TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



マリー・カウフマン(未来のやり手商人の投資)

 

 ヘルメスが帝国直轄の学術閉鎖都市アスピオに行ってから、一月余りが経過した。

 騎士になったアレクセイは、史上最速で小隊長に昇任した。そして小隊長になったアレクセイは、遠征のため一昨日から屋敷を不在にしていた。

 

 そんな折に、ヘルメスから荷物が届いた。中身は、検定印の無いジャンク品の魔導器(ブラスティア)と、初めて見る箱型の装置であった。

 共に届いたヘルメスからの手紙によると、ソフィアの装置から発想を得て作り上げた、画期的な発明品との事であった。

魔導中継筐体(エアルコンテナ)

 ヘルメスがそう名づけたその装置は、稼働している魔導器(ブラスティア)と端子で接続し、装置から伸びている配線を繋ぐことで、魔核(コア)の破損状況にもよるが、ジャンク品の魔導器(ブラスティア)の稼働を可能にする機械であった。

魔導中継筐体(エアルコンテナ)を利用することで、一般的に普及している型の魔導器(ブラスティア) 1個が消費するエアル量で、別の魔導器(ブラスティア)を10個程度動かせると試算…」

 以前からソフィアは出力を上げるより、効率性と汎用性を上げる方が良いと口にしたが、ヘルメスはその言葉を覚えていたらしい。

「現在利用されている魔導器(ブラスティア)は、エアルの吸収と目的に応じた属性への変換および性質の付与を全て魔核(コア)で行っている。携帯性の点では優れているが、属性の変換時にエネルギー消費または余剰エネルギーが発生し、それに伴い冷却や発熱が起きる。急激な温度変化の頻発により魔核(コア)が損傷することから、温度調整を行うために別途エアルを消費していると考えられる…」

 ヘルメスからの分厚い手紙を読み進めると、魔導中継筐体(エアルコンテナ)が、エアルから属性エネルギーへの転換を肩代わりする機械であると理解できた。転換できるエネルギーの属性は1種類のみだが、発生する温度変動は固定化されるため対策が容易であり、放熱と吸熱が容易な外付け機械とした結果、エアル消費量を削減できたという。

 今回届いた魔導中継筐体(エアルコンテナ)は、風属性のエネルギーへ転換するタイプであった。現在、他の属性タイプも制作中とのことであった。

「送られた魔導器(ブラスティア)のジャンク品が、風属性のエネルギーで動くものばかりなのは、そう言う訳か……」

 検証対象の魔導器(ブラスティア)の種類が多いため、手分けして実験して欲しいと、ヘルメスは手紙で締めくくっていた。

 荷物の内訳は、ジャンク品の魔導器(ブラスティア) が20個ほど、ヘルメスの発明品の魔導中継筐体(エアルコンテナ)が10個であった。

「理論通り10個同時に稼働できるかどうかも、確認して欲しいと言う事だろうか。先ずは一つずつ稼働するかどうか確認するとして…さて、どれから試してみようか…」

 ソフィアは手始めに一つのジャンク品の通信魔導器(コールブラスティア)を手に取り、操作盤を起動させ、浮かび上がった光の線で描かれた術式を確認していく。

「術式紋を確認して……破損箇所はエアルの転換機能か」

 ジャンク品の魔導器(ブラスティア)で最も多い故障原因は、魔核(コア)の不具合である。そして魔核(コア)の機能の中で破損が多いのは、エアルを属性エネルギーへ転換する機能であった。

「性質の付与機能は…と、破損はなし。エアル吸収機能を停止」

 操作盤のキーを叩いてコマンドを打ち込んだのち、ソフィアは 魔導中継筐体(エアルコンテナ)の配線を、慎重にジャンク品の通信魔導器(コールブラスティア)魔核(コア)筐体(コンテナ)の接続部分に物理的に繋いだ。

「仮想導管構築。結合紋は…」

 ヘルメスの手紙に書かれた指示に従って、魔導中継筐体(エアルコンテナ)とジャンク品の通信機魔導器(コールブラスティア)との接続を指示するコマンドを、操作盤を介して打ち込んだ。

「試運転を…って通信機だから、もう一台必要」

 そう呟きつつ、ソフィアはジャンク品の山から別の通信魔導器(コールブラスティア)を探し始めたのであった。

 

 ソフィアの作業場は、屋敷の離れにある地下一階、地上二階建ての小さな建物である。

 二つ揃った通信魔導器(コールブラスティア)の試運転をするため、ソフィアは作業場に一台、屋敷内の部屋にもう一台、それぞれ照明の光照魔導器(ルクスブラスティア)と接続する形で設置し、片方にベルが鳴るタイマーを設置して、音が聞こえるかの確認をしていた。

 そして作業場から最も離れた応接間の光照魔導器(ルクスブラスティア)に、ジャンク品の通信魔導器(コールブラスティア)と接続した魔導中継筐体(エアルコンテナ)を繋げ、その近くにタイマーを設置し、作業場に戻ってきたその時であった。

 家令が作業場に姿を現し、ソフィアへの来訪者を告げた。それを聞き、ソフィアは首を傾げる。

「今日はそのような予定はありましたか?」

「いいえ、前触れはありません。何でも以前に命を救われた恩人を探していたそうです。そして帝都を出立する直前の本日、恩人がソフィア様と判明し、急ぎお礼を申し上げるために伺ったとのことで…」

 その時、設定していたタイマーのベルが、通信魔導器(コールブラスティア)越しに聞こえてきた。

「ああ、試作機の確認作業を忘れていました。応接間に戻って……」

『え? 何? ベルの近くで声が……』

 声が聞こえた後に、ベルの音が止まった。

『何これ? タイマーの近くの光照魔導器(ルクスブラスティア)に機械があるわ』

 通信魔導器(コールブラスティア)から声が聞こえ、一瞬驚くもソフィアは状況を考察する。来客の知らせ、そして通信魔導器(コールブラスティア)の試運転をしている場所は…

「……もしかして、客人がいる場所は…」

「応接室でございます」

『やっぱり声が聞こえたのは、この機械よ! そちらに居るは誰ですか? 聞いてる⁈』

 通信魔導器(コールブラスティア)から聞こえる若い女性の声を聞きつつ、ソフィアは思わず頭を抱えるのであった。

 

 帝国はギルドを無法者集団と見做しているが、ギルド無しでは社会が維持出来ないため、その存在を黙認している。中でも商業ギルドである幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)は、帝国内では帝国法に従う事を条件とし、帝国内を自由に回ることができる免状を持っていた。

 ギルドと帝国の壁を越えて、世界各地に店舗を展開している幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)。半年程前にソフィアは、その社長と娘が乗った馬車を魔物からの襲撃から助けた事があった。社長のカウフマンからその話を聞き、ソフィアはエッグベアを仕留めた時のことをようやく思い出した。

 改めて礼を言うカウフマンを半ば押し退け、赤髪で眼鏡を掛けた若い女性、娘のマリーが興奮したように話しかけてきた。

「先ほどの機械は何ですか?」

通信魔導器(コールブラスティア)です」

光照魔導器(ルクスブラスティア)に繋がっていたのは何故?」

「それは……」

「検定印が無いジャンク品ですよね? 魔核(コア)が修理できるようになったのですか?」

 魔核(コア)の修理や術式の書き換えは、現在では失われた技術。成果を勝手に上位変換されても困るとソフィアは判断して、取り敢えず廉価版の通信魔導器(コールブラスティア)で、稼働する魔導器(ブラスティア)が必要と説明した。

 ソフィアの話を聞き、魔核(コア)の修理技術の確立では無いと知り、カウフマンの方は急速に興味を失った。

 一方で、娘のマリーは「商売になる」と食いつく勢いで、ソフィアに対して商談を始めた。

「マリー、そこまで必死になるものでは…」

「いいえ、お義父様。通信魔導器(コールブラスティア)は需要が高い一方で、流通量が少ない魔導器(ブラスティア)です」

 魔導器(ブラスティア)が不足している原因の一つに、需要に応じた供給はできない事があげられる。発掘された時には既に魔核(コア)の用途が決まっており、術式紋の書き換え技術が無いため、転用や応用が困難であったからだ。

「この発明品は、ジャンク品の通信魔導器(コールブラスティア)を使えるようにできる、革新的な技術なんです!」

 マリーの言葉が終わるや否や、応接室の扉が開いた。

「なかなか先見の明があるようですな。マリー・カウフマン嬢」

 そう言い入室してきたのは、アレクセイとヘルメスであった。

 

 目の下に隈を作り、草臥れた様子のアレクセイとヘルメス。

 師のヘルメスは研究にのめり込むと何時もそのような感じだが、騎士ゆえに体調管理に厳しいアレクセイは珍しい状態であった。

「兄様…やはり遠征の疲れがあるのですね…一度お休みになられては?」

 そう心配するソフィアを横目で見つつ、アレクセイは深いため息を吐いた。

「……遠征よりも…お前のやらかしの後処理で疲れている…」

「え……倒した魔物の首がすっ飛んでいって、失禁した貴族を放置したことですか? それは、その貴族が魔物を一般市民に嗾けた結果で、市民の保護を優先させたので仕方なく…」

「……またやったのか…後で詳しく聞かせてもらおう。それよりも…」

 渋い顔で眉間を押さえていた手を離し、懐から魔導中継筐体(エアルコンテナ)を取り出して机の上を置いた。

「ソフィア。お前が関わったヘルメスの発明品で、アスピオでは大騒ぎだ」

「完成してから兄様に相談しようと思っていたのですが…ヘルメス先生がここまで早く作るとは思わなかったので…」

「それについては私の方が口止めをした。で、今後どうするか打ち合わせをするため、ヘルメスと共に帰宅したら、別の者が存在を知った現場に遭遇したわけだ」

 そう言いアレクセイは、カウフマン親子に移ってもらっている別室の扉に視線を向け、一際大きなため息を吐いた。

「その……たまたま応接室で実験していて、一度作業場へ戻った時に来客が……」

「実験は作業場でやれ!」

「でも……今回は、兄様の寝室の床まで貫通するような爆発の危険性は無いから大丈夫だと…」

「危険な実験は、それ自体を、やるなっ‼︎ 内鍵付きの離れを作業場にしたのは、守秘義務があっての事に決まっているだろう‼︎」

 興奮しているアレクセイを、苦笑しつつヘルメスが宥める。

「ここまで大きな反響があると予測できなかった私の迂闊さが……いやそれよりも、彼らを含めて今後どうするかだ」

「口止めをするよりも、こちら側に引き入れた方が良いと思います」

 紅茶を飲んで少し落ち着いたアレクセイが、ソフィアに聞き返す。

「カウフマンを引き入れる?」

幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)に販路を委託するのは、悪い手では無いかと思います」

「販路って……まだそう言う段階では」

「ヘルメス先生、反響が大きかったんですよね? 商売で大きな影響を持つ者と繋がりを持って、横槍を入れられるのを防いだ方がいいと思いますよ」

「……なるほど、確かに幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)ならば下手に手出しはできぬか…だが、こちらが不利な契約となる危険性が高いのでは?」

「ある程度は仕方がないとは思います。ただ、向こうが持ちかけた話ですし、何より今回の訪問は、カウフマン親子を魔物から助けた私への謝礼のためなんです」

 ソフィアの言葉を聞き、アレクセイは驚き一瞬目を見開くも、それなら交渉の余地はあると呟きを落とした。

魔導中継筐体(エアルコンテナ)の存在は伏せて、ジャンク品の通信魔導器(コールブラスティア)と合体させた状態で売りましょう。他の魔導器(ブラスティア)に接続して使う、廉価版通信魔導器(コールブラスティア)として」

「ふむ…機能を限定してしまうと言うことか」

「確かに通信魔導器(コールブラスティア)の発掘品の大半が不良品で、希少性が高い物となっている。原価は格安のジャンク品と魔導中継筐体(エアルコンテナ)。価格を通常の通信魔導器(コールブラスティア)の半額にしたとしても、それなりの利益になるか…」

 ヘルメスに続いて、アレクセイもまた乗り気の様子であった。

「契約書の作成後に交渉すると伝えて、一度お引き取りを願いしましょう」

「…客人への対応はそうするとして、帝国への説明はどうする?」

「帝国には魔導中継筐体(エアルコンテナ)の存在を伝えて、試作品をいくつかをアスピオに無償提供すればいいのでは? そして安全性確認のために、ギルドを利用するとでも言えばいいんじゃないでしょうか? 」

 その言葉を聞いて、アレクセイは考え込む。一方でヘルメスが徐に口を開いた。

「試作品の試験運転が必要だな。特に野外の使用にも耐えられるかどうか、試験をしてデータを集める必要がある」

「アスピオの研究者は、街から離れられないですし、貴族が首を突っ込む可能性が高いです。安全性確認の一貫で、ギルドにお願いした方がいいのではないですか?」

「試作機と言えど……この機械で得られるアドバンテージは、かなり大きい」

 帝国内で試験をすれば、貴族の横槍が入る可能性が高い。かと言って、ギルドで試験をすればディノイア家がギルドに恩恵を与えた形となり、帝国への離叛行為と見られる可能性があった。ディノイア家を堕とすため、貴族が皇帝に讒言する危険性が高い。

「私が…ディノイア家が受けた恩を清算するためと、予めに説明したらどうでしょうか?」

「恩……だと?」

「数年前の遭難で、私の救助と父母の遺体引き上げには、ギルドが関わったのではないですか?」

「………どうしてそう思った?」

「一時期、兄様が長く屋敷を空けていたと聞いています。その理由を使用人に尋ねたところ、ギルドとの遺体や船内荷物の引き渡し交渉で、出向いていたと教えてくれました」

 降参と言わんばかりに、アレクセイは苦笑した。

「手を貸してくれたのは、海賊ギルド「海精(セイレーン)の牙」だ」

「それでしたら機能をさらに限定して、船舶用の廉価版通信魔導器(コールブラスティア)でいいんじゃないですか? その試作機第一号で借りを返しましょう」

「船上か……特に厳しい環境だから、テストには最良だな」

 こうして概ねの方針は決まった。

 




 
 マリー・カウフマンの過去は明らかになっていませんが、帝都の下町のハンクスと互いに知っている様子なのと、下町を巡回している騎士のルブランと親しい様子から、帝都の下町出身なのではないかな…と妄想を膨らませた次第です。
 年齢的に若いこと、それでもなおギルドユニオンの中核であることから、幸福の市場の先代社長に能力を認められて、養子になったのかな…と考えた次第です。
 ハンクスの妻のジリと髪の色が同じことから、もしやと妄想を膨らませたり…
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