TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。




広がる混乱(非常時でも手筈通りに動ける者は稀)

 

 ユーリら一行は、船で東に向けて進んでいく。海上の雲を見てカロルがぽつりと呟く。

「あの雲…バウルに似てるね」

「バウルって…仲間?」

「そうだよ」

 自身にとって初めて聞く名前で、レイヴンがカロルに尋ねる。

「そういえばファリハイドの時も様子を見に行ってたが、調子が悪いのか?」

「調子はいいわけじゃ無いけど…怪我や病気ってわけでは無いわ。今、成長期に入ったみたいで…休まないといけないからテムザに一度戻ってもらったの」

「そうか…飛んでエステルだけでも先に、ダングレストへ送ってもらえればと思ったんだが…」

 ジュディスとユーリの会話を聞き、疑問符を貼り付けた表情でレイヴンは尋ねる。

「成長期? 飛ぶ? 魔物でも飼ってんの?」

「バウルはバウルよ。私の大切な友達。魔物と一緒にしないでくださる? お・じ・さ・ま」

 そう言い笑みを浮かべつつ、ジュディスは槍先をレイヴンに首筋に当てる。

「……ジュディスちゃん。目がマジになってるよ…ゴメン、ごめんって…」

 救いを求めてレイヴンは側にラピードに視線を向けるが、誇り高き元軍用犬は我関せずと欠伸を一つした。

 

 無事にトルビキア大陸に着いたユーリらは、海精(セイレーン)の牙の拠点のカプワ・トリムに戻ると言うアイフリードと別れ、レイヴンの案内で東に向かって進み始めた。

「ちょいっと寄り道いいかな?」

「ん、どうした⁈」

「ここらで合流予定なんだが…おっかしいなあ」

 そう言いレイヴンは道を外れて歩き始める。道なき道を入っている様だが、よく見ると草を踏み固めた人一人が通る細道があり、その先に屋敷の姿が見えた。

 程なく屋敷から少女が2人飛び出す。直後、屋敷の中から激しい怒号と共に一部の窓が吹っ飛んだりした。そして屋敷から飛び出してきた2人の少女を見るや否や、レイヴンが声をかけた。

「ゴーシュ、ドロワット」

 声が聞こえて、2人はレイヴンの方を見る。

「お前は天を射る矢(アルトスク)のNo.2のレイヴン⁈」

「とにかくここから逃げるわん」

 2人に促される形で、一行はその場から元の道へ戻った。

「レイヴン、この2人は?」

海凶(リヴァイアサン)の爪の首領、イエガーの側近なんだが…」

「えええ⁈ 暗殺ギルドの⁈」

 レイヴンの回答を聞き驚くカロル。それに意を介することなく、レイヴンは赤髪ツインテールの娘、ゴーシュに尋ねる。

「イエガーはどうした? ここで合流予定だったはずだが…」

「それが……キャナリ姐に会うって先行してしまった」

 その言葉を聞き、レイヴンは舌打ちをする。

「でも海凶(リヴァイアサン)の爪は当分動けない様にした」

「そうそう。イエガー様、次の頭目を派閥違いの2人指名を指名して、今絶賛仲間割れ中ですわん」

「…そうか……で、2人はどうする?」

 レイヴンに尋ねられ、ゴーシュとドロワットは互いに顔を合わせる。

「イエガー様と合流する」

「イエガー様の手助けをしますわん」

 結局2人は情報を集めるため、共にダングレストへ向かうことになった。

「なあ、おっさん。そのイエガーって奴と合流するつもりだったのか?」

「まあな…っつーか、順番間違えたな〜こりゃあ…」

 ユーリに軽く答えた後、あとはほとんど聞き取れない独り言をレイヴンはこぼした。

 

 ユーリらは、ダングレストに到着した。

 街中の様子はいつもと変わらない様子であったがユニオン本部へ向かうと中は殺伐とした雰囲気となっていた。

「帝都の情報が伝わってるんでしょうか?」

「廉価版通信魔導器(コールブラスティア)の普及で、どこの情報もあっという間に広がるからねえ…」

「レイヴン! てめえ迎え一つにどれだけ時間掛けてんだぁ⁈」

 怒鳴り声と共に、レイヴンの頭頂部に拳骨が落ちた。

「ドン・ホワイトホース!」

 痛みで頭を抱えてしゃがみ込むレイヴンを一瞥したのち、ドン・ホワイトホースはユーリらに視線を向けた。

「ようやく来たか…てめえン所のギルドも、少し見ねえ間に大所帯になったなあ」

「言っとくが、この2人は違うぞ」

 そう言いユーリは右隣にいるゴーシュとドロワットを指差す。

「ほう…イエガーの所のガキじゃねえか」

「じいさん…イエガーの野郎、先走りやがった。何か情報ある?」

 痛みから立ち直ったレイヴンが尋ねる。

「知らねえな。ここも情報が錯綜しててなあ、何せカプワ・トリムと連絡が取れねえ。偵察にも向かわせたが、誰一人戻ってきやしねえ。で、てめえが帰るのを待ってた訳だ」

「……ンな所に行けっつーの? 相変わらず人使いの荒いじいさんだこと…」

 レイヴンをもう一発殴ろうとしたドンに対して、ユーリが尋ねる。

「なあ、それ俺らも同行していいか?」

「行ってくれるなら好都合だが」

「……ヤバそうだけど、本当に行くの?」

「あら、面白そうじゃない」

「ワフっ!」

 カロルは尻込みする一方で、ジュディスは乗り気の様子。ラピードもやる気に満ちて尾を左右にブンブン振っていた。

「で、お前らはどうする?」

 ギルドメンバーではない面々へユーリが尋ねる。

「僕もヘリオードのソムラス隊長と会いたいのだが…エステリーゼ様の護衛が…」

「ユーリ、フレン。私も一緒に連れて行ってもらえないでしょうか?」

「エステリーゼ様、それはいけません!」

「もし怪我人がいた時、私の力があれば助けることができます。自分の身を守れる程度には剣術も魔法も学びました」

「しかし…」

「ああーもう…エステルが行くなら私も行くし、それで問題ないでしょう?」

 リタが畳み掛ける様にそう言い、結局全員で行くことになった。

「で、お前らはどうする?」

「ダングレストに残って情報を集める」

「ここまでありがとですわん」

 そう言いゴーシュとドロワットと別れ、ユーリらはカプワ・トリムに向かってダングレストを後にした。

 

 フレンとラピード、カロル、ジュディスはヘリオードへ、ユーリは残りのエステル、リタ、レイヴンと共にカプワ・トリムに向かうこととなった。

 

 そしてカプワ・トリムに到着したユーリたちが見たのは…

 

「街中なのに、何で魔物が居るんだ⁈」

 その時、一体の魔物がエステルに向かって襲いかかってきた。ユーリが間に入って剣で攻撃を受け止め、反撃に転じようとしたその時…

「ヴァリアブルトリガー!」

 間に割って入るように地面に銃弾が撃ち込まれた。

「止めるのだ、サイファー!」

「アイフリード⁈」

 そう言い間に入って来た女性を見て、驚きその名を呼ぶユーリ。

「ユーリ、待って欲しいのじゃ! ここに居る魔物は全て…人間だったのじゃ!」

「な……⁈」

「ウチは海から入った時にはすでに魔物が溢れておった。合流した時、まだ無事じゃったサイファーから教えてもらったのじゃ…でも…」

「目の前でサイファーが魔物になって、証明されたってわけね」

 アイフリードの乱入以降、頭を抱えてその場に蹲る魔物を見つつそう言うレイヴンにアイフリードは頷いた。

「ユーリ…何か光が見えませんか?」

「光?」

 エステルの指摘通り、周辺から光が立ち昇り辺りを漂っていた。

「これは高濃度エアル⁈ そうか、エステルが無意識に守っているから私たちは平気だけど、これを浴びた街の人たちは…」

「魔物になってしまったと言うわけか…」

「結界がおかしいわ! エアルが中から外に出ないようにしている… 結界魔導器(シルトブラスティア)が原因かも!」

 リタの仮説に従い、そのままでは危険とアイフリードも同行する形で、ユーリらは結界魔導器(シルトブラスティア)へと向かった。

「先客が居るみたいだぜ」

 結界魔導器(シルトブラスティア)を操作する人影を見て、ユーリが呟く。この状況を生み出した者と見做し、レイヴンはその者に向かって矢を放った。

「時雨!」

「っ⁈」

 飛び退き攻撃を避けたその者の顔を見て、レイヴンは驚きその名を呼ぶ。

「ソフィア⁈」

 緋色の瞳でレイヴンを一瞥するや否や、ソフィアは踵返してその場から立ち去る。

「おい! 待て!」

「ユーリ! おっさん! 結界魔導器(シルトブラスティア)が先‼︎」

 リタに止められ、ユーリらはソフィアを追うのを断念する。エステルの周囲から離れられない以上、皆で固まって移動する必要がある。そして、結界をどうにかするのが先決なのは間違いないわけで…

「ユーリ! 魔物が集まって来たのじゃ‼︎」

 アイフリードの声で周囲に視線を向けると、元人間の魔物たちはユーリらの行動を妨害する様に、結界魔導器(シルトブラスティア)周辺に集まり始めるのが見えた。

 その時、頭上から静かな詠唱が聞こえた。

 聞き覚えのあるのか、声の主を探すようにレイヴンは辺りに視線を向ける。

「ソフィア……」

 やがて声の主を突き止めたのか、ある一点に視線を固定させてその名を呼ぶレイヴン。ユーリもつられて視線を向けると、レビテーションで浮かび上がり、拳大の結晶を掲げて術式を構築しているソフィアの姿が見えた。

 彼女の視線の先にあるのは、魔物に変えられた街の人たち…

「なっ⁈」

 ソフィアの標的にユーリが気づいた直後、静かに魔法が放たれた。

「トリウィア・エアルドレイン」

 空中に出現した無数の闇の槍が降り注ぐ。狙いは違う事なく、魔物と化した者達の胸を貫き地面に縫い止めた。

 一瞬の出来事で呆然とするユーリ。エステルの視界を奪う形で目を塞いでいたレイヴンも、言葉を失っていた。

「これでいいわ! 結界は元に戻った」

 リタの言葉で正気に立ち戻った時には、すでにソフィアの姿はなかった。

「そっちは……」

「リタっち…そのまま回れ右」

「おっさん、その呼び方は…って言うか、終わったの? 街の人たちは?」

「……取り敢えず灯台へ向かうのじゃ。無事だった者はそこに集まっておる」

 アイフリードに促され、エステルとリタに地面に縫い止められた無数の屍を見せぬ様に、ユーリらは展望台の方へと向かった。 

 

「確かに、海凶(リヴァイアサン)の爪の首領、イエガーだったわ。なんか『ガデニア卿』とか『キャナリ』とか断片的に聞こえて…激しく言い争ってたみたいだったわよ」

「その後に両者で戦闘を始めたんだが…例の魔物が突然二人に襲いかかってきてよ」

 数少ない生き残りが、カプワ・トリムに何があったのか話してくれた。

 曰く、突然結界が消えて魔物が街へ侵入。その魔物を〈咬み裂くもの〉と呼ぶ男と、イエガーが対峙したとの事であった。

「魔物……奴らは〈咬み裂くもの〉と読んでたが、そいつに首輪つけてて、それが操ってるんじゃないかって、天を射る矢(アルトスク)の若首領が必死になって壊した後だったな。襲われた内の貴族っぽい男の方は、喰い殺されて…」

「気がついたら光が立ち昇ってきて、どうしたもんかと途方にくれてたら、幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の副社長に促されてここに逃げ込んで来てからは、わからねえ」

 聞き取りを終えたレイヴンは、横たわった一人の男…傷だらけの天を射る矢(アルトスク)の若首領に必死に治癒魔法を掛けるエステルに声を掛ける。

「嬢ちゃん…もういい。もういいんだ」

「エステル、もうやめて…」

「でも…ここに来た時は息があったんです!」

「エステル…わかってんだろう? もう死んでる…」

 はっきりそう告げたユーリの言葉を聞き、エステルは術式の構築を止める。そして天色の瞳から涙をポロポロと流した。

「わ…私……救えなかった…」

 蹲るエステルを慰めるように、リタは静かに体を抱きしめた。

「ユーリ、ウチはここに残って皆を弔う。船でヘリオードまで送るから、カルボクラムへ向かってくれぬか?」

「カルボクラム?」

「例の魔物、〈咬み裂くもの〉はそっちへ向かったらしい」

「フレン達にも連絡した。ヘリオードで合流しよう」

 ヘリオードの騎士団の詰所に、レイヴンは通信魔導器(コールブラスティア)で連絡をしていた。

「エステルとリタはどうする? ここに残っても…」

「行きます…行かせてください」

「また 結界魔導器(シルトブラスティア)に何かあったら、私以外に対処できないでしょう?」

 この街の出来事でショックを受けているにも関わらず、気丈にそう言う二人に一つ頷き、ユーリらはヘリオードに向かう事になった。

 

 アイフリードの部下の手で送られ、ヘリオードでユーリらはフレン達と合流した。そして皆でカルボクラムへ向かおうとしたのを、レイヴンが待ったを掛けた。

 レイヴン曰く、ドンに連絡を取った時に尋ねたところ、ここ数日で傭兵ギルドの多くがダングレストを離れていることが判明した。それを聞いたレイヴンは、手薄なダングレストを叩かれる可能性を考えたのだ。

 フレンがヘリオードの守備隊であるソムラス隊の半数を連れてカルボクラムへ向かうこととなり、ユーリらはダングレストに戻ることになった。

 

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