TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



ミムラとフィアレン(仲間が捕まるのは鉄板)

 

 攻撃を受けて、クローネスは飛行が困難となり、デズエール大陸の砂漠へと落下した。

 砂地が衝撃を吸収した上、クローネスは自分を犠牲にしつつも街を庇ったらしく、住民は振り落とされることなく無事であった。

「何がどうなって……」

 エステルを抱えて地面に伏していたユーリは、頭を振りつつ立ち上がる。エステルも気を失っていなかったらしく自力で立ち上がる。そして…

「……あ…」

 街の外に何かを見つけて凝視するや否や、慌てて立ち上がり下へと降りていった。

「おい、エステル。待て!」

 エステルはミョルゾを出て砂漠を進むも途中で立ち止まり、合流した仲間と共にユーリは追いつくことができた。

「エステル、一体…」

「ミムラが……」

 そう言うエステルの視線の先には、場違いな豪奢なドレスに身を包み、薄紫の髪を結い上げた女性の姿があった。

「エステリーゼ様。ご無事で何よりです。お迎えにあがりました」

 笑みを浮かべそう言う女に、ユーリは警戒心を向ける。

「てめえは誰だ?」

「申し遅れました。エステリーゼ様の侍女頭を務めさせて頂いております、ミムラ・フォン・キュモールと申します」

 綺麗な淑女の礼をするミムラを見据えて、エステルが尋ねる。

「ミムラ…アレクセイはどうなりました⁈」

「アレクセイ…ああ、前騎士団長。一応生きてはいると思いますよ、今のところ」

「含みのある言い方じゃねえか」

「興味がないから仕方がないでしょう。まあ、人質を殺すことは無いとは思いますわ」

「人質?」

「貴方なら予想つくんじゃない? ここ半年捜し回ってたんでしょう? レイヴン…いいえ、帝国騎士団隊長首席、ダミュロン・アトマイス殿」

 指で示された上に名指しされるも、レイヴンの表情は全く崩れず、静かにミムラを凝視していた。

「……え?」

「うそ⁈」

 聞き流して欲しいと思いつつも、カロルやリタといった子供らには難しい芸当だったらしく、目に見えて混乱していた。

「……こんなタイミングでバラすかね…」

 仕方がないと息を吐きつつ、レイヴンはミムラの言葉を認める発言をした。

「冗談…ってわけではなさそうね」

「騎士団の隊長がギルドユニオンの幹部⁈」

「しょーがないでしょう。アレクセイの大将とドンに頼まれたんだから…」

「え……ドンは知ってたの⁈」

「そりゃあね…まあ長ーく生きてると色々あんのよ」

 一方でフレンとユーリは、先日に抱いた違和感の正体が明らかになって、逆に納得していた。

「どことなく似ていると思いましたが…」

「っつーか真面目な口調、ダミュロン隊長に似てて違和感あったんだな…」

 場の混乱が収まったと認識するや否や、レイヴンは隠し持っていた変形弓を構え、ミムラを見据えた。

「皆にバレちゃったし、こっちも開き直って聞かせてもらうが…『梟』はそっちにいるんだな?」

魔導器(ブラスティア)追跡モニター。これを持ってる時点でわかるでしょう? 量産しているなら別として…」

 ミムラは光の点滅が見えるモニターを、これ見よがしに見せた。

「エステリーゼ様の護衛に、フレン隊長がついてると踏んで正解だったわね。それに騎士団から支給された武醒魔導器(ボーディブラスティア)、そのまま使ってくれて助かったわ」

「……フレンの武醒魔導器(ボーディブラスティア)で、こっちの位置は筒抜けってわけか」

「そのお陰でエステリーゼ様の行方を掴むことができましたわ。何せそれなりに時間が押していますので…」

 そう言いミムラはエステルを見据えて静かに告げる。

「エステリーゼ様。貴女の『満月の子』の力は、世界に終焉を齎します」

「っ⁈」

「おいおい、適当な事を言ってんじゃねえよ」

 顔色を変えたエステルを庇うように、ユーリが言い放つ。

「始祖の隷長のクロームのエアルを激しく乱して暴走させておいて、私の言葉を信じないつもりですか?」

 ミムラの言い放った事実は、エステルの心を深く抉った。

「アレクセイがクロームに止めを刺してくれたから良かったけど、そうでなければどれ程の被害が出たことやら……」

「てめえが治癒術掛けるように頼んだと聞いたぜ。全部知ってて、エステルにやらせたんだろうが」

「ふふ……なんのことやら……確かにアレクセイを容易に捕える一助となったのは事実ですけどね」

 ミムラは「さて」と言葉を挟み、柔らかな表情で再度エステルを見つめつつ手を差し伸べた。

「そのままでは悲劇を量産するだけであると、貴女が一番理解していますよね? ご安心ください。一緒に来ていただければ、貴女も世界もお救いいたしましょう」

 その言葉に釣られて前に出ようとしたエステルの腕を、リタは素早くつかんだ。

「大丈夫よエステル! 私が解決してみせる‼︎」

「リタ……でも、私は……」

「私を誰だと思っているの? 天才魔導士のリタ・モルディオよ‼︎」

「そうね。エアルの乱れを正す方法、父ヘルメスの話ではある程度の目処は立っているそうよ」

「そこんとこ、おっさんの方にも情報は来てるわ。それにこれまでの経過から見ても、エアルの乱れがそこまで差し迫ったわけじゃないこともね」

 ジュディスの言葉を裏付けるように、レイヴンは片目を閉じつつそう答えた。

「第一、具体的にどうするか全然話して無いじゃないか! 信用できないよ‼︎」

「そうやって不安を煽るところを見ると、そちらの誘いを受ける方が危ういのでは?」

「俺もカロルとフレンの意見に賛成だ。カプワ・トリムやダングレストの襲撃をやったテメエらの言葉、信じられると思うか?」

 その時、何かに気づいた様子でラピードが激しく吠え始めた。

「どうした、ラピード?」

「気づいたみたいね。頑張って死なないようにね」

 そう言い残しミムラは、ユーリらの前で突然姿を消した。

「消えた⁈」

 

 直後、突風でユーリらは舞い上がった砂埃で目を開けられなくなった。

「…なんだ⁈」

 砂埃が収まると、少し離れた大岩の上に、炎を具現化した朱の光に覆われた大鳥の姿があった。

『エアルが激しく乱れている。お前らの仕業か?』

 突然聞こえてきた声は、その大鳥から聞こえてきたものであった。

「しゃ…喋った⁈」

「もしかして…始祖の隷長(エンテレケイア)⁈」

『我らとの誓約を破った上で持ち出した物を用いて、我らが同朋〈揺蕩うもの〉を傷つけたのは貴様らか?』

「違います! 私たちは…」

 弁解をしようとしたエステルを見るや否や、始祖の隷長(エンテレケイア)は怒りに満ちた声を発した。

聖核(アパティア)を得るため、同朋を狩るだけに飽き足らず、満月の子…『世界の毒』でエアルを穢すと言うのか⁈ もはや看過できぬ‼︎』

 怒りを宿した鋭い眼をしたまま、大鳥の始祖の隷長(エンテレケイア)は羽ばたき上空へと飛び上がった。

「聞く耳無しってやつね…」

「おいおいどうすんだよ。隊長首席殿」

「今はその呼び方は止めてよね…救援を呼んだから時間を稼いで…」

 

 直後、フェローから放たれた火球が落ち、爆発が起きた。

 

 土煙が舞う中、ミムラは数名の騎士と共に突然姿を現した。そして気を失っているエステルを見つけ近寄り、様子を伺う。

始祖の隷長(エンテレケイア)の攻撃を無効にするとは、さすがは『満月の子』。でも咄嗟の事で、自身以外のダメージは完全に抑えられなかったみたいね」

 確認を終えるや否やミムラは頷き、それに応えて騎士はエステルを抱えて運ぼうとする。

 その時、何かに足首を掴まれて騎士は、歩みを止めた。

「姫様を……離せ…」

 いつの間にか這い寄り、自身の動きを阻害するレイヴンを一瞥し、騎士は彼の背に剣を突き立てようとしたその時…

「殺さないで。人質は多い方がいいわ」

 ミムラに指示に従い剣を止め、騎士は剣の柄でレイヴンの頭を殴り昏倒させて身柄を拘束した。

「ま…待て!」

 フラつく身体を起こし、ユーリは駆け寄ろうとする。

「運が良ければ会いましょう」

 妖艶な笑みを浮かべるミムラ。

 直後、彼女と騎士を含む範囲に光が浮かび上がり、ユーリらの前から姿を消したのであった。

 

  §

 

「ん………」

 人の気配を感じ、エステルは重い瞼を開く。そこには青みがかった黒髪、銀縁眼鏡から覗く黒灰色の瞳で、微笑みかける男の姿が見えた。

「もうお目覚めですか?」

 半年前の旅の時に出会った、カプワ・ノールの執政官で…

「貴方は…キャナリ中隊長の…」

「キャナリの兄、フィアレン・フォン・エングリスですよ。エステリーゼ姫。婚約者のミムラがご迷惑をおかけしました」

「フィアレン…私は…」

 その時、フィアレンの背後から眼鏡をかけた長い金髪の男が近づいてきた。

「始めて良いですか?」

「お願いします。ガリスタ博士」

 直後、エステルの周囲に拳大の結晶が浮かび上がり、そこから描き出された術式にエステルは閉じ込められる。

「え⁈」

 紫の半透明の球と化した複数から成る術式に閉じ込められたまま、エステルの身体は浮かび上がり、自身の意に関係なく目まぐるしく術が展開していった。

 直後、山岳地帯に転移していた。

 隣にはフィアレンとガリスタ、そして薄紫の隊服または真紅の隊服を纏った騎士の姿があった。

「素晴らしいですな。『満月の子』の力は!」

 再びエステルの力が起動して、山影に居る何かへ干渉し始める。

「フェローたちの意識が他所へ行っている間に、片付けないといけませんね。そう…これは必要な犠牲…」

 程なく、山陰からゆらゆらと黒い毛を逆立てた一体の魔物…始祖の隷長(エンテレケイア)の〈暗きもの〉が姿を現した。

 

「エルシフル。エアルの乱れの元はここか?」

『そうだデューク。別の所は近いからとフェローが向かってくれたが…』

 デュークが乗るエルシフル…〈偉大なるもの〉は警戒しながら山間を通り抜ける。その時、エルシフルに向けて無数の黒槍が放たれた。

 避けて攻撃してきたものを見て、エルシフルは驚き声を上げる。

『〈暗きもの〉⁈ 一体何を⁈』

 エルシフルの声を無視して〈暗きもの〉は火球を放った。

『よせ! 止めるのだっ‼︎』

 デュークは氷魔法を放って相殺した直後、〈暗きもの〉苦しげな声を上げて、その身体を激しく蠢動し始めた。

『まさか星喰みになりかかっているのか⁈ しかし何故…』

 その時デュークが何かを見つけて、エルシフルから飛び降りた。

『デューク⁈』

 デュークが向かう先には、術で閉じ込められたエステルと二人の男、それらを守る数名の騎士の姿があった。

「エステリーゼ…満月の子の力か⁈」

 しかしデュークがそこへ至る前に、エステル達は光に包まれて姿を消した。

「な…一体どこに⁈」

『デューク‼︎』

 エルシフルの声に反応して振り向いた時と、〈暗きもの〉が放った火球が着弾したのはほぼ同じであった。宙の戒典(デインノモス)での術の無効化は間に合わず、デュークは吹き飛ばされる。

 デュークの手から離れた宙の戒典(デインノモス)は、崖下へと落ちていった。

 

「お疲れ様です。デューク殿」

「ぐ……」

 何者かに話しかけられ、デュークは無理やり目を開ける。そこには先ほどエステルの側にいた男の一人が、穏やかに自身に話しかけていた。

「やはり強力な相手は、互いに潰しあうように仕向けるのが一番。互いに争い弱ったところで、兵装魔導器(ホブローブラスティア)で攻撃を束で叩き込めば、呆気なく倒せましたよ」

「な……エル…シフルが⁈」

「そうそう。そのエルシフルに感謝した方がいいですね。彼が庇ったお陰で、貴方は助かったのですから」

 そう言い身体をずらすと、デュークの目に大人一人分の大きさの聖核(アパティア)が2つ存在していた。

「最良質の聖核(アパティア)2つに加えて、宙の戒典(デインノモス)も手に入りました。本当にありがとうございます」

 そう言い笑顔で宙の戒典(デインノモス)を見せつける男の顔を、デュークは睨め付ける。

「フィアレン…だったな…お前が黒幕か?」

「反乱の首謀者はカクターフですよ。私は私の目的で動いているだけ。互いの利害が一致したので、一時的に共に行動しているのに過ぎません」

「彼女も…共に動いている…と?」

「彼女とは最終目的が一致しているだけですよ。そこに至る経緯について、かなり揉めましてね。『盾』を増やせば、少しは協力するのではないかと、カクターフは考えているみたいですが…」

「……『盾』?」

「兄君、親友、そして婚約者。何処まで揺るがずにいられるか…彼女次第」

 そう締め括り、近くの騎士にデュークを拘束するように短く命じ、フィアレンはエステルを連れてその場から立ち去る。

「待ってください! ここから出してくださいっ‼︎ せめて治療を……」

 傷だらけのまま連れていかれるデュークを、エステルはただ見るしか無く、涙を溢す以外に出来ることはなかった。

 内側から叩いてもビクともしない自身を囲う術式。

 それを構築して自身を閉じ込めるに飽き足らず、傷つけ命を奪ってしまう自身の意思から離れた力。

 

 世界の毒。

 

 ミムラに言われた言葉が過るたびに、エステルは自身に対しての嫌悪感が積み上がり絶望した。

 

「もう…嫌……これ以上誰かを…傷つける前に…お願い……」

 

 

 私を…殺して…

 

 





 ゲームでエステルが連れ去られるイベントあたりです。
 ノードポリカでベリウスの事件は発生を免れました。
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