたのだ。

 研究以外で楽しいと感じたのは初めてかもしれない。そしてその彩りを与えてくれたのは…

「エステル…」

 改めてその名を呼ぶ時に自身が出した優しい声色に驚き、リタは思わず口を押さえる。

「ん……リタ?」

 名を呼ばれエステルは目を覚まし、そしてリタが起きていることに気がつく。

「リタ⁈ 良かった…まだ痛いところとかありませんか?」

 そして慌てた様子でリタの身体を触りつつ、状態を確認していった。

 必死でリタに痛みがないか尋ねるエステルに対して、どこも痛くないとリタは応える。そして安堵した様子のエステルに対して、リタは静かに口を開く。

「私の前では使うフリしなくて大丈夫。それ、本当は必要ないんだよね?」

 そう言いリタが指を指したのは、エステルの腕に嵌められた武醒魔導器(ボーディブラスティア)であった。

 言葉の意味を理解して、エステルは静かに頷く。

 やはり魔導器の助けを借りずに、エアルを操る能力をエステルが持っているのだとリタは理解する。しかしそれを肯定するエステルは、膝に重ねて置いた両手を小刻みに震わせていた。

 それを見たリタは、エステルにそれ以上追求したいとは思わなかった。

「貴方の力、秘密にしてあげる。そ……その…と…友達として…」

 一度言い淀むと一気に恥ずかしさが出て、耳を真っ赤にしつつリタはそう言った。

 リタの言葉に天色の眼を一瞬見開かせ、エステルは花のように嬉しさを隠し切なく笑みを返した。

「友達……はい! 私とリタは友達です。これから宜しくお願いします」

 そう言い右手を差し出すエステル。

 その真っ直ぐな視線を逸らすこと無く受け止め、リタは頬を赤つつもしっかりと手を握った。

 

 日付が変わろうとする中、雨はさらに激しく降り注いだ。

 その雨音より激しい剣戟の音が響き、街の開けた場所の暗闇の中で、剣同士がぶつかり合う火花が時折浮かんでいた。

 

「…少しは……気が晴れたか? ユーリ?」

 中段を薙ぎ払う剣を流し跳ね返した後、フレンが尋ねる。

「ンな訳ねえだろうが……何でキュモールはお咎めなしなんだ⁈」

 ユーリらはアイフリードの手を借りて、ガスファロストで監禁されていた、カルボクラムの住民を救助することができた。そして一般市民に強制労働を強いただけではなく、処分しようとしていたキュモールを糾弾した。

 しかしキュモールは、自身が現場に居なかった事を理由に「記憶にない」と言い張り、その身柄を押さえていたソムラスも結局解放するしかなかった。

「ソムラス隊長が言っていただろう。キュモールが関わっていたと言う証拠を抑えてない」

「連れてこられた奴らが言ってたじゃねえか!」

 剣気を飛ばした直後に一気に距離を縮め、斜め上の斬り上げ、振り下ろしと連続した剣撃を繰り出すユーリ。

「被害者からの一方的な証言だけでは客観的証拠とは言えない。それでは法では裁けない」

「その法とやらは、何をやったとしても、証拠がなかったら無罪放免ってそう言うわけか⁈」

「だがそうしなければ、主観で判断しかねない。誰が見ても罪だと、客観的な判断をしなければ、それはただの暴挙だ」

 フレンは剣気を受け流し、剣撃を弾き、相手振り下ろしのタイミングで剣を受け止める。

 

「だが相手が貴族様だったら、目の前の人間見捨てて証拠を掻き集めたとしても、握りつぶされちまうだろうが!」

「……」

 

 手首の動きでユーリの剣を絡め取って飛ばすも、衝撃に耐えられず同時にフレンの手からも剣が弾き飛ばされてしまう。

 互いが互い、地面に落ちた剣を拾う。再度剣を合わせようとしたその時…

 

「そこまでだ!」

 

 ユーリとフレンに刃が突きつけられた。

 変形弓の弓を展開し、弧の両端にある刃をそれぞれ2人に突きつける形で割って入ったのは、隊長のソムラスであった。

「いい加減止めるんだ。周辺住民への安眠妨害になる」

「…ソムラス隊長……」

「ユーリの怒りは尤もだ。フレンも内心腑煮えくり返ってる気持ちは理解できる」

 ソムラスの言葉を聞きフレンを見やると、彼は眉間に皺を寄せたまま視線を地面に落としていた。その様子を見たユーリの頭は冷え、冷静な姿からフレンが怒りを抱いていないと思ってしまった自身に嫌悪してした。

「喧嘩するほど仲がいいとは言うが、大概にしろよ。まだお前たち二人には任務があるからさ」

「任務…ですか?」

「エステリーゼ様の護衛。ダングレストまで行くんだろう?」

 ソムラスの言葉を聞き、ユーリはフレン共々目を見開いた。

「連れ戻さなくていいのかよ?」

「キャナリ中隊長が許可を出している。騎士団長閣下も王城も了承済みだ。気を抜かず最後まで任務を務めるんだ」

「ソムラス隊長はご一緒しないのですか?」

「私は急な任務で王城へ行く必要がある」

 そう言い投げ捨てた荷袋を回収するソムラスは、フード付きのマントを纏った旅支度姿であった。

「今回同行した隊の騎士たちは、当面ヘリオードに滞在予定だから、何かあったら頼れ」

「了解しました!」

 ユーリとフレンは同時に騎士の礼を自身らの隊長に向ける。

 

 そして「風邪を引く前に宿に戻れ」と言い残し、ソムラスは馬を駆ってヘリオードを後にした。

 





 リタとエステルの友情が深まるイベントが少し形を変えて発生する形となっています。
 一方で、ユーリが騎士団から離れる兆しが出てくる一件として、ゲームでのキュモールの蛮行を当てた形となっています。
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