TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



叛乱勃発(追い込まれれば蜂起するのは必至)

 

「夜空に瞬く凛々の明星の名にかけて、お仕事お引き受けします!」

 そう言いカロルは、依頼人から小包を受け取る。

「んじゃまあ、行きますか」

「そうね。じゃあ、バウルを呼ぶわ」

 ユーリの言葉に頷くや否や、ジュディスは耳を澄ませる様子でナギーグで何処かへ通信する。

 程なく空を泳ぐ鯨様の生き物が姿を現す。ジュディス曰く「竜」とのことで、ナギーグを通じて意思疎通するジュディスの友、バウルである。

 最初に会った時は「魔物だああっ!」と驚いていたカロルであった、今ではすっかり慣れていた。今もジュディスに続いて乗り、依頼の荷物を入れた大きい肩掛けバッグを前に抱えて持った。

「急ぎの荷物らしいから、ボクはジュディスと一緒にダングレストに向かうね」

「おう、俺もこっちも仕事を終えたら、ラピードと一緒に向かうから、何時もの宿屋で合流な」

 成長して戦えるようになった元軍犬のラピードの頭を撫でつつ、ユーリはそう言った。

「その後に魔物狩りね。リタが欲しがってた素材があるから助かるわ」

「ちょっとお、魔物の討伐依頼をこなすのが先だからね!」

 言いしつつジュディスとカロルは、バウルに乗って上空へと飛び上がっていった。

 

 ユーリがカロル、ジュディスとギルド凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)を立ち上げ、そして騎士団のシュヴァーン隊の協力員になって半年が経過した。

 凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)は「義を持ってことを成せ」をモットーに、困っている人を助ける「何でも屋」に近い仕事に落ち着いた。その中で比較的多いのは、街から街へ荷物を届けることであった。

 廉価版通信魔導器(コールブラスティア)の普及で、離れた街に住む者同士での連絡が少しずつ増えていった。その結果、離れた相手へ物を届けたいと望む者が増えてきたが、魔物蔓延る街の外を自由に歩き回れる者は少ない。今まではギルド幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)が物資の輸送のついでにやっていたが、優先業務では無いため荷の紛失や破損が多い状態であった。

 バウルのおかげで大きな荷物の輸送が容易なこともあり、カロルは「運送ギルドにする?」とか冗談半分で言っていたが、魔物討伐依頼や素材集め依頼も少なからず存在するため、現状維持となっている。

 旅に出る手間を考えて、ユーリは騎士団からの依頼も同時進行で受けることも多かった。今回も封蝋に騎士団の印璽が押されている手紙が、複数その懐にあった。

「ファリハイドに行って、それからヘリオードだったな。街道での魔物発生状況を偵察する…と。じゃあ行くか。ラピード」

「ワゥっ!」

 先日、戦闘訓練の稽古を母犬につけてもらった際、元の飼い主であるナイレン親衛隊長にから貰った武醒魔導器(ボーディブラスティア)を着けた尾を、ラピードは誇らしげに振る。

「フレンの奴も今度は中隊長になるらしいし、俺たちも負けてらんねえな」

 そう言いつつユーリは、ラピードと共に出発した。

 

  §

 

 豪奢な会議室。

 評議会の議員の証であるローブと帽子を纏った者達、騎士団の隊服を纏った者達が円卓を囲む中、一際豪奢な装飾品を纏った老人が机を叩いた。

「アレクセイめ! 今度は副団長の新設か……予算もここ最近はヤツの要求が通ってばかりではないかっ!」

 吐き捨てる様にそう言った老人に対して、狡猾そうな目を向けつつ別の評議員が尋ねる。

「カクターフ公、あの女が副団長になるのは決定事項なのでしょうか?」

「忌々しい事に評議会でも承認された。キャナリ・エングリス・ガデニアが中隊長に就任することは確定だ」

 豊満な体躯を押し込めた深緑の隊服姿の男が、苛立ちを隠せ無い様子で声を上げる。

「なぜだ! アレクセイもアレクセイだっ! 平民を取り立てるといっておきながら、平民出身の俺を差し置いて貴族女を重用するとは…ガデニア卿! エングリス卿! これはどう言う了見ですか⁈」

 キャナリの夫であるステルの腹違いの兄、ガデニア卿は鼻で笑いつつ口を開く。

「弟の婚姻は亡き父が推したこと。自分に言われても困りますなあ」

 平民相手と軽んじた態度を取るガデニア卿び怒りを覚え、顔を真っ赤にするグラダナ。

「妹は既に嫁いでいる故、我が手から離れてどうしようもできません。申し訳なく思います…平民ながらも貴族の部隊を束ねる手腕、グラダナ中隊長には感服しておりますので」

 一方でキャナリの兄であるフィアレンの殊勝な態度と言葉に気を良くし、グラダナの怒りは一気に鎮火した。

 支配欲が強く、強きに媚びへつらい、弱きを支配する傾向にあり、貴族らの傀儡に成り下がっていると言うのが、グラダナと言う男の評価。中隊長の地位も暴走しないように目に届く場所に置いているのに過ぎないのだが、わざわざその事をフィアレンは言うつもりは無かった。

「実力主義と言いつつも、結局子飼い贔屓じゃないか…お陰で僕も中隊長への昇格の話は無し。キャナリの後を継ぐ形で、フレン・シーフォが昇格だなんて…」

 薄紫の隊服を半ば胸を露出される形で着崩した青年が、怒りを抑えきれない様子でそう言った。

「中隊長になれなかったアレクサンダーを始めとした、皆様のご怒りはご尤も」

「姉上」

「おお、ミムラ嬢」

「今のこの状況は『本来あるべき姿』からかけ離れている。そうですよね?」

 ワインとグラスを載せたワゴンを押しつつ口を挟んできた藤色の長い髪の貴婦人、ミムラが高々にそう言う。

「ミムラ嬢……陛下は意見を変える気は?」

「ございませんね。次期皇帝はヨーデル・アルギロス・ヒュラッセイン。エステリーゼ姫は『副帝』とすると」

「それで我らの顔を立てたつもりか⁈」

「致し方あるまいな」

「帝国を正しく導く。それが評議会としての使命」

「騎士団をアレクセイの手から奪い返す」

「ガリスタ博士のおかげで、滞りなく準備は完了しています。この世界を『あるべき姿』に戻しましょう」

 そう言いつつミムラは、恍惚とした笑みを浮かべた。

 

  §

 

 帝都ザーフィアス。

 黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)の本部、一階ホール。そこから窓の外を眺め、貴族街と市民街で多くの人が行き来する様をユーリは眺めた。

「ずいぶん賑やかなもんだな…」

「式典が近いですから」

 ユーリの呟きに答えたのは顔見知りの、騎士団親衛隊の補佐官のクオマレであった。アレクセイ騎士団長からの使いということで、廉価版照明魔導器(ルクスブラスティア)の受け取りに来たらしい。

「式典って三日後じゃねえか?」

「今回はキャナリ中隊長の副団長への昇格だけではなくて、次期皇帝についての発表もあるとかで…」

 クオマレの言葉を聞き、ユーリは以前に一緒に旅をした、薄桃色の髪をしたお姫様を思い出していた。

「ユーリ。お待たせ。素材の納品終わったよ」

 依頼料が入った袋を大事に持ちつつ、カロルはジュディスを連れて駆け寄ってきた。

「おー、結構稼げたな」

 その時、ユーリのそばに居たラピートが、警戒するように耳と尻尾を立てた。

「どうした、ラピー…」

 

 次の瞬間、建物の外から光が一瞬差し込み、続いて爆音が鳴り響いた。

 窓ガラスが割れんばかり揺れ、地鳴りと共に地面が揺れる。

「な…何?」

 カロルが呟くのと同時に、ユーリは建物の外へ飛び出る。そして人々が指差す方向へ見やると、ちょうど騎士団本部の建物が崩れ落ちる所であった。

「くそっ‼︎」

 混乱して人が溢れている市民広場に飛び込もうとしたその時、ユーリの腕を掴む者がいた。

「クオマレ⁈ 離…」

「一度黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)に戻って下さい」

 そう言ったのち、聞こえるか聞こえないかの声でクオマレは囁く様に言った。

「隠し通路があるらしいです」

 

 黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)の本部は貴族街と市民街の間、貴族街の公園に隣接した場所にある。そして公園の一角に倉庫が作られており、本部の地下通路を通じて倉庫へ行くことができた。

 フェドロック会長の話によると、黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)の倉庫の隠し扉に、騎士団本部そして城内へ繋がる地下通路への出入り口があるとのことであった。

 ユーリらはその隠し扉から地下通路に向かって、下へと降りていた。

「用水路を利用して作られた隠し地下通路、前の会長の時に整備の仕事を受けた時、出入り口の上に建物を建てて、人の出入りを誤魔化す方法を提案したんだって」

「それを自分の組織の倉庫にするなんざ、ソフィアらしい考えだな…」

「え⁈ 前会長を知ってるの?」

「ん? ああ。あの人、一時期下町の水道魔導器(アクエブラスティア)の整備してたんだよ」

「え⁈ 商人じゃなかったの?」

「私とリタの父、ヘルメスとは師弟関係にあるわ」

「え…あのヘルメス博士って、あの魔導中継筐体(エアルコンテナ)のって…えぇ⁈ 二人とも知り合い⁈」

 驚き思わず声を上げるカロル。

「あら、カロルも知り合いなの?」

「…うん。ダングレストでギルド間の仕事仲介所を作って、そこに託児施設も作ってくれたんだ」

「託児施設って、カロルが居たあそこか?」

「そうだよ。孤児や働いてる人の子供の面倒を見る施設なんだけど、そこで年下の子らに色々な事を教える仕事を、ドンはボクにくれたんだ」

 その言葉を聞き、ユーリはその施設でドンと鉢合わせた事を思い出した。わざわざ見に来るほど気にかけるということは、ドン自身もソフィアとそれなりに交流があることをユーリは理解した。

 その時、ラピードの歩む脚が止まる。

「っ!」

 殺気を感じたユーリは剣を鞘から抜き、相手の剣撃を受け止めた。

「ユーリ⁈」

「フレンか⁈ 無事だったのか…」

 相手が相手の正体に気付き、矛を収めるユーリとフレン。

「一体何が…」

 ユーリは安堵の息を吐いつつ尋ねた時、フレンの背後に顔面蒼白となっているエステルと金髪碧眼の少年、そして親衛隊のナイレン隊長が居る事に気が付いた。

 

 騎士団本部方面に行くことは取り止め、フレンやエステルらを連れ、黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)の本部へとユーリらは戻った。

 フレンとエステル、ナイレンに同行していた少年は、皇帝候補のヨーデルと名乗った。

「皇帝候補が二人とも城から出たとは、一体何があった?」

「…反乱が起きた。皇帝陛下は弑され…騎士団本部は爆破された」

 フレンの言葉を聞き、ユーリらは言葉を失う。

「おいおいおい…親衛隊はどうしたんだよ?」

「反騎士団派の貴族が反乱の中核でな。親衛隊は貴族出身者で構成されている。面目ない話だが、反乱の同調者が城内警邏担当の時に狙われた」

 軽く言いつつもナイレンの右手は、怒りで小刻みに震えていた。

「騎士団最強のアレクセイ騎士団長様は?」

 アレクセイの言葉を聞き、エステルはビクッと身体を震わせる。

「エステル?」

「アレクセイは…私とエステルと一緒にいました…」

 意を決して口を開いたのは、ヨーデルであった。

「陛下への挨拶に伺った時、すでに陛下は隻眼の男によって殺害されていました。そして、側に控えていた親衛隊の騎士たちに襲われました。アレクセイは私たちを守ってくれましたが、隙をついた者が私に斬りかかり、それをクローム特別諮問官が庇って…」

 そこで言葉を止めるヨーデル。それに対してエステルは震えつつも徐に口を開いた。

「ミムラに…私の侍女の彼女に促されて、クロームに治癒魔法を掛けたのです…そうしたら…」

 そこでエステルは顔を覆って蹲ってしまったため、ヨーデルが話を引き継ぐ。

「クロームは魔物に変貌し、無差別に襲いかかってきました。それは余りにも強大な魔物で、アレクセイですら抑えるのがやっとで…」

「俺とフレンが駆けつけた時、団長閣下から受けた命は、お二人を連れて脱出することだった」

 誰が敵味方か分からない状態、しかも強大な魔物が襲いかかる混戦状態では、それが賢明な判断であったことは間違いない。しかし他に手立ては無かったとはいえ、アレクセイを残して撤退する決断をしたことに対して、フレンは自身への怒りを隠しきれない様子であった。

「ヨーデル殿下とエステリーゼ様を連れて、ナイレン隊長と共に城を出た所で、遠目で騎士団本部が崩壊するのが見えた」

「それで城の地下通路に逃れたと」

 ユーリの言葉にフレンは頷いた。

 





 グラダナは劇場版で出てきたアレクセイの腰巾着で亡くなったナイレンを侮辱した騎士から拝借しました。
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