pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
魔物と化したバルボスを倒し、
「制御盤の術式が元に戻ったら反応する爆発物が、台座に仕掛けてあったのよ。倒れて物理的に壊れたら、どうしようもなかったわ…」
「今は大丈夫なのか?」
「
ユーリの問いにレイヴンが答えた直後、苛立ったようにリタは机を叩いた。
「何が被害最小限よっ!! 治療を中断して…カロルのお父さん…助けられなかったのよ…」
一同の間に沈黙が流れた。
今この場にいないカロルは父の遺骸から離れず、エステルはそんなカロルの側に居続けていた。守れなかったことに対して、ユーリは自身への怒りを止めることができなかった。
「青年。フレンちゃんから連絡はあった?」
空気を切り変えるような軽い声で、レイヴンが尋ねる。
「フレン隊と合流できてカルボクラムに駆けつけたが、被害は甚大。住民はヘリオードへ避難したんだとよ」
「〈咬み裂くモノ〉とか言う魔物は?」
「フレン隊に従軍していたアスピオの魔導士が機転を効かせて、カルボクラムの結界を逆結界に組み替えて、街の中へ閉じ込めてるらしい」
「倒すほどの戦力は裂けないから、とりあえず放置するしかないのね」
「おっさん。こんなところで油売ってていいの?」
少し調子を取り戻したリタがレイヴンに尋ねる。
「ドンは高濃度エアルの後遺症だから、寝かしとくしかないみたいだし、当面の指示は出し終えたからねえ…ただ、今後どう動くか考えるとしても、情報が不足してんのよ…って、青年?」
突然席を立ってユーリに、レイヴンは話掛ける。
「ちょっとカロル先生とエステルの様子見てくる。ウチの首領なんでね」
カロルの家に向かい扉をノックすると、中からエステルが姿を現した。
「ユーリ…」
「エステル、カロルは?」
「先ほど出て行きました」
「……そっか。これ。ジュディから」
そう言いユーリは家に中に入って、それぞれの好物のすき焼きと鍋焼きうどんが入った小鍋を一つずつ、食卓の上に並べた。
「今日は色々ありすぎて、食べてないだろう?」
「はい……ありがとうございます」
ユーリに促され、エステルは好物の鍋焼きうどんを口にする。出来立てを持ってきてくれたようで、まだ温かかった。
身体はかなり空腹を覚えていた様子で、完食するまで然程時間は掛からなかった。
「カロルは…まだ気持ちの整理どころか、実感が追いついていないのかもしれません。唯一の肉親を亡くした直後は…現実感が無くて…少しずつ喪失感が押し寄せるものです」
「親を亡くしたことがあるのか?」
「父はほとんど記憶にありません。母はまだ子供の頃に…ユーリは?」
「俺が赤ん坊の時に…顔も覚えていない」
「そう…ですか…独りで頑張ってきたんですね」
「俺の場合は下町のみんなもいたからな」
「私も周りの人たちが色々と助けてくれて…ソフィア先生も…」
「この前の旅の課題を出した先生か?」
「はい…そしてカプワ・ノールで見かけたのも…」
その言葉を聞き、ユーリはレイヴンが「ソフィア」と呼んだ女性を思い出す。そして魔物と化したカプワ・ノールの住民を、彼女が放った魔法が瞬時に串刺しにした光景を…
「……不思議なもんだな…皆あの人を知ってんだな」
「ユーリも?」
「カロルも、ジュディも、リタも、フレンもな。名を呼んだってことは、おっさんも知ってるみたいだな」
「……今回のクーデターと関係しているのでしょうか?」
「さあな…ところで…」
強引に話題を切り上げ、ユーリはエステルに視線を向ける。
「俺が来た時、何か見ていたみたいだが…」
「これですか?」
そう言ってエステルが見せたのは、彼女の髪の色の花を模った髪飾りであった。
「母の形見なんです。以前に皆と旅に出てからはすっかり忘れていたのですが…」
「忘れていた?」
「昔は寂しい時とか、自分を励ます時によく見ていたんです…」
そこで言葉を切り、エステルは髪飾りをユーリに差し出す。
「預かってくれませんか?」
「構わないが…いいのか?」
「持っていたら気持ちがめげそうになった時、それに頼ってしまいそうだから…私は…強くならないと…」
「今でも充分強いと思うぞ」
「違うんです…あの時…治癒魔法を中断して、勝手に防御魔法を発動してしまったんです」
「
「でも…ダングレストに入る時も…カプワ・ノールの時も、無意識に力を使っていて…私の意思に関係なく使ってしまって、もしそれで誰かを傷つけたら…」
「そんときは俺が止めてやるよ」
エステルがユーリの方へ向くと、紫水晶の光が灯った黒い瞳が、エステルの天色の瞳を見据えていた。
「ユーリ…」
「とにかくこれは預かっておく。エステルが自分を見つめ直すとき、なんで生まれてきたのか思い出すために、必要な物だろう?」
そう言いユーリは、エステルから髪飾りを受け取った。
「はい…ありがとうございます。ユーリ」
しばらく待っても戻る気配が無いカロルを探しに、ユーリはダングレストの街を歩き回った。
程なく、路地の奥で座り込んでいるカロルの姿を見つけた。
「カロル」
「…ユーリ?」
「ちょっとくらいの間だったら、何も見なかった、聞かなかったことにしてもいいぜ」
「……何…それ?」
「色々思うことがあるんだろう?」
一つ息を吐いたのを契機に、カロルは鳶色の瞳を潤ませた。
「みんなさぁ…虫が良すぎるんだよ…いつもは父さんの仕事を…父さんを見下していたのに…でも、どれだけ大事かってボクが説明しても…誰も聞き入れてくれなくってさ…」
「………」
「ドンは『そういう事はひっそり胸に秘めておくもんだ』と言ってたけど…誰かに認めてもらうためにやってるんじゃないって事はわかってる。父さんが街や皆を守るためにやってきた事だって…でも……死んじゃう前にみんなに分かって欲しかった‼︎」
「カロル…」
「ボクは…何も出来なかった…」
「ンな事ねえだろう? 出来る事をしたじゃねえか」
「守れなかったら何の意味も無い! ユーリみたいに強くて何でもできる人間には、ボクの気持ちはわかりっこない! ボクなんかに…ギルドのボスなんか無理だったんだよ…」
「じゃあ辞めるか? お前にとって
「もう意味が無いんだよ! 一流のギルドを作って、ドンの役に立って、みんなに認めてもらえれば父さんだって…でも、もう父さんは居ないんだ…」
「……お前の親父は何を守って死んだ?
「………」
「ちょっといい?」
背後から声が聞こえ、振り返るとそこには魔狩りの剣のナンの姿があった。カロルと話をしたいと言うナンに場所を譲り、ユーリは少し離れた場所で様子を見ることにした。
「……あんたに、謝らなきゃいけないことがある。あなたのお父さんを…守り切ることができなかった」
「別にそれはナンの責任じゃ…」
「ドンから魔狩りの剣が受けた仕事。私たちでは
「ナン……」
「カロル…酷だけど自分の力だけで生きていかなきゃいけない」
「そんなこと、わかってるよ…」
「だから…魔狩りの剣に入らない? 事情を話して私が頼めばきっと、ボスはもう一度入れてくれると思う。だから…」
「ちょいっとそれは困るな。ウチのギルドの首領の引き抜きは勘弁したほしいところだ」
突然口を挟んできたユーリに対して、ナンは厳しい視線を向ける。
「
「俺はお遊びでやってねえよ。今までだって依頼を失敗したことはない。そうだろう? カロル先生」
そう言いユーリは、弱気な事を言ったにも関わらず、信頼を込めた視線をカロルに向けた。ユーリが自身を必要としてくれる事は、カロルにも充分理解することができた。そしてカロルの脳裏に、父の言葉が蘇った。
“いい…仲間じゃないか……良いギルドを…作ったな…”
「そうだね…『義を持って事を成せ』。それで僕たちは今までやってきたんだ」
「…やってきたって、簡単なつまらない仕事しか受けてないでしょう?」
「ナンから見たらそうだと思うけど、依頼人にとってはどの仕事も大事なことだし、それに優劣をつけずにちゃんと依頼をこなしたい。今までも、そしてこれからも」
そう言いカロルは、真摯な視線をナンに向けた。
「それにさ…父さんが褒めてくれたんだ。いいギルドだって。だからボクは
そう言い切ったカロルを一瞥したのち、迷いを吹っ切るようにナンは立ち上がった。
「わかった。もう誘わない。でも決めた事、今度こそは最後までやり遂げなさいよ」
「夜空に瞬く凛々の明星の名にかけて」
そう言うカロルの顔は、急に大人びたようにユーリには見えた。
インフラは儲け度外視で維持しなければならない物ですから、赤字覚悟で公的にやる必要があります。ギルドユニオンの自由さが裏目に出たのが、カプワ•トリムやダングレストの悲劇に繋がりました。
バルゴスの反乱のイベントがかなり姿を変えて発生した感じです。
ドンの負傷でハリーはダングレストから動けなくなるわけで…