TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



帝都からの脱出(マッチポンプは下衆の専売特許)

 

 帝都を脱出する方法を模索するために出たカロルとジュディスと入れ違いに、城での情報を集めてきた黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)フェドロック会長が戻ってきた。

「王城の戦闘行為は終わったみたいね」

「それではアレクセイが…」

「評議会議員のカクターフ公爵が王城で発表した内容は『皇帝陛下の死』、『次期皇帝候補二人の失踪』、『アレクセイ騎士団長の失踪』の三つ」

「……え?」

 クルノス14世と自分たち二人のことはともかく、アレクセイの状況に疑問を抱き思わず声を上げるエステル。

「…アレクセイがクルノス14世を暗殺し、私たち二人を誘拐した上で行方を眩ましたと、そう言っているのではないですか?」

 ヨーデルの言葉に肯くフェドロック会長を見て、エステルはショックのあまり口をおさえる。

「カクターフ公をトップとした反騎士団…というより反アレクセイ勢力の貴族が、王城を掌握していると見ていいでしょう。他の評議員もカクターフ公を支持する者が増えている状態ね」

「騎士団は?」

「本部爆破でキャナリ中隊長を含む詰めていた50名以上の騎士の消息は不明。グラダナを騎士団長、キュモールを副団長にするとカクターフ公が発表したわ。全て予定通りなんでしょう」

「帝国の上層部を全て乗っ取られたのか…」

「ンな状態で皇帝候補連れてノコノコ出て行ったら、とっ捕まって隠蔽されて終了だな」

 フレンの言葉を聞き、ユーリはそう言い舌打ちをした。

「カクターフ公はヨーデル殿下とエステリーゼ姫の行方を追っているわ。どうする? 潜伏するか脱出するか。脱出するなら時間が経つにつれて難しくなるわ」

 夫であるナイレンに対して、フェドロック会長は今後の方針について尋ねる。

「グラダナがカクターフ側となると、貴族部隊は敵と看做す必要がある」

「厳しい言い方になるけど、混成部隊の方も貴族隊員の中に内通者がいる可能性もあるわ」

「……信頼できそうなのは、フレン隊、キャナリ隊を引き継いだヒスーム隊、騎士団長直属のシュヴァーン隊か」

「フレン隊は、隊を引き継ぐソディアの隊長昇格に伴う巡礼中で、明日に帰還予定です」

 フレンの言葉を聞き、ナイレンは眉間に皺を寄せる。

「ヒスームは騎士団本部に待機。シュヴァーン隊のダミュロン隊長首席とステル副隊長は単独任務中で明後日に帰還予定。隊員は市街地の警邏担当以外は本部待機だったはず。本部待機の者は、生死不明故に期待できんな…」

「ユーリ、ダミュロン隊長と連絡は取れる?」

「ここで取らないほうがいい。騎士団には盗聴器がある」

「ザーフィアス内では傍聴される危険性があります」

 ナイレンとフェドロック会長からの指摘を受けて、ユーリは廉価版通信魔導器を使用するのを止めた。

 状況を再認識した上で、ナイレンは静かに口を開く。

「帝都を脱出して、ダミュロンとステル、フレン隊と合流する以外に方法はないだろう」

 ナイレンがそう決断したその時、カロルとジュディスが帰ってきた。

 二人が連れて来たのは、幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)のマリー・カウフマン社長であった。

 

 ユーリはフードマントを羽織った者と二人で、人目を避けるように帝都の外壁近くの茂みを縫って移動していた。

「確かガキん時に使った抜け道は…」

 その時、もう一人が隠れるように促す。

 ラピードに外壁を探るよう促した後、ユーリらは近くに茂みに身を潜めた。

 程なく薄紫色の隊服を身につけた騎士が二人姿を現した。

「それにしてもキュモール様が副団長とは、我らも鼻が高い」

「無駄話する前に警戒しろ。エステリーゼ様とヨーデル様の身柄を確保せよとにお達しだ」

 その時、別の騎士が二人の方へ走り寄ってきた。

「小隊長。キュモール副団長から、街外への門へ向かうように命令がありました」

「どうした? 門を閉じて警護するだけだろう? そんなに人数は…」

「ルブラン小隊長を筆頭としたシュヴァーン隊に妨害されています。『騎士団の役職の任命権は皇帝にある。グラダナ、キュモールは認められない故、ダミュロン隊長の命令しか従えない』と」

「これだから平民が混ざった部隊は…」

「それから幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)のカウフマンが『商隊を街の外へ出さなければ騎士団との取引を打ち切る』と…」

 その言葉を聞いた直後、ラピードが騎士らに見つからないようにユーリらの元に戻ってきた。

「ワフっ」

「抜け道は見つかったようだな…よくやったなラピード」

「向こうも動いたようだし、こっちも行くぞ」

 ユーリ言葉に同行者は静かに頷く。直後、ユーリらはラピードの案内に従って外壁の方へ駆け出した。

「帝都の封鎖は一時的だと説明すれば…ん? なんだ?」

「ほっとけ……いや…あれは⁈」

 犬連れの一人のフードから見える金髪を見て、騎士は声を上げる。

「ヨーデル殿下⁈」

 直後、ユーリらは外壁を覆う茂みの奥へと姿を消す。騎士らが追いかけるとそこには、人一人が抜けられる穴が外壁に空いていた。

「街の外に逃げたぞ!」

「キュモール隊長…じゃなかった。副団長に知らせろ!」

 街から出たユーリは同行者と共に、背後で聞こえる騎士らの会話の内容を聞き笑い合った。

「上手く釣り上げたな」

「ああ…これでカウフマン社長の方はなんとかなるだろう」

 フードの奥に見える姿はヨーデルと同じ金髪碧眼だが、精悍そうなその顔はフレンのものであった。

 

 騎士に見つからないように身を隠しつつ、帝都が見えない場所まで移動でき頃には、夕闇が濃くなっていた。

「追っ手は巻いたが、この後どうする?」

「補給で何処かに寄りたいけど、エルカバルゼはソムラス隊長から貴族部隊の隊長格が引き継いだと聞いてる」

「考えたくねえが、ソムラス隊長がヘリオードの執政代行になったのも、準備の一つだったかもしれねえな…」

「デイドン砦に向かおう。行商人から物資を購入できるだろうし」

「そこは真っ先に押さえられてるんじゃねえか? あと、補給なら心配ない」

 そう言いユーリはラピードを呼び、脇に下げて入り荷物袋から一つの魔導器(ブラスティア)を取り出して、武醒魔導器(ボーディブラスティア)に接続する。

「帝都を出る前にカウフマンから買ったから、二人1週間分の食料と回復アイテムはあるぞ」

 そう言う空間の手を突っ込み、中から瓶入りの水をユーリは取り出した。

「軽装だと思ってたけど、廉価版収納魔導器(コンテナブラスティア)をユーリは持ってたんだね。だったらデイドン砦を避けて、クオイの森へ向かおう」

 そう言いフレンは、水分補給を終えたユーリから水を受け取り、緊張続きで渇いていた喉を潤した。

 

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