TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

6 / 100
 
 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始から25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



アイフリード(海賊ギルドの女首領の興味)

 

 帝国から独立した組織であるギルド。

 数十年前の帝国による大規模な弾圧があった時、本拠地のダングレストが騎士団によって制圧されそうになった。その時、中心的な役割を担っていたギルド「天を射る矢(アルトスク)」の頭目であるドン・ホワイトホースが唱えた「ユニオン誓約」をもとに団結し、ダングレストの奪還を成功させた。

 こうして独立を死守した時に生まれたのが、ギルドの連合組合である「ユニオン」であった。そしてギルド・ユニオンの中核を成しているギルドの一つが、「幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)」である。

 

 ソフィアは海を渡り、その幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の拠点があるカプワ・トリムに滞在していた。

 

 魔導中継筐体(エアルコンテナ)の説明のため、アレクセイとヘルメスは王城へ行くことになった。それと同時にソフィアは、船舶用の廉価版通信魔導器(コールブラスティア)について交渉するため、海精(セイレーン)の牙の首領と直に会うことを提案した。

 海精(セイレーン)の牙の本拠は、別大陸にあるカプワ・トリム。ギルドユニオンの本拠であるダングレストに近く、ギルドの影響が強いことから危険だとアレクセイは反対したが、帝国とギルドへの説明に時間差が生じる事で、伝聞等の広まりで誤った情報が互いに伝わる危険性を避けたかった。何よりソフィアは、直に救助してくれた礼を伝えたいと考えていた。

 結局、幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の社長のカウフマンが、自身の拠点もカプワ・トリムにあるため影響力を持っていることから、全面的にバックアップすると約束したこともあり、最後には渋々承諾するに至った。

 こうして、幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の隊商に加わって、ソフィアはカプワ・トリムへ向かう事になった。

 移動時で魔物が出た時は狩りに参加して、休憩時にはカウフマン親子と契約に関する打ち合わせを重ねた。帝都周辺のいつもの狩場から離れ、普段では手に入らない素材を得ることができ、ソフィアにとってはそれなりに楽しい旅路となった。

 船で海峡を渡り、カプワ・トリムに着いてから、別大陸での急用が入ったカウフマンと分かれた。海精(セイレーン)の牙はカプワ・トリムを拠点としていることから、カウフマンの娘のマリーが、面会の仲介をすることとなった。

 

 そしてカプワ・トリムに滞在してから3日後、ソフィアはマリーと共に海精(セイレーン)の牙の首領、アイフリードと面会することになった。

 マリーに案内され、指定された建物へ向かうと、体格の良い精悍な男性が居た。海精(セイレーン)の牙の幹部と名乗る壮年の男性に対して、ソフィアは淑女の礼をする。

 最初にソフィアは、3年前の自身の救助と両親の遺体引き上げに対して、深い謝意の言葉を告げた。

 続けて廉価版通信魔導器(コールブラスティア)の試験運用について切り出そうとした時、海精(セイレーン)の牙の幹部は慌ててソフィアの言葉を止めた。

「ちょいと待て、待ったっ! 確認してもいいか? あんたがソフィア・ディノイア自身である事は間違い無いんだな? 書状を持ってきた代理の使者ではなくで」

「はい。先程の名乗りの通りですが」

幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の名にかけて、マリー・カウフマンが保証するわ」

 マリーの言葉を聞くも、俄かに信じられない様子で幹部は頭を掻く。

「帝国貴族のディノイア家のご令嬢が、ギルドである俺らのところに、わざわざ礼を言いに来た。結界で守られた帝都を出て、危険な旅路を通って」

幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の隊商に加えていただきましたから、そこまで危険ではなかったです。まあ、帝都近辺よりも魔物は強かったですけど」

「……魔物の強さがわかるのか?」

「はい。実際戦いましたので」

「戦ったって…」

「本当の話よ。うちの護衛も腕を褒めてたわ」

 同行しているマリーの言葉を聞き、幹部は考え込む。

幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)のマリーが言うから法螺では無いと言うことか…それにしても……船を助けられなかった賠償目的で来たかと思いきや…まさか本当の意味で礼を言いに来たとは…」

「助けて貰って賠償を請求するって…ギルドから見た帝国貴族は、そんな腐った人間ってことなんですね…」

 幹部の言葉を聞き、呆れた表情でソフィアはマリーに話しかける。

「ソフィア様の方が稀だと思いますよ。契約書を作るだの、一方的に要求を突きつけんじゃなくて、妥協点を図るために話し合いをするとか」

「契約書? 幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)はこの嬢ちゃんと何か商売するのか?」

「それもあって私も同行したのよ」

「はい。我が一族からの御礼でもあるのですが…」

「面白そうな話じゃな。私も混ぜてもらうぞ」

 そう言い金髪を二つのおさげに纏めた女性が姿を現した。

「サイファーだけに、面白い話を独占させたくは無いからのう。それにそちらが礼を見せた以上、こちらも礼を尽くさねば、義に反することになる」

 幹部の男性の名を呼び捨てにし、女性はソフィアの方を改めて向いた。

「ウチが首領のアイフリードじゃ」

「……え? アイフリードって……あちらの男性では…」

「対外的には俺が出ることが多いからな…今回は貴族絡みのクレームだと思ったからな」

 そう言いサイファーは、特に隠すようなものでは無いと、慌てた様子のマリーに言外に伝えた。

 

 最初は帝都貴族は信用できないと警戒されたが、直に礼を言いにきたソフィアをアイフリードは気に入ってからは、話は驚くほどスムーズに進んだ。

 船から陸地へいつでも通信できる通信魔導器(コールブラスティア)は、緊急事態が発生した時を考えると非常に有用だと、アイフリードは二つ返事で了承したのであった。

 

 ソフィアは帝都の屋敷に帰還した。

 アレクセイも既に帰宅しており、久しぶりに共に夕食を取りつつ、互いの首尾について報告した。

 アスピオからの報告もあり、アレクセイはすんなりと皇帝と会うことができた。アレクセイは、ギルド・ユニオンへの借りを返すため、また船舶の動力魔導器専用の通信機の実験台になってもらうため、機能を限定した廉価版通信魔導器(コールブラスティア)を提供することを説明した。安全性が確認でき次第騎士団の所有船舶全てに設置する予定であること、応用の利く魔導中継筐体(エアルコンテナ)の製造法をアスピオに提供することを条件に、皇帝からの了承を得ることができた。

 ソフィアもまた、海精(セイレーン)の牙の首領のアイフリードが、保有する船舶の駆動魔導器(セロスブラスティア)に接続する形で、廉価版通信魔導器(コールブラスティア)の試験運用する事を了承した事、幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)のマリー・カウフマンと契約書の概案を作成した事を伝えた。

「これがその概案の写しです。今回の件で、マリーさんは次期社長に確定だそうです。今後の付き合いも考えて、定期的に文通をすることになりました」

「そうか…ご苦労だったな」

「いいえ…兄様、迷惑を掛けてしまってごめんなさい。色々とありがとうございました」

「構わんさ。いつもの事だ」

 アレクセイはそう言って表情を緩め、ソフィアから書類を受け取った。

「…海精(セイレーン)の牙ですが、私自身が赴いたことで、相手の心象が良かったみたいです。賠償を要求されるのではないかと、最初は警戒されましたが…」

「賠償?」

「ギルドから見た帝国貴族は、救助をして助けたとしても、後で賠償請求する類の人間だそうです。そんな中で、本当によく私を助けてくれたものだと思いました」

 その言葉を聞き、アレクセイは盛大に顔を顰めた。

「嘆かわしいが…そう言う類の帝国貴族が多いのも現実だ。相手の善意につけ込み、利用して、切り捨てるような…非常に不愉快であるがな」

「………アレクセイ…兄様」

「ん?」

「兄様は……そのままの兄様でいてくださいね」

「ん? ああ……だが、急にどうした?」

 アレクセイの追求を、ソフィアは笑顔でかわした。

 

 海賊ギルド「海精(セイレーン)の牙」。

 女海賊のアイフリードと副官のサイファー以下、統率された船員を率いたギルド。

 ゲームの世界では15年程先の未来で、護衛をしていた貴族を皆殺しにして姿を消し、ギルドに汚点を残した悪名を被る事になる。

 その真実は、追い込まれて闇堕ちしたアレクセイが画策した人体実験の末、船の搭乗員でアイフリードとサイファー以外の者が全て、魔物に変えられた結果であった。

 深傷を負ったアイフリードを救うため、船ごと魔物を港に入れるのを防ぐためにサイファーは、魔物と化した護衛対象だった貴族と自身の部下を全て殺害したのであった。

 アレクセイによって利用され、切り捨てられた結果の悲劇である。

 

 もう一つ、気がかりなことがある。

 魔導器(ブラスティア)の師匠であるヘルメス、アスピオへ入る許可が降りるのは、少なくとも5年以上先のはずであった。ところが、ソフィアの存在により既にアスピオを出入りしている上に、魔導中継筐体(エアルコンテナ)の発明により中心的な研究者となろうとしていた。彼の故郷近くに研究所を建設することも内定しており、その着工と同時にヘルメスは、テムザに戻る予定になっている。

 

 天才ヘルメス。

 ゲームの世界では10年程先の未来で、彼は人工魔核と、高出力を誇るヘルメス式魔導器(ブラスティア)を開発した。

 このヘルメス式魔導器(ブラスティア)は、とんでもなくエアルを消費する代物である上、量産が可能であったことから、エアルのバランスを一気に崩す元凶となってしまった。

 それが、複数の街を壊滅させる甚大な被害を齎す、人魔戦争を引き起こすこととなる。そしてヘルメスは己が罪の意識に苦しみながら、人魔戦争に巻き込まれて命を落とした。

 

 既に、自身が知っているゲームの設定から、かけ離れた事態が起き始めている。

 その先の未来では、悲劇が回避されるのか、それともより大きな悲劇が起きるのか…

 

「……でも今更、立ち止まる事は出来ない…」

 

 寝室の窓越しに、少しずつ色を変えていく黎明の東の空、細長い残月を一瞥したのち、ソフィアは深く目を閉じたのであった。

 





 魔導中継筐体についての補足
 小説「竜使いの沈黙」から、ヘルメスを含む魔導器を扱う学者は、魔核を操作盤で操作することに固執している様子でした。しかしゲームの世界で、筐体技師のシシリーの発明を見る限りでは、筐体でかなりの自由度が得られる様子が見られました。そこで、魔核の術式の根本を変えることなく、外付け機関で改変できるのではないかと考えました。
 続けて魔導器の仕組みについて妄想を膨らませると、1) エアルの吸収、2) エアルの蓄積、3) 目的に応じた属性エネルギーへの転換、4) エネルギーの放出量の調整、5) 発熱や冷却への対処などの恒常性の維持、6) 目的としている現象の顕現、これらを全て魔核で補っているのかなと考えた次第です。
 そして魔導中継筐体は転換する属性エネルギーを一種類に絞り込んで、2)〜5)を代替する装置と言う感じです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。