pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。
「ん……ここは?」
頭を押さえつつ、ユーリは瞬きを繰り返しその意識を視界をはっきりさせていく。そして起き上がったユーリが周囲を見渡すと、隣のベッドにフレン、その隣にカロルが寝ているのが見えた。
治療されていることから、この場所へ運んだ者に悪意は無さそうだとユーリは判断した。男女別に部屋を分けているのか、女性陣の姿は見当たらない。そして…
「レイヴンが居ねえ……エステルと一緒に連れていかれちまったか!」
「……ユーリ?」
ユーリの苛立った声で目を覚ましたフレンが声を掛けてきた。
「悪ぃ…起こしちまったな」
「ほとんど起きてたよ。ここは?」
二人で部屋を出た先、大きめのリビングルームでテーブルの両端に向かい合うように、老婆と壮年の男が言い争っていた。
「〈猛きもの〉冷静になられよ」
「〈聡きもの〉よ、そちらこそ正気か? 世界のエアルを乱す人間を庇い立てするとは…」
「ヒトの社会は複雑なのじゃ。下手に強硬な手を取れば、逆に世界が滅ぶ刻を推し進める危険性があると申しておろう。況してや、我らの命を奪い合う手立てをすでに持っている。故にこちらも慎重に動かねばならぬ。そのために情報を…」
そこでユーリとフレンに気づき、老婆の方は表情を緩めて話しかけてきた。
「加減は如何かな?」
「ああ……アンタらが助けてくれたのか?」
ユーリの問いに対して壮年の男はあからさまに顔を背けた。
「もしかして…
隣の部屋から出てきたジュディスが驚いたようにそう告げる。それと同時にリタ、カロル、ラピードも部屋から出てきた。
「ほう…流石にクリティア族にはわかるかのう…私は仲間内では〈賢きもの〉と呼ばれるが…ヒトからはベリウスと呼ばれておる」
「ベリウスって…もしかして
カロルの声にベリウスは鷹揚に肯く。
「なるほどな…レイヴンが言ってた伝手ってこう言うことか…」
「レイヴン…ああ、ダミュロンの事か。彼は如何した? 面会予定より前倒しにして、緊急で呼ばれて参ったのだが…」
ベリウスに尋ねられ、ユーリらは今までの経緯を簡単に説明した。
そして説明を一通り聞いたベリウスは、非難するような視線を壮年の男に向ける。
「聞いたか〈猛きもの〉…いや、ヒトの前ではフェローと呼び方がいいかのう」
「…どちらでも構わぬ……だが、千年前の
その言葉を聞きユーリが思わず口を出す。
「ちょいっと待った。人と
「協力して星喰みを倒したんじゃないの?」
「……なるほど、全てを知っているわけではないのじゃな」
ユーリとカロルの言葉を聞き、ベリウスは話しはじめた。
千年以上前、クリティア族とエアルを自在に操る「満月の子」により
「争いで人間はより強力な
「……つまり魔導器だけじゃなく、満月の子が力を使うたびにエアルを乱しちまうってわけか」
「そしてその末にあるのは、世界の滅亡…」
ユーリの言葉を引き継ぎそう言い、フレンは深くため息を吐く。
「そうだ。故に『世界の毒』」
「ちょっと! エステルの事を酷く言わないで‼︎」
この場にいない親友をフェローに貶され、リタが怒りを顕にする。
「ちょっとリタ……相手をあんまり刺激しない方が…」
「アンタはコイツらとエステル、どっちの味方なのよ⁈ ビビってコイツらの肩を持つってんなら、アンタの臆病さ加減に失望…」
「落ち着きなさい、リタ。仲間割れしている余裕なんて無いでしょう?」
カロルに対して攻撃的な言葉を投げつけようとするリタを、ジュディスが止める。そこでようやくリタは、父親が亡くなった時の酷く傷ついた表情を、カロルが見せていることに気づいた。
カロルの父親が亡くなってから日は浅い。その中で仲間を攫われて、彼が傷ついていない訳がないと言うことに気づき、リタの頭に昇っていた血は急速に引いていった。
「……ゴメン……言い過ぎた。冷静じゃ無かったみたい」
「いいよ。ボクだってエステルが悪く言われるのは嫌だもん」
そう言い無理やり笑みを浮かべた後、カロルは深呼吸して身体の震えを落ち着かせた。その様子を見たラピードが、慰めるようにカロルの隣に座ったのを見届けた後、フレンが徐に口を開いた。
「僕たちはエステリーゼ様の力を調べていました。それは反乱軍がその満月の子の力を手に入れようとしている理由を知りたかったからです。でもそれ以前に力を乱用されても世界が危機に陥る。そう言うことですね?」
フレンの問いに、フェローではなくベリウスが肯く。
「で、おっさんの見立てじゃあ、エアルをメチャクチャに乱す古代兵器を復活させようとしているって訳だな」
「そうだ。ヒトは同じ過ちを犯そうとしている…」
そこでフェローは急に言葉を止めた。
「如何したフェロー?」
「〈揺蕩うもの〉が知らせてきた…」
そう言うや否や、フェローは家を飛び出し、元の大鳥の姿に戻って飛翔して去っていった。
「〈揺蕩うもの〉?」
「クリティア族の街を守るクローネスのことじゃ。傷を癒して先ほど浮上したのだが……」
「ベリウス?」
「我らも急ぎ向かった方が良いだろう。其方ら、確か飛翔する
「ええ、バウルを呼ぶわ」
外に出て、皆は一様に驚く。
砂漠に青々とした木々が立ち並び、その街の中の家が自身らがいた場所であった。
「っつーか、ここは何処だよ?」
「ヨームゲン…とは申しても、千年前に滅びた街じゃ」
「滅んだって…街は傷んでないですが…」
驚きそう言うフレンに、ベリウスは笑みを浮かべつつ口を開く。
「実際の街は滅んでおる。ここはフェローの記憶…と言うより良き日々の思い出がエアルで具現化した世界じゃ」
「エアルで世界が具現化…まあ
「この街はな、
そう言いベリウスはユーリらを見て、静かな笑みを浮かべる。
「私同様にヒトが好きなんじゃ。だからこそ、約束を反故にされた事に怒りを覚えているのであろう」
§
カドス山脈。
北部の山間の一部が抉れ、焦げ付き、燻り残る煙から、戦闘があってからそこまで時間が経過していない様子だ。
元の姿である大鳥と大狐の姿となったフェローとベリウスが調べ、エアルの痕跡から
そして満月の子の力の残滓も感知したことで、反乱勢力がエステルの力を利用し、〈偉大なるもの〉と〈暗きもの〉を倒し、
『我らは嵌められたのだ! お主の短気で、渡してはならぬ者たちの手に満月の子が堕ちた結果がこの事態なのだぞ!』
『そ奴らごと消し炭にすればいいだけの話』
『〈偉大なるもの〉〈暗きもの〉の両者を葬った奴らにか? ノコノコ出てきた我らを葬り、我らの聖核を得て新たな兵器を作る。まだ分からぬのか⁈』
「なあ、ちょっといいか?」
言い争うベリウスとフェローの間に、ユーリが口を挟む。
「アンタらが望んでいるのは、事態の収拾か? 仲間の敵討ちか?」
『世界を守るためエアルの正す事だ』
「事態の収拾ってことだよな。その方法の一つであり、憂さ晴らしのためにヒトを潰したい。そんなところか?」
相手は大鳥の姿であるにも関わらず、ユーリは怯む事なく言葉を続ける。
「世界を守るっつーけど、ヒトも世界の一部じゃねえのか?
『多くを守るため一部の犠牲は致し方ない』
「切り捨てられた一部の意思は無視かよ? それを無視して一方的に『死ね』と言える程、お前は偉い存在なのか? 少なくとも俺には、お前は切り捨てたものを背負えるようには見えねえな。
『言わせておけば…貴様に何が…』
「ヨームゲンの住民は、
違うかと言わんばかりに、ユーリは挑発的な視線をフェローに向けた。静観していたフレンもまた、ユーリに続いて口を開く。
「千年前、最初に警告した時も一方的に
「今回だって、どうにかしようとしてる私らの邪魔して、敵に塩送ったもんね」
「ちょっとリタ…本当の事…だけどさ…」
「
その時、ラピードが何か袋のような物を咥えて、ユーリの所に持ってきた。
「なんだ? 近くに落ちてたのか?」
短く吠えて肯定するラピード。ユーリが改めると、荷袋のようであった。
「中を見たら? 持ち主の手がかりがあるかも」
カロルの提案でユーリは荷袋の中を改めるとグミや回復薬のボトル、筆記用具が入っており、文字が掘り込まれた上質な万年筆が入っていた。
「デューク・バンタレイ from S,D」
「デューク・バンタレイ…前親衛隊長じゃないか。どうして彼の持ち物はここに?」
フレンの話を聞き、ユーリは半年前に出会い、手紙を届けるように頼まれた白金色の髪、真紅の瞳の美丈夫を思い出す。
『デュークか…おそらく〈偉大なるもの〉と共にいたのであろう。ここ最近は世界を周り、エアルの乱れを鎮めていた。恐らく、満月の子によるエアルを乱れを感知して来たのであろう』
『…ヒトの身であるが、デュークはエアルを鎮めるため動いていた』
『例のエアルを激しく乱す機械も、彼が率先して壊しておった。ヒトの怒りの矛先が我々に向かぬように…
『…………』
『我らが出向くには不向きな場合がある。だからこそ、ヒトの協力が必要なのだ』
ベリウスに促されるようにそう言われ、フェローはユーリらの方を見据える。
『我らと対話し、協力する気はあると』
「僕らは最初からその意思があります」
『エアルを鎮める道筋はあるのだな?』
「反乱勢力ぶっ潰して、総力を上げてリゾマータの公式を解明するわ」
『間に合う保証はあるのか?』
「保証はないけれど、やれるやれないじゃなくて、やるしかないんでしょう?」
『矮小たるヒトの手で成し遂げられると、本当に思っているのか?』
「確かに
「って事だ。少なくともここに居る俺たちは、何かを犠牲にする気はねえし、諦める気もない。これ以上取りこぼさねえように、足掻くつもりだ」
ユーリの紫水晶の光が宿る黒い瞳と、フェローの焔を内包する朱の瞳が睨み合った。
『あい分かった』
フェローは一つ頷き、ゆっくり飛翔する。
『残された刻は幾許もない。それをゆめゆめ忘れるな!』
そう言い残し、フェローはその場から飛び去っていった。
『今となってはフェローが
呆然としているユーリらに、ベリウスはそう言った。
「さて…せっかく貰った猶予期間を、有効活用しねえとな」
「で、これからどうする?」
『ならば、ノードポリカへ向かうと良いだろう。
ベリウスに促され、ユーリらはノードポリカへと向かうことになった。
エステル不在ですが、ゲーム内のフェローを説得するイベントとなっています。ベリウスが生存していることから、比較的穏便に話を進める事ができました。
フェローと人間との付き合い、ヨームゲンとの関係は妄想からの捏造ですが、どこかの段階で一部の魔導器の使用を始祖の隷長と交渉したはずですので、その窓口にヨームゲンの住民とフェローがなったのではないかと考えたわけです。