TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

56 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



亡命(手札の種子は見つかるまで待ち続ける)

 

 ユーリらがハルルの街に到着したのは、翌日の昼前であった。

「ユーリ! フレン! 大丈夫⁈」

 先に着いていたカロルが駆け寄り、心配そうな視線を疲労困憊という状態となっているユーリとフレンに向けた。

「怪我は大したことない……クオイの森に待ち伏せがあって…」

「カクターフらが雇ったんだろう。かなり手強かった」

 待ち伏せていた男はザギと名乗り、一言でいうと粘着質な戦闘狂であった。

 嫌な記憶はさっさと忘れるに限ると、ユーリは姿が見えない者たちについて尋ねた。

 カロルの説明によると、共に幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の隊商の紛れて帝都を脱出した後、ナイレンとヨーデルはそのままカウフマンらと共にペルレストに向かったという。

「ナイレン隊長の故郷で、守備隊長はナイレン隊長の元部下なんだって」

「なるほどな。で、エステルとジュディは?」

「私はここよ」

 噂をしていたジュディス本人が姿を現す。

「これからについて話したいのだけど、ちょっといいかしら?」

 

 ジュディスに連れられた先はハルルの宿屋で、そこにはリタとクリティア族の男、そしてどこか見覚えのある赤髪の女性がいた。

「エステリーゼ様? その髪の色は……」

 フレンの言葉で、エステルが髪を赤くした姿であるとユーリは気づいた。

「変装よ。フェドロック会長がくれた髪の色を変える薬。ヨーデル殿下もカウフマン会長と同じ色にして、彼女の親族という形でここまでたどり着いたのよ」

「なるほどな…で、リタと一緒にいるのは?」

「私とリタの父。ヘルメス博士よ」

「騎士が捕まえようとしたらしくて、ハルルまで逃げてきたんだって」

「リタが出入り口を塞いだから、少しは時間を稼げると思うが…」

 カロルに続いて、ヘルメスが苦笑しつつそう言う。

「あー腹立つ! 問答無用で襲ってくるから、何も持ち出せなかったわ!」

「相変わらず過激だな…」

「ユーリ、フレン。怪我を…今治療を…」

 その時、ユーリらが少し怪我を負っているのに気づき、エステルが駆け寄り治癒魔法を掛けようとする。しかし、何かを思い出した様に怯え、その手を止めてしまった。

 それを見たユーリは、徐に剣を抜いて自身の右腕を斬り裂いた。

「ユーリ⁈」

 即座に治癒魔法をかけて、エステルはその怪我を含めて治した。暖かな光が霧散すると、傷が全て消えたユーリが笑みを浮かべてエステルの方を見ていた。

「…な。大丈夫だろう?」

 ユーリの言葉に涙を拭きつつエステルは頷く。

 続いてフレンもまた手を差し出す。直後、エステルの治癒魔法が優しく傷を治した。

「クローヌが…私の治癒術で魔物になって……ミムラが私を『世界の毒』って…私は……」

「…エステリーゼ様。クローム特別諮問官は、人間ではないことはご存知ですか?」

 突然のヘルメスの言葉を聞き、皆は驚き声を失う。

「それは…どう言う……」

「彼女は始祖の隷長(エンテレケイア)と言う種族で、クリティア族の姿に人化していました。これは当然、陛下もご承知でした。おそらくその魔物は元の姿ではないかと…」

「でも…どうして元の姿に? 暴れて襲ってきたのはどうして…」

「……何も資料も無いここでは、考察することはできません。追っ手もいますし、急ぎ今後の方針を考えましょう」

「だったらさ、ダングレストに行くにはどう?」

「カクターフの力が及びにくく、情報収集もできると言うわけか。カロルの案は悪くないね」

 カロルの提案にフレンが真っ先に賛成する。

「カプワ・ノールから船ですね」

「ちょっと待って、さっき行商人の人から聞いたのだけど港は封鎖されているらしいわ」

「それはマジかよジュディ……」

「確かに私たちが逃げる手を封じるには効果覿面だわ」

「それよりどうするんの?」

「流石に泳いでは……無理だろうな」

 ユーリの言葉を最後に、各々は考え込むように押し黙った。

「ところでユーリ。ダミュロン隊長への連絡は?」

「やべえ! 忘れてた!」

 フレンからの冷たい視線を受けつつ、廉価版通信魔導器(コールブラスティア)を起動させると、ダミュロンからのメッセージが届いていた。

「へえ…文章で届くんだね」

 空中に浮かび上がる光の文字を見つつ、カロルが驚いた様子でそう言う。

「ああ、声を文字に変えて送るんだと」

「ダミュロン隊長からは?」

「ナイレン隊長からの連絡で事態は把握済み。ファリハイドから船でトルビキア大陸へ行き、ダングレストに向かえと。ドンには話をつけたらしい」

「流石はダミュロン隊長首席だ」

 手放しで褒めるフレンに対して、リタは懐疑的な視線を向ける。

「盲目的に信じてるけど大丈夫なの?」

「ファリハイドからそんな船便があるって、ボク初めて聞いたよ」

「私は聞いたことがあるわ。ユウマンジュへの不定期便があって、たまにトルビキア大陸の西海岸まで行くって話だから、航路はあるみたいね」

 方針が決まり、一行はファリハイドに向かう事になった。

 

 §

 

 ファリハイド。

 地方貴族の勢力が強い街でもあり、実質の領主格の貴族であるアトマイス家はダミュロンの実家であった。

 そしてダミュロンの父であるアトマイス卿を筆頭とした地方貴族は、カクターフに反抗する旨を表明していた。

「へえ……ダミュロン隊長の親父さんも、思い切った表明を出したな」

「ダミュロンに似て真面目な方だ。前々から帝都貴族の腐敗気味に嫌気がさしていたらしい」

 ユーリの軽口にも律儀に答えたのは、キャナリの腹心でファリハイドの守備隊隊長のゲアモンであった。

「ゲアモン隊長、それで船の方は?」

「ああ。ダミュロンからアトマイス卿に伝達済みで、船の手配はできている。準備に手間取っているが、二日後の出航は予定通りだ」

「となると明日の丸一日は自由って訳か」

「私はフレンと一緒にアトマイス卿にご挨拶する予定です」

「だったらエステル、その後に図書館に来てくれる? 明日はパパと一緒にいく予定だから、ちょっと協力して欲しいの」

「リタが図書館に籠るのだったら、私は少し街の外へ行っていいかしら?」

「狩りにでも行くのか、ジュディ?」

 一緒に狩りに行きたいのか前のめりで尋ねるユーリに、ジュディスは首を左右に振って否定する。

「ちょっとバウルに呼ばれてるの。少し話してくるわ」

「そうか。わかった」

「じゃあボクはフェドロック会長から預かった手紙を届けに行くよ」

 ファリハイドには貴族教育交流会に参加しているナイレンの娘とキャナリの子供らがいる。その子達に手紙を届けに行くわけなのだが、キャナリが生死不明であることを黙秘できるか、その不安を感じているらしくカロルの表情が暗い。それを察したラピードが、カロルの隣に座って一声鳴いた。

「ラピードも行くってさ。任せていいか、カロル先生?」

「うん! 任せて」

「フレンはどうする?」

「僕はゲアモン隊長と今後の打ち合わせをするから、騎士団の詰め所に行くよ。ユーリは?」

「ん? そうだな…俺は旅用品の買い出しに行きますかね」

 

 翌日。

 買い出しを終えたユーリは、図書館へと足を運んだ。

 古文書など重要な書籍が収納されている地下書庫へ行くと、エステルを前にリタとヘルメスが議論を続けていた。

「何かわかったか?」

「うっさい! 今考えをまとめて…ってユーリ?」

 そう言いリタは、振り向くと同時に構築した術式を霧散させた。

「……何かあったらファイヤーボールを打ち込む癖はやめなさい」

 苦笑しつつそう言い、ヘルメスはユーリの近くの椅子に座るように促した。

「エステリーゼ様が武醒魔導器(ボーディブラスティア)無しで魔法を行使できる理由。それは、直接エアルを操作できる能力故であろう」

「私たちが探していた『リゾマータの公式』よ。それをエステルは持っているみたいなの」

「だが、ほとんどの文献はアスピオに置いてきてしまってね。『リゾマータの公式』を構築するまでの経緯についての古文書は、このファイリハイドにあると聞いた訳だが…」

「なかったのか?」

「原本はソフィア様に差し上げたそうだ。その彼女が解読して抜粋した情報を、過去にもらったわけだが…」

「それが全部アスピオにあるのよ。で、他に情報が残ってないか探しているわけ。当面知りたいのは、エステルの持つ『リゾマータの公式』が、実際のところどんな影響を与えるかどうかと言うこと」

始祖の隷長(エンテレケイア)…だっけ。それに対して悪影響があるのは間違いないと」

 ユーリの言葉を聞き、今まで黙っていたエステルの肩が震える。

「状況証拠からすると可能性はあるわ。でも情報が少なすぎて…だから、私も同行するわ。他の場所に行けば新しい情報が得られるかもしれないから」

 その言葉を聞き、弾かれたようにエステルはリタを真っ直ぐな視線で見つめた。

「それはダメです! リタを巻き込むのは…」

 そう言いエステルが首を左右に振るごとに、染めた色を元に戻した桃色の髪が激しく動く。

「何言ってんのよ。どうせ私も狙われてんのよ。それに何かあった時とか、私が側に居ればすぐに対応できるじゃない」

「リタ……」

「今エステルが不安に思っているのは、貴女の持つ力の正体が分からないから。だから、私がそれを解明する。何か問題があったらそれも解決する。私は……その…友達…だから……」

 視線を背けるも最後まで言い切ったリタの耳は真っ赤になっていた。

「はい! 頼りになる友達がいて…リタが友達で私は幸せです!」

「バッ…バカね……そ、そんなことは、ハッキリと言うもんじゃ…」

 そう言い戯れあうエステルとリタを見やりつつ、ユーリはヘルメスに話しかける。

「アンタはどうするんだ?」

「私は引き続き古文書から『リゾマータの公式』の究明を進めたいと思う。アトマイス卿ができる限り資料を取り寄せてくれると言ってくれてね。ここで腰を据えて調べようと思う」

「そうか」

「多分ジュディスも一緒に行くから、私の方で分かったことは通信魔導器で伝えるわ」

「私の方でも何か分かったら、ジュディスを介して伝えるとしよう」

 リタにそう言ったのちヘルメスは、ユーリとエステルの方へ向き直した。

「娘二人を頼む」

「任せろ!」

「私の方こそ、よろしくお願いします」

 

 翌日、ファリハイドの東にある海岸へ向かうと、アトマイス卿が手配した船の姿があった。

「久しぶりじゃのう! 会いたかったぞ、ユーリ‼︎」

 船に乗っていたのは、海賊ギルド「海精(セイレーン)の牙」の首領、アイフリードであった。そしてそこに同行していたのは…

「いやー災難だったねぇ。ドンから言われて迎えにきたわ〜」

 ギルドユニオンの幹部、レイヴンであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。