TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



紅の絆傭兵団(野心持ちの悪役というレッテル)

 

 ユーリらが到着した時、ダングレストの街中の至る所で戦闘が発生していた。

「マジかよ……」

「こりゃまずいわね…青年、おっさんちょっとヤロウ共に指示出してくるわ」

 そう言い残しレイヴンは離脱して、防衛するギルド員の指揮に向かう。一方でエステルは、怪我をしている人が運び込まれた建物を見つけて駆け込もうとする。それを見たユーリとジュディスは頷き合い、ジュディスが護衛のために後を追った。

「ナンっ‼︎」

 カロルの声が聞こえた方へ向くと、壁に凭れ掛かる様に倒れている少女がいた。

 少女に追撃しようとする傭兵の一人にユーリは蒼破刃を放ち、もう一人をラピードが瞬迅犬で飛びかかり沈黙させた隙に、カロルは駆け寄り活心エイドスタンプで回復させた。

「ナン! ナン‼︎」

「カロル……」

「何があったの⁈」

紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)が…攻撃を仕掛けてきた…」

「ドンや天を射る矢(アルトスク)は?」

「街を魔物が襲ってきて…ドンや天を射る矢(アルトスク)の人たちのほとんどが街を出た途端に、外から街の中に入れなくなって…」

「俺たちは入れたよな」

「エステルがいたお陰よ。結界もエアルで効果を発するから、無意識に私たちが入れる様に操作してくれたんでしょう」

 エステルのお陰で助かってばかりだが、無意識でエアル操作する頻度が上がっている事に、リタは少し危機感を覚えていた。

「それでドンは?」

「街への侵入路を探してみるって。私たち魔狩りの剣は街に居たから…ドンの指示で結界魔導器(シルトブラスティア)に向かおうとしたんだけど…」

紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)が攻撃を仕掛けたと」

「ボスと師匠が 結界魔導器(シルトブラスティア)に向かう事になって、皆と 紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)を抑えてる間に混戦になって」

 その言葉にカロルはハッとなり、結界魔導器(シルトブラスティア)の方を見る。

「父さん…」

 その小さな呟きをユーリは聞き逃さなかった。

 

「牙狼撃!」

「落破スパイダーウェブ!」

ζxψ=φ(フィー)!」

 進路妨害してくる傭兵を沈め、動きを妨害し、薙ぎ払い、ユーリ達は結界魔導器(シルトブラスティア)へと向かう。程なく、ダングレストを覆う結界の色が変化した。

「結界が元に戻った!」

 いつもと同じ見慣れた色に変わり、カロルは安堵する。しかし…

 

 結界魔導器(シルトブラスティア)にしがみつくように制御盤を操作していたのは、腹部から背にかけて身を赤黒く染めたカロルの父であった。

 

「クリントさんたちが…バルボスを抑えてその隙に何とか…」

「喋るな!」

 ユーリは手持ちの最後のライフボトルを流し込む。

 その脇でカロルは、泣きながら何度も活心エイドスタンプで回復させようとするが、傷は深い上に、受けてから時間が経過していることから術の効きが悪く、回復よりダメージの方が上回っていた。

「ラピード! エステルを呼んで来てくれ‼︎」

 一声鳴いた後、ラピードは来た道を戻って行った。

「何よコレ……街中にエアルを充満させようとしてたの⁈ カプワ・ノールと同じことをしようとしていた⁉︎」

「まだ直っていない…時間…稼ぎしか……後を頼……」

 引き継いで結界魔導器(シルトブラスティア)を操作していたリタの言葉を聞き、声を振り絞りそう言い血混じりの咳をする。

「父さん!」

「…カロル……もういい…」

「でも……」

「いい…仲間じゃないか……良いギルドを…作ったな…」

「ユーリ!」

 息を切らせ、ラピードの案内でエステルとジュディスが飛び込んでくる。

「エステル頼む!」

「はい!」

 カロルに続いて、エステルはハートレスサークルを重ねがけしていく。カプワ・トリムに続いて何もできない不甲斐なさに、ユーリは震える拳を必死に抑えた。

 その時、ラピードがユーリの袖を噛んで引っ張り、戦闘音が鳴り響く先を見据えて激しく吠えた。

「…加勢に行く。ここを任せていいか?」

「一人で大丈夫?」

「止めてもジュディはついてくるだろう? ラピード、エステル達の護衛を頼む」

「ワウゥ!」

 ラピードの同意が得られ、ユーリはジュディスと共に先へと進んだ。

 

 奥の開けたところで、魔狩りの剣のティソンが倒れ、クリントが大剣を突き刺し体勢を無理やり支えていた。

 その先に居たのは、天を射る矢(アルトスク)大首領(ドン)ホワイトホース、そして 紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)の首領バルボスであった。

「思ったより早く来たな。ホワイトホース」

「てめえの小細工で、久々に地下通路を使ったぜ…あの地下から取り戻したこの街を傷つけるとは、思い切ったことをしたなぁ」

「取り戻した…な……オレは喪ったがな。帝国に対して何の落とし前もなく、無かったことにして今更融和とは…納得できるとでも思ったのか⁈」

 そう言いバルボスは義手で喪った眼を指して、歪な笑顔を向けた。

「バルボス…」

「奪われたまま、潰そうとも、喰い破ろうともしねえ…腑抜けたヤロウからギルドユニオンの大首領の座を奪おうとして、何が悪い⁈」

「なあ……アンタはギルドユニオンの大首領になって、何がやりたいんだ?」

 突然口を挟んできた事に、バルボスは不快感を顕にした視線をユーリに向けてきた。

「怒りや憎しみをぶち撒けるために、帝都とガチでやり合う手駒欲しさに権力が欲しいだけじゃねえのか⁈」

 バルボスが収まらぬ怒りの矛先を無差別に向けるため、ギルドの連中を巻き込もうとしているのだとユーリは感じた。そして、ギルド員たちを護るために大首領に就いているドンと真逆だとユーリは思った。

「アンタはドンの庇護を受けておいて、その権力が欲しいと力を付けた。感謝して恩返しをするため、ドンを支える力をつけたいと奮闘するウチの首領とはえらい違いだな…」

「…何が言いてぇんだ⁈」

「アンタは、帝国のクソ貴族と同じだってことだよ。皆まで言わせんなよな」

「…お前は若い頃のドン・ホワイトホースに似ている…そっくりだ…」

「ゾッとしねえ話だな」

「お前はいずれ世界に大きな敵を作る…コイツのように…そして世界に喰い潰される…」

 

 直後、何かの爆発音が鳴り響く。

「ユーリっ!」

 緊迫した声でジュディスが上空を指す。その先には、結界魔導器(シルトブラスティア)がグラリと傾き、こちらに向かってゆっくりと倒れてきていた。

「あぶねえっ‼︎」

 慌ててその場から立ち去り、倒壊する結界魔導器(シルトブラスティア)を避けるユーリとジュディス。クリントも倒れたティソンを抱えて慌てて回避に移った。

 震動と土煙が落ち着いた先、ユーリが信じられないものを見た。

「おいおい…嘘だろう……」

 地面に倒れる直前に、結界魔導器(シルトブラスティア)を支えたのは、ドンとバルボスだった。

「「うおおぉぉあああああっ!!」」

 直後、二人は倒れた結界魔導器(シルトブラスティア)を共に押し上げ、元の位置にまで戻すと言う離れ業をしてのけた。

「……化け物ね…」

「ああ…確か化け物だ…」

 ユーリとジュディスが共に言い合った直後、バルボスがドンの右腕を切り落とした。

「てんめえ! 何を…」

「ユーリ、待って‼︎」

 バルゴスに斬りかかろうとしたユーリを制して、ジュディスは切り飛ばされたドンの腕を指差した。腕はグネグネと形を変え、光の粒子を内包して色を黒や紫へと目まぐるしく変色し始めている。

結界魔導器(シルトブラスティア)から高濃度のエアルが出ていたはず。それに直接触れた影響で…魔物化しかかっているわ」

 高濃度エアルの侵食部位をバルボスが切り捨てたことで、ドンは難を脱した様子であった。しかしバルボスの方は…

 もはや人の言葉を発することなく、歪に形を変えて、やがて衣服の名残の切れ端を付けた魔物へ変貌した。

「ちょっとちょっと、どうなってんの⁈」

 そう言い駆けつけてきたレイヴンは、ドンを引きずって魔物から距離をとりつつ、風属性治癒魔法のヒールウィンドを掛けて応急処置をしていた。

「おっさん、詳しい話は後だ……あの魔物を倒すの、協力してくんねえか?」

 バルボスはダングレストを救うための行動をして、ドンを救って、その末に魔物化してしまった。

 正直ユーリは混乱していた。

 しかし、今すべきことの選択だけは間違えたくなかった。

 

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