TOV 黎明の残月 宵闇の盈月   作:桐錠

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 pixivでアップしているテイルズオブヴェスペリアの二次創作小説の2作品の統合版となっております。
 ゲーム開始の25年前から始まる、「記憶持ちの時間逆行」と「ゲーム知識持ちの転生者」を含む、4人(オリ主、デューク、レイヴン、ユーリ)視点で繰り広げられるifストーリーです。
 ゲーム本編、小説(主に奥田氏版)、劇場版の内容も含んでありますので、ネタバレ等ご注意ください。また本編等で本名やファミリーネーム、家族構成が明らかになっていないキャラクターの設定などを保管する形で、オリジナル設定多々含まれております。
 ヴェスペリアの世界のパラレルワールド的な扱いにして頂けると幸いです。



反撃の刻(ゲーム知識持ちの貴腐人は使い方次第)

 

 ノードポリカに戻り、最初にやったことはギルドユニオンと戦士の殿堂(パレストラーレ)との同盟終結であった。

 レイヴンが念の為にと、自身が所持する以外にもう一通書状を作成し、カロルに預けていた。そして凛々の明星(ブレイブ・ヴェスペリア)の首領として、カロルが代行して書状をベリウスの副官のナッツに渡し、同盟は無事に結ばれた。

 同盟が結ばれたことで、互いの情報交換が自由に出来るようになった。そこでナッツは、反乱軍が騎士団開発の移動要塞を手に入れ、最近ではデズエール大陸近くの海域を彷徨いていた事を教えてくれた。

 そしてナッツは、ユーリらから得た情報を元に仲間内で話し合うとナッツは退室する。

 ユーリらは客間に通された、そこで用意された食事を摂り、各々は久々の休養を摂った。しかし会話は続かず静寂が部屋を満たす度に、豊富な知識から次々と話題を提供する花のような少女と、話しをまぜっ返して年少組を揶揄う風来坊が居ない現実を、否応に無しにユーリ達に突きつけていた。

「そもそもさあ…空を飛んでいたミョルゾを、どうやって攻撃できたんだろう」

「多分移動要塞からの攻撃だと思う。開発中と聞いてたから、試運転と戦士の殿堂(パレストラーレ)への示威行為もあるんだろうね」

 カロルの言葉にそう答えるフレン。続けてユーリが口を開く。

「奴らがエステルとおっさん連れてったのは、その移動要塞だろうな。今何処に…」

「移動要塞ヘラクレスは海上を移動中」

「目的地はダングレストだわん」

 声が聞こえた方を見ると、ダングレストで別れたゴーシュとドロワットの姿があった。そして2人の後ろに居る者を見て、フレンが驚き目を見開く。

「キャナリ…中隊長⁈」

 帝都の騎士団本部の爆破以降、行方不明になっていたキャナリの姿がそこにあった。

 

 戦士の殿堂(パレストラーレ)への状況説明と、カクターフら反乱軍に与せぬよう願いに来たと言うキャナリ。フレンらも居ること知り、ナッツとの面会後に来たと話した。

 フレンを中心に所々ユーリが補う形で、今までの経緯について説明を受けるキャナリ。

「…状況は分かったわ……エステリーゼ様とレイヴン…ダミュロンが捕まった。おまけに複数の聖核(アパティア)を相手は手に入れていると…」

 キャナリは片手で頭を押さえて深い息を吐いた。目の下の隈は深く、何処と無く覇気がない様子で、フレンは心配そうな視線を向けた。

 ややあって視線に気づいたキャナリは、フレンに視線を向けた。

「フレン隊長。今更だけどこれと今使っているものと交換して」

 そう言いキャナリは、フレンに支給品以外の武醒魔導器(ボーディブラスティア)を渡す。それを受け取りながらフレンは徐に口を開く。

「その…騎士団本部に居た他の騎士たちは?」

「避難して無事よ。地下は逆結界の範囲外って聞いていたし、テロ発生時の脱出訓練は欠かさずやっていたから」

 ユーリ達が帝都を脱出した後、入れ替わる形でキャナリたちも黎明の残月(トリウィア•ミラージュ)の本部に避難した。ヒスームは帝都に潜伏し、合流したクオマレら親衛隊のアレクセイ派と共に、反カクターフ派の騎士や貴族の身内の護衛をしているとの事であった。キャナリはファリハイドでゲアモンと合流し、ヘリオードのソムラス、ペルレストに居るナイレンやヨーデルと連携を取っていると説明した。

「死んだ振りをした方が色々と動けるからね。お陰で帝都奪還に必要な戦力は準備できたわ。禍根を絶つために、カクターフの協力者の洗い出しをしているところよ」

 帝都を占拠したカクターフら逆賊を優勢勢力と見做して、評議会に所属する者を始めとした貴族らが挙って賛同していた。ヨーデルはそれを見逃すつもりは無く、腐敗している貴族らを一斉に検挙して排除するつもりであった。

「クーデターへの参加や同意となれば、貴族とはいえ減罪は認められないわ。だから後は私に任せて…」

「政治的な駆け引きはともかくだ。俺たちは俺たちの手で、仲間を…エステルとレイヴンを助けたい」

 真摯なユーリの目を見てキャナリは何かに気づき、そして静かに瞠目した。

「自分たちの手で…仲間を助けたい…ね」

 

 次に瞼が開かれた時には、温かくも伶俐な光を灯した、フレンにとって見慣れた眼差しが姿を現していた。

「反乱勢力はヘラクレスでダングレストを攻めるとの情報を得ています。その隙に私は味方戦力を率いて、帝都の奪還を目指します。ダングレストでは、ギルドユニオンが防衛する筈ですが…」

「ドンは戦える状態じゃないし、No.2のレイヴンも居ないし、多分天を射る矢(アルトスク)は上手く動けないよ。傭兵ギルドを束ねていた紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)も首領のバルボスがいないし…」

 カロルの言うとおり、レイヴンが拉致された影響で、ダングレストを守りきれない危険性が出ていた。

「騎士団に応援を頼めないかしら?」

「ギルドの連中が、すんなり受け入れるかどうか怪しいわよ」

「こちらとしても戦力を割くのは避けたい。寧ろ帝都を押さえた方が、ダングレストを攻める連中の動揺を誘えるから、そちらの方が効果は高い」

 ジュディスの提案は、リタとキャナリの反対で無しの方向になる。

「それともう一つ。エステリーゼ姫たちが帝都に居れば、救出可能ですが…」

「ヘラクレスの方にいる可能性の方が高いと」

 ユーリの言葉にキャナリは肯いた。

「私は帝都を奪還する使命がある。しかし、エステリーゼ様は護るべき大切な方、ダミュロンは掛け替えのない仲間で友人なの…貴方に託しても構わない?」

「ダングレスト守って、ヘラクレスからエステルとレイヴンを助けりゃいいんだろう?」

「ありがとう。本当に頼もしいわ」

 張り詰めていた表情を解すように深く息を吐き、冷静さを取り戻したキャナリはユーリらから得られた情報を精査し始める。

「それから、ダミュロンの読みも気になるわ。カクターフらは古代兵器を探していて、それを使うためにエステリーゼ様の身を確保したと言う話。それが本当ならば…」

 考え込むキャナリに対して、ユーリが明るく口を開く。

「そう深く考えなくていいだろう。奴らがその古代兵器を引っ張り出す前に、エステル助けりゃいいだけの話だ」

「そうよ! 一刻も早くエステルを助けなきゃ!」

「レイヴンもだよ!」

「バウルなら、ダングレストまでの先回りは余裕ね」

 リタ、カロル、ジュディスの同意を得て、ラピードも同意するように一つ吠える。

「俺たちはダングレストへ向かう。フレンはどうする?」

「ユーリ。僕は隊を率いて、キャナリ中隊長の手助けをしたい」

「そうか…分かった」

「今フレン隊はヘリオードかしら? よかったら送るわ」

 方針が決まり、キャナリはフレンと共に準備のために足早で会議室を去った。

 

 残されたゴーシュとドロワットの二人が、ユーリらに向かってお辞儀をした。

「ありがとう。礼を言う」

「どう言う意味だ?」

「イエガー様は…キャナリ姐の旦那様なの」

「おい! それは秘密だと…」

「レイヴンの事を知ったし、おあいこですわ。キャナリ姐、イエガー様の行方がわからないって…落ち込んでたの…」

「それなのに皆は、キャナリ姐に『頼む』ばかりで…それを一人で背負い込んで気を張っていたんだ」

「自分たちでやるって言ったのは、アンタたちだけだよ。しかもやりたいけど手が回らない事を…2人を救出するって言ってくれたし、キャナリ姐は嬉しかったんだと思うよ」

「お前らと話していつものキャナリ姐に戻ってくれた。改めて礼を言わせてくれ」

「……そうか」

「ボクたちの方もイエガーさんの情報、捜してみるよ」

「助かる」

「ありがとですわん」

 カロルの言葉に礼を言い、2人はキャナリの後を追って会議室を後にした。

 

  §

 

 移動要塞ヘラクレス。

 アレクセイが転移魔法陣を出現させ、監禁室から脱出したダミュロンらは、手分けしてヘラクレスの停止を目指すことになった。

 アレクセイとデュークと別れた後、途中で無人の武器庫で各々の武器を得て、ダミュロンとステルは制御室へ向かう。

 しかし敵の姿は見当たらず、二人はあっさりと目的地に着いた。

 罠の可能性が高いが、ヘラクレスを止めなければユーリらが不利である事は重々承知していたため、 ダミュロンたちは意を決して制御室に侵入した。

 

「推し二人がこっちに来るなんて! 私は何て幸運なのかしら」

 

 そう言い頬を染めて喜色を浮かべる貴族令嬢がただ一人、制御室にいた。

「ミムラ……だったな?」

 コゴール砂漠で自身らを嵌めた者の姿を見て、ダミュロンは静かに矢を番える。

「あ、言っとくけど。攻撃どころか私に触れる事もできないわよ」

 そう言いミムラは自身の目の前の空間を軽く叩く。目に見えない障壁があるらしく、硬質な音が辺りに響いた。

「っ⁈」

 その様に嫌な予感を抱きダミュロンは後退するが、制御室の入り口にも同様の障壁が張られたらしく、 ダミュロンとステルは閉じ込められた形となった。

「ちょうど貴方達には移動してもらおうと思っていたところなの。準備まで少し時間があるから、少しお話ししましょう」

「お話しですか……先日のカプワ・トリムでは碌に話を聞けませんでしたが、どう言う心境の変化ですか?」

 ミムラと面識があったらしく、ステルは皮肉を込めてそう尋ねる。

「仕方がないでしょう。作戦中だったもの。それも大詰めで少し余裕ができたのよ。カクターフのジジイはともかく、私たちの目的は順調ですもの」

「あんたらの目的は、ソフィアの目的でもあるのか?」

「概ね」

「それはカクターフとは異なる目的か?」

「途中経過は同じだけどね。あの腐れ貴族どもは、バルボスに皇帝を殺害させて、ギルド全体に弑逆の罪を全て着せる予定だったの」

「へえ…アレクセイ騎士団長閣下に擦りつけるもんだと思ってたが…」

「そういう意見もあったわよ。でも、実は全部ギルドの策略でアレクセイは被害者だった…ってした方が、騎士たちも操りやすいでしょう? 密約していたバルボスにギルドユニオンを掻き回させた隙に、ガデニア卿がダングレストを制圧して、そう宣言するつもりだったのよね」

「しかしそれは、天を射る矢(アルトスク)の若首領の活躍でご破産」

「あら、貴方がガデニア卿を抑えた事も大きな功績よ。さすが私が愛したイエガー様」

 そう言いミムラは蕩けるような表情を見せるが、逆にイエガー(ステル)の表情は冷酷なものとなる。

「それだけじゃないわ。ナイレン隊長が事実を触れ回った結果、ヨーデルが地方貴族をまとめ上げて帝都を奪還する見込み。彼では大人数の騎士を指揮できないと楽観視していたみたいだけど、キャナリを仕留めきれなかったのが痛手だったわ」

「キャナリは……生きているのか?」

 ミムラの言葉を聞き、ステルの表情は一気に氷解する。その様を見てミムラの顔に一瞬嫉妬が過るが、自身を納得させるように溜息を吐いて苦笑した。

「皇帝殺害のスケープゴートとして、ギルドユニオンを据える。弟のアレクサンダーにダングレスト制圧を任せる事にして、私たちは本命を目指すわ」

「本命?」

「と言うわけで、ひと足先にご招待するわ。ザウデ不落宮へ」

 ミムラがそう言った直後、 ダミュロンとステルの足元に魔法陣が浮かび上がる。それが転移魔法陣と気づいた時には、二人は何処かへと転移させられたのであった。

 

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