TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



囚われの騎士たち(人魔組4人の共闘を見たいから)

 

 帝都でクーデターが起きた。

 

 皇帝は弑られ、帝国騎士団本部は爆破された。混乱する帝国内で、権力を握ったのはカクターフ公爵であった。

 親衛隊長のナイレンからの報告に内容を読んだレイヴン(ダミュロン)は、動揺を隠せなかった。

 

「なんてぇ顔してやがるんだ?」

 

 ギルドユニオンの筆頭ギルド天を射る矢(アルトスク)としての上司、大首領(ドン)・ホワイトホースの気遣いが滲んだ声を聞き、レイヴンは我に帰った。

 アレクセイもキャナリも…そしてソフィアも居ない。騎士団隊長首席である自身が冷静さを欠いては、守りたいものを護りきれない。あの「悪夢」のように、何も考えずに居られることなど出来やしなかった。

 気持ちを落ち着かせ、レイヴンは思考を巡らした。

 

 ナイレンは騎士隊長のフレンやギルド凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)と共に、2人の次期皇帝候補を帝都から脱出させた。そしてナイレンはヨーデルを連れて、自身の故郷であるペルレストへ逃れると言う話であった。もう1人の次期皇帝候補のエステリーゼは凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)と共にハルルにいる。

 凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)の黒獅子ことユーリ・ローウェルは元騎士で、現在はシュヴァーン隊の協力員で自身の部下とも言える。そんな事態になっていながら、ユーリが廉価版通信魔導器で連絡を寄越してこないことに半ば呆れる。

「まだ連絡入っとらんわ。青年らしいけど……」

 計らずもその事に苦笑した事で、レイヴンの心がさらに解れた。

 

 レイヴンは今後の指示内容をユーリの廉価版通信魔導器で伝える。そしてドンに帝都で発生した大事件を端的に説明した。

「……で、てめえはどうすんだ?」

 全てを聞いた後に、ドンが徐に尋ねる。

「ちょっと出掛けてくるわ」

「へっ……別に構わねえが、こっちもこっちで忙しくなるだろうよぉ。てめえのことはそれなりにアテにしてんだ。用事済ましたら、とっとと戻ってこい」

「そう時間かかんないわよ。お姫様を連れて来るだけだし」

 エステリーゼ姫をダングレストに亡命させる。言外にそう言うレイヴンに対して、ドンは口角を少し上げた。

「ほう、そう来るか…まあ、いい判断だろうよお。てめえがケツ持つならあ、俺は別に構わねえぜ」

 そう言いカラリと笑って、ドンはレイヴンの背中を叩いた。

「あだっ‼︎ あんがと。じいさん」

 ドンの怪力で背を叩かれて痛みを感じるも礼を言い、レイヴンはダングレストを後にした。

 

 最初にソムラスの居るヘリオードへ向かい、ペルレストのユルギスと打ち合わせをする。同時進行でファリハイドに居るゲアモンに連絡を取って、彼を介して父スパルドに臨時便を手配してもらって…

 レイヴンとしてユーリとエステリーゼ…エステル達を迎えに行き、イキリア大陸を脱出してトルビキア大陸に戻ることができた。

 

 それからは怒涛の展開であった。

 

 合流予定だったイエガー(ステル)が先走った事に舌打ちしつつ、ダングレストに戻った時にドンからカプワ・トリムが音信不通状態となっていると聞く。ドンの命令もあってカプワ・トリムに向かうと、魔物も乱入する市街戦が勃発していた。カプワ・トリムの被害は甚大、崩壊したカルボクラムに魔物側の首魁と見られる〈噛み裂くもの〉を閉じ込めて、取り敢えず難を脱することができた。

 一方でダングレストでは、レイヴンらが不在中に結界魔導器(シルトブラスティア)を操作され、魔物の侵入を許した上にドンを含む天を射る矢のギルド員は街の外に締め出された。それと同時にギルドユニオンの5大ギルドが一つ紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)が離反した。

 ユーリらの協力で結界魔導器を修復することができ、魔物や紅の絆傭兵団の制圧に成功したが…

 

 ドン・ホワイトホースが再起不能とも言える深傷を負った。

 そしてカロルの父親が命を失った。

 

 己が無力にレイヴンは苛立っていた。

 どうしてこうなってしまった?

 行方を追っていたソフィアの、カプワ・トリムで姿を現した時に見せた所業を、レイヴンは否応なしに思い出していた。魔物と化した街の人を魔法で串刺しにした、何の感情も浮かべていなかった、初めて見たソフィアのガラス玉のような緋色の瞳を…

 

「おじさま?」

 自身をそう呼ぶ者は1人だけ。

 レイヴンは笑みを浮かべつつ、振り返り自身を呼んだ者の名を呼ぶ。

「どうしたの、ジュディスちゃん?」

「バウルが運んでくれているから、見張りは大丈夫よ。少し休んだらどうかしら」

 ギルド戦士の殿堂(パレストラーレ)との協力を取り付けるため、レイヴンはユーリらと共にデズエール大陸へ渡った。そして今クーデター勢力の目的を知るため、ジュディスの友であるバウル…レイヴンから見て巨大な空飛ぶ鯨の姿だが、彼の協力でミョルゾに向けて空を飛んでいた。

「んー…なんて言うか、夜更かしは大人の特権と言うか、月見酒と言うのも乙でしょう?」

「お酒は何処にあるのかしら? 雲で隠れて月は見えないわよ」

「お酒が無くても、魅力的な月があれは充分酔えるわよお。今目の前にいる、麗しいの月があればねえ」

「あら。口説き文句がお上手だ事。でも、誤魔化すために言われても、私は嬉しくないわ」

「そんな事ないわよ。ジュディスちゃんは、おっさんなんかには勿体無いほど魅力的だし」

「その言い方だと、誤魔化した事を否定してないわよね?」

 そう言いジュディスは、悪戯っぽく赤藤色の目を細めた。追求を逃れられないと感じたレイヴンは、苦笑しつつ口を開く。

「いやあねえ…ソフィアの目的が分かんないのよ」

「おじさまはそう言える程深い仲なのかしら?」

  ダミュロンとしては、おそらく身内であるアレクセイの次に深い仲だと言える。しかしギルドユニオンのレイヴンとしては…

「まあ、仕事上の付き合いはそれなりにあったわよ」

「じゃあ、私も同じ感じかしら」

「ジュディスちゃんから見て、ソフィアはどうよ?」

「そうね……単純だけど複雑で、よく分からない人だったわ」

「面白い見方ねえ」

「そう? おじさまと似ていると思ったわ。でも……会う度に人と距離を置こうとしている感じがしたわ。程よい距離を保とうとしているおじさまと違うところね」

 ジュディスの言葉を聞いたレイヴンの脳裏に、ソフィアのガラス玉のような瞳が浮かぶ。

「……ソフィアが一連の事件に関与していると思うか?」

 レイヴンらしからぬ、硬い言葉が口から出た。それに少し驚いたのか、ジュディスは一瞬目を見開く。そして、素の姿を引き出せたことに満足するような笑みを、ジュディスは浮かべた。

「私の勘では、そうだと思っているわ。でも、本質は何も変わっていないんじゃないかしら」

「本質?」

「私よりおじさまの方が、良くわかっているんじゃないかしら。ソフィアさんの本質を」

 そう言いジュディスは、艶やかな笑みを浮かべた。

 ジュディスの言葉を聞き、レイヴンは… ダミュロンはソフィアを信じることにした。クーデターに加担しているのは、ソフィアに何か考えがあってのことだと…

 そしてソフィアが自身に期待していることは、被害をできるだけ少なくすること。 ダミュロンが知っているソフィアの願いは、「皆が幸せになること」なのだから。

 

 だから…デズエール大陸の砂漠で、ミムラたちクーデター勢力の謀計に掛かり始祖の隷長(エンテレケイア)の攻撃を受けた時、自身の命を引き換えにしてもエステルが拐かされるのを阻止しようとした。

 ダミュロンは自身がよく見る悪夢が「別の可能性の世界」なのではないかと、薄々考えつつあった。

 このまま攫われればエステルは「道具」として扱われ、彼女が意図しない破壊行為や殺害行為に力を利用されてしまう。悪夢の中で、自身が犯した数々の罪を許し自身の存在を包み込んでくれた優しき姫君に、取り返しのつかない深い心の傷を負わせる同じ過ちは決して犯さない‼︎

 力を振り絞り、意識の無いエステルを連れ去ろうとする騎士の足首を掴み行動を妨害する。己が心臓に剣先を向けられても、ダミュロンの心は凪いでいた。

 

「殺さないで。人質は多い方がいいわ」

 

 人質? 誰に対しての?

 アレクセイを人質にしているとミムラは言っていた。そこから「誰」に対しての人質か理解が追いつくや否や、ダミュロンは背に氷水を流し込まれたような錯覚を覚えた。

 それと同時に後頭部に痛みと衝撃が走り、 ダミュロンの意識は闇に沈んだ。

 

  §

 

「……最悪だ…」

 見知らぬ天井を目にしてそう言い捨てた。

 

「オー! 目覚めたようね。ミスター・レイヴン」 

 聞き覚えのある声に勘に障る口調を聞き、思わず眉間に皺を寄せる。そしてため息を一つ吐きつつ、 ダミュロン(レイヴン)は上半身を起こす。 

「キャナリが生死不明で気持ちはわかるが…お前が先走ったせいで、人手足んなくて大変だったんだぞ…ステル(イエガー)

  ダミュロンはわざわざイエガーでは無くて、本来の名の方で呼んだ。

「オー…それは、ベリーソーリーね」

「……反省してんのかねぇ…まあイエガーの姿で普通の喋り方されても、それはそれで気持ち悪ぃが…」

「……喧嘩売ってるのですかねぇ?」

「で、先走った甲斐はあったのか?」

「愚兄からは何も聞けませんでしたよ…魔物に邪魔されましたから」

「ガデニア卿は死んだ」

「でしょうね。目の前で上半身を齧られてましたから」

 

 その時、部屋に唯一存在する扉が開く。

 

 扉奥は部屋の外では無く、監禁されている部屋の一部を区切った場所のようだ。そこから姿を現したのは、生死不明であったアレクセイであった。

「気分はどうだ?」

 ダミュロンは一瞬驚くも、安堵した表情を向けた。

「閣下……ご無事でしたか」

「この身は何とかな。現状を加味して無事かどうか言い難いが…私の不在中の動きはどうなっている?」

 水が入ったコップを渡されつつアレクセイに問われ、ダミュロンは今までの経緯を説明しようとした。その時突然壁の一部が開き、その穴から一人の男が転がり落ちてきた。

 全身に傷を負った白亜の麗人の姿を見て、ダミュロンは驚き目を見開く。

「デューク⁈」

 

 アレクセイが治癒術を掛けると、程なくデュークは意識を取り戻す。

 そして互いの情報を交換した結果、エステルの持つ「満月の子」の力をクーデター勢力は手に入れ、始祖の隷長(エンテレケイア)の盟主であるエルシフルを討ち取り、彼の巨大な聖核(アパティア)を得たことが判明した。

 事態が最悪な方向へ動いていることは、明らかであった。

「それで、ここは何処だ?」

「おそらく、移動要塞ヘラクレスの特別監禁室だろう」

 デュークの言葉にアレクセイが答える。

「ヘラクレスの設計には私も携わった。間違いない」

「って事は、ここからの脱出も?」

 ダミュロンの問いに答えるように、アレクセイは部屋に壁に手を置いて、操作盤を出現させる。

「解析は終わっている。だが、ヘラクレスを奴らに自由にさせたままにはいかぬだろう? 故に脱出する前に機能を停止させる」

「そのためには、動力室と制御室の両方を同時に抑える人員が必要となります」

 そう言うステルの言葉に、確かに手練れだとしても2箇所を複数人で掛かる必要があるとダミュロンは理解する。

「今なら制圧する人手は充分か」

「ヘラクレスが動き出してそれなりの時間が経過している。目的地に着く前に制圧する」

 

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