TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

51 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



別れた道(共通の敵でなくなれば離叛は不可避)

 

 見送りのカロルとダングレストで別れ、仕事があると言うレイヴンとはカプワ・トリムで別れ、そしてリタとジュディスとはハルルで別れた。

 エステルはリタとは定期的に手紙を送り合う事を約束し、名残惜しつつも別れたのであった。

 

 旅を始めてから半月、ユーリらはエルカバルゼへ帰還した。

 先に戻っていたソムラス隊長へ報告し、突然始まったエステルの護衛の旅を無事に終える事ができた。

「ユーリ、フレン。本当にありがとうございました」

 そう言い淑女の礼を取るエステルに対して、フレンとユーリは騎士の礼で返す。

「ユーリ、前にお願いされた名前を考えました。凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)と言うのはどうでしょうか?」

 

 凛々の明星。

 夜空に一際輝く星。

 その昔、大いなる災厄から世界を救った兄妹。妹の「満月の子(トリウィア)」は地上に残り、兄の「凛々の明星(ヴェスペリア)」は宙に昇り、世界を見護り続けていると伝えられている。

 

凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)…いいんじゃねえか。今度カロルに会った時、伝えておくよ」

 そう言うユーリに言葉に笑顔で応えて、エステルは帝都へと向かう馬車へと乗り込んだ。

 エステルを乗せた馬車を見送った後、フレンが尋ねる。

「ユーリ、さっきエステリーゼ様が言っていた名前は一体?」

「ああ。カロルがギルドを立ち上げるって言ってて、その名付けをお願いしたんだよ」

「カロルが…そうなんだね」

「で、俺もそのギルドに入る」

 時間が一瞬静止したような錯覚を、フレンは覚えた。

「俺は騎士を辞める。騎士団では、俺のやり方で俺が守りたいものは守れないからな」

 

 研修期間が終わって帝都に戻ったタイミングで、ユーリは騎士団を辞める事を配属予定であった小隊長に告げた。それで終わりかと思いきや、小隊長は明日に改めて隊長へ面会するように伝えた。

 そして翌日、ユーリは配属予定であった騎士団長直属部隊ことシュヴァーン隊の長、騎士団長の懐刀と名高いダミュロン隊長首席と面会する。ユーリが入った隊長執務室では、ダミュロンだけではなくキャナリ中隊長の姿もあった。

 片目を隠している墨色の前髪の奥、ダミュロンの鋭い翠の瞳がユーリを捉える。

「さて…騎士団を辞めたいとの話だったが、理由を聞かせてもらえないか?」

「ダミュロン、その前にちょっと良い?」

 ユーリが答える前にキャナリが口を挟む。

「一応伝えておこうと思って。今回のエステリーゼ様の件は『無かったこと』という形になっているわ。だから、貴方やフレン・シーフォに対するお咎めは一切無し。フレンの小隊長への昇格は確定事項で覆る事は無いわ。貴方がフレンの分の責任を、負っても負わなくてもね」

「…そうですか」

「その上で尋ねます。騎士団を辞めますか?」

「はい」

 キャナリの問いに対して、ユーリは躊躇いもなく肯定の意を示した。

「……わかったわ。とても残念だけど…」

「さて、子持ちとはいえ美女の誘いを断ったんだ。理由を聞かせてもらえないか?」

 寡黙で真面目と噂されるダミュロンから、ウェットの効いた言葉を聞いて半ば驚くも、キャナリの態度から珍しいものでは無いとユーリは理解した。

 そしてエステルに関する裏事情を明かしてまで引き止めようとした二人に対して、自分なりの礼儀を尽くしたいと思ったユーリは、フレン以外に告げなかった正直な理由を口にした。

「…騎士の立場では、俺は俺のやり方で大事なものを守れないと思ったからだ」

 フレンと違い、丁寧な言動で応対する器用さをユーリは備えていない。しかしそれ故に飾りのない言葉は真実味を帯びていたため、ダミュロンとキャナリはその言葉を聞いて納得するしかなかった。

「…それならば止めないが、一つ提案がある」

「提案?」

「我が隊の協力員になってもらえないか?」

「いやだから…騎士団を辞めるって…」

「協力員と言うのは、騎士団からの単発の依頼をする騎士以外の者だ。協力員の中には帝国市民権を持たぬ者、ギルドの者もいる。褒賞は依頼を受けた段階で半金、依頼成功時に残りの半金を渡すという流れだ」

「…依頼への拒否権は?」

「当然ある。さらにこちらを支給しよう。協力員を辞める時には返還が必要だがな」

 そう言って執務机に出したのは、ユーリの目にも高品質と分かる、それなり大きさの魔核が埋め込まれた武醒魔導器(ボーディブラスティア)であった。

「それとコレ。青年にはコレも渡しておこう」

 廉価版通信魔導器(コールブラスティア)に続いて、ついでと言わんばかりに出したのは廉価版収納魔導器(チェストブラスティア)であった。

「フレンは貴方が自身の分の責任を負って辞めたと、少なからず考えているわ。変な気遣いをされないためにも、形だけでも受けた方がいいんじゃないかしら?」

 ユーリにとって痛いところを、キャナリは遠慮なく突いてきた。実際に昨夜、その事をフレンに追求されて大喧嘩に発展し、少しばかり後ろめたい気持ちがあったのも事実であった。

「取り敢えず、お試しで簡単な依頼を一つ受けてみないか?」

 

 なし崩し的に簡単な依頼を受けたユーリ。

 彼の隣に若い軍用犬の姿があった。

 犬の名前はラピード。親衛隊の軍用犬の子供で、動物好きな姫君が飼いたいと名付けまでしたが、全く懐かなかったため里親を探していた最中であった。

「思ってたより緩い感じなんだが…」

 ユーリはラピードの顔の位置まで腰を落としてからそう言うと、ラピードは同意するように一声鳴いた。

 

 結局ユーリはシュヴァーン隊の協力員になった。とは言っても依頼は一ヶ月に一度くらいの頻度であった。

 従ってユーリは、下町で用心棒のような事をしたり、カロルと一緒に立ち上げたギルドで受けた仕事をこなしたりしていた。

 

 ギルド「凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)」の立ち上げは、ユーリがカロルに手紙を出してハルルで落ち合いそこで行ったが、偶然再会したジュディスも加わることとなった。

 

 義を持って事を成せ

 不義には罰を

 一人はギルドのために

 ギルドは一人のために

 

 ダングレストでユーリらと別れた後、カロルは「紅の流星群」から出てきたドンとアイフリードに出会した。カロルがユーリとギルドを立ち上げる事を伝えると、深刻な表情をしていた二人は一気に明るくなり、そのまま引き摺られる形で「天を射る重星」での酒宴に参加させられた。そしてオレンジジュースを飲む中で、ドンとアイフリードから教えてもらったのが「ユニオン誓約」であった。

 それを元にカロルが考え抜いた言葉が、ギルド「凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)」の掟となった。

 

  §

 

 カロルがユニオン誓約を教えてもらうより前に時間は遡る。

 

 ドンとアイフリードはダングレストの東にある酒場、紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)が直営する店である「紅の流星群」へと入る。

 闖入者に店内に居た常連と思われる傭兵たちが鋭い視線を向けるも、相手が誰か知るや否や呆然と黙り込んだ。一言も口を開く事なく、ドンは店の2階最奥の部屋の扉を開けた。バルコニーからダングレストの街外が見渡せる執務室に座る男に、ドンが話しかけた。

「話がある。バルボス」

 執務机に座る隻眼で左腕が義手の大男…バルボスがドンに視線を向けた。

 武器を構えようとした室内の護衛を制し、バルボスは退室を促す。護衛の部下たちは一瞬躊躇するも、その指示に従って退室し、室内はドン、アイフリード、バルボスの3人となった。

「陸に上がるとは、珍しいこともあるじゃねえか。アイフリード」

 そう言いつつバルボスは、引き出しから蒸留酒を取り出し、長机の方に移動する。勝手を知っているらしく、ドンは部屋の戸棚から人数分のグラスを出し、アイフリードは持参した酒の肴を長机に並べた。

 

「我らの剣は自由のため」

「我らの盾は友のため」

「我らの命は皆のため」

 

 誓約の言葉と共にグラスを掲げ、酒を口にする3人。

「剛嵐のバルボス。紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)のユニオンへの造反が確定した。同盟破棄を勧告する」

「……根拠は何だ? 帝国騎士団からの資材の横流しか? 奴らが回収した魔核(コア)を掻っ払ったことか? アレクセイのヤロウが巨大な兵装魔導器(ホブローブラスティア)を作る邪魔をしたまでよ」

「………」

「まさかフィアレンのガキへの嫌がらせに対してじゃねえよな? 一方的に手ぇ切りやがった制裁をしたまでだ」

「てめえ、高出力魔導器(ブラスティア)の開発に手ぇ出してるだろう? その矛先は何処だ?」

「…その情報源は盟友よりも信頼があるってえのか?」

「ウチの部下が命懸けで持ち帰った情報じゃ」

 今まで黙っていたアイフリードが、徐に口を開いた。

「血には血を、命には命を。海精(セイレーン)の牙は、紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)に対してそれ相応の制裁を、ギルドユニオンに要求する」

 暫くの静寂の後、バルボスの笑い声が響く。

「バルボス…」

「そう怖い声を出すな、アイフリード。おまえの部下は不運だったが、俺は関係ない」

「お主が取引していた帝国の手の者に、ウチの部下は殺されたんじゃぞ!」

「落ち着けアイフリード…ったく、サイファーも連れてくりゃあ良かったんだが…まあいい」

 今にも銃を引き抜こうとするアイフリードを抑えて、ドンはバルボスに向き合う。

「裏で帝国と手を結んで作った武器引っ提げて、帝国と全面戦争する気じゃねえよな?」

「……」

「魔物が増え凶暴化してきてやがる。無駄な戦力を割けば、ギルドが瓦解する危険性がある中で、帝国と事を構えるてぇのは看過できるもんじゃねえ」

 

 その時突然扉が開き、良質だが派手なドレスを纏った一人の女性が姿を現した。

「下に誰もいませんでしたので入らせていただきましたが、一体何が…」

「ちょうど良いミムラ。潮時だ」

 薄紫の長い髪の奥から切れ長の眼をバルボスに向け、ミムラは尋ねる。

「……それは了承と言う意味ですね」

 そう言いながらミムラは、足早にバルボスのそばに歩み寄った。

「同盟破棄、受け入れよう」

 バルボスがそう告げた直後、バルボスとミムラに周囲の足元に光の輪が浮かび上がる。

「バルボス⁈」

「ホワイトホース。俺の目的は変わっていない。俺から家族と片眼と片腕を奪った、クルノス14世への報復だ‼︎」

 怒りに燃える残された左眼の眼光を残し、バルボスはミムラが持つ転移魔導器(キネトブラスティア)でその場から姿を消したのであった。

 

「馬鹿野郎が……」

 




 
 ナイレン隊長は親衛隊長で頑張っていて、アレクセイは闇堕ちしていないし、ガリスタはお尋ね者の状態ですので、劇場版の悲劇は起きていません。従ってこう言う形でユーリは騎士団を離れることになり、ゲームの世界より一年早く「凛々の明星」が結成されることになりました。
 序盤の中ボスであるバルゴスですが、数十年前に帝国がダングレストを攻めてきた時には、ドンと防衛をしていた節を匂わせていますし、帝国評議会のラゴウは手を結びつつも塩対応となっています。おそらく元々はダングレストもギルドも大事にしていたのですが、それ以上に帝国を憎んでいたのではないかと…そしてレイヴンを通じて帝国と小康状態になったドンを見損なったのではないかと考えた訳です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。