TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

50 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



ギルドの巣窟ダングレスト(利益なき経費の軽視)

 

 翌朝。

 ユーリらは、「仕事の関係で先に出る」というレイヴンからの事付けを宿屋の主人から聞いた。

 代わりに同行を願い出たのは、囚われていた市民の救出に一役買った、アイフリードであった。アイフリードの助言で、ユーリとフレンは普段着へ着替え、そしてダングレストの街に向かうことになった。

 

 黄昏色の空をした街、ダングレスト。

 帝都と同じ規模の広さの街と、それを支える結界魔導器(シルトブラスティア)に圧倒される中で、カロルは自慢げに街を紹介する。

 その時、突然街の中を警鐘が鳴り響いた。

「これは一体⁈」

「警鐘…魔物が襲って来たんだ…」

「およ、随分と凄いタイミングで来たんじゃなあい?」

 聞き覚えのある声が聞こえ、ユーリが視線を向けると、そこには弓を持ったレイヴンの姿があった。

 

 ケーブ・モッグ大森林。

 ダングレストを襲う魔物が通常より多く、魔物の出所であるケーブ・モッグ大森林を調べると言うレイヴンにユーリは同行した。 

 エステルが「街も森もほっとけない」と言ったことから、魔物への防衛で傷ついた人を癒すためにエステルが残り、その護衛としてリタ、フレン、アイフリードが残ることになった。そして嫌いな虫が多い場所であるから渋っていたものの、リタから虫除けを貰ったカロル、ジュディスと共に、レイヴンの案内でユーリはケーブ・モッグ大森林へ向かった。

 

  §

 

「なあ…おっさんは何者だ?」

 

 滞りなく目的を達成し、ケーブ・モッグからダングレストへの帰り道で、ユーリは徐に尋ねた。

「んー?」

魔導器(ブラスティア)の扱い、手慣れてるじゃねえか」

 凶暴化している魔物を避けつつ、ユーリらは森林の奥で見慣れぬ大型の魔導器(ブラスティア)を発見した。そしてその付近の裂け目から、エアルが勢いよく噴出していることにジュディスが気づき、試しにレイヴンが魔導器(ブラスティア)を止めた所、エアルの噴出は収まったのであった。

 魔導器(ブラスティア)を止めた手際の良さに、ユーリは益々レイヴンを胡散臭いと思った上での問いかけであった。

「いや何、大人の嗜みといったところね」

「そう言えば魔導器(ブラスティア)を止めた後、暫くの間おじさまの姿や見えなかったわね」

「そりゃおっさんだって仕事だから、色んなところへ知らせる義務があんのよ」

「もしかして、レイヴンは通信魔導器(コールブラスティア)持ってんの?」

 目を輝かせそう言うカロル。

「ん? ああ、廉価版だけどね」

「廉価版っつーても、そんなホイホイ持ってるものか?」

「人によるんじゃない? 私も持っているわよ」

「およ。ジュディスちゃん、後で番号教えてくんない?」

「ダメよ。父から無闇に教えるなって言われているんですもの」

 そんなやり取りをしつつ、一行はダングレストへと帰りついた。

 

 ダングレストにも結界があることから、街中へ魔物が入ることなく、魔物は無事に撃退できていた。

 魔物と戦った者や、ダングレストへ帰る途中で巻き込まれた者が怪我をしたことから、エステルが治癒魔法で治療を続けていた。

 そして、ちょうど治療を受けていた男の姿を見て、カロルはギョッとした表情を見せた。その様子を見たユーリが声を掛ける前に、治療を終えてエステルに礼を言った男が、カロルに話しかけて来た。

「カロル、帰って来てたのか?」

「父さん…怪我、大丈夫?」

「このお嬢さんのお陰でな。それより、またギルドを追い出されたって本当か?」

「…そろそろ別のギルドに移ろうと思ったし…」

 カロルの父は溜息を吐く。

「お前が自慢できるのは、渡り歩いたギルドの数だけだな…都合が悪くなったら直ぐに逃げる。その悪い癖はどうにかならんのか?」

「ち…違うよ! ちょっと前はそうだったかもしれないけど、今は…」

「お前は言い訳しかできないのか? そんな事を言う暇があったら少しでも…」

 父親の言葉が途中にも関わらず、カロルは口を噤んでその場から走り去ってしまった。カロルを追う事なく、男はユーリらの方に視線を向けた。

「…カロルがお世話になったみたいですね」

「正直カロルには助けてもらってるぜ」

「色々と教えてもらったりしました」

 カロルの父は驚きつつも、言葉の真意を探るような視線をユーリとエステルに向ける。

「お世辞…と言うわけではなさそうですね。そうですか、カロルが…」

「なあ、口出しし過ぎなんじゃないか?」

 ユーリの言葉を聞き、一瞬目を見開いた後に男は苦笑する。

「…3年前に家内を亡くしてから、どう接していいか分からないところがありまして」

「そうだったのですか…」

「ギルドに入って一人前。所属しているギルドの街への貢献度で価値が測られる。私と同じ肩身が狭い思いをさせたくないと思っての言葉ですが…」

「貴方はギルドに所属していないのかしら?」

「元々、街のインフラを統括していたギルドに所属していたのですが、先代が亡くなった時にギルドが分裂して…私は幅広い種類の魔導器(ブラスティア)を満遍なく対応できるのですが、特化したギルドに所属できるほどの技能を持っているわけではないので…」

「今は街の結界魔導器(シルトブラスティア)を担当してもらってるのよ」

 ジュディスの問いへに答えを補完するように、レイヴンはそう言った。

「え? 結界魔導器(シルトブラスティア)の整備を担当しているギルドはないのですか?」

「滅多に不調がある訳でもないし、普段は簡単な整備だけで割に合わないから、担当するギルドはできなかったのよねえ」

 フレンの問いにそう答えるレイヴンの言葉を聞き、リタが半ば喰ってかかる。

「はあ⁈ バカじゃない⁈ 魔導器(ブラスティア)に優劣をつけるなんて!」

「リタ……」

「…じゃなくて、何かあった時一番マズイもんでしょうが」

 ジュディスの呆れた表情を見て、リタは慌てて言い直す。

「慈善でギルドやってる訳じゃないからねえ…強要はできんのよ」

「ユーリ?」

 一人離れようとしているユーリに気づき、エステルが声をかけた。

「ちょいと散歩してくる。フレンと一緒に先に宿で待っててくれ」

 そう言い残し、ユーリは一人ダングレストの街中へと姿を消した。

 

 逃げるように立ち去ったカロルを追いかけたユーリは、街の人への聞き込みをして、数年前にできたダングレストの託児施設に辿り着いた。

 そこにいたカロルは、自身より年下に幼い子供達に様々な魔物の特徴と対処を説明し、内容をまとめた文章を清書させて文字を教えていた。座学の後は各自で繕い物、建物の修理、昼食準備をやらせつつ、カロルは子供らの間を行き来して指導をしていた。

「見掛けねえツラしてるな。おめえさん、そこで何してやがる?」

 カロルに声を掛けるタイミングを掴みかねているユーリに話しかけてきたのは、託児施設の様子を見に来ていたギルドユニオンの長、ドン・ホワイトホースであった。

 

「ドン・ホワイトホース…か」

 そう言い、ダングレストから帝都への旅路を進みながらユーリが呟く。

 カロルが子供達を教育していた託児施設で、ユーリはドンと出会した。直後に二人は子供らに見つかってしまい、子供らにせがまれてユーリはドンと手合わせをすることになった。

「凄かったわね…3人がかりでも敵わなかったもの」

「ジュディスの槍とユーリの剣を、それぞれ片手で受け止めたままで、僕の剣を歯で止められた時は流石に驚いたよ…」

 ドンが余所者と打ち合うとちょっとした騒ぎになって、他の仲間も集まって来た。その結果、興味を持ったジュディスとフレンを含めた3人で、ユーリはドンと対峙した。

 結果、ドンの圧勝で終わった。

 それでも善戦した方らしく、ドンに気に入られ、天を射る矢(アルトスク)に入らないかと勧誘されたりもしたのであった。

 その頃、魔法で治療した人たちの経過確認を終え、エステルは帰る決断をしたため、一行はダングレストを後にすることとなった。

 




 
 人魔戦争を回避したことから、カロルの父親は現在も生存している設定で、彼が身体を張ったお陰で結界は消失せずに被害が抑えられた感じです。
 ソフィアの研修を経て、カロルはダングレストの子供たちの教師役を勤めていますが、周囲の理解はあまり得られていないようです…
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